村田覚醒? 強敵バトラーを壮絶左フックで5RTKO。ついに自分の馬力に気づいちゃったか? 前に出て腕を振れば相手は下がる【結果・感想】

村田覚醒? 強敵バトラーを壮絶左フックで5RTKO。ついに自分の馬力に気づいちゃったか? 前に出て腕を振れば相手は下がる【結果・感想】

横浜イメージ
「ボクシング記事一覧リンク集」へ戻る
 
2019年12月23日、神奈川県・横浜アリーナで行われたWBA世界ミドル級タイトルマッチ。同級正規王者村田諒太vs同級8位スティーブン・バトラーの一戦は5R2分45秒TKOで村田の勝利。初防衛に成功するとともに戦績を16勝2敗13KOとした試合である。
 
 
今年7月にロブ・ブラントとの再戦を制して王座に返り咲いた村田。
今回の挑戦者スティーブン・バトラーは戦績28勝1敗24KOと、80%を超えるKO率を誇る強打者である。
 
試合は初回から積極的に前に出て腕を振る村田に対し、バトラーもリーチの長さを活かした右で村田の打ち終わりを狙う。リング中央で両者のパンチが行き交う激しい立ち上がり。
 
ところが3Rに入ると、徐々に村田がパワーを発揮しバトラーを押し込むシーンが目立ち始める。
右フックをガードの外側から側頭部にヒットし、返しの左をボディに。前戦のロブ・ブラント戦同様、力強いスイングをバトラーに浴びせていく。
 
バトラーも左の打ち終わりに右ストレートを当てて何とか持ちこたえるものの、村田の圧力を抑えきれず。
5R終了間際にコーナーに詰まると、村田の右のダブル→左フックを顔面に被弾し豪快にダウン。すぐさまレフェリーが試合を止め、村田のV1が決定した。
 
「京太郎、デュボアの右に沈む。覚悟を決めてカウンターを狙いにいった京太郎に感動しました。日本ヘビー級の歴史が動いた」
 

村田の初防衛戦に行こうと思ったけど、さすがに12月下旬の月曜開催はねえわ。しかも拳四朗の試合をハイライトにしやがって

今年7月にロブ・ブラントに劇的な勝利を挙げた村田の初防衛戦。
 
今回は会場が横浜アリーナということで一瞬「行ってみようかな」とも思ったのだが、
・12月下旬の月曜日開催
これを見た瞬間、あっさりとテレビ観戦が決定した。
 
恐らく多くの方が同じことを考えたと思うが、さすがに月曜日はねえわ
 
当日の客入りがどうだったのかは知らないが、もうちょい日程をどうにかできなかったものか。年末に大会場を抑えるのが難しいのも理解できるし、その中で横浜アリーナが使えたのは御の字だったのかもしれない。
だが、それでもせめて週後半とかね。横浜アリーナ自体は好きな会場なので、ちょっと残念だったなと。
 
 
てか、それより個人的にメインに位置づけていた拳四朗vsランディ・ペタルコリン戦をハイライトにしやがってゴルァ。
 
「拳四朗vsペタルコリン、チャベスJr.vsジェイコブス、亀田京之介vs前田稔輝振り返り。MVPは拳四朗で異論ないよな」
 
拳四朗ってアレですよ。
現在6連続防衛中で、そのうちの4度がKO勝利という名王者ですよ。
 
その選手の試合をカットするって、いったいどういうこと?
そんなに人気ないんすか?
 
ちなみに全盛期の長谷川穂積が2008年6月~2009年12月にかけて5連続TKO勝利を挙げているわけだが、今の拳四朗はそれに匹敵する勢いがあると思うんですけどね。
 
などなど。
あれこれ不満を抱えつつも、村田の防衛戦を視聴した次第である。
 

いい試合だった!! 僕の中では村田のベストバウト。強敵バトラーにあの勝ち方は大きい

試合を観た感想だが、率直に申し上げてかな~りよかった
僕が観た村田の試合の中では文句なしのNo.1。冗談抜きで一皮むけた気がする。
 
 
まず挑戦者のスティーブン・バトラーだが、この選手は普通にいい選手だったと思う。
長いリーチを活かした思い切りのいい右や、左右に動く足など。ピンチになると頭に血が上ってラフになる面も見られたが、それも含めて文句なしの強敵だった。
 
「村田vsバトラー予想。ロブ・ブラントVol.2のラッシュでKOを目指せ。「圧力をかけられたら何もできない」のはマジだと思うぞ」
 
村田のこれまでの相手を比較するなら、
エマヌエーレ・ブランダムラ<<ハッサン・ヌジカム<ロブ・ブラント≒スティーブン・バトラー
のイメージ。
 
恐らく噛み合う相手であればどの選手にもそこそこ善戦できる選手。
デメトリアス・アンドラーデにはヒラヒラと捌かれてしまいそうだが、トップの少し下くらいの実力は間違いなくあったのではないか。
 

積極的に前に出て腕を振る村田。単発で終わらず追撃の連打でバトラーをねじ伏せる

そして、その実力者バトラーを村田諒太は力でねじ伏せてみせた。
 
開始直後からスタンスを広げてしっかりと足場を決め、ジャブを出しながら前進。1発1発のパンチを強めに打ち込んでいく。
 
自分の間合いに入ってからは、軽い左を見せたあとにオーバーハンドの右。フック気味のパンチをガードの外側からねじ込み、バトラーの側頭部を揺らす。しかもそれが単発で終わらず、勢いのまま2発3発と畳み掛ける。
 
さらに腰を落としてガードを固めるバトラーに対し、今度は返しの左ボディを突き上げる。
 
近づく際のジャブは2発。
左を見せてからの右も1発で終わらず、ガードの上からでも強引に2発、3発と打ち下ろす。
そして、相手が怯んだところに得意の左ボディを突き刺す。
 
この「ガードを上げて近づく→左ジャブ→右オーバーハンド→左ボディ」までの流れは村田の得意パターンだが、今回はよりアグレッシブな動きでバトラーを追い詰めていった。
 

防御重視の慎重なスタイルから、自ら試合を動かす積極性、決定力を身につけた

これまでの村田はどちらかと言うと防御に比重を置いた慎重なタイプ。
 
相手にガードの上を打たせながら距離を詰め、ロープを背負わせジャブで突き離してから右のオーバーハンド。堅いガードと重厚なプレスが持ち味のブロック&リターンを得意としていた。
 
ただ基本的に手数が少なく、先に相手に打たせてから攻撃に入るために後手に回るケースも多い。
相手をコーナーに追い詰めてからも防御をサボらず慎重な姿勢を崩さないので、被弾は少ないもののやや決め手に欠ける面も目立っていた。
 
2018年4月のエマヌエーレ・ブランダムラ戦では、ブランダムラを圧倒しながらも攻めあぐねた結果、8Rまで粘られている。また2018年10月のロブ・ブラントとの第1戦では、手数の少なさが響いてブラントの連打に対応できず大差判定負け。
 
村田諒太の覚醒とコロナによるブランクがもったいなさすぎな件。ブラント、バトラー戦の勢いのまま間髪入れずに次戦に行きたかった
 
それがこの試合では一転、常に先手を取って試合をコントロールする積極性を見せ、最後はコーナーでの連打で完璧なTKO勝利。
ああいう積極性や決定力の高さはこれまでの村田にはなかったものだと思う。
 

ロブ・ブラント戦がきっかけになったっぽいな。自分の馬力、フィジカルの強さに気づいたか?

序盤からグイグイ前に出て腕を振り、馬力の違いを見せつけ快勝した村田。
 
恐らくだが、個人的に前回のロブ・ブラントとの再戦で何かを掴んだ気がしている。
あの試合も序盤からエンジン全開で前に出て腕を振り、ブラントの手数と足を抑え込んで2RTKO勝利を挙げたわけだが、要はそういうことなのかなと。
 
「やったぜ村田JUST DO IT.マイナビ諒太!! ロブ・ブラントを2Rで葬り王座返り咲き。辞めなくてよかったなオイ」
 
これまでは「しっかりガードを上げて相手をコーナーに追い詰める→カウンターに注意しながらじっくり攻める」という流れを大事にしていた村田だが、前回のブラント戦ではそんなことはお構いなしに序盤からゴンゴン前に出て勝負をかけた。
 
・負けたら道が閉ざされる瀬戸際の試合
・日本の大観衆の前での試合。
諸々の要素に後押しされ、いい意味で村田を開き直らせたのだと思うが、それが見事な勝利を引き寄せたと言える。
 
と同時に、村田本人が自分の馬力に気づいたのもあるのでは? と想像している。
 
村田諒太という選手はガードが固く相手を追い詰めるフットワークにも長けるが、それ以上に階級屈指の馬力、フィジカルの持ち主でもある。
 
強引に前に出て力強く腕を振れば、相手は勝手に怯んでくれる。
そこまでガードを重視しなくても、こちらがパンチを出していれば反撃してこない。
 
あれ?
俺のパワーって実はすごいの?
みたいな。
 
ブラントを猛ラッシュでねじ伏せたことで自らのパンチ力や馬力に自信が芽生え、攻撃に比重を置いても問題ないことに気づいた。
 
 
なおかつ今回のバトラーはパンチ力はあるが、ブラントほどの手数はない。序盤からフルパワーで前に出なくても、連打に巻き込まれてズルズルいく心配はない。
 
たとえばこれまでの比重が攻撃3、防御7だったとしたら、今回は攻撃5.5、防御4.5くらいのイメージ。
右オーバーハンドから左ボディにつなぐ際、豪快に身体の正面を晒してはいるが、あれだけの連打と圧力があればめったなことではカウンターは飛んでこない。
 
前回のブラント戦、今回のバトラー戦で、自分の強フィジカルを活かすちょうどいいバランスを見つけたのかなと。


もしかしたら、この2戦で「本来の村田のボクシングが崩れた」と評価する人もいるかもしれない。だが、少なくとも僕には成長したように見えたのだが、どうだろうか。
 
まあ、長いこと“自分のボクシングを探す旅”とやらをしていた村田だが、遅れてきた反抗期()もようやく終わりに近づいた感じか?
 

負けに負けるな。スティーブン・バトラーは文句なしにいい選手だった。決して楽勝ではなかったよね

なお繰り返しになるが、今回のスティーブン・バトラーはしっかり強かった(と思う)。
パッと見では村田の楽勝に思えるかもしれないが、試合後の村田のボコボコの顔を見ればそれは明白。実はそこそこ際どい試合だったと思っている。
 
テレビの解説も言っていたが、村田の打ち終わりを狙った右。アレが相当厄介だった気がする。
今回の村田は左ジャブをやや多めに出していたが、そこに相打ちのタイミングでことごとく合わせてくる。
村田の左も当たってはいるが、その分危険なカウンターも飛んでくるという。
 
特に3、4Rは完全に両者の我慢比べだった。
近づいて連打を浴びせたい村田と、スペースのある間合いで対峙したいバトラー。
 
村田の左にバトラーが渾身の右を被せ、さらに追撃のワンツー。
遠い位置から右のボディストレートを突き刺し、肘を使って村田を突き離す。
 
実際、5Rの序盤は村田にも失速が見られたし、決して余裕があったわけではない。仮にあそこでバトラーが踏ん張っていたら、村田が後半もあのペースを維持できていたかは微妙。
ブラント戦以前の村田であれば、ひょっとしたらバトラーが勝っていたかもしれない。
 
 
そういう意味でも、2018年10月の敗戦はやはり大きな意味を持つ。
 
「村田はブラントに勝負師として負けてる。準備、経験、覚悟。すべての面でブラントが上回り完勝。文句なしの感動的な試合」
 
以前にも申し上げたが、村田はスタイル的に得手不得手が出やすいタイプなので、どうしてもある程度の場数は必要になる(気がする)。
“五輪金メダリスト”のブランドを守るために相手を選ぶのも大事だが、それ以上に強敵にどんどんぶつけて成長を促す方が実は近道なのかな? と思ったり。
 
 
そういえば、関係ないけど具志堅解説員ってやっぱり有能だよね。話を振られる機会は少なかったが、そのつどコメントは的確だった気がする。
 
「ボクシング記事一覧リンク集」へ戻る
 

Advertisement
 
 
 
 

 

 

 

 
 

 
 
【個人出版支援のFrentopia オンライン書店】送料無料で絶賛営業中!!