ニュージーランドが南アフリカに辛くも勝利!!【結果】史上初の2連覇へ向けて難敵を下し、決勝進出を決める!!【ラグビーワールドカップ】

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街と海イメージ
イングランドで開催中のラグビーワールドカップ2015。
2015年10月24日(日本時間25日)に準決勝第一試合、ニュージーランドvs南アフリカの一戦が行われ、行き詰まる接戦の末にニュージーランドが20-18で勝利した。

連覇を狙うニュージーランドは、準決勝第二試合のアルゼンチンvsオーストラリアの勝者と31日に行われる決勝の舞台で激突することが決定した。

予想外に南アフリカのディフェンスがよかった。ニュージーランドが気負っていた

今回の試合、思ったよりも南アフリカのディフェンスがよかったのと、思ったよりもニュージーランドの出来がよくなかったというのが率直な感想だ。

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準々決勝のフランス戦を観る限り、普通にやればニュージーランドが勝つだろうと予想していた。だが、思いのほか苦戦した試合だった。
雨の影響もあったと思うが、縦横無尽に走り回る三次元的な攻撃があまり機能していなかったように思える。というよりも、南アフリカのディフェンスが相当がんばったという方が正しいか。

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突破力のあるニュージーランドのセンター陣に必ず2人でタックルに行く南アフリカ。特にキーマンとなるノヌーへの対応は抜群だった。縦への突破力は随一だが、若干ボディコントロールに難があるノヌーに対し必ず2人で囲むようにディフェンスしていた。
2人で囲んでノヌーが走るコースをふさぎ、1人目が抱え込むように引きずり倒して2人目がボールに絡みにいく。多少ゲインラインを突破されることは前提で、うまく味方の中に引きずり込んで孤立させる。そこで数的優位な状況を作ってターンオーバーを狙う。このパターンが見事にハマっていたのだ。
再三突破を試みるノヌーだったが、そのたびに南アフリカディフェンスの包囲網の餌食になっていた。

速い展開で相手をひっかき回したいニュージーランドに対し、1つ1つのラックやモールを確実に出してゆっくりと攻めたい南アフリカ。
ニュージーランドの持ち味である最初の接点からの素早い展開ラグビー。これを封じるために、最初の起点を潰す南アフリカの作戦はニュージーランド攻略の一つの答えかもしれない。

ニュージーランドの攻撃を前で止めること。1人に対して2人で止めにいくこと。密集で2人目、3人目がターンオーバーを狙いにいくこと。ハイパントに対する反応を徹底すること。そのあたりの作戦を南アフリカはバッチリ決めごととして徹底してきたのだと思う。特に密集の近くのディフェンスの集散は本当に速く、ニュージーランドがまったく自由に走れない状況が続いていたのだ。

ニュージーランドはキックを蹴り過ぎだ。いくら雨が降っているからといっても、多過ぎる

とはいえ、全体的には終始ニュージーランドが優位に進める展開だった。
ボールを支配していたのはほとんどニュージーランドだったし、プレーしていた位置は常に南アフリカ陣内だった。
南アフリカは防戦一方ながら、絶好調のスタンドオフ・ポラードのペナルティゴールでどうにか流れをつなぎ止める。そういう試合だった。
そして、やはり南アフリカのディフェンスの基本は「待ちのディフェンス」である。前に出て止める意識はあるものの、ニュージーランドの選手に裏に出られてしまうシーンが随所に観られた。コンタクトの瞬間にスピードを落として相手を見てしまうのだ。

だが、それでもトライ数が2つと少なかったのは、グラバーキックやハイパントを多用して自ら流れを止めてしまうニュージーランドの拙攻のおかげである。

恐らく、南アフリカがここまでのディフェンスをしてきたのは想定外だったのだろう。ニュージーランドの選手たちに「俺たちがこんなに走れないはずがない」という気負いが生まれたのだと思う。「あのフランス相手でもあれだけ走り回った俺たちが!!」と。
相手のプレッシャーのキツさにも圧されて、苦し紛れにキックを多用してしまったのである。

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ラグビーの常識として、悪天候での試合ではキックが多くなるというのがある。ボールが滑る中でのパス回しや足場の悪い状況でのランは効果的ではないという考え方によるものだ。

だが、僕は必ずしもそうは思わない。前から言っているように、キックを多用するのが効果的であるとはどうしても思えないのである。
ボールが滑るからパスを減らすのはわかる。足場が悪いから走れないというのも理にかなっている。だからといって、ハイパントやグラバーキックを多用するのは絶対に違うと思うのだ。

キックというのは手っ取り早く相手陣内に入るには効果的だが、その分相手にボールが渡る可能性も高くなる。たとえうまく追いつけたとしても、きっちりキャッチできるとは限らないし着地と同時に倒されないとも限らない。
何よりラグビーボールは楕円形だ。あの変な形のボールを足で扱うことがどれだけ難しいか。そしてどれだけバウンドを予測することが困難か。単純な話なのだが、想定外のことが起きる可能性が非常に高いのである。

そういった意味でもキックというのは一か八かの要素が多すぎるし、多用するのは効果的であるとは思えないのだ。使うのであれば相手の意表を突く場面に限定して、基本は確実にタッチに出すためのものと考えるべきである。特に負けたら終わりの大舞台では、より可能性の高いプレーを選択するべきなのだ。

もちろん前回の記事でも言ったように、ダン・カーターくらい精度の高いキックを常に蹴れるのであれば十分なオプションの一つとなる。だが、それでも今回の試合は蹴り過ぎだ。
「カーター、イキってんなオイ」
このセリフを何回テレビの前でつぶやいたかわからない。

では、この試合でニュージーランドはどのようなプレーをするべきだったのか。
簡単な話である。近め近めの縦突進で徐々に前進するのだ。
ボールを持った選手が相手に低い姿勢で当たる。抱え込んで引きずり倒すディフェンスに対して、無理に前に出ずにラックを作る。そこにサポートプレイヤーが素早くカバーに入り、ボールをキープする。ボールをピックしたプレイヤーが近くのサポートに渡す。もしくは自分で持ち込む。なるべく味方の近くでコンタクトを発生させ、素早いサポートでボールをキープしながら前進するのだ。コンタクトしたプレイヤーがラックを作らずにダイレクトでサポートプレイヤーにボールを渡してもいい。とにかく近め近めを徹底するのだ。
外に展開するのはトライをとる最後の1回のみ。できるだけ近い位置でパスを出し、近い位置で相手に当たるのだ。オールマイティな選手がズラっと揃うニュージーランドである。多少のプレースタイルの変更なら問題なくこなすはずである。

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ただ、後半5分のドロップゴールはすごかった。あれは本当にさすがだった。「鮮やか」以外の言葉が見当たらない。アドバンテージが出ている状況での思い切ったプレーというのもあるが、あの判断はすばらしいことこの上ない。

南アフリカはラインアウトを取れないのが痛かった

対する南アフリカ。
ディフェンスはうまくいっていたが、実質攻め手はなかった。
勝利優先でペナルティゴールを確実に狙う作戦はよかったが、肝心のトライを奪える気配がまったく感じられなかったのだ。

特にラインアウトに関しては、サインを読まれてるのではないかと思うほど精度が低かった。あそこで確実にマイボールをキープできないのは厳しい。傾きかけた流れが完全に断ち切れてしまっていた。
特に前半27分にニュージーランドに奪われたラインアウト。あれは相当キツかった。あそこをキープできていれば、もしかしたら試合の結果すら変わっていたかもしれない。そう思わせるくらいの大きなプレーだったと思う。
スクラムは分があっただけに、マイボールのラインアウトをキープできなかったのは残念であった。

ディフェンスに関しては、先ほども言ったように相当がんばっていたのは間違いない。ターンオーバーにも成功していたし、密集では優位に立っていたのである。だが、そこからキックをしてしまうのがもったいなかった。せっかくターンオーバーしているのだから、そのまま走ればいいのにハイパントを蹴ってしまうのだ。
そうこうしているうちに、前半からMAXパワーを出してディフェンスし続けていた影響で攻撃につなげる体力が残らなかった。そういう結末である。

もう一度言うが、作戦としては成功していたと思うのだ。

・素早いディフェンスで相手の起点となるプレイヤーを潰す
・密集で優位に立ってターンオーバーを狙う
・スクラムで相手にプレッシャーをかける
・ペナルティゴールを確実に決める

ニュージーランドの波状攻撃を封じる答えは見せたのだ。
だが、自分たちの攻撃の要となるドライビングモール。ここにつなげるためのラインアウトをキープできなかったことがすべての敗因だった。

点差は2点だが、力の差はかなりあった試合だった

37分のニュージーランドのスクラム。
実質、最後の攻防になるシーンだが、ここのぶつかり合いはかなり見応えがあった。

南アフリカはターンオーバーからのトライを狙わなくてはならない場面。
ニュージーランドがパス回しからの縦突進を試みるのだが、とにかくラインが浅く、まったくスピードにのれていない。いや、むしろ南アフリカのディフェンスがスピードにのる前に止めているのだ。最後の力を振り絞ったナイスディフェンスである。
ドロップゴールを蹴ろうとしたダン・カーターがボールが手に着かないシーンがあったが、それ自体はあまり関係がない。単純に南アフリカのディフェンスがよかったのだ。これこそ僕がよく言っている「ラグビーはディフェンスから」の言葉そのものである。

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激しいディフェンスからニュージーランドのノックオンを誘い、南アフリカボールのスクラム。これが最後のワンプレーである。

攻める南アフリカ。
守るニュージーランド。
どうにか前進しようとする南アフリカだが、ニュージーランドのディフェンスが固い。前進できない南アフリカ。両チームの意地がぶつかる。
ボールを回す南アフリカだが、最後はノックオンを犯してしまい万事休す。

得点20-18でニュージーランドの勝利!!
怒号のような歓声が沸き上がるスタジアム。
喜ぶニュージーランドの選手たち。
崩れ落ちる南アフリカ。
すごい試合だった。

繰り返しになるが、ニュージーランドの出来はそこまでよくなかったと思う。天候もあるだろうが、前回のフランス戦と比べてもそれほどいい内容の試合ではなかった。だが、最後は力で追いすがる南アフリカを押し切った格好だ。

南アフリカは結局、キックでしか得点を挙げることができなかった。
これは一試合通じてボールを支配され続け、攻め手もなかったということを意味する。
点差は2点だが、実際自力の差はあったのではないかと思う。

予想以上の接戦となった試合だったが、実力通りの結果が出たといってもいいのではないだろうか。

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