代わったところに打球が行くには根拠がある。2016年4勝2敗で広島を下して日本ハム優勝!! 栗山監督の采配はバレンタイン?【感想】

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函館イメージ
プロ野球日本シリーズ2016。
王手をかけた日本ハムファイターズが広島カープを10-4で下し、10年ぶり3回目の日本一を決めた。

3勝2敗と日ハムが王手をかけて迎えたマツダスタジアムでの第六戦。
中盤までは4-4と一進一退の接戦が続いていたが、同点の8回に日ハム打線が爆発。セットアッパーのジャクソンから満塁ホームランを含む6点を挙げ、勝利を決定づけた。

最後は谷元が広島の反撃を退け見事に勝利。
11.5ゲーム差を逆転してパリーグを制した日ハムが、圧倒的な強さでセリーグを制した広島を下して日本一に輝いた。

なお、シリーズMVPには3本塁打を放ったブランドン・レアードが選ばれている。

日ハム勝利の要因は6回裏の中島卓也が見せたスーパーキャッチ

日ハム優勝!!
セリーグ最強の広島に完勝で見事に日本一達成!!

すばらしい勝利だった。
本当に最高としか言いようがない。
おめでとう日ハム。

個人的にこれだけ楽しめた日本シリーズは久しぶりだった。
応援していた広島は惜しくも敗れてしまったが、それでもすべての試合が神試合という大満足の2016年日本シリーズである。

「映画化必須の日本シリーズ2016!! 日ハムが本拠地で三連勝で王手」

予想通り凄まじい試合となった第六戦だが、日ハムの勝因を挙げるとすればやはり6回裏の中島卓也の守備だったのではないだろうか。

2アウト2、3塁で打席には代打の下水流。
日ハムの投手は石井からマウンドを受けたルーキー井口。

状況としては、バットにボールが当たった瞬間に2人のランナーがスタートする。
そして投手の井口は真上から投げ下ろすオーバーハンドのフォームで、なおかつこの日は決して球が走っているとは言えない状態。

真上から角度のある球を投げる投手vs右打者の下水流。
つまり三遊間に打球が転がる可能性が高いと考えられるケースである。
この場面で中島の守備位置は定位置よりもわずかに下がり気味。三遊間の打球で1点は仕方ない。逆転の2点目は絶対に防ごうというポジショニングである。
 
「史上まれに見る酷い日本シリーズ。ソフトバンクがクソ采配の広島を下して2年連続日本一。クソの最上級」
 
そして結果的にはそれが的中し、ショートの横を抜けそうな打球を横っ飛びでキャッチ。2塁ランナーの鈴木誠也の生還を防ぐという超ファインプレーを見せるのである。

三本間で挟んでアウトにできなかったなどというのはもはや小事だ。あの打球が抜けていれば確実に2人がホームインしていたし、そのまま広島に流れが傾いていたことは間違いない。
あのポジショニングが中島本人の判断だったのか、栗山采配だったのかはわからない。だが、前の會澤の打席では前進守備の中、ショートの中島だけが定位置を守るという変則的な守備体系を取っていたことから、三遊間への意識付けはチーム全体でできていたのだろう。

僕は中島卓也という選手のプレースタイルが個人的に大嫌いなのだが、このシリーズで果たした役割については認めざるを得ない。

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「代わったところに打球が行く」のは偶然じゃない。状況や両チームの思惑を考えれば根拠が見えてくる

よく野球界では「代わったところに打球が行く」というジンクスが語られるが、僕はこれは決して偶然ではないと思っている。交代した野手のところに打球が飛ぶのにはそれなりに根拠があるのだ。

たとえば8回1アウト3塁で打席には左打者。
点差は1点差もしくは同点で、3塁ランナーをホームには返したくない。
打席に立っているのは年間5本塁打前後の、どちらかといえば非力な打者という状況があったとする。

このシチュエーションで守備側が選択する作戦としては、球が速く外側への変化球を持ったサウスポーを出して三振を狙うこと。できるだけ打球を前に飛ばさせないことを最優先に考えるはずである。

打席には非力な左打者。
左投手が外寄りの球で三振を狙いにいく。
点差的に犠牲フライすら打たせたくない。

となると、この状況で重視すべきはレフト。浅めのフライがレフト側に飛ぶことを想定して、そこに肩が強く守備範囲の広い選手を入れるのである。
当然マウンドの投手にも外角中心の配球の指示が出るはずで、つまりこれが「代わったところに打球が行く」というジンクスの答えである。

そう考えると、第三戦で中田の打球を松山が後逸したシーンもそれなりに根拠が見えてくるのではないだろうか。
右打者の中田はすくいあげるようなアッパースイングで、なおかつ外寄りの球を巻き込むように引っ張るのが得意な打者である。
対するジャクソンは外側のスライダーを多投する速球派。しかもこのシリーズではあまり調子がよくない。

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つまりこの両者の相性を考えると、レフトにライナー性の打球が飛ぶ可能性が高いと考えられるわけである。そういう意味でも、レフトの守備固めに野間を出さなかったことが、結果的にシリーズ全体の流れを変えたと言えるのかもしれない。

冴えまくった栗山采配と勝ちパターンにこだわり過ぎた緒方監督の差

とはいえ、第六戦に関しては緒方監督に采配ミスがあったとは思えないし、ガタガタ言う気もない。
というよりあそこまで栗山監督の鮮やかな采配を見せられたのであれば、もはや「完敗」と言うしかない。

投手大谷というカードをちらつかせながら早めの継投で先手を打ち、ネクストバッターズサークルに打者大谷を立たせてその存在をちらつかせる。メンタル勝負においても選手起用の妙においても、栗山監督は間違いなく広島の一歩先を行っていた。

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逆に広島の敗因を挙げるとすれば、やはりシリーズ全体を通して今村とジャクソンにこだわり過ぎたことだろう。
この2人はセリーグ優勝の立役者であることに違いないが、このシリーズだけで言えばジャクソンの調子が悪すぎた。それにも関わらず全試合に投げさせて疲弊させ、案の定最後の勝負どころでの炎上。短期決戦では調子の悪い選手にこだわるとロクなことにならないという教訓通りの結果である。

まるで「後先考えずに無茶をするとしっかりツケがきますよ」と野球の神様が言っているかのような。

ただ、日本最高峰のチーム同士の高度な技術戦をたっぷりと堪能できたことは紛れもない事実である。残念ながら広島は負けてしまったが、それでも僕は大満足である。

日本一の名将となった栗山監督は2003年のバレンタイン監督に似ている?

栗山監督の柔軟かつ大胆な選手起用で日本一を勝ち取った日ハム。
多くの方がおっしゃっているように、今シーズンの栗山采配は本当に神がかっていた。

僕はこういう采配を見せる監督が過去にいただろうかと考えていたのだが、正直あまり思いつかない。
あえて挙げるとすれば、2003年にロッテを優勝に導いたバレンタイン監督だろうか。

相手投手との相性によって何通りもの打順を試し、試合の流れを見ながら柔軟に采配を振るう。
レギュラーを固定せずに1つの守備位置を複数の選手に守らせ、競争意識を煽りながら適度な休養を与える。
いわゆる「ボビー・マジック」と呼ばれる柔軟な采配で他球団を翻弄し、圧倒的な強さで優勝をかっさらった画期的な監督である。

そして今シーズンの栗山采配は当時のボビー・マジックに近いものがあり、特に二刀流大谷翔平の起用方を確立した手腕は特筆ものだった。

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ただ、この采配は選手を振り回す諸刃の剣であることも確かで、選手一人一人へのケアが非常に大事になるスタイルである。

バレンタイン監督は自身の強烈なキャラクターで選手をグイグイと引っ張って見せたが、栗山監督のスタンスは真逆だ。
選手との信頼関係を絶対的なものとし、監督の意図を隅々まで理解させるという行程を大事にしたのである。
選手を下の名前で呼ぶほどの距離感や、メディアに見せる顔と実際の素顔がまったく違うというツンデレっぷり。これらすべてが栗山監督が就任以来培ってきた財産なのだろう。

「2017年中日ドラゴンズ再建にはDeNA山口獲得が必須。投手陣の整備を進めて1-0での勝利を」

選手一人一人との関係を大事にし、自身の勝負勘の鋭さも保ち続ける。
コツコツと積み上げてきたものが今シーズンの後半に大爆発を起こした。そういうことなのだ。

2012年にレッドソックスの監督に就任したバレンタインがまったく機能しなかったのは有名な話である。
あれは恐らく選手との間に信頼関係を築く時間をすっ飛ばしたために、監督の破天荒さだけが一人歩きしてしまった結果なのだろう。
プライドの高いメジャーリーガーをメディアを通して批判したのも思いきり裏目に出たし、本人の勝負勘も鈍っていたのかもしれない。
日本であれだけ愛された監督が無能扱いされる姿はかなりエグかった記憶がある。

今後の日ハムがどうなるかはわからないが、栗山監督にはせめて大谷がメジャーに移籍するまではシャープさを保っていただければと思う次第である。

「大谷翔平さんが今すぐにメジャー移籍しないといけない3つの理由。最低でも2017年オフまでに」

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