武尊vs小澤感想。やっとわかってきたじゃねえかK-1。大事なのはああいうわけのわからん熱量だよな。「本物」とか「本質」とか、マジで無意味

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バーミンガム住宅イメージ
2016年6月24日に東京・代々木第二体育館で行われたK-1 WORLD GP2016 IN JAPAN 65kg級世界最強トーナメント。

57kg級スーパーファイトで現K-1-55kg級王者武尊とKrush-58kg級王者小澤海斗の一戦が行われ、武尊が3-0(30-28、29-28、30-28)の判定で勝利を収めた。

5月21日に行われた「決起集会」で、小澤の挑発によって乱闘騒ぎに発展するなど因縁の深い両者による一戦。
乱闘シーンの動画はYoutubeで45万回再生され、新生K-1史上過去最速でチケットが売り切れるほど大きな注目を集めた試合は期待にたがわぬ熱戦となり、会場に詰めかけた観客からは大歓声が沸き起こった。

武尊、小澤ナイスファイト。試合前の挑発合戦から乱闘、本番での熱量まで完璧な流れでしょ

K-1王者・武尊勝利!!

今さら言うのもアレだが、この試合は本当によかったと思う。

試合前の注目度の高さ。
当日の大激戦。
今後も続くであろうストーリー性。

会場の盛り上がり、SNSや掲示板での感想を読んでも好意的な意見が多く見られ、大多数の方が満足できた試合だったのではないだろうか。
 
「那須川vs藤田がおもしろかった!! 那須川天心がボクシング? やらなくていいんじゃない? 転向する意味ある?」
 
言うまでもなくあの熱量を作り上げたのは選手たちの“演出”である。特に、試合前からK-1王者の武尊に挑発的に絡んでいった小澤の努力によるところは大きかった。

・K-1王者に対して「素手でやってやる」「チヤホヤされて浮かれてんじゃねえぞ」などの無礼な物言い
・フォトセッションでの掴み合い
・前日会見での「ぶっ壊し返す」発言

アウェイの立場を最大限利用して自らをヒールに仕立て上げ、新生K-1のスターに噛みつく。特に動画で脅威的な再生回数を叩き出した掴み合いはすばらしかった(片手で背負い投げされちゃったけど)。

恐らくあの一件で、両者の因縁に興味を持った方が爆発的に増えたのではないだろうか。一部のマニアの娯楽に過ぎない新生K-1を、ライト層にまで浸透させた小澤の熱量は「最高」以外の言葉が見つからない(片手で背負い投げされちゃったけど)。
 
「さすが俺のアムナットさん。20年ぶりのキックルールで那須川天心に肉薄。プニプニのお腹にパンチをもらって倒れ込むもナイスファイト」
 
そして当日の試合。
こちらも観ての通りである。事前の期待感を裏切らないどころか、さらに超える熱を発する大熱戦。宣言通り、両者とも引き下がらない真っ向勝負で会場や視聴者を興奮の渦に巻き込んで見せたのである。

期待値の大きさに比べて凡戦になる試合が多い中、ポイントゲームに走らず真っ向から打ち合った両選手の姿勢はマジで日本格闘技の未来を感じさせるものだった。
 
「五味バッカ野郎お前、サイコーじゃねえかww ベストバウトかましやがってゴルァww 大みそかは判定じゃダメだよ」
 
幾度にもわたる挑発。
掴み合いにまで発展した一触即発の因縁。
そしてバチバチの真っ向勝負。

試合前の演出から目いっぱい膨らませた風船を大爆発させるタイミングまで、まったく非の打ちどころがない。何から何まで完璧である。

「魔裟斗vs五味(まさとvsごみ)とかいう最低のクソ試合。何だアレ、茶番ですらないわ」

片手で組み伏せられたことすらもプラスに転換した小澤の100点満点の演出

恐らくこの試合に際して、小澤海斗の挑発を不快だと感じる方は一定数いたのではないだろうか。実際、あの掴み合いについてはやり過ぎだったという意見も見られた。

「さっそく陥落ミーシャ!! 女子MMAおもしろすぎ?! ヌネスが1R一本勝ちで新女王誕生!!」

もっと言うと、ベルトを肩にかけた状態の武尊に片手で背負い投げされてしまったのは不快というより「やってもうた」レベルの失態だったと思う。
あの一連の流れで両者の力の差が明確になってしまった部分は少なからずあって、散々挑発しておいて情けねえヤツだなという印象がついたことは非常にもったいなかった。

だが逆に考えると、小澤が軽く投げられたことで「あのムカつく小澤が武尊に一方的にやられる姿が観られる」と期待した方も多かったのではないだろうか。

「好き勝手に無礼な態度をとった上に一方的に負けるヤツww」
この無様な姿を観たいがために観戦意欲が沸いた方は絶対にいたはずである。

そして、思った以上の健闘を見せた小澤に対して「口だけじゃなかった。また観てみたいと思わせるヤツ」と、認識を改めさせる結果になったわけである。

「女子ボクシングの未来に絶望。プロ意識低過ぎだろ高野人母美以外どいつもこいつも」

試合前の不快感や、片手でねじ伏せられた残念感を試合で払しょくし、さらにプラスに転換させる。
視聴者を引きつけて興行を盛り上げるという意味でも、今後につなげるという意味でも100点満点の演出である。
 
「サイボーグvsホルム決まっちゃったよ…。楽しみなようなそうでもないような…。敵なしフェザー級チャンプにホルムは対抗できる?」
 

「本質」とか「本物」とか「試合のレベル」とかマジ無意味。一番重要なのは「自分が楽しいか」だろ?

何度も申し上げているように、今回の武尊vs小澤の一戦は終始白熱した本当にいい試合だった。

「武尊、那須川天心戦実現せずも大晦日参戦を発表!! 「RIZINを食う」と意気込みを語る」

だが単純に内容だけを見れば、この試合は武尊の圧勝だったのではないだろうか。
試合開始直後から右膝と左のパンチをボディに的確に叩きこんだ武尊が徐々に小澤を消耗させ、2R後半に流れを掴む。そして2R終了のゴングが鳴る頃にはほぼ勝利を手中にしてそのまま押し切った。終盤の小澤は立っているのがやっとの状態で、攻撃にも力が乗らない。健闘はしたが、残念ながら武尊との力の差は歴然だった。まさしくそういう試合だったと思う。

「山本美優負け~。RENAすごいね、UFC行けるんでないか? 木村ミノルの秒殺KO負けで度肝を抜かれた」

僕が読んだ感想記事や当日のSNSなどでも、フィジカル的にも技術的にも武尊は小澤を上回っていた旨のコメントが多く見られた。

いい試合ではあったが、実力だけを比べれば武尊が小澤を一枚も二枚も上回っていた。詳しいことはよくわからないが、恐らくその通りなのだろう。

ただ、その中でもよかったと思うのが、技術面での指摘をしている人の中に他人を見下す態度をとる人間がいなかったことである。
 
「「亀田興毅に勝ったら1000万円企画」が茶番()過ぎてボクシングを冒涜()している件について」
 
「こんな低レベルな試合を観て喜んでいる人間の気が知れない」
「何もわかってない。こんな試合で本質を見ずにあれこれ言う人間ばかりでは格闘技に未来はない」

以前から申し上げている通り、僕はこういう「本質」だの「本物」だの「試合のレベル」だのと抜かして他人を見下す人間が大嫌いである。

別に技術的な部分を指摘することが悪いとはまったく思わない。それぞれが主観で好き勝手にしゃべればいいことである。
だが、イベント自体を純粋に楽しんでいる人たちや好き勝手な感想を言っている人たちを「レベル」「本質」「本物」等の言葉を使って見下す人間が本当に許せない。
 
「KNOCK OUT FIRST IMPACTで那須川天心を生観戦してきたぞ。すげえ楽しかったから、その感想を羅列していくぞ」
 
こういう人間がライトなファン層を遠ざけ、業界を内向きにさせ地盤沈下を招く。実際、僕は日本の格闘技界が低迷した原因の一つがこの「自称本物の格闘技ファン」の存在だと思っている。

「日本の格闘技が不人気な3つの理由【低迷? 迷走?】」

これも何度も言っていることだが、プロスポーツ人気のバロメーターはミーハーの数である。いかにライト層に浸透するか、ミーハー層にキャーキャー言われるか。それがすべてと言っても過言ではない。

ミーハーがこぞっておしかけると業界が食い荒らされる?
ニワカwが沸くと本当にレベルの高い試合が観られなくなる?

いったい何を言っているのだ。
そういうことはまずは食い荒らされるぐらいの人数を集めてから言ってくれよ。

というか、ファンの絶対数を増やして、ニワカwが暴れても影響がないほどの基盤を作ればいいんじゃないのか? そういうのを営業努力と呼ぶんじゃないのか? そして、その努力を体現したのが今回の小澤海斗だったんじゃないのか?

人気が上がれば競技者が増える。
競技者が増えれば競技レベルが上がる。
競技レベルが上がり、ファン層が拡大すれば収益も大きくなる。
収益が増えれば選手たちの待遇もよくなる。
待遇がよくなればさらにいい選手が集まる。
いい選手が集まればまた競技レベルが底上げされる。

「背中を向けて逃げるマクレガーに中指を立てて挑発するネイト・ディアス。しょーもない、悪童が聞いて呆れるわ」

格闘技業界を好転させるためにファン層の底上げを目指す。
「本物」だの「本質」だの「レベル」云々の話は大多数のライト層には関係ない。
そんなことよりまずはどう注目してもらうかを考える。

至極当たり前のことだと思うのだが、違うのだろうか。
武尊vs小澤戦における会場の熱狂がすべての答えだと思うのだが、違うのだろうか。
新生K-1史上チケット最速売り切れ、乱闘動画45万回再生。この2つで答えが出てしまっていると思うのだが、違うのだろうか。

というか、そもそもスポーツ観戦の「本質」は自分が楽しいかどうかであって、本物とか偽物などという話は枝葉の要素に過ぎないと思うのだが、違うのだろうか。
 
「石井慧がイバン・シュトルコフにKO敗戦。石井の天敵だったなぁ。でも石井慧はもっと評価されていいと思うんだよな」
 

“格闘技ファンの世代交代”。まさかこんないい流れになるとはね

話が大きく逸れたが、今回の武尊vs小澤戦に際して、熱狂している人たちに対する見下したコメントが見られなかったことは本当によかったと思う。
まあ、僕自身が見つけられていないだけかもしれないが、少なくとも少数派だったことは確かである。

「格闘技を生で観戦してはいけない理由」

これは恐らく“格闘技ファンが世代交代”したせいなのだと思う。
ソースが見当たらなくてアレなのだが、新生K-1のファン層で最も多いのが10代、続いて20代、30代だったと記憶している。その中でも10代の割合は全体の4、5割近かったのではないだろうか。
つまり、旧K-1やPRIDEを知らない世代、90~2000年代の日本格闘技界の熱狂に触れていない世代が半分以上を占めているのである。

すなわち、いまだに旧K-1やPRIDEの熱狂にしがみついて過去を美化し、新生K-1を認められない世代、「本物」だの「本質」だの「レベル」だのと言って格闘技界低迷を生み出した世代が少数派になっているのである。

いや、これは本当にすばらしい。
絶望感しかなかった日本格闘技界にまさかこんな風が吹くとは。

しかもその中でも、今回の小澤や武尊のように自己プロデュース能力に長けた選手が出てきている状況。魔裟斗人気に乗っかっているだけだとも気づかず「レベルの高い試合をして観客を教育する」などとバカげたセリフを吐く選手がいた頃とは大違いである。
 
「知ってた? K-1ってすげえんだぜ? 日本の格闘技のポテシャルって凄まじいんだぜ?」
 
正直、僕は格闘技界の事情に詳しいわけではない。業界の抱える問題などはまったく知らない。恐らく団体同士の思惑や人気選手を守るマッチメークなど、内情を見れば課題は山積なのだろう。

ただ、今回の武尊vs小澤戦の熱量がガチだったことは紛れもない事実で、これを継続していくことは日本格闘技界にとって至上命題だと思う。

ちなみにそれ以外の試合は観てないので知らないです。ミーハーなので。

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