ショーン・ポーターがブローナーを12R判定で下す!! ウェルター級戦線生き残りをかけたノンタイトルのビッグマッチ

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現地時間6月20日(日本時間21日)にアメリカ・ラスベガスMGMグランドガーデン・アリーナで行われたウェルター級ノンタイトルマッチ12回戦で、元IBF世界ウェルター級王者ショーン・ポーターvsスーパーフェザー、ライト、ウェルターと無敗のまま3階級を制覇したエイドリアン・ブローナーの一戦が行われた。

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ボクシングの全階級で最激戦区の呼び声が高いウェルター級。この試合はその激戦区の中での生き残りをかけた両者のサバイバルマッチの様相を呈すとともに、9月に予定されているメイウェザーのラストマッチの対戦相手を決定する上でも大きな意味を持つ試合とみられている。
マルコス・マイダナに敗戦を喫したブローナー。そしてケル・ブルックに僅差で敗れたポーター。両者ともに絶対に落とせない一戦である。

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ショーン・ポーター(25勝(16KO)1敗1分)
vs
エイドリアン・ブローナー(30勝(22KO)1敗)

敗戦を経てややスタイルを変えた両者。相性はよくなさそう

まずは個人的な予想をしてみたいと思う。
正直難しいのだが、判定でブローナーの勝利だろうか。

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ブローナーは、マイダナの猪突猛進のスタイルに巻き込まれての敗戦以降、L字ガードではなくやや腕を高く上げるオーソドックスに構えるようになっている。重心も後ろ足にかけて、よりディフェンスを重視したスタイルにチェンジしてきている。

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ディフェンスに偏重したおかげで勝利する確率は上がった反面、ボクシングとしては安全運転過ぎてやや魅力にかけるのもまた事実だろう。

対するポーター。
もともとはマイダナを超えるほどの突進力が持ち味だったが、ケル・ブルックに猪突猛進スタイルをうまくいなされて以降、少し相手を観察するスタイルに変えてきている。
今までのようにタイミングも何もなく、とにかく前に出るのではなく、タイミングを計ってチャンスと見た瞬間に飛び込むスタイルを模索している。
とはいえ、もともとセンスがあるタイプではないし、チャンスを捉える嗅覚に優れているわけでもないので、このスタイル変更は今のところしっくりきていない印象が強い。

ディフェンスに偏重したブローナーを今のポーターが突き破るのは少々難しいのではないだろうか。
ポーターがかつての積極的な突進を取り戻していたら、もしかしたらKO勝ちもあるのだが。

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どちらにしろ、この2人はあまり噛み合ないのではないか。試合自体は結構退屈な展開になりそうな予感がする。

ポーターの突進をブローナーが身体を寄せて封じる作戦

1R。
いつも通り広いスタンスで構えるブローナー。重心は後ろ足。
L字気味だがポーターの攻撃力を警戒してガードの位置は高く意識している。

対するポーター。ジャブをつきながらサークリング。あまり慣れていないせいか動きがぎこちない。やはり、今回もあまり前には出ないのか。

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1分過ぎ。
ポーターが左を出しながら大きく踏み込んで前に出る。ブローナーが飛び退く。相手をロープに詰めるポーター。

しかしブローナーは身体を寄せてポーターのパンチを封じる。
これである。ポーターの突進を封じるには、ケル・ブルックがやったように早めに身体を寄せてパンチのスペースを殺してしまうのが効果的なのだ。思い切り腕を振り回したいポーターにとって、この作戦は非常にストレスが溜まるはずである。

前に出て攻めるポーター。コーナーに詰めるが、すぐにブローナーが身体を寄せてポーターの動きを止める。
ここでゴング。1R終了。
クリーンヒットはなかったが、攻めていた分ややポーターのラウンドか。

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1Rを観て一つ気づいたのだが、マイダナ戦のときに比べてブローナーの身体が強くなっている気がする。あの頃はウェルター級としてはややパワー不足、サイズ不足の印象が強かったが、今回はその部分のフィジカルを鍛えてきたようだ。ポーターがこのクラスでは小柄な部類に入るのもあるだろうが、体格的に見劣りはしていない。
ブローナーがポーターに当たり負けしないとなると、これはなかなか退屈な試合になりそうである。

2R。
このラウンドもポーターが始めに動き、ブローナーがそれをかわす。そこから数発のパンチの交換の後、ブローナーがポーターに身体を寄せて動きを封じる展開が続く。リング中央でのもみ合いを見ても、ブローナーがポーターに押し負けている感じはない。これはますます退屈な展開が続きそうだ。
ブローナーは、自分のフットワークではポーターの突進から逃げ切れないと判断したのだろう。よく研究した上でこの作戦を選択したはずだ。非常に退屈だが。

案の定、観客からはブーイングが出始める。
しかし作戦としては間違いではない。ポーターはこのレベルのボクサーの中では圧倒的に引き出しが少ないので、得意な戦法を封じられるとあっという間に手詰まりになるのだ。そのことはケル・ブルック戦で証明されている。

ポーターが突進。下がりながらブローナーが数発カウンターを返したところで2R終了。

ポーターは、ブローナーが下がりながらのカウンターを狙っていること、そして懐に入っても身体を寄せられてパンチを封じられること。これによって思い切って前に出られなくなりそうだ。だが、ブローナーの方もポーターの突進を封じるまではいいが、そこからの攻撃につなげるまでには至っていない。

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3R。
足を使ってサークリングするブローナー。
近づこうとするポーター。だが、追い足がなくいまいち詰め切れない。
意を決して飛び込むが、すぐに身体を寄せられて動きを止められる。そしてブレイク。やはり今日はこの展開が続きそうだ。

1分20秒過ぎ。
思い切り踏み込んだポーターの左がブローナーの顔面を軽く捉える!!
会場が沸くが、ブローナーは後ろに飛び退きながらなのでダメージはほぼない。とはいえパンチ自体はヒットしているので有効打と見ていいだろう。ポーターはこういうパンチと突進でポイントを拾っていくのだろうか。そして中盤以降、失速して踏み込みが鈍くなったときにどうなるか。

逆にブローナーは、前半はある程度ポイントを取られてもいいからポーターに攻めさせて、後半動きが鈍ってきたところで勝負をかける作戦だろうか。どちらにしろ、今日のブローナーはノックアウトを狙うというより、12Rを見越しての勝負という考えだろう。

2分20秒過ぎ。
左を出しながら飛び込むポーターに対してブローナーが左のカウンターを軽く合わせる。顔面が弾けるポーター。気にせずに飛び込む。あまり力を入れたパンチではないのでダメージは少ないだろうが、当たってはいる。どうやらポーターの飛び込みのタイミングを徐々に掴んできたようだ。
1、2Rはポーターのラウンドだと思うが、この序盤でもポイントを取られるようだとポーターはちょっと苦しくなるか。

4R。
ラウンド序盤、ポーターが前進を強める。少しブローナーに流れが行きかけていた前のラウンド。ここが前半の山場と見たか。

ブローナーの下がりながらの左カウンターを被弾しながらも、構わず前に出るポーター。この男の唯一無二のスタイルだ。
対するブローナー。強引に前に出るポーターに対し、下がりながら反撃。しかしステップの最中に足をもつれさせてスリップダウン。ここがチャンスとばかりにポーターがさらに前に出る!!

コーナーに詰めて連打を浴びせたいポーター。だがブローナーはすぐに身体を入れ換えてコーナーを脱出する。
追いかけるポーター。身体を寄せてポーターの動きを封じるブローナー。再びリング中央でのもみ合い。
この作戦、ブローナーにとってもかなり体力と精神力を削られる作業なのは間違いない。どちらの体力、精神力が後半まで持続できるかが勝負を分けそうだ。

もみ合いが増えてややラフファイトが目立ったところで、会場からさらにブーイング。
とにかく近づいて腕を思い切り振り回したいポーター。それを封じたいブローナー。
長い腕をうまく使って、ポーターに覆い被さるように身体を寄せる。
だが、ブローナーにはこの密着状態から出せるパンチがない。接近されると自分の長い腕を持て余すところがあるのだ。お互いに決め手を欠いたまま4Rも終了。
今のところはややポーターか。
この後どちらが流れを掴むのか。

前進を続けるポーター。後退しながらパンチを当てるブローナー

5R。
ポーターが左のガードを下げて、やや前傾姿勢で顔を突き出したスタイルで構える。ブローナーに先に攻めさせたところで打ち合いに持ち込む作戦か。
対するブローナーは誘いには乗らずに今まで通り後ろ重心で構える。

やはり先にしかけるのはポーター。
ところが先ほどのラウンドよりも踏み込みが弱い。お、これはどうした? 疲れか? それとも相手に打たせようとしているのか。
ブローナーはポーターの出足の鈍りを逃さない。先ほどよりもポーターの出足が鈍った分、下がる距離を小さくしてカウンターを合わせる。そのカウンターも先ほどよりも力を込めた打ち方だ。
ポーターのパンチが空を切る。カウンターをヒットさせたブローナーがフットワークで距離を取る。ちょっとまずいかポーター。

と思った瞬間、ポーターの鋭い踏み込み!!
右が軽くブローナーにヒットする。
勢いそのままにパンチを連打するポーター。ブローナーも下がりながら応戦!! ロープ際でのパンチの交換の後、ブローナーが身体を入れ換えて距離を取る。おお、ポーターまだまだ元気だ。これなら大丈夫。不器用ながらも強弱を意識してるのか?

小さいパンチを時折ヒットさせ、足を使って逃げるブローナー。
観客からは大きなブーイングが起こる。
パンチがヒットした分、このラウンドはブローナーのポイントか。

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6R。
下がりながらカウンターを狙うブローナー。だが、ポーターの左を被弾する。まだまだポーターの突進には対応しきれていない。

すぐに作戦を変更、身体を寄せてポーターのパンチを封じるブローナー。勝負をかけるのはまだ先だ。
このラウンドは左のガードを上げて前に出るポーター。カウンターをもらう可能性もあるが、この思い切りのよさがポーターの持ち味である。思い切り踏み込むことで相手が警戒し、かえって被弾する確率も下がる。これこそ突進型の強みである。

ゴングが鳴って6R終了。
このラウンドはポーターか。
一進一退の好試合。
誰だ? 退屈な試合だとか言ったのは?

7R。
飛び込んでの左を当てるポーター。
そのポーターの打ち終わりを狙うブローナー。
攻めのポーター。受けのブローナー。
どちらのパンチが先に当たるか。どちらのパンチがより相手に脅威を与えるか。ポイントをどちらが取るかはほぼファーストコンタクトにかかっていると言ってもいい。
剛と柔の力比べが続く。

ブローナーのバックブローをレフェリーが注意する。
少し流れが変わるか。

構えがややかつてのL字気味に戻るブローナー。
ポーター相手にそれは危険だ。多少、注意の影響があったと見える。

疲れが出始めた両者。勝負の行方は果たして……

8R。
再び腕を高く上げる構えに戻るブローナー。
どうやらラウンド間で冷静さは取り戻したようだ。

このラウンド、ポーターは積極的にパンチを出すが、やや前進する力が弱まっている。ブローナーをロープに詰めきれずに押し返される場面が増えている。さすがのポーターも疲れが見える。
これはどうなる。ここで勝負をかけるかブローナー。それともポーターが持ち堪えるか。

ポーターが飛び込む。そこにブローナーの左カウンター!!
気にせず前に出るポーター。しかし、出足は確実に鈍っている。
ブローナーの左右パンチが軽くヒットする。
ゴングが鳴って8R終了。
大きなダメージを負うパンチではなかったが、ポイントはブローナーだろうか。

9R。
ブローナーがポーターの左に回りながら突進をかわす。追いきれないポーター。突進力が衰えているのに加え、ブローナーが距離感を掴んでいるのが大きい。かなりキツいポーター。
とはいえブローナーもあまり手が出ない。こちらも徐々に疲れが見える。足を使ってポーターをいなしたままゴングが鳴る。ブローナー、このラウンドは休憩に当てたか。

10R。
ラウンド序盤、ポーターの突進からの右がブローナーにヒット!!
ロープを背にしてポーターを抱え込むブローナー。前半からポーターの突進を受け止めてきただけにこちらも動きが鈍り始めている。
前に出続けるポーター。足を使って距離をとるブローナー。手数や攻める姿勢が強い分、ポーターの印象が強いか。

頭を振りながら低い姿勢で左右ボディを打つポーター。
下、下、上、上。
たまらずブローナーがコーナーに詰まる!!

これは下がったわけではない!!
下がらされている!!
この試合初めてはっきりとブローナーが疲れを見せている!!
このラウンドは間違いなくポーター。

11R。
手を出さずに距離をとるブローナー。
ポーターも深追いせずにジグザグにコーナーに詰める。
どちらもキツい。どちらもギリギリだ。

ポーターの突進。踏み込みが弱い。
ブローナーが飛び退いて身体を入れ換える。
なかなか手を出さないブローナー。
お、ブローナーはこのラウンドも体力回復に使うのか? ポイントにそんなに余裕があるとは思えないが。それとも単純に力が残っていないのか?

もみ合いでブローナーが押し返す。堪えきれずに下がるポーター。やはりポーターも疲れている。
どちらも必死だ。後は勝ちたい気持ちが強い方が勝つ。そういうことだ。

足を使って飛び退くブローナー。
ダッシュで追いかけるポーター。
もみ合いからポーターに覆い被さるブローナー。

レフェリーがブレイクをかける。
両者を分けるレフェリー。
そして、ブローナーに減点1を与える!!
うわ〜、ブローナー、この局面での減点は痛い。
観客からは大歓声。
さすがは嫌われ者。

ポーターが突進からの左を軽くヒットさせたところでゴング。
このラウンドの減点で、ポーターの勝利がかなり近づいただろうか。

最大にして最後の山場!! ブローナーの左がポーターを捉える!!

12R。
開始直後。
ブローナーがフェイントをかけて飛び込む。
鋭い左フックがポーターの顔面を捉える!!
尻餅をつくポーター。

ダウン、ダウン、ダウン!!!

うおぉぉぉ!!!
ここにきて!!!
マジかブローナー!!
すげえぇぇ!!

ポーターが立ち上がる。
レフェリーが試合を再開する。

明らかなダメージがあるポーター。
こういうときは前に出る。それが定石!!

前に出るポーター。迎え撃つブローナー。
会場は今日一番の盛り上がり。

ロープ際でのもみ合い。
ポーターが密着状態で無理矢理フックを振るう。
ブローナーがカウンターで応戦する。

思い切り踏み込むポーター。
しかし鈍い。
ただブローナーも捉えきれない!!

逆にポーターを押し込み前に出るブローナー!!
下がるポーター。
それでも踏みとどまるポーター。
そして逆に前に出る!!

もみ合う二人。
激しく変わる流れ。

最後はリング中央での打ち合い!!
激しくパンチが交錯する中、ブローナーのカウンターがヒット!!
ポーターがたたらを踏む。
しかしダウンには至らずゴング!!
試合終了!!

12R判定決着。激戦の後

すごい山場が最後に待っていた。
予想よりも遥かにいい試合だった。

判定はどうなる?
予想ではポーターの逃げ切りだが。

判定が読まれる。
114-112、115-111、118-108。
3-0の判定でショーン・ポーターの勝利!!

うおぉぉぉ!!
ポーター勝った!!

「メイウェザーvsパッキャオ世紀の一戦終了。祭りのあと」

大体予想通りのポイント差がついた試合だったが、勝敗予想はまったく当たらなかった。
結局ブローナーはポーターの突進を受け止めるだけで手一杯で、攻撃に転じるまでには至らなかったということだろう。
メイウェザーの最後の相手として名前が挙がっていたブローナーだが、この階級では体格的にもフィジカル的にも厳しかったようである。

僕は以前からブローナーの理想型はバーナード・ホプキンスだと思っている。
広いスタンスで派手に動き、相手のパンチを見切りでかわすようなスタイルはメイウェザーやロイ・ジョーンズJr.のような超人にのみ許された特別なものであって、ブローナー程度の才能ではやってはいけないのだ。

ブローナーなぞ、僕に言わせればイキっているデビッド・リードである。そんな凡人はホプキンスのように堅実でスタミナのロスが少ないスタイルを追求すべきなのだ。そして、ブローナーはそれができるセンスとスピードを兼ね備えているはずなのだ。

ポーターに関して言うと、やはり僕はこの男のスタイルが好きだ。
才能があるタイプではないし、ボクシングの引き出しも少ないのだが、何より諦めないメンタルがいい。とにかく前に出続けるスタイルは観ていてワクワクするし、自然と応援したくなってしまう。

ポーターの勝利でますます混沌としてきたウェルター級戦線。このボクサーが再び第一線に躍り出たことでますます今後の動向に目が離せなくなった。

やはりボクシングはおもしろい。

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