エキサイトマッチ2015年総集編のランキングを観ての感想。納得の順位だったな

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ライトアップ京都
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2015年12月28日に放送されたWOWOWエキサイトマッチ2015年の総集編。
視聴者からの投票で選ばれた年間ベストマッチをランキング形式で発表していく毎年恒例の番組企画である。

エキサイトマッチ好きとしてはたまらない放送であり、来年の世界のボクシング情勢を占う意味でも見逃せない企画の一つといえる。

今回は遅ればせながらこの番組内で発表されたランキングを振り返りつつ、個人的な感想を述べていこうと思う。

「エキサイトマッチ総集編2016を観た感想と、俗世にまみれた雑感など」

まずはランキング(20〜1位)のおさらいである。

20位:▲ローマン・マルチネスvsオルランド・サリド▲
19位:×マット・コロボフvsアンディ・リー○
18位:○アドニス・スティーブンソンvsトミー・カーペンシー×
17位:×ハッサン・ナダム・ヌジカムvsデビッド・レミュー○
16位:○キース・サーマンvsロバート・ゲレロ×
15位:レオ・サンタ・クルスvsアブネル・マレス×
14位:○ホルヘ・リナレスvsケビン・ミッチェル×
13位:○ルーカス・マティセvsルスラン・プロポドニコフ×
12位:×ウラディミール・クリチコvsタイソン・フューリー○
11位:×ミゲール・コットvsサウル・アルバレス○
10位:○木村悠vsペドロ・ゲバラ×
09位:○テレンス・クロフォードvsトーマス・デュロルメ×
08位:×バーメイン・スティバーンvsデオンテイ・ワイルダー○
07位:○ミゲール・コットvsダニエル・ギール×
06位:○セルゲイ・コバレフvsジャン・パスカル×
05位:×三浦隆司vsフランシスコ・バルガス○
04位:○ローマン・ゴンサレスvsブライアン・ビロリア×
03位:○サウル・アルバレスvsジェームス・カークランド×
02位:○ゲンナディ・ゴロフキンvsデビッド・レミュー×
01位:×マニー・パッキャオvsフロイド・メイウェザー○

以上の結果となった。

いかがだろうか。
もちろん賛否両論はあると思うが、個人的には概ね納得のいくランキングだったのではないかと思う。

もちろん「あの試合の方がすごかった」とか「あの試合がこの順位かよ」というご意見は多々あると思うし、実際に不満を漏らしている方の声も聞こえてきた。

だが、こういうのは試合単体での盛り上がりだけではなく、選手の知名度やそれまでの経緯などにも大いに左右されるものだし、WOWOWエキサイトマッチという番組が完全にフラットな立場で放送しているわけでもないだろうから、脊髄反射的に批判をするようなことではないと思っている。

「ああ、こんな試合もあったなあ」程度の軽い気持ちで気楽に観るのが一番いいのではないだろうか。

では、それを踏まえた上で、個人的な感想を申し上げていこう。

ハッサン・ナダム・ヌジカムとアミール・カーンの扱いが……

とりあえず言えるのは、思いのほか順位が低くて残念だった試合が2つあったことである。

こういうお遊びランキングは気楽に観るべきだと言ったそばから順位についての話をするという壮大な矛盾をお許しいただきつつ、書いていこうと思う。

まず1つ目は17位のハッサン・ナダム・ヌジカムvsデビッド・レミュー戦
この試合は僕の中で文句なしの年間最高試合だったのだが、予想よりもはるかに順位が低かったことが残念だった。

「デビッド・レミューvsハッサン・ヌダム・ヌジカムは今年のベストマッチに認定ってことで異論はないよな?」

何度倒してもゾンビのように立ち上がり、驚異的な回復を見せるハッサン・ナダム・ヌジカムと「カナダのタイソン」の名に恥じない猪突猛進型のレミュー。
この試合は夜中にコソッと観たのだが、あまりの興奮に近所迷惑になるほど絶叫してしまった。
観終わった後の虚脱感と後味のよさも相まって、一発で年間最高試合に認定したのだがWOWOWの視聴者の間ではそうでもなかったようである。

まあ、期待のレミューがゴロフキン相手に何もできずに終わったところを見せられたおかげでこの試合の価値も相対的に下がってしまったのかもしれないが。

もう1つは、アミール・カーンvsデボン・アレクサンダー戦がランキングにかすりもしなかったこと。

この試合自体は開催されたのが2014年の12月だったために印象が薄かったのかもしれない。しかも放送日も1月12日と、年明け早々のO.A.だったこともあって視聴者の記憶に残りにくかったというのもあるだろう。
何より5月のパッキャオvsメイウェザー戦での盛り上がりがすごすぎて完全に存在すら忘れられてしまった感もある。

それでもこの試合はかなりの名試合だったと思っている。
スピードとテクニックを持ち味としていて、なおかつ華のある両者。
高速のコンビネーションで相手を圧倒してきたアレクサンダーがカーンのスピードとステップについていけずに徐々にペースを握られていく様子はなかなか見応えがあった。
これだけスタイルがかみ合った上でのハイスピードバトルはなかなか見られるものではないと大満足の試合だったのだが、結果的にはいっさい触れられることもなく順位発表は終了してしまった次第である。

あの試合でのアミール・カーンは本当にいい動きをしていて、あのままの調子を維持できればメイウェザーにも少しは構ってもらえたのではないだろうか。
クリス・アルジェリ戦において接近戦での脆さを露呈したためにメイウェザー戦が遠ざかてしまったが、アレクサンダー戦のカーンはマジですばらしかったと思う。

「アミール・カーンはメイウェザーの相手にふさわしいのか? クリス・アルジェリ戦を振り返りつつラストマッチを検証する」

ご存知のようにあの試合以降、両者のキャリアは前途多難である。

デボン・アレクサンダーは10月の復帰戦でアーロン・マルティネスにまさかの判定負けを喫してキャリアが完全に頓挫している。

「デボン・アレクサンダーまさかの敗北!! 復帰戦でアーロン・マルティネスに敗れる」

一方のカーンはパッキャオのラストマッチの相手に名乗りを挙げていたものの、メイウェザーに引き続きまったく相手にされないというお決まりの様式美をご披露する停滞っぷり。
残されたビッグマッチとして母国でのケル・ブルック戦を画策しているいう話があるが、果たしてどうなるか。

「ケル・ブルックはウェルター級で最強に最も近いボクサーだという事実に異議はないはずだが?」

まだまだ両者にはがんばって欲しいと思っているが、特にアレクサンダーは好きな選手の1人なので何とか踏みとどまってもらいたいものである。

トップ10は文句なし。そりゃそうですよね

ランキングに話を戻そう。

トップ10は正直文句のつけようがない。
ハッサン・ナダム・ヌジカムvsデビッド・レミュー戦とアミール・カーンvsデボン・アレクサンダー戦がランク入りしていないのは残念だが、それ以外では知名度や試合の格を考えてもまったく問題なしのランキングではないだろうか。

2位のゲンナディ・ゴロフキンvsデビッド・レミュー戦に関しては、レミューに対する期待感とそれを圧倒的な差で打ち砕いたゴロフキンの強さが際立った結果のランキングだったように思う。
ビッグマッチに恵まれないゴロフキンの初めてといってもいいくらい注目を集めた試合だったことも影響したのだろう。

「ゴロフキンが豪打のレミューに勝利!! ミドル級の豪打対決に圧倒的な差を見せつけ、8ラウンドでデビッド・レミューをストップする」

高いKO率を誇る両者の激突とあって「豪腕対決」と銘打たれたこの試合ではあったが、まるでゴロフキンが「俺が豪腕? 誤解するなよ」と言っているような内容だった。
レミューではゴロフキンには歯が立たないことはある程度予想できたが、それでもやはりゴロフキンの総合力の高さが際立った試合だった。

「ゴロフキンvsレミュー予想!! ミドル級注目の強打者対決、その行方は?」

何度も繰り返していいかげんしつこいが、ミドル級戦線でゴロフキンとアルバレスを除いた上で僕が最も推しているのはウィリー・モンロー・ジュニアである。だが、残念なことに存在が地味すぎて再び浮上してくるのは相当厳しいと言わざるを得ない。

「ゴロフキンvsウィリー・モンロー・ジュニア壮絶決着!!」

パッキャオvsメイウェザーが1位は納得。そりゃそうだろな

そして、やはり外せないのが1位のマニー・パッキャオvsフロイド・メイウェザー戦
ボクシングファンとしても、さすがにこの試合に触れないわけにはいかないだろう。

“It’s time. Two legends. One destiny”(2つの伝説が激突する)

内容的には大方の予想通りメイウェザーがスピードとディフェンス能力を発揮してのタッチボクシングに徹した上での大差判定勝利。
あれやこれやと言われはしたものの、個人的には非常に楽しめた試合だった。そして、先日この試合をもう一度見直したが、やっぱりおもしろかった。

お互いが後の先を取り合うような緊張感。
居合い抜きのような張りつめた空気。
そこから瞬間的に炸裂する動。再びの静。

メイウェザーの矢のようなジャブ。
パッキャオが鋭く踏み込みラッシュをかける。
メイウェザーが超人的な反射と読みを発動して身体を入れ替え、パッキャオが素早く方向転換して追いかける。その瞬間を狙ってメイウェザーのジャブがパッキャオの鼻先を捉える。

数々の挑戦者がメイウェザーと対峙することで自分のよさを消され、存在をも否定されてきた中、マニー・パッキャオは1試合を通じてマニー・パッキャオであり続けた。メイウェザーを相手に輝きを失うことなく12R戦い続けたのである。

「メイウェザーvsパッキャオ世紀の一戦終了。祭りのあと」

歴代の挑戦者の中でメイウェザー戦にで自分を見失わずに戦えたボクサーがどれだけいるだろうか。
試合中盤までのオスカー・デラホーヤとザブ・ジュダー。そして2Rまでのシェーン・モズリー。そのくらいだろうか。後は1試合目のマルコス・マイダナも入れてもいいかもしれない。
つまり、パッキャオは歴代のどのボクサーよりも自分らしくメイウェザーと対峙し続けたのである。

とてつもないファイトマネーとイベント規模の大きさに対してエキサイティングさが足りなかったことは確かで、「世紀の凡戦」と揶揄されるなど賛否両論があるのはわかる。だが、僕は時間の流れを忘れるほどおもしろい試合だったと思っている。

もちろんそれぞれに意見があっていいと思うが、普段「本物の実力者同士の試合を見せていれば人気は上がる」と主張している人たちがこぞってこの試合を「つまらない」「これじゃボクシング人気が〜」と言っていたのには驚いた。

普段から本物の試合がどうたらおっしゃっている方たちにとって、あの試合こそが本物とやらの最高峰であるはずなのに。あれだけハイレベルな技術の応酬を目の当たりにして「つまらない」と言っている時点で、結局「本物の実力者同士の試合を見せていれば人気は上がる」という主張が間違いであることを自ら証明してしまっているのだが。

パッキャオvsメイウェザーは実現した時点で半分成功だからな

そもそも論として、この試合は実現したこと自体がすばらしいと言っても過言ではない試合である。
ファンが最も望む試合として何年間も待たされた末、紆余曲折あった中でようやく実現した試合である。もはや実現にこぎつけた時点で目的の半分は達成したと言ってもおかしくない。
僕はこの試合を実現した両者とその関係者、プロモーターに拍手を贈りたい(上目線)。

「実現した時点で半分成功」←このセリフを口にした時点で失敗を認めているようなもんだろと言われればそれまでだが。

ただ、セレブの自家用ジェット機が渋滞するというわけのわからない現象を引き起こしていることが、イベントとしての成功を物語っているではないかという思いもある。

この記事でも申し上げているのだが、やはりボクシングに携わる人間は最終的には「誰が強いんだ星人」であるべきだと思う。
ビジネス的な駆け引きや選手の格なども大事だが、やっぱり最後は「こいつとこいつが戦ったらどっちが強いんだ?」「俺の方がお前より絶対に強い」という最強バカであって欲しいのである。

「メイウェザーvsパッキャオ夢の対決実現秒読みか? ボブ・アラム談」

興行収入と「誰が強いんだ?」という疑問に応えようという心意気、この両翼のバランス感覚を持ったプロモーターやジムの会長がどんどん増えてもらいたいのだ。

僕が現時点で一番いいと思っているのはゴールデンボーイ・ポロモーションのオスカー・デラホーヤである。
プロモーターとしての知名度やマッチメークのバランス感覚、その他もろもろ、ファンの期待と興行収入を最もうまく汲み取ってくれているのがこの男ではないかと思う。現役引退後間もないというのもあると思うが、これから年齢を重ねていく上でその感覚が濁るのか、それとも研ぎすまされていくのかはまったく不明だが。

そして僕が今後、名プロモーターになるのではないかと期待しているのがバーナード・ホプキンスだ。あの男の持つ経験値や知名度は他の誰にも並び立つものがいない。何せ50歳の現役である。49歳で統一戦をするような化け物である。ボクシング界のいいところも悪いところもすべて知り尽くした上でこの業界に居続けているはずで、その経験は絶対にプロモーター業にも活きるはずである。
まあ、引退後にプロモーターをやるかどうかもわからないが。

ちなみにメイウェザーのプロモート力もそれなりに期待はしているが、今のところちょっと実力を重視し過ぎていように思える。

エロール・スペンス?
バドゥ・ジャック?

実力は申し分ないが、エキサイトさが若干足りない。
本人がそうだったように、彼自身がああいうタイプが好きなんだろうなというのが伝わってくる選出である。
きっとメイウェザーがデビッド・レミューのような穴だらけのタイプを子飼いにすることはまずないのだろう。

ジャーマル・チャーロの2016年の飛躍に期待






2016年の飛躍に期待するのはジャーマル・チャーロ
ご存知チャーロ兄弟の兄である。

「ジャーマル・チャーロがキャンフォートを圧倒敵な強さで下して防衛に成功!!」

9月に行われたコーネリアス・バンドレイジvsジャーマル・チャーロ戦はなかなかの試合だったのではないだろうか。上背、スピード、フィジカル、テクニック申し分なしである。

目立ったスターが見当たらないこの階級で、この先どれくらいのビッグマッチが組めるのかは定かではないが、ぜひともスーパースターへの道をひた走ってもらいたい。

ちなみにこの選手はミドル級にアップする気はないのだろうか。あの体格ならミドルでもやっていけそうに思えるのだが。それともミゲール・コットとキャッチ・ウェイトでぶつかるとか。

「ミゲール・コットがダニエル・ギールを4R TKOで撃破!!」

ボクシング好きの間ではフェリックス・ベルデホの期待度が高いようだが、ひねくれ者の僕としてはあそこまで主人公臭のするタイプを手放しで応援するのがどうも納得いかないというのがある。我ながらめんどくさい人間なのだが。

「フェリックス・ベルデホがボクシング界を背負う?」

ベルデホをトリニダードに重ねている人が多いようだが、どちらかと言えばデラホーヤやパッキャオの系譜ではないだろうかと思っている。もう少しさかのぼれば四天王のレナードとか。まさしく主人公中の主人公という空気を持った太陽のような選手になる可能性を秘めているのではないだろうか。自慢の超絶カウンターで世界を席巻していただきたい。

あまり好きではないけど。

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