亀田兄弟がおもしろいこと始めたぞ!! JBCに6億6000万訴訟? 北村弁護士と強力タッグで損害賠償裁判スタート。日本のジム制度にも切りこむ

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青空と湖イメージ
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ボクシングの亀田プロモーションと亀田興毅氏を含む「亀田3兄弟」が日本ボクシングコミッション(JBC)と理事ら10人に対し、2016年1月14日付で総額6億6000万円の損害賠償を求め提訴した。

亀田3兄弟の代理人である北村春男弁護士は、2016年1月23日に行われた会見で亀田3兄弟が国内で活動できなくなった2年間のファイトマネーと興行収入が6億6000万円に相当すること、そして3兄弟の国内復帰に向けた努力をJBCはすべて拒否してきた旨のコメントを述べた。

なお、2013年9月に行われた亀田大毅vsリボリオ・ソリス戦の直前に、亀田興毅氏と和毅選手から監禁、恫喝、暴行を受けたとしてJBC職員が東京地裁に提訴した件は2015年9月にそのような事実はなかったとして棄却となっている。

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また、この「監禁 、恫喝、暴行」の提訴に対する名誉棄損の反訴は2016年2月に判決が確定し、JBC職員に320万円、フリージャーナリストに300万円を支払うことで決着している。

「亀田3兄弟 JBC相手に“損害請求”総額6億6000万訴訟」
「亀田興毅氏らJBCなどを相手取り「6億6000万円」損害賠償請求」
「亀田興毅氏「真実が明らかになって一安心」 JBC職員監禁ブログ訴訟で勝訴確定」

ボクシング界激震!! 亀田兄弟がJBCにまさかの6億6000万円訴訟

ボクシング界を揺るがす衝撃的なニュースが流れた。
亀田兄弟がJBCとその理事10人を相手に総額6億6000万円の訴訟である。

この件について、記事に掲載されていることを僕なりにもう少し詳しく調べてみた。
なお、すべての一次ソースを確認したわけではないので、事実関係に若干のズレがあるかもしれません。ご了承ください。

まず2016年2月に判決が確定した「亀田兄弟によるJBC職員監禁 、恫喝、暴行」に対する名誉棄損の訴訟は、JBC職員に320万円、フリージャーナリストに300万円の支払いを命じることで決着しているとのことだが、元の請求金額は2000万円であったこと。

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フリーライターがブログ記事で「亀田陣営がJBC職員に対し恫喝、暴行を行った」と記載したことが名誉棄損に当たるという判決であったこと。

次に、今回の総額6億6000万円の訴訟はJBCの理事10人に対してのものであること。理事1人に対する請求金額が6000万円。×10人で総額が6億6000万円となっていること。

北村弁護士が言うには、日本ボクシング界は所属ジムのライセンスが剥奪されると選手個人のライセンスまで剥奪されてしまうこと。
つまり、ジムの活動をストップすればそこに所属する選手全員の活動をストップすることができてしまうこと。また選手は日本で試合をするためにはどこかのジムに所属している必要があり、これは諸外国ではあり得ない制度であること。

マッチメークはマネージャー、トレーナーはあくまで選手個人についている人間、ジムはただの練習場所に過ぎないというのが諸外国のボクシング界の常識であること。

ところが日本は試合会場を抑えるのも試合を組むのも選手を指導するのもすべて所属ジムが行い、すべての窓口が所属ジムという状況であり、これは極めて特殊であること。

「内山国内防衛ワロタ _( ̄▽ ̄)ノ彡 だから言っただろww 大田区総合体育館を想定しておけと」

選手の生殺与奪を所属ジムが握っているために、ジム間の移籍がトップ選手になればなるほど難しいケースが多いということ。
業界の縦横のしがらみが強く、移籍を画策するだけで裏切り者扱いされる場合もあること。

などなど。

総額6億6000万円という強烈なインパクトの裏で、ボクシング界の実情とその慣習を浮き彫りにするような訴訟であることがわかってきた次第である。

この訴訟は思ったより大ごとになるんじゃないか?

いや、これはなかなかおもしろい。
「日本で活動できなくなったのは亀田の自業自得だろ」とか「また亀田が金儲けかよ」と感情的に憤っている方も大勢いるのだが、そういう意見はここではひとまず置いておく。
そんなことより、この訴訟はかなり大ごとになる可能性をはらんでいると思うのだがどうだろうか。

とりあえず2000万円の請求金額が300万円と320万円になったと聞いたときは「北村弁護士の一人勝ちか?」などと思っていたのだが、どうやらそんな小さな話ではなかったようである。

以前から言っているように僕は亀田3兄弟に対して何の感情もないので、自業自得とか金儲け云々に関しては特に言うことがない。
ただ単に、今回の訴訟が日本のボクシング界の常識を根底から覆すきっかけになり得るのではないかと思い、非常に興味がわいたのである。

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日本のボクシング界はジムのさじ加減一つで選手の競技生活がとん挫する

この裁判、仮に亀田側が勝訴したとして「損害賠償請求できるぜ。やったー」「和毅が日本でまた試合ができるぜ。今後亀田ジムからもプロ選手を輩出できるぜ。やったー」だけで終わるものなのか? そう単純な話ではないように思えるのだが(※今回の損害賠償の裁判と、各種ライセンス停止に関する係争は同時進行中の別物の裁判です。念のため)。

「亀田兄弟の今後が見えた? これが亀田の進む道。日本ボクシング界の常識をひっくり返せ」

まず各理事にそれぞれ6000万円の請求とのことだが、仮に額面通りの判決が出たとして果たして個人に払える金額なのだろうか。下手したら理事会のほとんどの人間が借金まみれという事態になって、組織そのものがガタガタになるのではないだろうか。

そして、僕が一番気になったのはジムのライセンス問題。
日本のプロボクサーが日本で試合をするためには必ずどこかのジムに所属していなくてはならないこと、ジムのライセンスが剥奪されると所属選手全員が試合をできなくなること。ここである。

たとえばボクシング先進国の欧米では一般的に「マネージャー制度」というものが主流で、選手はマネージャーと契約して各プロモーターが主催する試合に出場することになる。「○○傘下の選手」などという言葉をよく耳にすると思うが、まさしくアレのことである。
マネージャーとジムはそれぞれ独立しているため、ジムは選手にとって単なる練習場所に過ぎない。

ところが、日本のボクシング界は慣例でマネージャーが各ジムに所属していることが大半で、選手個人はその所属ジムのマネージャーとプロ契約を結ぶことになる。
なので、必然的にジムに所属していることがプロ活動を行う上での必須条件となるわけである。プロモーター業も興行力のあるジムのオーナーが兼任したり、プロモーターライセンスを持つジムの運営母体がつとめたりする。

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つまりプロモート業やマネージャー業とトレーナー業の境目があいまいで、極端な話、そのジムの会長やマネージャーのさじ加減で所属選手を干すことも贔屓することもできるわけである。

さらに亀田兄弟が国内復帰を目指して代わりの会長を立てたり、別のジムへ移籍しようとした努力をJBCがすべて拒否したという件。JBC側のさじ加減一つで該当ジムの選手全員の命運を左右できるというのもなかなかすごいことではないだろうか。行為の是非はともかくとして。

ジム間の移籍問題は結構深刻。笑っちゃいけないけどヤバ過ぎて笑えてくる

特に問題だと思ったのがジムの移籍問題である。

今回の話とは別だが、ボクサーの移籍問題がこじれるケースは本当によく聞く話である。しかもトップ選手になればなるほど他ジムへの移籍を妨害されるケースが多いというのは日本ボクシング界の悪しき慣習ではないだろうか。

一般的に集客力のあるトッププロはジムの看板選手であり、広告塔である。つまりその選手1人がジムの命運を握っているともいえるわけで、移籍されるということはジムの根幹を揺るがす問題にすら発展することになる。
そのため、ジム側は選手流出を阻止するために権限を大いに活用するわけである。もちろんよからぬ方向に。

たとえば試合を直前でキャンセルしたり、長期間試合を組まなかったり。移籍先のジムに高額の移籍金を要求するなど、多方面にも影響が出るような嫌がらせを画策するケースもあるという。
また、後援会が発足するなど組織が大きくなるに従って、しがらみも増えていくのだろう。後援会長とジムのオーナーが飲み友達などということもあるのかもしれない。

選手側としては、スパーリングの相手不足やトレーナーとの相性、試合数が少ないなどの理由で移籍を考えることは当然あり得ることだ。
だが、そこで所属ジムの不当なオーナー権限発動によって移籍を妨害され、一番大事な時期にキャリアがストップしてしまうのである。それこそ弁護士を立てた訴訟問題にまで発展することも少なくない。

結果的に移籍問題が長引いて嫌気がさしてしまう選手や、そもそも選手としてのピークを超えてしまうケースも後を絶たないとのことである。

プロ野球で例えるなら、FA宣言した選手の流出を防ぐために監督やオーナー始め、チーム全体でその選手をいじめ倒すというイメージだろうか。

よくわからないが、一番近いのが例のSMAPとジャニーズ事務所の関係なのかもしれない。
旧態依然とした組織にさんざん振り回されたあげく、心身ともに疲弊した状態で意味不明な謝罪会見を開かされるという結末である。

恐らく「恩義」とか「義理人情」のような感情が業界全体に色濃く残っているのだろう。もちろんそれが悪いとは言わないが、拳一つで成りあがってやろうと考える選手にとっては足かせにしかならない。たまたま家から一番近い場所にあったジムに生涯忠義を誓わされるなど、考えただけでゾッとする。

「数々の困難を超えて、ボロボロになりながらも移籍を実現した選手は本当にすごい。自然と応援したくなる」とおっしゃっている方のブログをちらっと読んだが、あまりの理不尽さに笑えてくる。
たかがジムの移籍ごときで何がすごいんだ? そんなことでボロボロになってどうする? 本業以外の苦労がデカすぎるだろという話である。

日本に収まりきらない強さの選手が出たときに困るんだよね

日本ボクシング界の旧態依然とした運営を散々ディスってきたものの、もちろんこの古き慣習にもいい部分は間違いなくあるはずである。

ジム同士の縦横の連携が取りやすく、レベルに合った対戦相手をスムーズに見つけられる。力のあるジムと蜜月関係を築いておけば、自分のジムの選手を興行にねじ込みやすい。そういうメリットは少なからずあるのではないかと思う。

ただ、それはあくまで日本国内での話だ。
最も困るのが、日本に収まりきらない器を持った選手が出てきたときだ。今回の内山高志などその典型的な例だろう。

「WBAにキレてるボクシングファンは内山が米国進出で成り上がるところを見たいんじゃないの?」

いくら選手が「海外の強い相手と試合がしたい」と訴えても、これまで狭い範囲での縦横のつながりだけでマッチメークをこなしてきた島国マネージャーや島国会長である。突然海外の有名選手と試合を組もうとしてもできるわけがない。
日本に来てくれるレベルの選手であれば何とかなっても、わざわざ日本に来るメリットがないレベルの選手との交渉となると途端にお手上げなのだろう。

たとえば2015年11月に行われたミゲール・コットvsサウル・アルバレス戦のファイトマネーはコットが約37億円、アルバレスが約12億円だったという。

「“カネロ”・アルバレス、コットに大差判定勝ち!! 最高峰の技術戦に完勝し、王座獲得!!」

こんなケタ違いの興行に三浦隆司をねじ込んだ帝拳ジムの手腕は冗談抜きですごいと思う。普通ならこれだけの興行を動かす敏腕プロモーターやマネージャー相手にどこぞの島国のおっさんが交渉を持ちかけても、軽くあしらわれて終わりである。
まあ、帝拳ジムは代表自らがWOWOWエキサイトマッチに出演して「世界のボクシングが~」とやっている手前、選手の海外挑戦を引き止めている場合じゃないのだろうが。

「三浦vsバルガス壮絶決着!! 最強挑戦者フランシスコ・バルガスに三浦隆司がTKOで敗れて王座陥落!!」

とにかく世界的にトップレベルの実力を持った選手がピークの時期に最高の相手と試合が組めず、国内に幽閉されるという状況は日本のボクシング界の大きな課題だ。
その原因は、突き詰めていくとこの旧態依然としたジム制度にあるといえるのかもしれない。

もしかしたら亀田が日本のボクシング界が変わるきっかけを作ってくれるかも?

長々と書いてきたが、あれこれ考えていくと今回の亀田兄弟による訴訟はかなりおもしろいと思わないだろうか。

争点としては、

・JBCによる亀田兄弟追放は妥当だったのか
・亀田プロモーションが手にするはずだった6億6000万円という金額は妥当なのか
・国内復帰に向けた亀田兄弟の努力を拒否したことは罪に当たるのか
・各理事への請求額6000万円は一律が妥当なのか。それぞれの責任の重さに差はあるのか

といったところだろうか。
僕は法律の専門家ではないので詳しくはわからないのだが。

「亀田興毅、河野に判定負け!! ダウンも奪われ完敗、試合後に引退を表明する」

ただ仮に亀田側が勝訴すれば、多額の賠償金を抱えた理事たちが総辞職という事態も可能性としてはゼロではない。過去のしがらみに縛られた旧体制を強制的に刷新できるのである。
そして、それがきっかけとなって日本のジム制度の慣習が根底からひっくり返ることすら絶対にないとはいえないのではないだろうか。

もちろんいきなり全部が変わることはないだろうが、今回の裁判の行方いかんでは日本のボクシング界の風通しがよくなるきっかけがもたらされることも十分考えられる。

しかもそれが日本国民から嫌われ、JBC自らが追放した亀田兄弟によってなされるのだ。個人的にはちょっと爽快な気持ちになってしまう。支持するしないではなく、普通に今後の動向が楽しみである。

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