これが内山高志の進む道? 日本の至宝が海外進出するためのファイナルアンサーを適当に考察する【長文】

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浅草ビルのイメージ
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ここ数ヶ月の内山高志界隈が本当におもしろい。
基本的に選手個人の動向やマッチメークにそこまで興味があるわけではないのだが、今回の内山に関してはマジで目が離せなかった。

2015年の大晦日にボクシングファンの度肝を抜くド派手なKOで勝利を飾り、試合後のインタビューで渡辺会長が「ウォータース戦を期待してください!!」と試合以上にド派手なアドバルーンを上げる。

「内山がフローレスを粉砕!! 誰がゴリラをリングに上げていいって言ったよww」

「初の海外進出」
「ウォータース」
「その次はガンボア」

「内山vsウォータース予想!! 実現なるか?」

期待するなという方が無理だといわんばかりのキーワードが次々と飛び出し、ボクシング雑誌がウォータースのインタビュー記事を掲載するなど、すでに内山の海外進出は既定路線と思われた矢先。

相手がウォータースからフォルトゥナに変更?
WBAからの対戦指令?
複数人いる王者を1人に絞る?

渡辺会長のコメントも「フォルトゥナ戦を軸に考えている」とややトーンダウンする。
当然、ウォータース戦に色めきだっていたファンの間には失望感が広がる。
だが、海外のリングで試合をすることは間違いなさそうだし、フォルトゥナも強敵であることに変わりはない。ここは切り替えて応援してやろう。そんな空気が流れる。

「WBAにキレてるボクシングファンは内山が米国進出で成り上がるところを見たいんじゃないの?」

そこから情報が途切れて数週間。
やきもきし始めたファンの耳に入ってきたのは耳を疑うような新情報だった。
何と対戦候補として挙がったのは名前も聞いたことのない暫定王者コラレス。しかも開催場所はおなじみ大田区総合体育館。

あ?
コラレスって誰?
暫定?
ジェスリール?
ヘスリール?
ジェスリー?

ふざけんなよ。
ここまで期待させておいてやっぱり大田区総合体育館かよ。
しかもファーストネームも読めないようなヤツと今さら?

なんだよ「ワンクッション入れる」って?
何回クッション入れりゃ気が済むんだよ。座布団重ねてるうちに内山の現役が終わっちゃうよ。

「内山国内防衛ワロタ _( ̄▽ ̄)ノ彡 だから言っただろww 大田区総合体育館を想定しておけとあれほどwww」

どうもフォルトゥナ陣営が法外なファイトマネーを要求したとのことで、交渉がうまくまとまらなかったという。

アホか。
少しくらい不利な条件でも内山の希望を叶えるためにのんでやれよ。
銭ゲバもええかげんにせえよ。

まあ、でも決定ならばこの際仕方がない。
この試合が終わればまたフォルトゥナとの交渉を再開するというし、コラレスもいい選手だし、内山の試合は好きだし勘弁してやるよ。

だけど今回で本当に最後だぞ? わかってんのか? あ?

「内山vsコラレスを予想する!! 4月27日の大田区総合体育館でトリプル世界戦開催!」

結果的に大晦日の「期待してください」が豪快なフリになってしまったわけだが、ここまで大風呂敷を広げて期待感を煽って元さやに戻るという壮大な様式美。
今回の経緯に怒っている方には申し訳ないのだが、僕個人としてはマジでおもしろかった。
「なるほど、ここまでしょーもないことが起きるんだな」と。

「八重樫の試合にイラつく…。テクアペトラ程度に激闘王って、ただの泥試合だろ」

フォルトゥナに足元を見られた。結局内山と試合をするメリットがなかった

今回の「大田区総合体育館でトリプル世界戦開催!!」までの経緯で一番のミソは何といっても正規王者ハビエル・フォルトゥナとの交渉が頓挫したことだろう。

「内山がフォルトゥナに勝てるかを予想する。さらなるビッグマッチに進むのはどっちだ?」

報道によると、フォルトゥナ陣営が法外なファイトマネーを要求したために交渉が決裂したとのことだが、ひと言で言うとフォルトゥナが逃げたのだと思う。
要はフォルトゥナ側に内山高志という無名選手とやるメリットが見出せなかったのだ。

通常、フォルトゥナクラスの選手が名前を売ろうと思えば有名選手同士のビッグマッチが行われる興行のアンダーカードに試合を組み込むのが常套手段になる。だが、今回はタイミング的にそれに見合う興行が見当たらなかったのだろう。

アメリカで名前を売りたい内山側としても、中継の入らないようなマイナーな会場でひっそりとフォルトゥナ戦を開催しても意味がない。
それなら内山人気で集客の見込める大田区総合体育館で開催しようとしたのだが、フォルトゥナ陣営が日本での開催を渋ったのだ。どちらかといえば格上の自分が敵地に乗り込むのであれば、それに見合う報酬をよこしなさいと。日本に行くのはいいけどお金もいっぱいくださいよと。
内山の強さもわかった上で、リスクとリターンを天秤にかけた上で駆け引きを持ちかけたのである。

「交渉が決裂したのなら入札にするべきだ」という声もあったが、実はそれも難しい。
タイトルマッチが入札になった場合、ファイトマネーの配分は王者75%、挑戦者25%というWBAの規定がある。恐らくフォルトゥナはこの25%という報酬の低さに難色を示したのではないだろうか。
ここから先はあくまで僕の想像だが、フォルトゥナ陣営は「入札してまでやるくらいなら王座を返上する」と言ったのだと思う。

「八重樫vsテクアペトラ予想!! 激闘王の名にふさわしい戦いを見せて井上尚弥につなげ!!」

2015年にポール・バトラーに勝ってIBF世界S・フライ級のタイトルを獲得したゾラニ・テテが入札金額のあまりの低さに防衛戦を拒否して王座を返上した一件を覚えているだろうか。
挑戦者と王者の違いこそあれ、恐らくフォルトゥナはそれと同じことをやろうとしたのだ。

注目を集めたい内山陣営としても、フォルトゥナには王者の立場でいてもらわなくては困る。返上されるくらいなら今回はいったん交渉をストップして、数ヶ月後に両者にメリットのある興行をもう一度模索しようと考えたのだろう。

だが4月の大田区総合体育館は河野公平、田口良一のダブル世界戦としてすでに抑えている。内山を試合枯れさせるより、たとえ暫定王者との試合でも組めば集客は見込める。
よし、じゃあ今回は「統一戦」と称してコラレス戦をやろう。
こういう判断をしたのではないかと想像している。

「田口がデラローサを9Rでストップ!! 採点でリードを許すも中盤以降に流れを変えて勝利を手繰り寄せる!!」

つまり、渡辺会長が言う「2016年4月27日の試合に勝てばフォルトゥナ陣営との交渉を再開する」という話に関しては本当なのだと思う。成立するかは不明だが。

「内山進退は五分五分←これ、現役続行するパターンだ。大みそかはコラレスと再戦してるから落ち着け」

ビッグネームの動向を観察すると内山陣営の動きも想像しやすい?

2016年4月27日のコラレス戦に内山が勝利すると仮定して、上述のようにフォルトゥナ陣営との交渉は十中八九再開される。両陣営が納得できる興行のアンダーカードを探っての交渉が進められるはずである。

とすると、内山の動向が気になる人は8月、9月あたりのビッグマッチに注目すればいい。
もっと言うと、この3、4月前後に試合予定のあるビッグネームの動向を追いかけると、内山陣営の状況も想像しやすくなるのではないだろうか。

ためしにここ1ヶ月前後で試合をした、あるいはする予定の有名選手を並べていくと、

カール・フランプトン
ジェシー・バルガス
テレンス・クロフォード
レオ・サンタクルス
ケル・ブルック
ティモシー・ブラッドリー
エイドリアン・ブローナー
アンソニー・ジョシュア
ゲンナジー・ゴロフキン
ローマン・ゴンサレス

こんなところだろうか。
何人か抜けている選手がいるかもしれないが。

そして、この中で8、9月あたりに試合がありそうな選手は誰?
有力選手とのビッグマッチが期待できそうなのは?
こんなふうに考えていくと、ちょっとワクワクしてこないだろうか。

「内山高志敗北における日本のジムの鎖国体質批判への考察」

思いきって進出する国を英国に変えてみてはどうか?

実をいうと、僕は内山は無理してアメリカにこだわる必要はないと思っている。どなたかが「内山は英国で試合をしてはどうか」とおっしゃっていたのだが、これに大いに賛成である。

ご存知のとおり現在の英国はボクシングバブルまっただ中だ。チャンピオンの数も多く、テレビ画面からもその熱狂ぶりが伝わるほど国内でのボクシング人気は高い。
先日のカール・フランプトンvsスコット・クイッグ戦などは、日本でいうところの辰吉丈一郎vs薬師寺保栄戦に匹敵する盛り上がりを見せたとの話も聞かれる。

「クイッグがフランプトンに敗れる!! 英国スター対決は凡戦の末にフランプトンに軍配」

内山はこの際、この英国のボクシングブームにがっつり乗っかってしまえばいいと思うのだ。

もちろん報酬面でも注目度の面でもアメリカのメガ・マッチと比較すれば見劣りすることは否めない。
だが無理にアメリカにこだわるよりは、最初のとっかかりとしては数万倍いい。何せ7万人収容の会場が埋まるような興行を打てるほどの巨大市場である。中継も入らないような会場でひっそりと開催するより道が拓ける可能性ははるかに高い。少なくとも大田区総合体育館よりは内山にとってもフォルトゥナにとってもメリットは大きいはずである。

しかも噂によると、カール・フランプトンvsレオ・サンタクルス戦が夏ごろに実現する可能性があるという。
この興行が英国開催になれば最高である。規模も注目度も文句なし。絶好の狙い目ではないだろうか。

「サンタクルスがキコ・マルティネスにKO勝利!! 試合後にビッグマッチを希望!!」

さらに幸運なことにWBC世界バンタム級王者の山中慎介が8月頃にIBF同級王者リー・ハスキンスとの統一戦を計画しているという話もある。思いきってこの試合との抱き合わせで英国開催してしまうのはどうか。
地元の人気選手であるリー・ハスキンスとの統一戦なら注目度は間違いなく高くなる。ダブルメイン扱いで山中vsハスキンス、内山vsフォルトゥナ戦を同時開催すればフォルトゥナのプライドも傷つけずに済むはずである。

「山中は海外挑戦を思いとどまるべき? ソリスに2度のダウンを奪われ、よもやの大苦戦」

どうだろうか。
WBAのランキングにフォルトゥナ以外に名前の通った選手がいない現状、無理にアメリカにこだわるよりも選択肢としては悪くないのではないだろうか。

まあ、可能性は低いことは重々わかっているのだが。
一つの方向としてアリなのではないかという意味で。

とにかく内山がどこをゴールに設定するにしろ、現状フォルトゥナに勝たないかぎり何も始まらない。

ちなみに僕の理想のシナリオはこんな感じだ。
まず海外のリングでフォルトゥナにインパクトのある勝ち方をして注目を集める。
そしてWBO王者のローマン・マルチネス、もしくはWBC王者のフランシスコ・バルガスとの統一戦に進み、この試合でナメック星人なみのデコピンで相手を撲殺する。
二団体統一を達成し、全米が「内山やべええぇぇぇ!!!」となったところでロマチェンコもしくはウォータースというラスボス感満載の相手とのグランドフィナーレ。
ここまでいけば思い残すことはない。結果がどうあれ内山最高!! で終わることができること間違いなしである。

「ウォータースvsロマチェンコだと!? 内山はフォルトゥナ戦を絶対実現せないかんぞ」

そのためにも、とにかく内山陣営はフォルトゥナ戦を実現させなくてはならない。この試合だけは至上命題だ。

大晦日の大田区総合体育館が意外と邪魔だよな

ここまで「内山高志の進む道」と題して好き勝手に話を進めてきたが、考えれば考えるほど大晦日の大田区総合体育館が邪魔だ

基本的に内山の試合は多くて年3試合。そのうちの1試合が大晦日で固定されてしまうと、途端に選択肢が狭まってしまうのである。

12月31日の大田区総合体育館ありきでスケジュールを逆算すると、年3試合と考えるとどうしても残り2試合は4、5月と8、9月に限られる。しかも3、4月の時期を逃して5、6月の開催になってしまうと必然的に8、9月に試合ができなくなる。

また、年末にいい興行の話があったとしても、大晦日のスケジュールを優先すると断念せざるを得なくなるのも痛い。
2015年12月にニューヨークでピーター・クイリンvsダニエル・ジェイコブス戦が開催されたのだが、たとえばこのアンダーカードへの出場を打診されたとしても優先するのは大田区総合体育館なのだろう。

大晦日のボクシング世界戦ラッシュはプロ野球でいうところのオールスター戦のようなもので、1年で一番ボクシングに注目の集まる日であることは百も承知である。
そして、日本ボクシング界にとってもワタナベジムにとっても内山高志は外せない選手であることは間違いない。
ただ内山本人の希望と、僕個人の期待という意味では大晦日の大田区総合体育館は死ぬほど邪魔だ。

大事なことなのでもう一度言うが、大晦日の大田区総合体育館が死ぬほど邪魔だ。

マイキー・ガルシアはすごい。絶対内山とかみ合う

これは余談だが、数年前に内山の対戦相手にマイキー・ガルシアことミゲル・アンヘル・ガルシアの名前が挙がったことを覚えているだろうか。

確か2014年前後だったと思うが、ユリオルキス・ガンボアとマイキー・ガルシア、内山高志の三つどもえでの対戦が噂され、日本のボクシングファンが大いに色めきだつという出来事があったと思う。

特にガンボアvsマイキー・ガルシア戦は実現寸前までいっていたこともあり、ファンの盛り上がりは相当のものだった。
結局マイキー・ガルシアがプロモーターと契約問題でもめたために試合ができなくなり、話自体が流れてしまったのだが。
ただ、このビッグマッチに内山が絡むかもしれないということで日本での期待感も尋常じゃないほどに高まっていたと記憶している。

だが、正直に申し上げると当時の僕はこの流れにあまり強い関心を持っていなかった。
まずマイキー・ガルシアという選手についてそこまで詳しくなかったというのがある。確かWOWOWエキサイトマッチが出始めの頃からひいきにしていた選手だったと思うのだが、いい選手だけど迫力が足りないなと思う程度であまり注目して見ようという気にならなかったのだ。

さらに当時(といっても数年前)は、日本と海外のリングを完全に別グループとして捉えていたため、ガンボアとマイキーの対戦も遠い世界で起きている出来事としてしか見ていなかったことも大きい。
内山との対戦が浮上したときも「あんな別世界の出来事に内山が首を突っ込むわけがない」と、どこか覚めた目で見ていたというのが本音である。

「エキサイトマッチ2015年総集編のランキングを観ての感想」

先日、なんとなく思いついてマイキー・ガルシアの試合をいくつか見てみたのだが、びっくりした。これはすばらしい。マジでいい選手だった。
というより、この選手は絶対に内山とかみ合う。見たこともないようないい試合になる。

内山高志vsマイキー・ガルシア。
純粋な戦闘力勝負というか、どちらがボクサーとして上かというわかりやすさ。文字通りガチンコの試合が見られるのではないだろうか。
当時日本のファンが盛り上がっていた理由がようやく理解できた。

たとえばロマチェンコやフォルトゥナだと「こうきたらこう動く。あれを出したらこれで受ける」という駆け引きやシチュエーションごとの予想をする。だが、マイキー・ガルシアと内山に関してはそういうことが一切必要ない。
よーいドンでスタートしてどちらが先にゴールテープを切るか。じゃんけんでどちらが先にグーを出すか。
純粋な力比べというか、小細工なしのオールドスタイルというか。ざっくりいえばそういう肉弾戦に近い勝負になるのではないだろうか。

スピードとキレはマイキーだが、引き出しの多さは内山。フィジカルも内山に分があるか? でもマイキーは減量に苦しんでいたし体格的にはそこまで差はないのか? などなど。考えれば考えるほど妄想が止まらなくなる。

しかもこの選手は2013年のファンマ・ロペス戦やローマン・マルティネス戦で一気に覚醒している。
僕が「力強さが足りない」と感じたのはもっと初期のマイキーだったのだが、その時点から目覚ましい成長を見せているのだ。
あのまま続けていれば、恐らくここからの2、3年でマイキーは全盛期を迎えたはずである。
つまり一番いい時期をプロモーターとのゴタゴタで逃し、内山との対戦機会も逸してしまったのである。現在どうしているのかはしらないが本当にもったいない。

ちなみにガンボアの直近の復帰戦も見てみたのだが、残念ながらこちらは若干衰えがみられる。
年齢的なものなのか、ウェイトの上げ下げによる影響なのかは不明だが、数年前と比べて身体全体のキレが鈍っていた。

この選手の最大の特徴は自分の身体能力を限界まで発動して規格外のスピードを出力するところにある。
常に弓を限界まで引き絞ったような運動神経偏重のスタイルなので、衰えがくるときは一気にくるのだろう。
シェーン・モズリーのようにうまくモデルチェンジして延命できればいいが、果たしてどうなるか。

恐らく今のガンボアであれば、フォルトゥナ戦を終えた後のターゲットとしては狙い目ではある。だが、内山が望んでいるのはたぶんそういうことじゃない。
思い出ラストマッチとして最後に大田区総合体育館でやるのであればいいかもしれないが。

思ったことをダラダラ書いていたらメチャクチャ長くなってしまいました。
まあ、それくらいここ最近の内山の動向がおもしろかったということでご勘弁いただければと思います。

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