侍ジャパンの今後は? プレミア12終了、韓国戦に敗北した侍ジャパン。小久保監督辞めろ? 采配と資質に疑問あり?

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世界野球プレミア12が終了した。

我が日本代表である侍ジャパンは準決勝でまさかの逆転負けを喫し、惜しくも3位という結果に沈んだ。

プロ入り後、最高のピッチングと言っても差し支えない大谷翔平の快投も虚しく、3点リードの最終回にリリーフ陣がよもやの4失点。勝利を目前にしてライバル韓国に惜敗し、優勝への道を阻まれた。
3位決定戦でメキシコにコールド勝ちし、どうにかランキング1位の面目は保ったものの「絶対に負けられない戦い」と称して望んだ大会だっただけにファンや関係者の落胆は大きかった。
 
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韓国戦の終了後には、ファンを中心に小久保監督の采配に批判が集中した。
・大谷翔平交代のタイミング。
・2イニング目に不安のある則本の回またぎ。
・満塁の場面での松井投入。
主にこの3つの采配に対する批判はものすごいものがあった。
中には「小久保には監督としての資質が先天的に欠けている」だの「即刻辞めてくれ」といった辛辣な言葉や、「上に立つ者が無能だとチーム全体に影響する」といったリーダー論まで掲げる者、「代表監督をつとめるには人としての器が足りない」などという人格否定に至るまで目を覆いたくなるほどの批判が渦巻く事態となった。

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継投は本当に間違いだったのか?

まず断言するが、7回1安打11奪三振の大谷翔平をあそこで交代させたことは正しい。
完投させるべきだったとか、もう1イニングいかせるべきだったとか、あれこれと意見が聞かれたが、あそこでの交代はどう考えても正解だ。
そもそもシーズンオフの大会、初回からあれだけ飛ばしていた大谷をあれ以上投げさせるのは得策とは言えない。ノーヒットノーランも途切れたし、あの回での降板は間違いなく正解である。
 
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次に則本の回またぎについて。
これは決して正解とは言えないが、間違いと断定するほどでもない。
あの日の大谷はプロ入り後、最高とも言える出来であった。その大谷の後を継いでも「よかった。打ちやすい投手が出てきてくれた」と思われないだけの力を持っているのは、そうそうたるメンツを揃えた侍ジャパンの中でも則本だけである。
しかも、8回の時点であれだけの球を投げていた則本を見て、9回も頼りたくなる気持ちは十分理解できるし「則本なら何とかしてくれるだろう」と考えるのも無理はない。

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ただ、理想としては9回は山崎で行くべきだと思った。
大谷と則本の間に牧田を挟むべきだという意見もあったようだが、初戦の韓国戦やアメリカ戦での気合い十分のピッチングを見せられれば大事な準決勝の勝負どころでも使おうと考えるのはごく普通の流れである。
とはいえ、2イニング目になった途端に2、3km球速が落ちる傾向にあった則本をこの日も迷わずまたがせたというのは、やや見極めが甘かったといえるかもしれない。

それなら9回の頭から山崎を投入するべきだったと思う。抑えとして選出した澤村、増井、松井、山崎の中で最も打ちにくい球を投げている山崎に任せるのがベストだったのではないだろうか。
どういうわけかこの4人の中では山崎が一番低い位置づけだったようだが、初見で打たれる可能性が最も低いのは間違いなく山崎である。

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満塁での松井投入。
これは完全に小久保監督がテンパったとしか思えない。
フォアボールも許されないあの場面で、コントロールに不安のある松井を対左というだけの理由で投入したのはさすがに擁護しかねる。
 
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あの場面で出すのであればそれこそ山崎である。左打者相手にも有効なフォークボール(本人はツーシームと言っている)があり、コントロールも安定している山崎ならまだどうにかできる可能性があったはずだ。
案の定、フォアボールを出した松井は真っ青な顔で降板していった。20歳の若者が心にダメージを負っただけの無謀な登板となってしまったのである。

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さらに言うと、満塁になるまで則本を引っ張るべきではなかった。
あんな場面でマウンドに上がらなくてはならないピッチャーも厳しいし、それならいっそ1人ランナーが出た時点で山崎に交代すればよかったのだ。
まあ、先ほども言ったとおり「則本なら何とかしてくれる」という気持ちが邪魔をしたのだと思うが。

この継投ミスの原因としては、単純に小久保監督の経験不足だろう。
リーダーの資質とか無能監督というより、くぐった修羅場の数が絶対的に足りない。ギリギリの状況で冷静な判断をできるだけの経験値がなかった。そういうことである。
つまり今後経験を積み、試合勘を養っていけばこの部分は徐々に改善してくるのではないだろうか。
1年に数試合しかない、しかも負けると死ぬほど叩かれる代表戦でその経験を積めるかは甚だ疑問ではあるが。

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小久保の監督としての資質

いろいろと辛辣な罵声を浴びせられている小久保だが、僕個人はそこまで悪いとは思っていない。現時点では決して有能な監督ではないが、それなりに成長はしているのではないかと思うのだ。

「4番中田以外はすべて白紙」
この言葉を聞いたときは絶望的に無能臭がしたが、采配自体にはある程度柔軟性が感じられたことも確かである。今後の成長に大いに期待が持てるのではないだろうか。

たとえばだが、4番中田→中村の変更はなかなか英断だった。
日本の野球にとって4番という打順は独特で、チームの主役が座る打順であるとともにチームを背負う生命線の役割をも担う聖域と見なされている。
実際は4番が打たなくても他の打者が打てば試合には勝てるし、MLBでは3番にチームの最強打者を置くことが定石とされているのでそこまで神格化する必要もないはずなのだが。

ただ日本では4番という打順は特別なもので、その重圧に押しつぶされて勝手に調子を崩す選手は後を絶たない。あの松井秀喜でさえ4番初年度には重圧で固くなり、落合にその座を譲ったほどである。

もちろん中田も例外ではなく、4番を任された日本代表ではこれまで目立った活躍ができていなかった。その打順に経験十分の中村を据え、6番という比較的自由に打てる打順でのびのびと打席に入らせてやることで、重圧から解放してやることができたのである。
選手としての格や十分な経験値のある中村に4番という重圧を背負わせることで、中田に楽な気持ちでバットを振らせることに成功したのだ。

また、調子の上がらない菅野を先発から外したのもよかったと思う。
肘の怪我が発覚してからの菅野は直球の球威が落ち、2015年はスライダーに頼りきったピッチングに終始するようになっていた。
セリーグの打者相手であればそれでも十分通用していたが、スピードボールに強い海外の打者には歯が立たないことは強化試合のプエルトリコ戦、そして予選のアメリカ戦で証明されてしまった。

この菅野にこだわらずに三位決定戦(本来は決勝戦)の先発を武田に変更したことは、かなりのファインプレーだったのではないだろうか。
先発を任された武田は見事なピッチングでチームに勢いをつけたし、先発を外されてプライドを傷つけられた菅野も意地の155kmをマークしてみせた。結果的に勝利だけはなく菅野のポテンシャルまでをも引き出す効果を生み出したのである。

継投の失敗はもちろん、ランナーがセカンドにいる状況での送りバント失敗、そして謎の機動力野球など、おかしな采配は随所に見られたことは確かだ。
ただ、自分の間違いを素直に受け止め、柔軟に切り替える采配を見るとそこまで絶望的に無能であるとは思わないのだがいかがだろうか。これから成長するポテンシャルは持っていると、個人的には期待している。

投手陣選考のミス

やはり投手陣の人選ミスは大きかった。今回の最も大きな敗因と言っても過言ではない部分である。

今大会、単純な投手陣の能力だけであれば日本はダントツにトップだった。それは間違いない。
特に大谷、マエケン、則本の3人は現時点でMLBに移籍しても十分やれるだけの力は持っている。
しかも大谷に関しては化け物もいいところで、160kmの直球と145kmのフォークがあり、さらにスライダーとカーブで緩急もつけられる先発など世界中どこを探しても存在しない。
細かい投球術や間合いなどの技術的なものを考慮せず、投げている球だけを見ればすでにダルビッシュや田中マー君をはるかに超えている。

そして、日本チームにはそれに準ずる投手がずらりと並ぶのである。どこの国にも負けない質と量を兼ね備えた投手陣だったことは動かしようのない事実だ。

だが、それでも勝てなかった原因は、やはり選出した投手のタイプが偏り過ぎていたことにある。
投手陣の名前を見れば一目瞭然なのだが、いるのは先発タイプと抑えのエースのみである。それもほとんどが右上投げで、左投げは中日の大野と楽天の松井のみ。しかもどちらのピッチャーも対左タイプとはいえない投手。唯一の変則と言えばアンダースローの牧田だけである。

小久保監督自身も「中継ぎの専門を選ばなかったことがミスだった」旨のコメントを残しているように、偏り過ぎた人選は状況に応じた継投という面で、起用の幅を著しく狭めていた。

その点、韓国の投手陣は本当にバラエティにとんだ選出だった。
左、右、サイド、アンダー。一人一人の能力はそこまで高いとは言えないが、あれだけ異なるタイプのピッチャーを細かく継投されると、その試合だけで打つのは相当難しい。
しかも、調子が悪いと判断すればさっと交代するという思いきりのいい采配も随所に見られた。
日本戦であそこまで大谷にねじ伏せられながら、3点差を終盤まで守り抜いてチャンスにつなげたのも短期決戦を考えた人選と思いきりのいい采配の賜物である。

変則タイプが牧田のみで、対左用のワンポイントすら用意していなかった日本とはこういうところで差がついてしまったのだ。

今後の侍ジャパンの展望

今後の侍ジャパンだが、先ほども言ったとおりさまざまなシチュエーションを想定した人選を行うことは必須である。
特に投手陣に関しては、ただ最強の布陣を並べるだけではいざというときに対処できなくなることは身にしみてわかったはずだ。

そして大会前に相手チームをよく研究すること。これも絶対条件である。

「はっきり言って資料がない」
「本能で戦うしかない」

大会中、首脳陣からこんな言葉が聞かれたが、マジでありえない。
少なくともどの国も強化試合を何試合か行ってから本戦に挑んでいるのだから、資料がないなどというたわごとは怠慢でしかない。相手を研究し、相手の嫌がる作戦を用意して試合に臨むことは短期決戦を勝ち抜く上での最低限である。

小久保監督について言うと、僕個人はこのままでもいいと思っている。
理由は先ほども言ったように監督としてのポテンシャルを感じたこと。それに加え、何より彼の持っているネームバリューである。
侍ジャパンは一般層への浸透を大きな目的とした事業の一つである。つまり、代表の監督には最低限の知名度が必要なのだ。侍ジャパンを一般層へアピールするためには、テレビ的なことを考えても小久保程度の知名度は絶対に必要だと思うのだ。

極端な話、代表監督は神輿的な存在でもいいと思っている。有名で華がある。たとえ能力的には無能であっても、有名であればそれだけで代表監督の資質は必要十分。一般層へアピールする存在として貴重な人材と言えるのではないだろうか。

逆に本当にしっかりとした人選を考えなくてはいけないのはコーチ陣だ。
といっても、スターが集まる代表に技術的なことを教えるコーチは必要ない。最も重要なのは作戦面でのコーチングができる人材だ。投手の運用や代打、状況に応じて的確な判断ができる経験豊富なコーチである。

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たとえば今大会でも、明らかに間に合わない打球で嶋や平田がホームに突入してアウトになるシーンがあったと思う。僕が言いたいのはまさしくあれで、ああいうところで瞬時に的確な判断ができるコーチが欲しいのだ。

仁志にしてもそうだが、今までほとんど経験がないような人間が三塁コーチャーをやったり、現場を離れて相当時間が経つ鹿取が投手コーチに居座ったりしている。バッテリーコーチの矢野など指導者経験ゼロの初心者である。
これでは本当の修羅場で的確な判断を下すことは難しいだろうし、韓国戦の9回のようにテンパった継投策として表面化してしまうのだ。

やはりコーチ陣に関しては名前で選ぶのではなく、現場慣れしている現実的な人材を登用してもらいたい。
名前で選ぶのは監督だけでいい。経験値の少ない監督を全面的にバックアップできるコーチを、選手時代の実績などを度外視して選出するべきだと思うのである。

いっそのこと日本シリーズの勝利チームのコーチ陣をそのまま採用してもいいのではないだろうか。監督の小久保もホークス出身ということで気心も知れているだろうし、何より日本一チームのコーチ陣ならそれなりに信頼も置ける。試合勘という意味でもバリバリの現役である。極限の状況でも研ぎすまされた試合勘がいい方に働くはずだ。少なくとも、あんな無謀な本塁突入などは防げるのではないだろうか。

監督になるのは尻込みしても、コーチならOKという人も多いだろうし、そこまで精神的に厳しいとも思えない。ぜひとも検討していただきたいものである。
たぶん無理だけど。

まあ、何だかんだ言いながらもプレミア12、楽しかった。
選手のみなさん、お疲れさま。
そして韓国チーム、優勝おめでとう。

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