井上尚弥WBSS準決勝平均視聴率10.3%は高い? 低い? 格闘技ファンは全盛期に比べて減っているのか。地上波視聴率今昔物語

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2019年5月19日(日本時間20日)、英・スコットランドでWBSSのバンタム級準決勝が行われ、WBA同級王者井上尚弥がIBF王者エマヌエル・ロドリゲスを2R1分19秒TKOで下した。
この試合は同日21:00から地上波フジテレビで録画放送され、平均視聴率10.3%を記録したとのこと。
 
「井上尚弥「衝撃のTKO劇」平均視聴率10・3% 録画でも高い関心」
 
なお、同局の前週同時間帯で放送された「アオハルTV」の平均視聴率は関東で3.9%、関西で5.7%。改めて井上尚弥への関心度の高さが示される結果となった。
 
 
また、ボクシング専門誌「リング」が21日に発表した「パウンド・フォー・パウンド」最新版では、井上尚弥のラキングが7位から4位に浮上。中にはPFP1位に井上尚弥の名前を挙げた識者もいたという。
 
「井上尚弥、全階級最強ランク4位浮上! 米リング誌PFPで自己最高、ゴロフキンら抜く」
 

井上尚弥vsエマヌエル・ロドリゲス戦の視聴率が10.3%。これは高いの? 低いの? 地上波格闘技の視聴率が上がらないのは「テレビの時代が終わった」から?

半日遅れで地上波放送された井上尚弥vsエマヌエル・ロドリゲス戦が、視聴率10.3%を記録したことがわかった。
 
ただ僕自身は放送を観ておらず、あの試合以降ネット記事でも「井上スゲー!!」ばかりでいいかげん辟易している。だが、結果のわかっている録画放送でこの視聴率は普通にすごいのではないだろうか。
 
「井上尚弥w 理不尽な左と意味不明なタイミングでロドリゲスを片付ける。パワー勝負に切り替えた瞬間だったな」
 
確か2017年10月の村田諒太vsハッサン・ヌジカムVol.2の平均視聴率が20%オーバーを叩き出した記憶があるが、海外での試合+録画放送ということを加味すると、文句なしの数字と言えそうである。
 
この10.3%という視聴率について「低過ぎる派」と「よくやった派」が議論しているのをちょろっと目にしたが、いや、どうなんでしょうね。衝撃的なKOだったことは間違いないのだから、僕などは「どう見てもすごいし、別に視聴率はどっちでもよくね?」とも思うのだが。
 
 
というわけ(どういうわけ?)で表題の件。
今回は「格闘技ファンは全盛期に比べて減っているのか」と題し、過去と現在の地上波視聴率を比較してあれこれ言ってみようと思う。
 
「地上波の時代は終わった」
「娯楽が多様化した今、視聴率はほとんど意味がない」
 
こういう主張はよく耳にするけどホントにそうなの?
格闘技番組の視聴率が上がらないのは単純にテレビを観る人が減ったからなの?
それ以上にファンの分母自体が減ってるってことはないの?
 
こういった諸々の疑問について適当に検証していくことにする。
 
なお、あくまで僕の意見なので、信憑性については保証しかねることをつけ加えておく。
 
「木村翔アカンか…。カニサレスの連打をもらいまくって失速。余裕の減量が逆に仇になったか? 村田vsブラントっぽかった」
 

日本格闘技の全盛期と近年の地上波の視聴率を比較。RIZINの視聴率はこんな感じ

まずもっともわかりやすい例として、日本格闘技の全盛期と呼ばれる2002年と、2015年にスタートした地上波格闘技イベント「RIZIN」の視聴率を比較していく。
 
参考、引用させていただいたのは下記のページ。
「格闘技バブル絶頂の2002年のテレビ視聴率が凄いッッ!」
「RIZIN 過去の全大会視聴率(フジテレビ系列)」
 
毎度のことながら、こういう情報を公開している方には感謝しかない。
 
 
では最初に「日本格闘技の全盛期」とされる2002年。
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続いて、2015年にスタートした地上波格闘技イベント「RIZIN」。
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ちなみにだが、今回は瞬間的なバブルが影響しそうな1位、補正がかかりそうな年末イベントは省いている。
 
 
結果は下記↓
 
2位:17.3%→7.1%(-10.2%)
3位:16.3%→6.7%(-9.6%)
4位:14.3%→6.3%(-8.0%)
5位:13.8%→6.1%(-7.7%)
6位:13.0%→6.0%(-7.0%)
平均-8.5%
 
2002年は立ち技打撃系のK-1が上位を占めていること、RIZINは開催数自体が少ないことなど多少の不公平感はあるが、だいたいこんな感じ。
 
こうして見ると、格闘技全盛期からの視聴率の低下は一目瞭然である。
 
また、一つおもしろいと思ったのが、順位が下がるにつれて下落幅が小さくなっていること。2位の17.3%→7.1%は実に10%以上の開きがあるが、6位の13.0%→6.0%では7.0%の差。
 
つまり、2015年にスタートしたRIZINは平均視聴率5~7%前後で安定(低止まり)しているが、2002年はイベントごとのブレが大きかったということになる。
 
「RIZINの現地観戦が楽し過ぎてマイッタ。堀口恭司も那須川天心もパッキャオもよかったけど、一番はヤスティナ・ハバかな」
 

格闘技以外の視聴率はどうなってるの? テレビドラマの視聴率、今と昔

続いては格闘技以外の番組の視聴率について。
 
地上波格闘技の低迷はテレビ離れの影響が大きいとは言われるが、じゃあ格闘技ファンの分母はどうなっているのか。地上波で格闘技を観るファン自体が減少したってことはないの? という疑問。
 
これを解消するのはなかなか難しいのだが、ためしにテレビドラマの平均視聴率を比較してみることにする。
 
まずは日本格闘技の全盛期と時期が被る2001、2002年のテレビドラマ年間平均視聴率ランキング。
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そして、比較対象として2017、2018年のテレビドラマ年間平均視聴率ランキング。
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参考、引用させていただいたのはこちらのページ。
「ドラマ視聴率一覧」
「ドラマ視聴率速報 ドラマン」
 
なお、例によって一過性のブームの可能性が否めないためにあえて1位は除外している。
 
 
で、結果はこんな感じ↓
 
●2001年→2017年
2位:22.6%→16.0%(-6.6%)
3位:22.2%→15.3%(-6.9%)
4位:21.0%→14.7%(-6.3%)
5位:20.3%→14.6%(-5.7%)
6位:20.3%→14.5%(-5.8%)
平均-6.26%
 
●2002年→2018年
2位:22.6%→15.6%(-7.0%)
3位:22.1%→15.3%(-6.8%)
4位:21.4%→15.2%(-6.2%)
5位:20.7%→15.1%(-5.6%)
6位:19.1%→14.2%(-4.9%)
平均-6.0%
 
地上波格闘技が2001年→2015~2018年で平均-8.5%下がっているのに対し、ドラマの視聴率は-6%ちょい
また、下げ幅については2位と6位の差が格闘技は3.2%、テレビドラマは2001年→2017年が0.8%、2002年→2018年が2.1%。下位にいくほど下げ幅が小さくなる傾向は同様だが、この結果からテレビドラマはRIZINを含めた格闘技以上に視聴者が固定されていることがわかる。
 
「神試合連発のRIZIN17。メイン3試合がヤバ過ぎて頭痛が痛い()。これぞFEDERATIONなヤツらの集い」
 

プロ野球日本シリーズの視聴率、今と昔。プロ野球の視聴率は多くの要素に左右される傾向が強い


念のためにもう一つ。
ここでは日本プロ野球の「日本シリーズ」の平均視聴率(関東地区)を2001、2002年と2017、2018年で比較していく。
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結果は下記↓
●2001年→2017年
1位:19.0%→15.3%(-3.7%)
2位:17.7%→11.2%(-6.5%)
3位:16.8%→10.8%(-6.0%)
4位:15.0%→9.8%(-5.2%)
5位:14.3%→9.5%(-4.8%)
平均-5.24%
 
●2002年→2018年
1位:30.5%→13.3%(-17.2%)
2位:29.5%→12.8%(-16.7%)
3位:28.8%→10.8%(-18.0%)
4位:25.8%→9.8%(-16.0%)
平均-16.975%
 
ほほう、なるほど……。
日本シリーズに関しては組み合わせや話題性など、多くの要素に左右されるため一概には言いにくい。
特に2001年と2002年の違いは顕著で、2001年がヤクルトvs近鉄という地獄の組み合わせだったせいで視聴率は低迷。翌年の巨人vs西武による人気球団同士のシリーズでは大幅な回復を見せている。
 
とは言え、視聴率が軒並み下落していることは確実。
 
「日本で中・重量級に人材が集まらない理由? 逆に何でメキシコでは人材が集まるの?」
 
ちなみに東北楽天ゴールデンイーグルスが球団創設以来、初優勝を果たした2013年の視聴率がコレ。
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この年は、
・東日本大震災
・田中マー君24勝0敗
・星野仙一vs巨人
・楽天初優勝
など、話題が盛りだくさんだったために視聴率も大幅に伸びたと考えられる。
 

スター選手におんぶにだっこはよくないけど、スター選手がいないと地上波では厳しいことも一理。井上尚弥はその領域に達しつつある?

上記を踏まえた結論としては、
 
・全体的に地上波視聴率は落ちている
・中でも格闘技番組の下落幅は大きい
・格闘技はもともと視聴率をとれるコンテンツではない
・RIZINは視聴率こそ低いが、安定している
・テレビドラマは上位と下位で視聴率の差が格闘技よりも小さい
・実は野球の地上波視聴率の下落幅はもっと大きい
・ただ、世の中の流れや地域性と合致すれば大きく伸びる
 
つまり、もともと格闘技は視聴率の低い(全盛期の2002年でも、ドラマ視聴率の上位6位にすら入らない)コンテンツだが、近年は地上波で格闘技を観る層自体が減っている。また、視聴率が低空で安定していることを考えると、テレビドラマほどではないが今後の潜在顧客の掘り起こしも期待しにくい(那須川天心vs堀口恭司で勝負をかけたRIZIN.13も6.7%止まり)。
 
RIZINもメイウェザーやパッキャオを呼んだりといろいろと工夫を凝らしてはいるが、興味のある層自体の頭打ち感は非常に強い状況。
 
「格闘技で久しぶりにウルっときた。那須川天心vs堀口恭司感想。盛り上げたるテッペンとったる!!」
 
そう考えると、井上尚弥vsエマヌエル・ロドリゲス戦の平均視聴率10.3%は相当健闘したと言える。
 
 
1994年辰吉丈一郎vs薬師寺保栄の平均視聴率:39.4%(関東)
2003年K-1 PREMIUM 2003 Dynamite!!(ボブ・サップvs曙、魔裟斗vs山本KID他)の平均視聴率:19.5%
2006年亀田興毅vs内藤大助の平均視聴率:43.1%(関東)
2017年村田諒太vsハッサン・ヌジカムの平均視聴率:20.5%
 
・辰吉丈一郎
・ボブ・サップ
・魔裟斗
・亀田興毅
・内藤大助
・村田諒太
 
このあたりがいわゆる「ジャンルを超えたスター」(それ以前はよく知らない)と呼べる存在だと思うが、どうやら井上尚弥もその領域に達しつつあるのかなと。さらにそこに那須川天心、武尊が追随するイメージ。
 
 
要は、スター選手に頼った一過性のブームは決していいとは言えないが、ジャンルを超えたスター選手がいないと視聴率を稼ぐのは難しい。それが地上波格闘技の現状なのかもしれない。
 
「武尊と皇治の乱闘騒ぎの件。武尊はローカルヒーロー止まりかな。K-1の地上波進出が大きく遠のいた感」
 
まあでも、個人競技はなかなか難しいよね。
 
団体競技であれば「ホームvsアウェイ」「地域密着」を打ち出せるし、大谷翔平や本田圭佑のようなスターがいればいっそう強みになる。
その点、個人競技は「オラが町のチーム」が使えない分、目立ち方を工夫しないとすぐに埋もれちゃうのが……。
 
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