人工知能の進化は翻訳業界の未来を奪うのか? 翻訳者の将来性は? ターミネーターの時代は本当に来るの? ディープラーニングって?

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翻訳イメージ


Web業界の帝王Google先生が、Google翻訳のアルゴリズムを変更してサービスを進化させたとのこと。

記事によると、人工知能技術ディープラーニング(深層学習)技術を用いたもので、これまでよりも翻訳のエラーが平均60%も減少するとのことです。

以前の技術では「前後の文脈を読む」という部分で機械翻訳は人間のそれにまったく敵いませんでした。ところが、ディープラーニングの技術によって、コンピュータがパターンを学習し成長することが可能になりました。

2016年3月にGoogleの開発した囲碁AI「AlphaGo」が、韓国のプロ棋士に圧勝したことで話題を呼びました。

「AlphaGo、4勝1敗で勝ち越し 最終局も李氏に勝利」

AlphaGoは対局を経るたびに囲碁のパターンを学習し、データベース化していきます。データ化されたパターンから常に最善手を選択し、同時にデータベース化も続けます。
対局を重ねれば重ねるほどパターンを覚え、あらゆる局面に対応できるようになる。要するに対局するたびに強くなり、いずれは誰も勝てない完全無欠の囲碁マシーンが完成するのです。

現状の機械翻訳はまだまだ人間には及ばず、エラーも多いことはGoogle自身が認めています。
ですが、このディープラーニング技術は学習経験の蓄積でどんどん成長を続けます。近い将来、さらに完璧な翻訳が得られるようになるとのことです。

訪日外国人向けの機械翻訳サービスの乱立。かなり興味があります

人工知能技術を用いた機械翻訳の急速な進歩。

実はここ最近、僕がかなり興味を持っている分野です。
特にアルゴリズムに詳しいというわけではありませんが、人工知能の大幅な進歩やそれに伴う機械翻訳の精度向上には非常に興味をそそられています。

訪日外国人の急増や2020年に行われる東京オリンピックなど、現在日本でも機械翻訳を利用した外国人向けのサービスが次々と登場しています。

特に訪日外国人向けの対話型翻訳ロボットの進化は目覚ましいものがあり、各社が競うように新型翻訳ロボットを発表しています。

こういうものは何年かの周期でトレンドが入れ替わるのだと思いますが、どことなく数年前の電子書籍ブームを思わせます。

「電子書籍は儲からないわww【出版社編】←あと5年はかかるでしょ」

恐らくこのブームは東京オリンピックまでの残り約3年間にわたって続くのではないでしょうか。


すばらしい技術だとは思うのですが、人型である必要性はあまり感じません……。タッチパネル式にして音声が流れる仕組みにした方がよっぽど効率的な気がしますが。

まあ、人の温もりを感じさせるという意味では人型の方がいいということなのでしょうか。そもそも人ではないという噂もありますが。


なるほど。
確かにドラえもんの翻訳コンニャクですね。

ちなみにこれは国立研究開発法人 NICT-情報通信研究機構の開発した音声翻訳アプリがベースになっているとのことです。

人工知能技術と機械翻訳の向上によって翻訳業界が大打撃?

人工知能技術の発展による機械翻訳の精度向上。
これによって翻訳業界が大きな打撃を受けると言われています。

といっても、機械翻訳ソフトそのものは今から20年以上前からあったもので、特別新しい技術ではありません。「いずれ翻訳者の仕事が機械翻訳にとって変わられる」というのはその頃から言われていたことです。
昨今の技術の目覚ましい向上によって、いよいよその「いずれ」が迫ってきたということではないでしょうか。

人間の翻訳ほど整っていなくても、ある程度の意味さえわかればいい。それっぽい言葉が並んでいれば、文脈をつなげるだけなら素人でもできる。そこまで専門的な翻訳でなければわざわざ高い費用を払って翻訳者にお願いする必要はない。
つまり、機械翻訳があれば十分。

なるほど。
確かに訪日外国人向けの案内サービスなどはまさしくこれに当たると言えそうです。
しかもディープラーニング技術によって、場数を踏めば踏むほど翻訳の精度がアップしていくわけです。

日本を訪れる外国人や海外に拠点を構える企業が増えて、翻訳の需要自体は増しているのに実務的な翻訳は目減りする。非常に皮肉な話ですが、翻訳者が淘汰されていくのは仕方がないことかもしれません。

実は本当にヤバいのは翻訳者ではなく翻訳会社ではないのか?

機械翻訳の進歩によって翻訳者の仕事が食われる。
僕は翻訳者ではないので何とも言えませんが、上述したようにこれはある程度その通りだと思っています。

ですが、実は翻訳者よりも先に窮地に追い込まれるのは翻訳会社(翻訳エージェント)ではないでしょうか。

翻訳会社というのは何をしているところなのかというと、要はクライアントと翻訳者の仲介役です。

クライアント企業や個人のお客から翻訳の依頼を受け、登録翻訳者に仕事を割り振る。
参考資料や企業独自の言い回しなどを翻訳者に伝え、クライアントが満足する訳文になるように手配する。
そして指示通りに訳されているか、訳抜けや文字の打ち間違いがないかなどをチェックした後に翻訳文をクライアントに提出する。

納期交渉や値段交渉を含め、翻訳完了までの一連の流れをサポートし、その中間マージンを受け取るのが翻訳会社の主な仕事です。

ではなぜ機械翻訳が発達すると、翻訳会社の先行きが危うくなるのか。
それは、クライアント企業が「翻訳するな」と言い出すからです。

ここから先は僕の想像ですが、機械翻訳が発達すると、クライアント企業は翻訳会社に翻訳を依頼することが「もったいない」と感じるようになります。

正式な文書とするには物足りないが、書いてある意味はだいたいわかる。わざわざ高い費用を払って翻訳会社に翻訳させるのはもったい。

こう考えたクライアントは次にどうすると思いますか?
恐らく彼らは翻訳会社にこう言います。
「この文章をリライトしてください」

つまり、機械翻訳で翻訳した文章を翻訳会社に渡して「正式な文書として使えるレベルに書き直せ」と言うのです。
基本的な文章の流れはそのままで、細部の「てにをは」を整えてください。使われている用語を社内用語に統一してください。たとえば「当社」→「弊社」など。

そして、
「翻訳ではなくリライトなのだから安くしてね」
と言うのです。

「仕事のやる気をなくさせる上司の行動、言動を考える」

翻訳者はリライトを嫌がる。なぜならコスパが悪いから

機械翻訳で訳した文章をそのまま使うことはできないが、自分で手直しする時間はない。だったら翻訳会社に「リライト」させれば翻訳費用を大幅に抑えられる
悪知恵と言ったらアレですが、こう考えるクライアント企業は今後、必ず増えると思います。

これは翻訳会社にとっては最悪の流れです。

基本的にリライトというのは翻訳よりも費用が安いと相場で決まっています。翻訳会社ごとに差異はあるかと思いますが、概ね1/3〜1/2程度の金額となっているのではないでしょうか。

とりあえず翻訳者はリライトを嫌がります。
なぜなら料金が安い割に時間がかかるから

正確には何とも言えないところですが、リライトは普通に翻訳する時間の3/4くらいの時間がかかると聞いたことがあります。通常の3/4の時間がかかって、もらえるお金は半分。これではやりたがらないのも当然です。

そして、ここを調整するのが翻訳会社の仕事になるわけです。
社内の言語がわかる人間がやるのか、それとも翻訳者に頭を下げるのか。もしくは中間マージンを減らすのか。面倒くさいことこの上ない。
クライアントから入る金額は小さいのに負担だけが増えるのだから、どう考えても最悪です。

翻訳業界で生き残るには日本人による日英翻訳が手っ取り早い?

では、機械翻訳によってシェアを奪われるであろう翻訳会社や翻訳者は今後、どうすればいいのでしょうか。

僕は予言者ではないので何とも言えませんが、一番手っ取り早いのは「日本人の翻訳者が日英翻訳」をやることだと思っています。

特許翻訳や化学、技術翻訳。医療や金融などの専門性の高い分野のエキスパートになる。
また、翻訳会社であれば、タガログ語やヒンドゥー語などの稀少言語を含む対応言語数を増やして薄利多売を目指す。
その他、翻訳業界で生き残るにはいくつか手が残されているかと思いますが、最も即効性の高い方法はやはり「日本人の翻訳者による日英翻訳」ではないでしょうか。

翻訳というのは基本、その言語のネイティブが訳すパターンが主流です。
英日翻訳であれば日本人翻訳者、日英翻訳であればアメリカ人やイギリス人翻訳者が担当し、言語のわかる人間が最終チェックを行うという流れです。
つまり日英翻訳の場合は翻訳を英語のネイティブが行い、日本人が訳文をチェックするというのがこれまでの主な流れだったわけです。

散々申し上げてきたように、機械翻訳の発達によって今後翻訳者のシェアは確実に奪われていきます。
ですが、それはあくまで日本語訳の場合の話です。
元の言葉が何であろうが、日本語になってさえいればある程度意味は理解できる。意味さえわかれば文章を修正することは素人でも可能です。
しかも、今後は機械翻訳の精度がどんどん上がっていくので、修正の手間は軽減されていくわけです。

ですが、日本語以外の言語でそれをできる人はまだまだ限られているのではないでしょうか。英語はもちろん、ヨーロッパ言語を含めた多言語に至ってはほぼお手上げ状態と考えていいと思います。

これはかなりの暴言になるのですが、現状翻訳文のチェックをまじめにやっているクライアント企業はそこまで多くありません(たぶん)。
海外展開の広がりによって翻訳が必要になると言っても、きっちりと社内用語を管理してチェック態勢を整えている企業は少数です。

では、社内に翻訳のノウハウがない多くの企業は、どのような視点で訳文チェックを行うと思われますか?

答えは本当に単純で、
・日本語と比べて文章が長いか短いか
・該当する単語が存在するか
・文節の数が揃っているか
・言い回しが統一されているか

要するに「日本語の文章と同じ体裁になっているか」だけをチェックするのです。
言い回しのよしあしや適切な省略などは大きな問題ではありません。極端な話、機械的に単語を置き換え、SVCの形式で並べるだけでOKになるのです。

さらに、翻訳業界で扱っている言語の7割〜8割が英語だと言われています。そして、何度も言うように近年の機械翻訳の進歩は目覚ましいものがあります。

だったらどうすればいいか。
翻訳者は機械翻訳を下訳として、単純な単語の置き換え作業に終始すればいいのではないでしょうか。翻訳者自らが機械翻訳の精度の高さを利用してしまうのです。

あの天才集団Google先生が「今後はどんどん翻訳の精度が完璧なものになる」と言っているのだから、それを逆に利用してやればいい。「現地での使用に耐えうる翻訳」を目指すのではなく、「日本人が満足する翻訳」を目指せばいいのです。

しかも機械翻訳技術の向上によって、今後はクライアントからの要求がどんどん自分勝手なものになっていくことが予想されます。
そういった無理な要求に対する折衝も、日本人翻訳者ならしやすいのではないでしょうか。少なくとも英語のネイティブとややこしい話をするよりはスムーズに仕事が進むはずです。そういう意味でも今後、日本人の日英翻訳者は重宝されると思われます。

いかがでしょうか。
これが、僕が考える「翻訳業界で生き残るための手っ取り早い方法」です。
かなり好き勝手言っているので「翻訳を舐めるな」と怒られそうではありますが。

「Twitterで実名を名乗れ、匿名で好き勝手言うなという傲慢」

人工知能技術が人間を超えて、そのうちターミネーターの世界がやってくるってホント? 教えてビル・ゲイツ

これは余談ですが、人工知能技術の進歩によっていずれ人類の生活が脅かされるのではないかという懸念は誰もが抱いていることだと思います。

自我に目覚めたコンピュータが最適化を推進し続け、いつか「人間はこの世にいらないもの」という判断を下すときがくるというターミネーターの世界の到来です。


おお、まさかビル・ゲイツまでもが人工知能技術に対する懸念を持っているとは。数十年後に人工知能が人間を抜き去るんだとか。

映画「ターミネーター」でジョン・コナーがカイル・リースを送り込んだのが2029年。その世界から考えると、現実は10〜20年ほど遅れている計算になりますね。

「ターミネーター(1984年)を観たら思いっきりホラー映画だった件」

とはいえ、人工知能技術に対する懸念には賛否両論あるようです。
記事を読むと、問題なく制御できると考えている人も危険だと考えている人もそれぞれに言い分があることがわかります。

これについて僕の意見を申し上げると、全然大丈夫だと思っています。今後も人間がコンピュータを制御し続ける世界が続くことを確信しています。

なぜなら、
未来からカイル・リースが来てないから。

未来で大変なことが起きていれば、間違いなくターミネーターが要人を抹殺しにくるはずだし、それを阻止するための勇者が送り込まれているはずです。

そして、それがないということは未来は平和だという何よりの証拠ではないでしょうか。

え?
人工知能技術とタイムスリップは別の話?
まあ、確かにそうだなんだけど、コンピュータが意思を持つ世界ですよ?
過去に行くくらいのことはとっくにできるようになってるでしょ。

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