山中がモレノに判定勝ち!! 僅差判定で辛くもモレノに勝利した山中慎介は底が見えた?【結果】

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山中慎介、最強挑戦者アンセルモ・モレノに辛くも勝利。もしかしたら底が見えた試合だったか?

2015年9月22日、東京都大田区総合体育館でWBC世界バンタム級タイトルマッチが行われ、チャンピオンの山中慎介が同級2位の挑戦者アンセルモ・モレノを2-1の判定で下し、連続防衛記録を9とした。

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序盤から高度な技術戦を展開する両者。一進一退の攻防の末、チャンピオンの山中が113-115、115-113、115-113の僅差でモレノを退けた。世界王座9連続防衛は日本歴代4位の記録となった。

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細かいジャブよりビッグパンチ。今日のジャッジはそっち側か

最初に試合を観終わった直後に思ったことは「ドロー防衛だろうな」。
これが率直な感想であった。

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だが違った。
結果は2-1のスプリットデシジョンでの山中勝利だった。

なるほど。
そうきたか。

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4R終了時のオープンスコアで山中がリードしていた時点で「この試合はジャブのヒット数よりも一発のビッグパンチの比重が高いジャッジ」ということが判明したのだが、それでもせいぜい引き分けだろうと思っていた。

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山中がパンチを出すたびに実況が絶叫して会場が盛り上がるので「おお!!」と思うのだが、実際は当たっていないことがほとんどだったのだ。

モレノ陣営もジャブ中心のアウトボクシングでは勝てないと感じたのだろう。5R以降、距離を詰めて打ち合いに出てきたのだ。モレノが前に出て、山中がサークルするという珍しい光景が展開された。

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恐らくだが、モレノがたびたび見せていたスリッピングアウェイ。パンチの方向に顔を背けて勢いを殺す技術だが、あれがポイントになっていたのだと思う。クリーンヒットはしていないのだが、見た目の派手さで被弾と見なされポイントが相手側に流れてしまうのだ。試合序盤はジャブを当てながら山中のパンチをたびたびこの技術でいなしていたモレノだが、細かいジャブよりも見た目の派手さが評価されてリードを許してしまったのである。

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逆に5R以降、距離を詰めて打ち合いに転じたモレノに対し、山中がスリッピングアウェイでパンチを殺す場面がたびたび見られた。あれも恐らくモレノのポイントになっていたのだと思う。8R終了時点でモレノが逆転していたのもそのせいだろう。

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今回の結果は間違いなくホームタウンデシジョンと言われるだろう。だが、僕自身は決してそうは思わない。今回のジャッジが軽いジャブよりも一発のビッグパンチを高く評価する傾向にあったということなのだ。大まかな印象だが、10発のジャブを当ててもスリッピングアウェイ一発でラウンドをひっくり返すことが可能になる。それくらい比重に差があったのではないだろうか。

普通にジャッジすればモレノの勝ち。
今日のジャッジだと山中の勝ち。
そういうことなのだ。

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正直に言うと、試合終了直後にドロー防衛と予想したのは、モレノのプライドを守って欲しいという感情もあってのことだった。僕の中で、この試合でキャリアに1敗が記録されるのはちょっとかわいそうではないかという思いがどこかにあったのだ。
 
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山中の動きはよかった。ここ数試合では一番の出来

結果的にジャッジのさじ加減が大きく勝敗を左右した試合だったが、試合自体は文句なしにおもしろかった。非常にハイレベルで楽しめた試合だった。本当に両者ナイスファイトだった。

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山中は序盤は多少硬さが見られたものの、いつもより好戦的にパンチを出していたし、右ジャブがよく伸びていた。
左でモレノの右ボディを狙って動きを寸断する作戦もよかった。半身に構えるモレノに対し、背中に近い部分にパンチを当ててモレノの前進を寸断する。そして顔面への攻撃につなげる。たぶん数えきれないほど反復練習してきたのだろう。モレノがその部分で受けるように構えていたのも当然あるだろうが。
 
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そしてモレノの出足を挫く右。左を狙い過ぎるあまり、ここ数試合少なくなっていたパンチだ。これも意識して出すように練習してきた成果がうかがえる動きだった。

だが、勝負どころでの悪い癖は相変わらずだった。
10Rにモレノの右ストレートに合わせた左カウンター。あれでモレノの腰が落ちて一気にチャンスを迎えたのだが、そこから左を狙い過ぎて力む癖。あそこがやはり山中である。極端に右が少なくなり、一発で倒そうとする気持ちが前面に出過ぎるのだ。おかげでモレノに難なくクリンチされ、しのがれてしまったのである。

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さらに11R以降、明らかに右のタイミングが合っているのに左の狙い過ぎでチャンスを逸するシーンが何度も見られた。モレノが頭を下げた瞬間に右を打ち下ろす絶好のタイミングが幾度となく巡ってきていたというのに。
12Rも同様だ。ダメージの残るモレノが膝をバタバタさせているのに、左の一発を狙い過ぎて手数が出なくなる。結果的に相手の反撃を許してうまくごまかされてしまった。
これこそ前回の記事でも言ったように山中が劣化した一番の原因、長年雑魚狩り防衛戦を繰り返してきた弊害そのものである。

モレノも絶好調。高度なテクニックを随所に披露

対するモレノ。ジャブの長さや精度はもちろんのこと、随所に「亡霊」の名に恥じない高度な技術を披露してくれた。

モレノが幾度となく見せたスリッピングアウェイ、首を背けてパンチの勢いを殺す技術はさすがのひと言だった。山中はまったく手応えのないパンチにイライラしたのではないだろうか。

そして、身体を近づけての防御もうまかった。頭を下げてジャブを出し、そのまま山中の懐に飛び込む。そして右の脇の下に頭を入れて山中の攻撃を封じるのだ。たまにボクサーが相手の頭を抱え込むシーンが見られるが、この状況をモレノ自身が作り出していたのである。

足の運び、身のこなしも素晴らしかった。
数発のパンチの交換から一歩右にステップして山中の左に回り込む。そして山中が振り向く前に右をヒット。思わず「すげえ!!」と叫んでしまった。

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だが、要所要所に衰えも見られたことも確かだった。
恐らくふくらはぎのバネを初めとした足腰の衰えが顕著なのだろう。リング上を滑るように移動する全盛期の足運びは影を潜め、バックステップにはまったくスピードが感じられなかった。
特に10Rにカウンターを受けて効かされた場面。あそこは全盛期のモレノであればうまく足を使ってステップワークでさばいていたのではないだろうか。オースティン・トラウトがアルバレス戦でダウンを奪われた後、フラフラになりながらも何とかしのいで見せたように。
膝をバタバタさせながらクリンチにいく姿。あれはなかなか哀しいものがあった。
上半身の柔らかさは健在だったが、選手寿命という意味では終焉が近いのかもしれない。

山中はやはり劣化している。今後は国内の防衛記録を目指した方がいいのでは?

もう一度言うが、試合は非常におもしろかった。近年の日本ボクシングのレベルの高さを証明する試合だったと思う。
一流選手同士の緊張感。鼻先数センチでパンチを見切るギリギリの攻防。12Rがあっという間に過ぎる濃密な試合だった。

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ただ、残念なことに今日の試合で山中というボクサーの底が見えたような気がする。ボクシングの幅は相変わらず狭く、これ以上の伸びシロも感じられない。
右がよく出ていてここ数年では一番の出来だとは言ったが、これは決して成長したわけではない。絶えず右を出して試合を作っていたかつての姿をほんの少し取り戻したというだけの話である。しかも試合序盤に限っての話だ。
ラスベガスでのビッグマッチを希望しているようだが、正直どうなんだろうと思う。

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むしろ、どれだけ劣化のスピードを抑えて国内で防衛戦記録を伸ばすか。そちらに集中する方が賢明なのではないかと感じる試合だった。
パヤノの突進は止められないだろうし、リゴンドーなど話にならない。36分間遊ばれて「いい汗かいた」と言われるのがオチだ。本当に目指すのであれば、狙い目は衰えきったドネアだろうか。とはいえ、ドネアもここ数試合で復活の兆しが見える。衰えるまで待っていたら山中自身の劣化もそれだけ進んでしまうだろう。

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たらればなのだが、もう後2年早くこの試合が組まれていればまた違ったのかもしれない。日本屈指のハードパンチャー山中慎介、素材は抜群だっただけに残念でならない。
いや、山中が絶対に終わると断言しているわけではないのだが。

結果的に予想を外した試合だったのだが、いろいろ言い訳したくなる部分も多かった。

とはいえ、おもしろい一戦だったことは間違いない。
ボクシングという競技を思いっきり堪能できる試合だった。

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