絶不調のベルデホ、ロドリゲスに苦戦してブーイングを浴びる。大差判定で勝利も、ボクシング界を背負うスター候補としては物足りず【結果】

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プエルトリコのビーチ
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2016年4月16日(日本時間17日)、プエルトリコ・サンフアンのロベルト・クレメンテ・コロシアムにWBA世界ライト級2位、WBO世界同級3位のフェリックス・ベルデホが登場。
ホセ・ルイス・ロドリゲスとの10回戦を行い、3-0(99-91、99-91、98-92)の判定で勝利を収めた。

スターの呼び声高いフェリックス・ベルデホの豪快なKO勝利が期待された試合だったが、明らかな格下相手に精彩を欠く。
身体を振りながら前進するロドリゲスに右ストレートをヒットさせ、時おりスピーディなコンビネーションでかく乱。ポイントでは文句なしの勝利を収めたベルデホだが、期待はずれの内容に会場からはブーイングが聞こえる場面もあった。

2016年内に世界挑戦を目論むベルデホにとって、前回のウィリアム・シルバ戦に続いて課題を残す今回の内容。ここから再び目の覚めるような輝きを取り戻すことができるか。若きスター候補に今後も注目である。

「フェリックス・ベルデホがウィリアム・シルバとの無敗対決を判定勝ちで制す!!」

どうしたベルデホ、お前そんなヤツじゃなかったろ?

この試合のベルデホはあまりよくなかったと聞いていたのだが、実際に見たら本当によくなかった

ロドリゲスに終始プレッシャ―をかけられ下がらされ続ける。自分の意思で下がっているのではなく下がらされている

パンチの命中率やスピードでは上回るものの、ロープ際に詰められるシーンも多く不安定。時おりスピーディなコンビネーションでロドリゲスの前進を迎撃するのだが、持ち前の切れ味抜群のパンチがなかなか出ない。スイッチなどを繰り返して流れを変える努力も見られる。それでも身体を振って前進を続けるロドリゲスを戸惑わせるようなものではない。
消化不良のまま試合終了のゴングが鳴り、豪快にダウンを奪う場面は最後まで訪れることはなかった。

今回のホセ・ルイス・ロドリゲスだが、この試合の前までの戦績が18勝8敗(11KO)の選手である。
ガードが堅く、骨太でタフ。だがそれだけ。
いい選手ではあるが、身体の強さ以外に抜きん出たものはほとんど感じなかった。
まあ、言わば戦績通りの中堅選手といったところである。この試合しか見ていないのでわからないが。

「チャーロ兄ジャーマルがトラウトを撃破!! フィジカルモンスターがテクニシャンをねじ伏せる」

要するにフェリックス・ベルデホにとっては完全にステップアップの試合。ボクシング界のトッププロスペクトの敵ではない。マッチメークした側としてもベルデホの派手なKO勝ちを期待していたに違いない。

イージーゲームと思われた試合でよもやの大苦戦。これはいったいどうしたことなのだろうか。

まあ疲れでしょうね。

前回の試合から1ヶ月半。しかも強敵のウィリアム・シルバを相手にフルラウンド打ち合った後の試合である。
単純に試合間隔が短過ぎて疲れが抜けきっていなかった。それだけの話だろう。

といっても、さすがにこれで終わりでは味気ない。
どこかにこの苦戦の原因はないだろうか。

そう思ってベルデホの過去の試合をいくつか見直してみた次第である。

「アンソニー・ジョシュアがチャールズ・マーティンに圧勝!! 筋骨隆々のプロスペクトが見た目どおりのパワーで曲者サウスポーを一蹴」

接近戦が苦手。至近距離で出せるパンチがない

今回の試合を受けてベルデホの過去の試合を観たのだが、何となく苦戦の理由がわかった気がする。

この選手は接近戦が苦手だ
相手に身体を寄せられると出せるパンチの種類が極端に少なくなる。そういうことではないだろうか。

確かWOWOWエキサイトマッチの解説者が「自分の距離感をよく知っている」とほめていた覚えがあるが、実はそれはちょっと違う。
知っているというより自分の距離以外で打つパンチがない。絶えず動き続けて自分の距離を保ち続け、自分のペースで試合を運ばなくては何もできない。セーフティゾーンを確保しながら、あくまで「自分主導で」戦わなくてはならないのである。

僕はこのベルデホを離れてよし、近づいてよしの万能型ファイターだと思っていた。だが、どうやらそれは「自分の間合い」と「自分のタイミング」という条件下でのみ機能するものだったようである。
超絶ハンドスピードと抜群の身体能力で圧倒できる相手には滅法強い。得意のカウンターをいくらでも自分の間合いで打ち込むことができる。
だが、身体を振って距離を詰めてくるタイプと対峙した場合、あっという間に神通力は解けてしまうのである。

「俺のアムナットさんが負けただと……?! カシメロに4RKO負けを喫して王座陥落!!」

今回のロドリゲスはそこまで激しい突進力を持っている選手ではない。それでも身体を振って近づかれるとあっという間に出せるパンチが減る。スペースを潰されると一気に命中率が落ちるのである。

また、カウンターを狙い過ぎというのも少なからずあるのではないかと思う。派手なKOを量産してきたせいか、極端に左が少ない。カウンターのスペースを確保したいのわかるのだが、狙い過ぎで却って手数が減ってしまっているのだ。

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もちろん調子自体が悪かったのはあるだろう。前回の試合から1ヶ月半という間隔はさすがに短過ぎる。1発1発に力を込めた打ち方をすることを考えても、体力的にかなりキツかったと予想する。

だが、2015年6月のイバン・ナヘラ戦でもその傾向が見られたことを鑑みるに、やはり接近戦が苦手なのとカウンターを狙い過ぎというのは間違いなさそうである。

繰り返しになるが、今回のロドリゲスはそこまでぶっ飛んだ強さを持った選手ではない。前回のウィリアム・シルバに比べれば楽な部類の相手だったはずである。

その相手をこれだけ持て余してしまったのは、ボクシング界の将来を背負うトッププロスペクトとしては痛かった。

「エロール・スペンスがクリス・アルジェリをまったく問題にせず!! こりゃ本物だ」

荒削りのスター候補はマッチメークで守られている?

フェリックス・ベルデホはボクシング界を背負う次世代のスター。
何度も言うが、これは間違いない。

ただ現時点ではまだまだ荒削りで未完成。それもまた事実である。

そしてもう一つ。
この選手はマッチメークでかなり守られているということである。

ベルデホの過去の試合を見直して気づいたのだが、

・動きのそれほど速くないファイター
・かといって、特別突進力があるわけでもない
・ハンドスピードもそこまで速くない
・両腕を大振りで振り回すタイプ
・上背もない

これが今までKO勝利を飾った相手に共通する特徴である。

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全試合を確認したわけではないので断言はできないが、要するにかませ犬だ。
日本人ボクサーが調整試合の相手として連れてくるタイ人やフィリピン人の上位互換。カウンターが得意なベルデホのド派手なKO勝利を演出するのに最適なタイプというヤツである。
そして前回、今回と相手のレベルが上がってきたところで課題を露呈してしまった。そういうことなのではないだろうか。

まあ、さすがに日本人ボクサーが調整試合で連れてくるような選手というのは言い過ぎかもしれない。先日の三浦隆司の復帰戦やその前の和氣慎吾の世界前哨戦などは本当に酷かったので。

「和氣慎吾がワルド・サブを5回KOで世界前哨戦勝利!! 後楽園ホールに行ってきたぞ」

マジな話、三浦や和氣クラスの選手があの相手と試合をする意味が本当にあるのかといつも思う。それならその時間を使ってスパーリングをこなした方がはるかにいいのではないだろうか。試合までのルーティーンや気持ちの持っていき方を確認するという意味では悪くはないのかもしれないが。

「ベルデホダメか? マルティネスにはKO勝利したけど課題山積」

壁にぶつかったエリートの姿がちょっと嬉しいww

太陽の申し子。
生まれながらの主人公。

以前の記事で、僕はフェリックス・ベルデホをこう呼んだ覚えがある。
かつてのオスカー・デラホーヤやマニ―・パッキャオの系譜を継ぐ選手。まさしく光の当たる表舞台を歩むべき存在である。

「フェリックス・ベルデホがボクシング界を背負う? 次世代ホープのプエルトリカン」

もちろん今回の試合でその考えがブレることはない。

だが、実を言うとちょっと嬉しくもある

記事の中で「ひねくれものの僕はこういう絵にかいたような主人公タイプがあまり好きではない」と申し上げている。
要するに「光り輝く表舞台を約束されたヒーロー」の存在がどうも苦手なのである。へなちょこ卑屈人間として、自分とまったく毛色の違う存在に嫉妬してしまうのである。

そんなベルデホがここ2試合、軽く壁にぶつかっている。
これはマジでちょっと嬉しい

ここで打たれ弱いエリートのまま潰れていくのか、それとも落とした評価を覆すような逆襲を見せてくれるのか。本物かバッタもんかの試練。次の試合以降が大事になる状況にもワクワクしてしまう。

我ながら本当に面倒な性格をしているが。

というか、普通に疲れだと思いますけどね

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