映画館とかいうポテンシャルの塊。今はシネコン最強で座席占有率15%が損益分岐点なんだってさ【長文】

映画館とかいうポテンシャルの塊。今はシネコン最強で座席占有率15%が損益分岐点なんだってさ【長文】

映画館イメージ
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僕は映画を観るのがぼちぼち好きで、ここでもたまに感想を書いたりしている。
ただ、特別映画に詳しいわけではなく、観ている本数もどうということはない。
 
ちなみに2019年は観た本数が28本、そのうち映画館で観たのが9本。
これが多いのか少ないのかはよくわからないのだが、一応ライトなファンくらいなのかな? などと思ったりはしている。
 
 
そして映画館に行くたびに思うのが、毎回めちゃくちゃ空いていること。
先日行った「ファイティング・ファミリー」などは、平日のレイトショーとはいえ公開1週間にもかかわらず観客はわずかに6人。恐らく200人以上入るシアターだったはずで、「おいおい大丈夫か?」と心配になるほどのガラガラっぷりだった。
 
「「ファイティング・ファミリー」感想。クソ名作出ました。ロック様「プロレスは脚色された世界だ。だが、観客は嘘を見抜く」」
 
で、いい機会なので、前々から気になっていたことを調べてみようと。
 
・映画館はいつもガラガラだけど大丈夫なの?
・なぜ全国的に料金が1800円均一なの?
・映画バイヤーってどんな仕事?
 
これまで気にはなっていたけど放置していた諸々をざっと漁ってみた結果、わかったことが1つ。
「映画館のポテンシャルすげえww」
 
近年、定額ストリーミングサービスの台頭や日本の経済状況によって下降気味ではあるが、それでも映画館にはまだまだ可能性が残されている(気がする)。これまでのやり方を少し変えるだけで一気に化けそうな気配。
 
でも、従来のシステムを変えるのはなかなか難しいかも?
そんな印象を持った次第である。
 
 
というわけで、今回は映画館を含めた映画業界について、素人なりにあれこれ述べてみようと思う。
 
なお、自分でも理解しきれていない部分もあるので、間違いがあった場合は申し訳ないです。
 
映画館ビジネスがコロナで苦境? 久しぶりに映画館に行ったら終末感が尋常じゃなかった。配信に舵を切るのはいいけど映画館文化は残してほしい
 

映画館はいつもガラガラだけど大丈夫? 座席占有率15%が損益分岐点なんだって

表題の通りなのだが、下記の記事によると映画館というのは「ガラガラでも割とやっていける」ビジネスらしく、座席占有率が15%あれば損益分岐点に到達するとのこと。


また、年に1回以上映画館に足を運ぶ人は全体の32.4%、そのうち4回以上映画館に行くヘビーユーザーが12%。
逆に年に1回も映画館に行かない人の割合は68.6%と、約70%の人は1年を通して映画館に足を運ぶ機会がないという。


さらに下記の記事を読むと、映画館のスクリーン数は2000年:2524→2018年:3561と増加傾向にあるが、通常映画館の数は2000年:1401→2018年:411と、20年弱で1/3以下まで減少している。


映画の公開本数に関しては2010年まではだいたい年間800本前後で推移していたものが、そこから一気に増加。2010年代は1100〜1200本が公開されている。
ところが2010年代から平均入場者数は減少傾向にあり、全体的に集客力のあるヒット作が減っているという。
 
 
申し上げたように、映画館ビジネスは座席占有率15%でトントン。
1年で1度も映画館に行かない人は全体の約70%にも上り、映画館ビジネスは年4回以上映画館に行くヘビーユーザーに支えられているということになる。
 
ただ、あくまでそれは同一の施設に複数のスクリーンを有するシネコンに限った話。通常の映画館は軒並み姿を消しており、現在は資金力のあるシネコンが業界を席巻しつつある。
 
その上、映画館の売り上げは実に25%が飲食やグッズによるものだという。
「映画館って平日はガラガラでもつぶれないのはなぜ?」
 
つまり「映画館の損益分岐点は15%。客席がガラガラでも案外やっていける(ただし最新の設備投資や飲食店をテナントできるシネコンに限る)」というのがファイナルアンサーらしい。
 
 
なるほどねぇ。
たとえば300席×8シアターのシネコンであれば、常時8割埋まる作品が2本あれば、それ以外が観客ゼロでも座席占有率は20%。普通に損益分岐点をクリアできる。
 
客入りの悪い作品をさっさと打ち切りにして、ヒット作の上映期間を延ばせばさらにコスパは上がる。飲食店のテナントを充実させればそれだけ売り上げも期待できる。
 
まさに“資金力こそ大正義”の構図である。
 
「映画「一度死んでみた」感想。陰口をのぞき見できる超怖い映画w 自分がいないところで他人の本音を知る」
 

全国的に料金が1800円均一なのは何で? 映画配給と映画館の経営母体が同じなんだってさ

続いて「全国的に料金が1800円均一である理由」についてだが、これは映画業界の構造上の問題が大きいとのこと。
「日本の映画料金、世界でもトップクラスに高いのはなんで?」
 
まず日本における“1800円”という金額は世界的にみても相当高いらしく、2014年の調査では世界5位
 
「Nation Master」の資料によると、
 
第1位:サウジアラビア 60ドル
第2位:アンゴラ 21.5ドル
第3位:スイス 20.21ドル
第4位:ノルウェー 18.14ドル
第5位:日本 17.67ドル
 
ちなみに米国は第43位の10ドル、韓国に至っては第61位の8.41ドル。
サウジアラビアの60ドルはさすがに笑うしかないが、日本の映画料金が割高なことは明白である。
 
また1995年以降、映画料金はほぼ1800円のまま横ばい状態が続いているとのこと。


この1800円という金額が全国で概ね均一な理由については、上記記事の2ページ目に記載がある。
「配給と映画館の経営母体が同一会社」
 
現在のシネコン映画館は
・東宝系列のTOHOシネマズ
・イオン・シネマ
・松竹マルチプレックス・シアターズ
・ティ・ジョイ
の4社の独占状態。
 
基本、自社作品だけではスクリーンの数が埋まらず、他社から作品を提供してもらう必要がある。つまりTOHOシネマズで松竹の作品を上映することもあれば、その逆もあり得る。
 
記事の通りシネコン全盛によって配給会社と映画館の経営母体が同一というケースが増え、なおかつ横のつながりも強い。他社の映画館でも同じ作品が上映されているため、1つの映画館だけ料金を下げるなどの工夫が非常にしにくい状況であるとのこと。
 
2019年3月にTOHOシネマズが映画料金を1800円→1900円に値上げしたことが話題になっていたが、恐らく同様の理由で他社もこれに追随する可能性が高いという。
 
 
なるほど、そういうことなのね。
前売り割引、レディースディ、メンズディ、映画サービスディ、レイトショー、モーニングショー、夕方割引、障害者割引、シニア割引、学生割引、夫婦割引、団体割引、雑誌の割引券、会員割引、映画の日割引、誕生日割引、ムビチケなどなど。
 
映画館の割引きサービスには枚挙にいとまがないが、基本料金を下げられない分、こういうところで差別化を図っているわけか。
 

「映画バイヤー」の仕事。脚本を読んで仕上がりを想像し、作品を選定する。いかに安く買い叩くかも腕の見せどころ

3つ目の「映画バイヤー」についてだが、下記の本を読んでみたところなかなか興味深かった。

 
著者の梅原健という方は日本で初めてニューヨーク大学映画学科を卒業した映画バイヤーの先駆者的存在で、「アマデウス」や「ラストエンペラー」「ミリオンダラー・ベイビー」を買い付けた実績を持つ。
学生時代は1日8時間映画館にこもるなど、とにかく映画に触れる生活を送り、それがそのまま仕事になったという。
 
 
「映画バイヤー」とは、文字通り映画を買い付ける仕事。
映画製作会社、もしくはセールスを担当する代理店から独占配給権を買うのが主な仕事となる。
独占配給権というのは、劇場配給や上映数ヶ月後のDVD発売やテレビ放映セールス、最近では定額配信サービス等の権利を独占的に得ることを指す。
 
 
映画の買い付け方法は主に完成品を試写して買い付ける方法と、製作前の脚本やキャスト、監督、製作費の情報を総合的に判断して買い付ける方法の2種類。
 
ただ、競争は常に激しく、試写後の買い付けでは目ぼしい作品はまず手に入らない。
なるべく早く製作予定の脚本を手に入れ、キャストと監督、製作費を見てどんな映画になるかを想像する。市場の流れと自らの経験を照らし合わせ、GOサインを出すかの判断を下す必要がある。
 
バイヤーに必須な資質は主に
「脚本の読みこなしや監督の作風、キャストの傾向等、総合的な判断力」
「移り変わるトレンドを読むアンテナの高さ」
「他社に遅れを取らない瞬時の決断力」
の3つ。
 
そして何より大事なのが、担当者との日頃からのコミュニケーション。
どれだけ通信手段が発達して世界が狭くなろうと、信頼関係を作るためにはFace to Faceに勝る方法は存在しないとのこと。
 
「「ターミネーター:ニュー・フェイト」最高だった。ようやくT2の呪縛から解き放たれた。サラ・コナーのカッコよさに震えて眠れ」
 
また配給権の権利金の支払い方法にも2種類あり、1つは一括ですべてを払う定額フラット買いで、もう1つが相手の取り分に対する最低保証金制。現在、フラット買いはほとんど行われず、相手の最低保証金を先払いする2つ目の方法が主となっている。
 
最低保証金は製作費の7〜12%が相場で、ここをいかに安くできるかもバイヤーの腕の見せどころ。映画の選定と並ぶ重要な部分であるとのこと。
 
 
映画バイヤーの仕事は基本的に勝率25%を超えれば万々歳というもので、近年の製作費の高騰によって、ハリウッドの超大作を買い付けた場合は最低保証金や宣伝費等、すべてを合わせて30億以上という一大プロジェクトになることも。
 
個人では一生お目にかかることのない金額を動かすギャンブル性や、そのギャンブルを会社の金を使ってやれる高揚感。映画が当たったときに得られる快感。
 
著者が言うには、映画バイヤーの仕事は一度味わったらやめられない麻薬のような仕事であると。
 
 
僕自身、映画バイヤーという仕事を「映画祭とかで映画を買い付ける人でしょ?」程度にしか認識していなかったが、同書によって細かい部分を垣間見られたことは非常によかった。
 

映画館ビジネスはポテンシャルの塊に思えるよ。作品の垂れ流しな分、些細なところで差別化できる

以上がちょろっと調べた感じなのだが、いかがだろうか。
僕的には映画業界、特に映画館ビジネスにはまだまだ改善の余地があると言うか、ポテンシャルの塊のように思えたのだが。
 
中でも座席占有率15%が損益分岐点で、年4回以上映画館に行くヘビーユーザーが支える状態なのはホントにもったいない。
 
残念ながら単独の映画館はオワコンかもしれないが、シネコンに関しては少しの工夫で一気にハネるのではないか。たとえば年に1度も映画館に行かない70%のうち、5%でも振り向かせることができれば。
 
ハコ自体は増えているのだから、ヒット作を上映する以外にも何かきっかけがあればね。
 
「映画「クリード 炎の宿敵」感想。リングでは俺はひとりじゃない。ここまで綺麗に次世代に引き継がれた名作が今までにあったか?」
 
てか、映画館って基本的に垂れ流すだけですからね。
どこの映画館に行ってもほとんど印象に残らず、ただ映画を観て帰ってくるだけ。「またあそこの映画館に行きたい」と思った記憶はまったくない。
 
逆に言うと、それだけ映画館には改善の余地が残されているという意味でもある。
 
無理やり印象に残った映画館を挙げるのであれば、新宿駅にある「新宿バルト9」と小田急線本厚木駅にある「あつぎのえいがかんkiki」
 
「新宿バルト9」はシアターの面積はそこまで広くはないが、その分座席に傾斜がある。そのため前の人の頭が邪魔でスクリーンが見えないといった状況が起きることはまずない。これは個人的にかなり高ポイントだった記憶がある。
 
また「あつぎのえいがかんkiki」に関して言うと、上映前に係の人間から映画の説明があるのがいい。
作品の背景や監督の作風、主要キャストについての概要が約1、2分語られるので、ある程度の知識を持った状態で鑑賞に臨むことができる。
 
正直、どちらも大したことではないのだが、ほんの些細なことで観客に映画館を印象付けることができる。こういう地道な工夫を重ねていけば、まだまだ映画館ビジネスは伸びる気がする(気のせい?)。
 
「コマンドー」やっててワロタww
シュワちゃんに絶対弾が当たらないヤツ。


ちなみにスポーツ観戦用のパブリックビューイングとして映画館を使用したらどうか? という案を聞いたことがあるが、個人的にはよくわからない。
 
もともと映画は静かに観るのが基本だし、携帯の電源も切る必要がある。飲食についても他人の迷惑にならないことが大前提で、お酒を飲みながら盛り上がるのが目的のスポーツ観戦とは相性が悪いように思えるのだが。
 
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