田中将大(ヤンキース)、復帰戦で7回1失点! 堂々の投球で敵地を震撼させる!!【田中将大、今日の結果】

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虹イメージ
アメリカ大リーグ、ニューヨーク・ヤンキースに所属するマー君こと田中将大投手が現地時間6月3日(日本時間6月4日)、シアトルでのマリナーズ戦に先発。7回を78球、3安打1失点9奪三振の好投で今季3勝目(1敗)を挙げた。

右手首の炎症と前腕の張りのため故障者リスト入りし、4月23日のタイガース戦以来41日ぶりのマウンドとなった田中将大だが、周囲の雑音を打ち消す好投を見せた。

「田中将大、タイガース戦に登板。勝敗つかずも7回途中1失点の好投!! 」

ことあるごとに肘、腕の状態を不安視する地元メディアも、この日の田中の快投に対し「ヤンキースの宝」との見出しで賛辞を贈っているという。

今日だけですべて解決とはいかないだろうが、とりあえずは今後に期待が持てる復帰登板の内容だったといえるのではないだろうか。

立ち上がりはあまりよくなかった

初回。
マリナーズの先頭打者モリソンへの初球。左打者の外側を狙ったツーシームが真ん中やや内側に入る。
モリソンがバットを鋭く振り抜く。凄まじい打球がライトのファールゾーンへ突き刺さる。いきなりヒヤッとする1球。
2球目。外角からストライクゾーンへ入るスライダー。甘い!!
ファール。明らかな打ち損じ。
3球目。
真ん中低めに落ちるスプリット。モリソンのバットが空を切る。三振!
だが不安が残る先頭打者への投球だ。

続いて二番ジャクソン。
初球は真ん中低めへのスライダーでストライク。
2球目は内側へのツーシーム。ファールで2ストライク。
3球目は外側へのスライダー。ボール。
そして4球目。真ん中の甘いスプリット。ジャクソンのバットが田中のスプリットを捉える!!
鋭い打球が三遊間へ転がる。
これは抜けたか? そう思った瞬間、サードのへドリーがダイビングキャッチ!! 素早くファーストへ送球、アウト!!
ナイスプレー!! これは助かった。

三番カノ。
初球は外側へのスライダー。ボール。
2球目は同じコースへのスプリット。カノ、これに手を出してファール。カウント1-1。
3球目。91マイルのツーシームが内側から真ん中に入る。カノが捉える!! 鋭い打球が田中の足下を抜ける。これはヒットか。
だが、右寄りのシフトをとっていたショートのグレゴリウスが正面でキャッチ。楽々ファーストへ送球して3アウト。

初回を無失点で切り抜けた田中。
いまのところあまり球が走っているようには感じない。スライダー、スプリットも鋭さが足りないか。何より、フォーシームをまだ1球も投げていないのが気になる。ここから調子が上がってくるのだろうか。

ヤンキースが1点を先制して迎えた2回裏。
打席には四番のネルソン・クルーズ。
初球はど真ん中にスライダー。ストライク。いつもながらこうやって初球にサラッとストライクをとるピッチングはさすがだ。
2球目は内側に抜け気味のツーシーム。空振りで2ストライク。
3球目。右バッターのインコースからストライクになるスライダー。見逃し三振。おお、珍しい。右バッターに対してのこの球も投げるのか。

五番シーガー。
初球は外側のカーブでストライク。やはり初球の入り方が絶妙だ。
2球目は低めに落ちるスプリット。ファール。あっさりと追い込む。
3球目。左バッターの内側からストライクになるツーシーム。見逃し三振!! フロントドアキタ!!

六番、左打者のスミス。
初球、92マイルのツーシームが外側に決まる。
2球目はスプリットを引っ掛けてボール。今日はこのスプリットの調子がいまいちなようである。
3球目。左打者の外側からストライクになるスライダー。スミスが強振!! 打球がまたしても田中の足下を抜ける。今度こそ初ヒットか? と思った瞬間、今度はセカンドのドルーがダイビングキャッチ!! 一塁に送球して3アウト。
またしてもバックがファインプレーで田中を盛り立てる。

立ち上がり2回は正直あまりよくない。とはいえ、球の走りはともかく、コントロールはそこそこまとまっている印象。
何よりバックの守りがいい。こういう日はバックに乗せられてリズムよくいけるかもしれない。

リズムよくアウトを重ねる田中。相手の貧打にも助けられたか

3回にいきなりのスリーベースを含む2本の長打を浴びてあっさり1失点した田中だが、そこから先は相手の早打ちにも助けられてスイスイとアウトを量産していく。

特に、初球の入り方が相変わらずの絶妙っぷりだ。
カーブやスライダーでスーっとストライクをとり、とにかく自分に有利なカウントから勝負をスタートする。かと思えば、いきなり左バッターの内側からのツーシームで入ったりもする。多少甘くなることもあるのだが、ある程度開き直って投げているのだろう。「打ち損じてくれることもあるし、甘くなっても100%打たれるわけじゃない」という余裕が感じられる。

この辺が今年広島に復帰した黒田との決定的な違いである。黒田の「少しでも甘く行ったらやられる」という悲壮感、死と背中合わせであるかのような必死さは、多少なりともチームの援護率にも悪影響を与えていたのではないだろうかと思う。

また、今日は右バッターの内側からストライクにするスライダーを投げているのが珍しい。左バッターの内側からのツーシームと同様、右バッターへのフロントドアというヤツである。3球ほど使っていただろうか。こういうテクニックをあっさりと使いこなす辺り、相変わらずの器用さである。

ただやはり気になるのが、ほとんどといっていいほどフォーシームを投げていないことだろうか。直球系はほぼツーシームである。フォーシームは恐らく10球も投げていない。そして先ほども言った、左バッターへのフロントドアの割合が若干多いように思える。

フロントドアはきっちりコースに決まれば効果的な球だが、甘く入れば真ん中高めの打ちごろな半速球になる。事実、ヒットにされている球は甘く入ったツーシームばかりである。フロントドアはあくまでも、ここぞの場面で相手の意表をつくから効果的なのであって、カウント球にも決め球にも使うような球では決してないはずなのだが……。

とはいえスプリット、スライダー、カーブそれぞれを低めに投げ分ける投球は素晴らしい。立ち上がりはあまりいいとは思わなかったが、味方の好守に加えて相手打線の貧打&早打ちにも助けられ、徐々にリズムにのってきたようである。

強いて言うなら、高めのフォーシームを使うとなおいいのではないだろうか。低めへの投球を意識するあまり、相手が徐々に慣れてきている部分もあったので、そこで1球高めに速球を見せることができればさらに相手を惑わすことができるのではないかと思う。

「どうだ! これが田中だ!!」と言いづらいところが田中のすごさ

4回に打線が2点を挙げて3-1と逆転し、8回以降も投手リレーでそのまま2点差を守りきったヤンキースが勝利。降板するまでの13打者から連続でアウトを奪った田中に3勝目が記録された。

感想としては「さすが田中マー君」といったところであろうか。
驚くほどすごい球を投げているわけじゃない。特別スピードが出るわけでもないし、打者を圧倒するスケール感があるわけでもない。もちろん全力で打者を抑えにかかる場面はあるのだが、本当に淡々と打者を打ちとっていく。

何度も言うが、田中はとにかく器用で適応力が抜群だ。
投球の質、幅、引き出しの多さ。広島に復帰した黒田が同じようなタイプだが、完全に上位互換といっていいのではないだろうか。

これは想像だが、恐らく依然として肘の不安はあるのだろう。毎試合全力で投げていたらあっという間にトミー・ジョン手術まっしぐらな状態なのだ。

「球速が出ない? 肘? 田中将大投手が開幕戦黒星スタート」

肘や腕に不安がある中で、今以上に悪化しない程度に力をセーブしつつ、なおかつメジャーリーグの打者を打ちとれるだけの力加減。この絶妙なさじ加減を開幕から模索しているのだと思う。

そして、今日の登板である程度の目安が見えたのではないだろうか。
ランナーのいない場面で、日本時代は恐らく40〜45程度%。メジャー1年目の去年は大体60〜65%。
それが今日の登板を観る限り、50〜55、6%前後の力加減で投げていたのではないかと思う。自分の健康状態を維持しつつ、メジャーの強打者を抑えられるギリギリの境界線。それが大体今日くらいの投球なのだろう。

自分の状態を客観視して力の配分を調節できる柔軟さと器用さ。これこそまさに田中将大のすごさである。

とはいえ、まだ復帰一戦目。
今後も続く中四日の登板に加え、本格的な夏がくれば疲れも溜まるだろう。
肘に不安を抱える田中にとって、今後も一戦一戦が正念場といえる試合となりそうである。

「田中将大、怪我の心配はなしか? 7回1失点で4勝目!!」

個人的にも楽しみ半分、不安半分といったところだろうか。

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