ロンダ・ラウジーがわかりやすくボブ・サップだった件。ヌネスに48秒TKOか。ちょっとマズい負け方かもしれんな【UFC207結果・感想】

ロンダ・ラウジーがわかりやすくボブ・サップだった件。ヌネスに48秒TKOか。ちょっとマズい負け方かもしれんな【UFC207結果・感想】

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2016年12月30日(日本時間31日)に米・ラスベガスで行われたUFC207。
女子バンタム級タイトルマッチでロンダ・ラウジーが王者アマンダ・ヌネスに挑んだが、結果はまさかの1R48秒TKO負け。

開始直後からヌネスの連打を顔面に浴び、窮地に追い込まれたロンダ・ラウジー。まっすぐ下がって金網に詰まったところで再び左右の連打の直撃を受ける。衝撃とダメージでよろめいたところでレフェリーが試合を止めて試合終了。待ちに待ったロンダの復帰戦は、わずか48秒で幕を閉じてしまう。

2015年11月にホーリー・ホルムに衝撃の敗戦を喫して以来、まさかの連敗となったロンダ。今後、かつての絶対女王の復活はあるのか。新時代に突入した女子MMAにおいて、再び輝くことができるか。

「ロンダ・ラウジー失神KO負け!! ホーリー・ホルムが秒殺女王を完膚なきまでに叩きのめし、女子MMAの歴史を動かす」

ますます混沌とするUFC女子部門のトップ戦線から目が離せない。

ロンダ・ラウジーのボブ・サップ化。ロンダ様がヌネスに完全に負けましたね

ロンダ・ラウジーまさかの秒殺KO負け!!
新時代の女王アマンダ・ヌネスに完敗!!

いちいち振り返るのはやめておくが、ひと言で言うと、
「ロンダ様が完全にボブ・サップ化した」
といったところだろうか。

この試合を受けて、多くの方がさまざまな敗因を挙げている。

・ブランクによる試合勘の鈍り
・モチベーションの低下
・衰え

などなど。
 
どの理由もそれっぽいのだが、正直いまいち説得力に欠ける。
言いたいことはわかるけど、どこかしっくりこない。

これについての僕の意見は、もう表題のまま。
「ロンダ・ラウジーはボブ・サップだった」
これである。

はい。
意味不明ですね。
何が言いたいのかさっぱりわからない。そんな思いが手に取るように伝わってくる。

だが、安心していただきたい。
ちゃんとご説明させていただくので(できるか?)。
私、失敗しないので(は?)。
 

ロンダがホーリー・ホルムに負けたのは「打撃スキルの不足ではない」

「ロンダ・ラウジーのボブ・サップ化」
これが僕が考えるロンダ・ラウジーの敗因だが、それについての説明(釈明)をしていきたいと思う。
 
「サイボーグvsヌネスが年末のUFC232で遭遇だとさ。これは女子MMAの一つの終焉かもね。ロンダ時代にケリをつける試合」
 
まずこの試合に際して、ロンダ・ラウジーのインタビュー記事や周辺の報道をいくつか読んだところ、「ロンダはボクシングテクニックを磨いている」という情報が散見された。
どうやら自身のSNSにもグラウンドでの組み技や絞め技ではなく、打撃練習の風景を中心にアップしていたとか。よくわからないが、組み技を制限した状況で相手を倒す反復練習を熱心に行っていたという話もある。

そして、その結果が今回の惨敗である。

正直、僕はこの打撃に特化した練習がロンダの敗戦を生んだのではないかと思っている。
 
ロンダ・ラウジーのファイトスタイルは、基本フィジカルのゴリ押しだ。
僕はよくコンタクトスポーツにおけるフィジカルの強さは大正義だと申し上げているのだが、ロンダの場合はそれよりももっと原始的な部分での話である。
 
UFC女子、僕のベストバウト3選。第3位は女子MMAを次のステージに押し上げたあの試合
 
強靭な身体を活かした突進で相手との間合いを詰め、打撃のスペースを潰す。
そのまま圧力をかけて金網に押しつけ、上からの打撃で相手を押し倒す。
金網と自分の身体で相手をプレスし、立ち上がれない状況に追い込んでからゆっくりと腕ひしぎを決める。
 
これが秒殺女王と呼ばれたロンダ・ラウジーの王道パターンである。
しかもホルムに敗れる直近の数試合などは、ロンダの圧力に相手が最初から萎縮しており、試合前から半分勝負がついていたといっても過言ではない。関節技に持ち込む必要すらなかったという状況である。
 
ところが、ホーリー・ホルムというフットワークのエキスパートと出会い、フィジカルゴリ押しの突進を完璧にさばかれたことで、これまでのパターンが頓挫した。

だがこの試合の敗因を、陣営を含めて「打撃面のスキル不足」と勘違いしたのが痛かった。
 

中途半端に打撃をかじったことで本来の積極的な「野獣性」が失われた

以前にも申し上げたのだが、ホーリー・ホルムの本当のすごさはボクシングテクニックを活かした打撃ではない。広いオクタゴンを目一杯使えるフットワークだ。

「アンドレ・ベルトがロンダ・ラウジーのコーチに名乗り? 何か勘違いしてねえか? それでホーリー・ホルムに勝てるのか?」

リゴンドーやロマチェンコを彷彿とさせるなめらかなフットワークで相手の突進をさばくことで、常にパンチを出せる構えをキープするバランス感覚。MMAの舞台で自分のボクシング技術を思いきり発揮できるだけのフットワークこそが、ホーリー・ホルムのすごさに他ならない。
負けちゃったけどww

「ホーリー・ホルムがシェフチェンコに負けちゃった…。やっぱりUFCにはロンダ様が必要だね!! 最高のタイミングで復帰しろよ」

ただ、ロンダ自身もその取り巻きも、彼女の稚拙な打撃スキルばかりに目がいってしまったのだろう。ボクシング世界王者というホルムの肩書きにも影響されたのかもしれない。

そのせいで、いかに自分の得意な関節技に持ち込むかを考えるべきところを、できもしない打撃技術の向上に手を出してしまった。
 
それを踏まえて今回の試合を観直すと、ロンダは開始直後からヌネスの打撃に打撃で対抗しようという気持ちが出過ぎていることがわかると思う。自分の持ち味であるプレッシャーを忘れ、腕が伸びる位置で打ち合う。
打撃を得意とするヌネス相手に、ガードもせず頭も動かさずに中間距離で打ち合うなど、愚の骨頂である。

中途半端に打撃をかじったせいで、フィジカル面のゴリ押しという本来の持ち味を失ってしまった。
つまり、ローキックやカットの技術を学んだことで、従来の野獣性を失ったボブ・サップである。

「ブランク」や「衰え」というのはあくまで枝葉の話で、「モチベーションの低下」というのもちょっと違う。
ミルコ・クロコップに負けたことで格闘技の怖さを知ったボブ・サップ同様、ホーリー・ホルムに格闘技の奥深さを思い知らされ、怖いもの知らずの鼻をへし折られて自分を見失った
要はそういうことである。
 
まあ、2011年から2016年まで。UFCに限定すれば2013年から2016年。
これだけ長い間、ボブ・サップばりの勢いのみで勝ち続けてきたのだから、それはそれですごいとしか言いようがない。もちろん女子MMAの競技人口の少なさ、層の薄さというのもあるとは思うが。
 

実は山本KID徳郁もサップと同じ道を辿っている。この迷走ルートから抜け出すのは容易じゃない

打撃の練習が裏目に出て本来の野獣性を失ったロンダ・ラウジー。
では今後、彼女に復活の芽は残されているのだろうか。

マジな話をすると、ちょっと厳しいのではないかと思っている。
怖いもの知らずの勢いで快進撃を続けていたものの、できもしない技術をかじって迷走ルートに入った選手として、ボブ・サップ以外には山本KID徳郁がいる。
 
あの選手も、キャリア初期は野性味溢れる動きで日本格闘技界を席巻していた。
打撃のみのK-1でも、腕を思いきりぶん回すスタイルで立ち技選手の立場を脅かす勢いを見せていた。

だが2004年の大みそかに魔裟斗に敗れ、その後の度重なる怪我もあって自分を見つめ直す時間ができたのだろう。下手にムエタイの技術を取り入れようとしたことで、本来の勢いを完全に失った感が強い。

「茶番? 魔裟斗vs山本KID再戦を観たけど確かにしょっぱかったな【大みそかKYOKUGEN 2015感想】」

もちろん今後のロンダ・ラウジーがボブ・サップや山本KIDのように、絶対に迷走ルートに入るとは言わない、だが、これまで勢いで勝ち続けてきた選手が初めて格闘技の奥深さを思い知らされたとき、そこから抜け出すのは容易ではないと思う。

そもそも1年以上も期間をあけ過ぎなんだよな。
さっさと切り替えて、2、3ヶ月後にそこそこの相手との復帰戦で勝っておけば、ウダウダ余計なことを考える必要もなかったのだが。

とはいえ、ホルムに負けた後のロンダ・ラウジーのいじけ具合を見ていると、この人はめちゃくちゃプライドが高いのだろうと思う。

まさかの連敗を喫したことで、メンタル的に大丈夫なのか。
言われているように、このまま引退する可能性もなきにしもあらずである。
一応、商品価値としてはホーリー・ホルムとの再戦というストーリーが残されているのだが。

女子MMAの加速度的なレベルアップ。これはかつて男子MMAの通ってきた道と同じ。そして、僕のMMA観戦も終焉が近い

しかし、ここ最近の女子MMAのレベルアップは尋常じゃない。
以前も申し上げたように、これはかつて男子のMMAが通った道である。

打撃系のミルコが組み技に対応してMMAを席巻し、打撃、組み技両面をハイレベルに極めたヒョードルがそのミルコを上回る。

これをきっかけに男子MMAは競技性を加速度的に向上させ、すべての技術で80点以上のスコアを持ったトータルファイターしか勝ち残れない場所となる。

つまり、すべての面で80点以上の技術があるというのは大前提で、そこからどの技術で90点をとるか。95点の技術を持った相手に、どうすればその技術を出させずに勝てるか。

もはやボクサー崩れや空手崩れなど、何かに特化した選手がいきなり飛び込めるような舞台ではなくなっていくのである。

そして今回、女子MMAにも同じことが起ころうとしている。
打撃系のホーリー・ホルムがロンダを倒して王座を奪還し、そのホルムをグランドのスペシャリストであるミーシャ・テイトが打撃を封じて上回る。

「ミーシャ・テイトがホーリー・ホルムに失神KO勝利で初タイトル奪還!! 最強最悪塩漬け女王誕生を大逆転で阻止!!」

ところが、同じ打撃系でもカウンターを得意とするホルムと違い、速攻型のアマンダ・ヌネスがミーシャを1Rで葬る。

これは明らかに、女子MMAがトータルファイターのみが生き残れる舞台になりつつあることを示していると思う。

と同時に、僕がUFCの女子部門の観戦から完全に撤退する序章でもある。

理由は以前に申し上げた通り。
僕が総合格闘技が好きだったのは、あくまで初期のごちゃ混ぜ感がたまらなかったから。
今の高度に競技性の上がったMMAは観ていてあまり楽しくない。

だってよくわかんねえんだもん。
大人2人が15分以上組み合ってゴチャゴチャやってるのを観るのって、マジでしんどいんすよ。

そして、初期のごちゃ混ぜ感の匂いが色濃く残っているのがUFCを始めとする女子MMAだったわけだが、どうやらそれも終焉が近い。

もちろん、そういう競技性豊かな総合格闘技が好きだという方を否定するつもりはない。ただ、僕はそのハイレベルな攻防を楽しむ側から脱落した人間だというだけの話である。

あ、ちなみに僕はアマンダ・ヌネスさんの邪悪な笑顔がキュートだと思っている少数派です。

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