パッキャオがブラッドリーに完全勝利!! ラバーマッチを制し有終の美を飾る。ボクシング界のスーパースターが最後に円熟の業を見せつける【結果・感想】

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ラスベガスの町イメージ
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2016年4月9日(日本時間10日)に米ラスベガスにあるMGMグランド・ガーデン・アリーナでフィリピンの英雄マニー・パッキャオのラストマッチが開催された。

相手は過去2戦して1勝1敗のティモシー・ブラッドリー。
結果は2度のダウンを奪ったパッキャオが3-0(116-110、116-110、116-110)の大差判定で勝利し、有終の美を飾った。

プロ通算66戦目を終えたボクシング界のスターは母国での政治活動に集中するため、リング上で改めて引退を表明。21年間の現役生活にピリオドを打った。

「英雄の帰還。生贄の名はジェシー・バルガス。パッキャオは復帰戦を盛大に飾れるか?」

すべては杞憂だった。パッキャオはやっぱりパッキャオでした

マニー・パッキャオのラストマッチ。
僕がこの試合で注目していたのはパッキャオのコンディションである。
「世紀の一戦」と言われたメイウェザー戦から約1年。肩の手術を経て、どれだけのパフォーマンスを見せられるか。なおかつ試合前に差別発言などが取り上げられ、練習に集中できていないのではないか。そんな懸念を持ちながらの観戦となった次第である。

「パッキャオvsブラッドリー第3戦目予想!! フィリピンの英雄のラストマッチの行方は?」

結果から申し上げると、すべては杞憂だった
パッキャオはきっちりとコンディションを作り上げ、ラストマッチの気負いもなく盤石の試合運びでブラッドリーを完封してみせた。

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もう、さすがパッキャオと言うほかない。
全盛期の激しい動きは見られなかったものの、円熟味を増したベテランの味でブラッドリーにほぼ何もさせない試合展開。
周囲の雑音も1年のブランクもラストマッチのプレッシャーも、この男の前ではさざ波ですらない。
英雄はやっぱり英雄だった。

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今回のブラッドリーは距離をとってポイントアウトを狙う作戦。でも通用しなかった……

ブラッドリーの作戦は予想どおりアウトボクシング。ただ1戦目と違うのが、自分から左を出しながら右のカウンターを狙うスタイルだったことである。

打ち終わりを狙った1戦目、動き回って出入りで翻弄しようとした2戦目。
そして今回の3戦目は一定の距離を保ったままアウトボックスして左を出すスタイル。距離をとってリングを回りながらパッキャオのパンチの届かない位置をキープし、右のカウンターを狙いながら時おり踏み込んで左をチクチクと当てる作戦である。

「ゴロフキンがウェイドを子ども扱い!! もう相手おらんなこりゃ」

このパターンだと、パッキャオの踏み込みにブラッドリーがどの程度対応できるかがカギになる。

パッキャオが踏み込む。
ブラッドリーが下がる。

つまり、ブラッドリーのバックステップとパッキャオの踏み込みの勝負というわけである。

と思ったが、結論から言うと勝負の分かれ目は別の部分にあった
距離をとってリングを回るブラッドリーがスキを見つけてワンツーを打ち込むのだが、パッキャオが狙ったのはこの瞬間である。

ブラッドリーが足を止めて身体に力を込める。
踏み込んで左を放つ。
だが、その一瞬先にパッキャオが右でブラッドリーを迎撃する。
右を軽くブラッドリーの鼻先に当て、さらに左につなぐ。

パッキャオに出鼻を挫かれたブラッドリーは戸惑いを隠せない。
リズムが狂ってバタついたところにパッキャオが鋭く踏み込み右をヒットする。

追っても被弾。
受けても被弾。

なるほど。
これはブラッドリーは苦しい。
作戦どうこうではなく、単純にボクサーとしての実力でパッキャオがブラッドリーを上回っている。両者の間に埋めようのない差があり、それがそのまま出ている。

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4Rに入ると、リズムをつかんだパッキャオが攻撃を強める。
試合開始直後よりもプレッシャ―を強め、積極的に踏み込む。
対するブラッドリーはバックステップで距離をとろうとするが、パッキャオの鋭い踏み込みに対応できずにワンツーを被弾する。

パッキャオが踏み込んで右を放つ。
ブラッドリーが左にステップしてこれを避ける。
だが、そこからパッキャオがすぐさま方向転換して返しの左を打ち込む。
この左を被弾したブラッドリーの顔が跳ね上がる。

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もう完全に実力差。パッキャオがブラッドリーよりも上というだけの話

いや、さすがパッキャオ。
あのブラッドリーのステップをまったく苦にせずパンチを当てていく。
ブラッドリーの反撃をもらっても意に介さずに前に出る。

もう一度申し上げるが、これは純粋な実力差だ。
パッキャオの方がブラッドリーよりも実力が上。それだけの話である。

パッキャオはブラッドリーの左回りのステップを苦にしない。
先日の記事でも申し上げたように、パッキャオには強靭なフィジカルがある。強く踏み込んでから一瞬で方向転換できるだけのフィジカルがあるので、視界からブラッドリーを見失うことがない。

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そして、ブラッドリーはこのパッキャオの動きにどうしても対応できない。何度やってもできない。
バックステップで距離をとっても間に合わず、1戦目のように打ち終わりを狙ってもかわされる。自分から飛び込んで打ち込んでも出鼻を挫かれる。
さらにパッキャオの左回りのステップについていけない。
完全に手詰まりだ。
ここまでやってダメなら、ブラッドリーはパッキャオに勝つことはできない。そういうことだ。

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8Rの終了間際にラッシュでパッキャオをロープ際に追いつめたように見えたが、実はパンチは当たっていない。パッキャオはブラッドリーのデザート・ストームをすべて防いでしまっている。

1年のブランクに加えて問題発言によるゴタゴタがあったパッキャオに対し、ブランドン・リオスに完勝して絶好調のブラッドリー。
勝つなら今回しかないと思って期待していたが、残念ながら番狂わせは起きなかった。そんなことが問題にならないくらい、両者の間には歴然とした実力差があった。

「ブラッドリーがブランドン・リオスにTKO勝ち!! スピードと手数でリオスを圧倒!!」

くっついてもダメ。
離れてもダメ。
自分から打ち込んでもダメ。
カウンターを狙ってもダメ。

このスタイルでパッキャオに勝つにはブラッドリーの力では無理。
さすがパッキャオ。それしか言いようがない。

「今さらメイウェザーとパッキャオを語る。アルバレスvsカーン戦を観て」

ブラッドリーダウン!! この2人の勝負の中でもっとも盛り上がった時間帯

9R。
ブラッドリーが左をダブルで出しながら前に出る。
パッキャオがブラッドリーの打ち終わりに左を返す。
これがブラッドリーの顔面にヒット!!
ブラッドリーの動きが止まる!!

すぐさま追い打ちをかけるパッキャオ!!
パッキャオの右をかわし、ブラッドリーの足が揃った瞬間を狙って左を打ち下ろす!!

ひっくり返るようにダウンするブラッドリー!!
そのまま1回転して立ち上がる。

だが足取りが重い。

攻め込むパッキャオ。
何とか反撃するブラッドリー。

残り10秒。
大歓声が鳴り響く。

リングの中央で打ち合ったところでラウンド終了のゴング。

うおお!!
すごい盛り上がり!!

両者の3戦の中でもっとも会場が盛り上がり、ブラッドリーがもっとも追い込まれた時間帯だった。
そして、実質勝負が決したラウンドでもあった。

ここからブラッドリーがパッキャオに勝つにはKOしかない。だが、あれだけのダメージを負ってしまってはそれも難しい。
各局面で常に上をいかれている状況で、あのダメージを抱えてしまってはブラッドリーに勝ち目はない。
後はいかにしてKO負けを回避するか。この時点でブラッドリーができることはそれだけである。

「ケル・ブルックは強化版ハメドだ!! ケビン・ビジェールに圧勝!!」

無理に倒しにいかず、ポイントアウトで逃げ切り狙いのパッキャオ。まあ、しょうがないか

10Rはブラッドリーが距離をとってダメージの回復を図る。
時おり前に出て左を打ち込むが、パッキャオは楽々対応する。

ほお。
てっきりギアチェンジして倒しにいくと思ったが、このままポイントアウト狙いか。
なるほど、パッキャオ置きにきやがったなww
まあ仕方ないか。ラストマッチだし、ブラッドリーの回復具合を見ると万が一の可能性もあるし。

結局、試合はパッキャオが安全運転を続けたまま12R終了のゴングが鳴る。
判定の結果は116-110、116-110、116-110の3-0でパッキャオ勝利!!
宿敵とのラバーマッチを文句のない形で制したパッキャオが有終の美を飾った。

強敵ブラッドリーの行く手を阻み、袋小路に追い込む詰め将棋のようなボクシング。
一瞬で相手との距離をゼロにする踏み込みは見られなかったものの、終始プレッシャ―をかけ続けたパッキャオの完勝である。
試合前はあれこれ言われたが、終わってみればさすがのパッキャオだった。

この試合をご覧になった方はどのような感想を持ったのかはわからないが、個人的には大満足の一戦だった。
まさしく不世出の英雄のラストマッチにふさわしい大団円だったのではないだろうか。

「サーマン←才能だけでやってる人がポーターに辛勝!! ノンストップのハイスピードバトル!!」

とにかくナイスファイト。
マニー・パッキャオ、本当にお疲れさまだ。

長年にわたりボクシング界を牽引してきたエンターテイナーがこれで本当に引退してしまうと思うと若干寂しい気持ちもあるが。

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