ワイルダー陥落! フューリーがヘビー級史上最強でいいよな。オラが町のごんたくれは“パーフェクトな2秒”を与えられず【結果・感想】

ワイルダー陥落! フューリーがヘビー級史上最強でいいよな。オラが町のごんたくれは“パーフェクトな2秒”を与えられず【結果・感想】

ベガスイメージ
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2020年2月22日(日本時間23日)、米・ネバダ州ラスベガスで行われたWBC世界ヘビー級タイトルマッチ。同級王者デオンティ・ワイルダーが元統一王者タイソン・フューリーが対戦し、7R1分39秒TKOでフューリーが勝利。2015年11月以来、約4年3ヶ月ぶりの王座に返り咲いた試合である。
 
 
2018年12月以来の再戦となったこの両者。
前回は一進一退の大接戦の末に三者三様の引き分けに終わり、約1年2ヶ月ぶりの決着戦となる。
 
試合は序盤からフューリーが前に出てプレッシャーをかけ、ワイルダーを下がらせる流れが続く。
ワイルダーも得意の右を打ち込むタイミングを探すが、フューリーの圧力の前になかなか突破口をつかめず。3、5Rにダウンを奪われるなど苦しい展開を強いられる。
 
ダメージが溜まり、右の1発にも力が入らないワイルダーだが、フラフラになりながらも何とか6Rを乗り切る。
 
ところが7R。
フューリーの圧力を浴びてワイルダーがコーナーに追い詰められ、万事休す。フューリーの右ストレートを被弾したことろで陣営が棄権の意思表示を示す。
その瞬間、フューリーの勝利が決定するとともに、ワイルダーにとってはキャリア初の黒星となった。
 
フューリーvsワイルダー3。ポイント計算すら無粋な規格外バトル。ヘビー級だけは別枠であるべき。神々のお戯れに不純物はいらない()
 

両者の再戦はちっとも予想できず。堂々巡りの末に「どっちもがんばれ」となりました

2018年12月以来のヘビー級の頂上対決として注目を集めたこの試合。
 
先日も申し上げたように、僕はこの試合の展開がまったくわからず。
ワイルダーの右が再び炸裂しそうな気もするし、フューリーが最後まで捌き切りそうな気もする。ワイルダーがオルティス戦を再現しそうにも思えるし、フューリーが体格を活かして一気に決めそうにも思える。
 
いくら考えても堂々巡りで、結局「よくわからない」という結論にたどり着いてしまう。
 
もうアレだ。
ちっともわからないから両者のスペックでも比較してみるか。
パンチ力、フットワーク、ディフェンスから始まり、トーク力やファッションセンスまで。いっさいボクシングと関係ないけど、どうせわからないしええんちゃう?
 
「ワイルダーvsフューリー再戦予想。ちっともわからんから両者のスペックを比較してみる。超人同士のスペクタコーな一戦」
 
そんな感じで出した答えがワイルダーの判定勝利
我ながら適当過ぎて笑ってしまうのだが、だってわっかんねえんだもん。仕方ねえじゃんw
 
 
その上試合前の計量ではワイルダー、フューリーともに前戦よりも大幅に増量しているとのことで、ますます予想は困難に。
 
ワイルダーがKO狙いなのはわかったけど、フューリーはどっちよ?
耐久力アップを図った増量なのか、それともまさかのインファイト狙い?
となると、案外早いラウンドの決着もあり得る?
 
どちらにしろワイルダーの戦術が大きく変わるとは思えないので、やはりフューリーの出方次第か?
 
やっぱりちっともわからんから、とりあえず両方がんばれ
おもしろい試合になることを願っておるぞ。
 

タイソン・フューリー恐るべし。増量を活かしてプレッシャーをかけ、ワイルダーを後退させる

実際の試合についてだが、今回はタイソン・フューリーが凄まじ過ぎたとしか言いようがない。
試合前からワイルダーが足を痛めていたという話もあるようだが、それを踏まえた上で。
 
たとえワイルダーが万全の状態でも、この日のフューリーに勝つのは難しかったのではないか。それくらい今回はフューリーの強さが極まっていたように思える。
 
 
リング中央、フューリーは遠い位置でワイルダーと対峙しジリジリと前に出る。
鋭い踏み込みから身体を伸ばして左をボディに。
ワイルダーの射程の半歩外をキープし、危険地帯に踏み込むのは一瞬。
 
基本的にワイルダーはカウンターを打てるタイプではないため、これを繰り返していれば大怪我をする確率は低い。時おり強烈な右が飛んでくるものの、無理さえしなければフューリーは自分のパンチだけを当て続けることができる。
 
ガードとバックステップに意識を残しつつ、鋭い左と力強い前進でプレッシャーをかけるフューリー。
これによって徐々にワイルダーの顎が上がり、力強いパンチを打つタイミングを失っていく。
 
この時点で多くの方がフューリーの増量が耐久力アップのためではなく、ワイルダーを馬力でねじ伏せるためのものだったことに気づいたと思うが、それがうまくハマった感じ。
序盤のフューリーの出方にワイルダーは明らかに面食らっていたように思う。
 
ジョシュ・テイラーvsホセ・カルロス・ラミレスの統一戦は絶対に実現しろよな。グダグダのヘビー級とは違うところを見せろやw
 

ダウンを奪ってからはどんどん前に出るフューリー。連打と体格差、インファイトでワイルダーを押し潰す

そして3Rのダウン以降、フューリーはさらに圧力を強めて積極的に前に出る。
これまでよりも近い位置で対峙し、身体ごと体重を預けるような突進と左の連打でどんどんワイルダーを追い詰めていく。
 
中間距離ではワンツーを中心に強引に距離を詰め、近場では上からのしかかるようにワイルダーの体力を削る。
序盤はワイルダーも鋭い右を見せていたが、ダウンを喫して以降は目に見えて身体に力が入らない。足元がフワフワして踏ん張りが効かず、正面衝突でことごとく当たり負けしてしまう。
 
恐らくフューリーもワイルダーの右の威力が落ちたと判断したのだと思うが、あそこまで足に力が入らないとさすがにどうしようもない。
 
両者の第1戦目に加え、ルイス・オルティスとの2戦を経て、僕は「ワイルダーを攻略するには距離をとって捌ききるしかない」「でも、あの右から12R逃げ切るのは不可能に近い」という先入観を植えつけられていた(気がする)。
 
「世の中には二種類のボクサーがいる。ワイルダーとそれ以外である。天才ワイルダーがオルティスとの再戦を右1発で制する」
 
だが、今回のフューリーは「ワイルダーの本当の安全圏は内側にある」ことを証明してみせた。
ワイルダーの射程の外に居続けるのではなく、ワイルダーが思い切り腕を振れない位置まで近づく。近場のもみ合いで糞詰まりを起こさせ、自由を奪った上でインファイトでねじ伏せる。
 
前回2度のダウンを食ったことを踏まえ、増量によるインファイトを選択したフューリーはあまりにお見事。第1戦目の経験を活かして野獣を抑え込んでみせたというのもフューリーらしいし、まさにヘビー級最強対決にふさわしい結末と言える。
 
 
まあでも、アレをタイソン・フューリー以外の誰ができるの? と聞かれたら答えに窮してしまう。
42勝のうちKO勝利が41というチートを相手に自ら射程に踏み込む勇気もそうだし、身長2m、リーチ211cmの巨人をフィジカル差、スピード差で抑え込むなど、フューリー以外にできるとは思えない。
 
 
常々“ヘビー級はデカくて動けるヤツが最強”などと言っているが、今回もそれを山ほど見せつけられた感じである。
 
ウラジミール・クリチコ長期政権時の僕
→「結局デカくて動けるヤツが最強だよな(諦観)」
 
ウラジミール・クリチコvsタイソン・フューリー戦時の僕
→「結局デカくて動けるヤツが最強だよな(驚愕)」
 
アンソニー・ジョシュアvsアンディ・ルイスJr.再戦時の僕
→「結局デカくて動けるヤツが最強だよな(納得)」
 
デオンティ・ワイルダーvsタイソン・フューリー再戦時の僕
→「結局デカくて動けるヤツが最強だよな(絶望)」
 
今回は衝撃度的には2015年11月のウラジミール・クリチコvsタイソン・フューリー戦に匹敵する。そういう意味でもタイソン・フューリーが歴代ヘビー級最強ということでOKなのではないか(僕の中では)。
 

ワイルダー陥落の喪失感は理解できる。この人の「男が憧れる男」感は異常

ちなみにだが、今回のワイルダー陥落に対して喪失感を感じている方がかなり多い印象である。
「ワイルダーもフューリーも好きだけど、ワイルダーが負けるところは観たくなかった」。
 
 
僕自身、スポーツ選手に対する思い入れが強い人間ではないので、基本的に誰が負けても勝ってもそこまで落ち込むことはない。
 
すばらしい試合には感動するし、がんばった選手は素直にすごいと思うが、ただそれだけ。試合の結果によって目覚めが悪くなったり翌日まで引っ張ったりというのはまずあり得ない。
 
ワイルダーもフューリーも好きだが、試合の結果が私生活に影響することはいっさいない。
 
 
ただ、ワイルダーの敗北にショックを受ける気持ちはちょっとわかる(気がする)。
 
・NBAを目指していたが、19歳でできた娘を養うために断念
・難病の娘の治療費のために手っ取り早く稼げるボクシングを選択
・20歳を過ぎて本格的にボクシングを始め、そこから世界王者
・娘の病気をからかった素人を誓約書を書かせた上でボコボコに
・アメリカのヘビー級不遇の時期と重なり、思うように人気が上がらず
・2018年のルイス・オルティス戦でようやく最強の称号を得る
・フューリーとの最強対決を2度のダウンだけで劣勢を引き分けに
・オルティスに娘の治療費を稼がせるためにあえて再戦を受ける
 
その他、インタビューやSNSでやたらと韻を踏んだり「俺は2秒間だけパーフェクトならすべてを終わらせられる」と断言したり。


人生そのものがHIPHOPというか、ガキ大将がそのまま大人になったような男。
正解か不正解かではなく、とにかくイケてる
 
「あの頃、一番なりたいと思ったカッコいい大人」像をそのまま体現しているのがデオンティ・ワイルダーなのだと思う。
 
意識も朦朧としているはずなのに躊躇なくコーナーを飛び出す闘争心を含め、“男が憧れる男”というイメージにピッタリの選手である。
 
タイソンvsホリフィールド戦を初めて観ました。耳噛みつき事件も観たけど酷いな。スポーツとして破綻しとるやんけ
 
いや、マジでわかるんだよな。
ワイルダーって「オラが町のごんたくれ」感めっちゃあるからなww
ああいうタイプは絶対に負けちゃダメなんだよ。
 
タイソン・フューリーの波乱万丈なエンターテイメント性もすばらしいが、感情移入という意味では断然ワイルダーなのだと思う。
 
え?


 
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