マン振り魔人ダニー・ガルシアがサミュエル・バルガスを圧倒! あれだけ躊躇なく振り回せる選手は驚異的。キース・サーマン戦が楽しみ【感想】

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フィラデルフィアストリートイメージ
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2016年11月12日(日本時間13日)、米・フィラデルフィアにあるリアコーラスセンターで行われたウェルター級10回戦。
WBC世界ウェルター級王者で元WBA・WBC世界S・ライト級スーパー王者のダニー・ガルシアが、WBAランキング6位のサミュエル・バルガスと対戦し、7R2分17秒TKOで勝利を収めた。

無敗の王者ガルシアが約10か月ぶりにリングに登場。
2Rにダウンを奪うなど、くせ者のバルガスを終始圧倒し、ウェルター級3戦目を無難にクリアしてみせた。

これで戦績を33戦全勝19KOとしたダニー・ガルシアは、2017年3月にキャリア最大のビッグマッチであるキース・サーマン戦に挑むこととなる。

ウェルター級トップ戦線に君臨する両者の対決に注目である。

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ガルシアが大一番の前哨戦に余裕の勝利!! 来る2017年のキース・サーマン戦は準備万端?

ダニー・ガルシア圧勝!!
キース・サーマンとの大一番を前に、ランキング6位のくせ者をまったく問題にせず。
だが、今回の相手はさすがに……。
 
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ダニー・“スウィフト”・ガルシアがウェルター級3戦目をクリアした。
ポール・マリナッジ、ロバート・ゲレロ戦を経て、注目のキース・サーマン戦に向けてチューンナップは万全といったところだろうか。

「ダニー・ガルシアがロバート・ゲレロに完勝して2階級制覇達成!! ウェルター級のガルシアはホントに強いわ」

だがこの快勝にも、周囲の評価はいいとは言い難い
S・ライト級時代に微妙な判定勝利を繰り返したこと。ウェルター級転向後、対戦相手がパワーレスな選手ばかりであること。その他、あらゆる面で批判を浴び続けるガルシア。
そして、何と言ってもマニー・パッキャオ戦のオファーを蹴ってこの試合を選択したことには多くのファンが失望している。
 
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確かにキース・サーマン戦へ向けた調整は大事だが、ファイトマネー4億という一世一代の大勝負を拒否したことについての理解を得るのは至難の業である。

果たしてこの選手との一戦にはどんな意味があったのか。
過大評価と言われるガルシアの実力はどれほどのものなのか。
ウェルター級のトップ戦線を走るキース・サーマンとの一戦が、ガルシアにとって最大の試練になることは間違いない。

無敗のキャリアを死守したいダニー・ガルシアは相手選びも慎重。パッキャオ戦を蹴るほどに

マッチメークのタイミングや相手のレベルに多くの疑問を残した今回の一戦。
だが、1Rの3分を観たところで、ガルシアがこの選手を選んだ意味がわかったような気がした。

まず、ダニー・ガルシアという選手は「無敗を守ること」にこだわっている。これまでのマッチメークを見る限り、それは間違いないと思う。

恐らくS・ライト級時代、カーンやジュダー、マティセを立て続けに撃破したときにはそんなことはなかったはずである。だが、2014年前後から徐々に「負けに対する拒否感」を示す傾向が見られ始めている。

楽勝だと思われた格下相手に苦戦を繰り返し、落ちた評価を回復させるために挑んだレイモント・ピーターソン戦でも疑惑の判定をやらかす。対戦を呼びかけられていたビクトル・ポストルとのタイトルマッチはのらりくらりとかわし、結局そのまま実現せずにウェルター級へ転向。

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ウェルター級初戦ではパワーレスなマリナッジを小突き回し、2戦目でロバート・ゲレロに勝利するも、相手はすでに下り坂のベテラン。しかもゲレロももともとフェザー級の選手である。
挙げ句の果てに「パッキャオの復帰戦」という最大級のオファーを蹴ってのサミュエル・バルガス戦である。

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「強い相手に勝ちたい」という思いがいつしか「キャリアに黒星を刻みたくない」にとって変わったのだろう。しかも、無難だと思われた相手に微妙な試合を繰り返して自ら評価を下げているのがタチが悪い。

以前にも申し上げたが、上り調子の選手が無敗にこだわるとろくなことがない。ボクサーとしての魅力が半減し、試合自体がつまらなくなる傾向が見られる。正直、ガルシアの今の状況も仕方ないことなのかもしれない。

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負けたくないガルシアが選んだ相手はサミュエル・バルガス。なるほど。確かにガルシアが得意そうな選手だ

そして今回のサミュエル・バルガス戦。
ガルシアがこの選手を選んだのも、もちろん「負けたくない」からである。

ややL字気味の構えながら上半身の動きが固く、特別見切りがいいわけではない。
スピードはそこそこだが、とにかくガードが低い。前に出るパワーがあるわけでもない。
低いガードのまま足を大股で踏み込んで間合いを詰め、そこで初めてモーションに入る。そのため顔面がガラ空きになる時間が非常に長い。

なるほど。
これは勝てるわ。

躊躇のないフルスイング。
早々にタイミングを掴むカウンターのセンス。
ダニー・ガルシアの長所とモロに合致するスタイルである。

バルガスは決して悪い選手ではないと思うが、自分から攻めてくるタイプに滅法強いガルシアとは相性最悪。最高のカウンターの練習台というヤツだ。

というか、この相手を選んだ理由はアレですね。
「本人が気持ちよく勝つ」
これ以外に考えられませんね。

「ベテルビエフこれアカンヤツやww プリエトを豪打のカウンター1発で生まれたての小鹿に」

確かにサーマン戦に向けて会心の勝利が欲しい気持ちはわからないでもない。
その相手として、このサミュエル・バルガスは最適な相手である。

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バルガスはいきなり左フックをもらって面食らったかな? ガルシアの狙い通りに試合が進んでいる

申し上げたように、今回の試合はダニー・ガルシアの完全なワンサイドゲームである。

前後左右にステップしながらパンチを打ち込むバルガスに対し、身体の向きを微妙に変えて常に正面のポジションをキープし続けるガルシア。
相手の攻撃はガードと上半身の動きでほぼ封殺し、がら空きの顔面に得意のフックを打ち込んでいく。
左フックの軌道に変化をつけ、内側と外側両方から的確にヒットし、流れを完全に自分に引き寄せる。

ボディへのストレートをバックステップでかわし、右を打ち込んでくれば左を被せる。
このままではラチがあかないと感じたバルガスが踏み込みを強めれば、そこを狙って右フック。

さらに左のダブルでボディをえぐり、低いガードをさらに下げさせておいてから右の打ち降ろし。
そして、バルガスが棒立ちになれば得意の左フックを顔面に。
バルガスが距離をとって様子を見るなり、わずかな間を狙ってワンツー。

どうにもならないバルガス。
すべてがダニー・ガルシアの狙い通りに進む試合である。

恐らくすべての始まりは1R。ファーストコンタクトでいきなり左フックを被弾して、バルガスが面食らった感じである。
見たことがない角度から飛んできたフックにまったく対応できずに萎縮してしまっただろうか。

何となくだが、あの1発でお互いの序列が決まってしまった気がする。
「お前が立っているところは俺がはるか昔に通過した場所だ」みたいな。
 
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絶望感漂うサミュエル・ガルシア。どうあがいてもガルシアのカウンターで跳ね返される

攻めれば打たれ、守っても打たれ。
諦めずに何度もアタックするが、そのたびにガルシアに楽々対応されてしまうバルガス。
前に出れば出るだけ打たれ、カウンターの練習台にされ続けること15分。
5Rを終了したところでついに力尽きる。

対するガルシアはまだまだフルパワー状態に近い。
「さて、そろそろいきますか」
自ら間合いを詰め、青息吐息のバルガスに悠然と襲いかかる。

ロープを背負わせ、必死に手を出すバルガスだが、ガルシアはさらっとカウンターを合わせる。
打ち終わりに体を預けようとする一瞬、わずかに後退してスペースを確保。得意の左フックをショートで当ててバルガスをたじろがせる。

絶望感を漂わせるバルガスを前にノーガードで対峙する余裕である。
いや、もう勘弁してやってww

そして7R。
見かねたレフェリーがついに試合をストップする。
7R2分17秒TKO。
ダニー・ガルシア、余力をたっぷり残した貫録の勝利である。

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批判が多いダニー・ガルシアだが、実はそこまで嫌いじゃない。あれだけ躊躇なく腕を振り回せるのはすごいと思う

マッチメークや試合内容についていろいろ批判されるダニー・ガルシアだが、実を言うと僕はこの選手をそこまで嫌いではない
アミール・カーンを壮絶KOで葬った試合もそうだが、あそこまで躊躇なくマン振りできる選手というのはそれだけで脅威的だと思う。

自分の射程内での無類の強さや、それを可能にするカウンターセンス。
しかもウェルター級転向後は、S・ライト級後半に見られた動きの悪さが解消されている。そして、今回の試合などはウェルター級のパワーにもしっかりと順応してきていた。
あまり世間的な受けはよろしくないようだが、個人的には好みのタイプである。

大一番の試合がおもしろくなるかはキース・サーマン次第? あれだけ動き回る相手にガルシアは追いつけるのか?

ただガルシアの機動力のなさについては、依然として課題が残っているのも確かである。

自分から向かってくる相手、射程内で正対した相手にはめっぽう強いが、うまくアングルを変えたり間合いを外されると一気に脆さを露呈する。

ビクトル・ポストルの挑戦を避けまくっていたのを鑑みるに、もしかしたら自分でもそれとなく自覚しているのかもしれない。
そう考えると、レイモント・ピーターソン戦での苦戦も致し方なしである。

「フォルトゥナ陥落!! イキった末にソーサの左フックを被弾してKO負け。いや、何であそこで攻めたww」

これは余談だが、僕はこの選手を観るたびにどことなく尾川堅一を思い浮かべている
射程内での化け物的な強さや、意外とカウンター使いであるところなど、両者には共通点が多いように思える。正拳突きの尾川堅一とマン振りフックのガルシアという違いはあるのだが。

ちなみにだが、ダニー・ガルシアvsキース・サーマン戦はいったいどういう展開になるだろうか。
果たしてガルシアはサーマンの激しい動きに追いつけるのか。そして、サーマンはダニー・ガルシアのフルスイングに近づくことができるのか。

キース・サーマンが判定狙いの持久走作戦に持ち込めば退屈なクソ試合。
逆に自分から仕掛ける展開になれば、ポーター戦のエキサイティングさを再現できる可能性もある。

「サーマン←才能だけでやってる人がポーターに辛勝!! ノンストップのハイスピードバトル!!」

ものすごく大ざっぱに言うなら、強化版内藤リッキーvs尾川堅一ではないかと予想する。
まあ、僕は内藤リッキーvs尾川堅一を観てないんですけどね!!

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