ジェシー・バルガスがサダム・アリをTKOで下して勝利!! 激戦を制したバルガスが2階級制覇達成!! 期待のアリは無念の敗北

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2016年3月5日(日本時間6日)、米・ワシントンでWBO世界ウェルター級王座決定戦が行われた。

同級1位のサダム・アリと4位のジェシー・バルガスの間で争われた一戦は一進一退の攻防の末、バルガスが9R2分9秒でサダム・アリをTKOに下し王座を獲得。

序盤はスピードで勝るアリがやや優位に進めたが、中盤以降にアリの動きに対応したバルガスが徐々にペースを掌握。8Rと9Rに1度ずつのダウンを奪い、アリを完全にストップ。2階級制覇を達成した。

なお、この試合はティモシー・ブラッドリーが返上して空位になったタイトルを争う王座決定戦として行われた。

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まさかの接近戦。予想外におもしろい試合だった

いや、おもしろい試合だった。
待ちのボクシングが持ち味の選手同士ということで、絶対につまらない試合になると思っていた。だが、ふたを開けてみればまったく違う。非常にスリリングで目が離せない展開だった。

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結果的には豪快に予想を外したのだが、それはともかく普通におもしろかった。

試合開始直後に思ったのが両者の距離が近いということ。

もともと両者の得意な距離には差があり、サダム・アリの方が遠い距離での戦いを得意とする選手である。この試合もバルガスが距離の差をどうやって詰めるかが勝負の分かれ目だと思っていた。いかにバルガスが自分の射程圏内にアリを引き込めるか。そこがカギになると思っていたのだが、まったく違った。
 
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むしろ距離を詰めていたのはアリの方だった。
足を止めて強いパンチを打ち込み、バルガスとの体力差を埋めようとしていたのである。いつものように大きくは動かず、ハンドスピードと見切りのよさでバルガスを翻弄しようとしていた。

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正直、これはちょっと意外だった。この選手が序盤からここまで力を込めたパンチを打つとは思っていなかった。

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接近戦をバルガスに対応されてじり貧になったアリ

ただ、残念ながらアリの作戦が成功したとは言い難い。
足を踏ん張ってパンチを出すということは、アリの最大の持ち味であるフットワークが失われることを意味する。そのせいでバルガスの長いリーチから逃れることができず、得意のワンツーの餌食になってしまったのである。

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この日のアリはとにかくバックステップが間に合わない。
本来は相手のパンチをバックステップで避けて、そこから踏み込んでカウンターというパターンを得意としているのだが、今回の試合ではそれがほとんど機能しなかった。試合開始直後から再三バルガスの左を被弾し、みるみるうちに右目を腫らすアリの姿はちょっと想像しない光景だった。

以前にも言ったが、この選手の悪癖としてフットワークの最中に相手の正面に立ってしまうというのがある。それが今回の試合ではモロに出てしまった。というより、バルガスの足の運びがうまかったと言う方が正解か。

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4、5Rには一見アリがスピードを活かして優位に立ったように思われたが、まったくそんなことはない。バルガスがアリの動きを見切るために時間を費やしたに過ぎない。

その証拠に、6Rに入るとバルガスは完全にアリのタイミングを掴んでいた。アリがモーションに入った瞬間を狙って先に自分のパンチを当てる。これによって試合の形勢は一気にバルガスに傾く。
つまり、すべてはバルガスの掌の上での出来事だったのである。

「レイ・バルガスやべえww強いww こいつは絶対覚えておいた方がいい」

もう少し左右へ動くなり、緩急をつけるなりの工夫が欲しい

アリのスピード、センスはすばらしい。それは間違いない。

ただ、今回の試合はあまりにバルガスと正面から打ち合い過ぎだった。もう少し足を使って左右へ動くことを意識すれば、もしかしたら違う結果が待っていたのかもしれない。

そしてパンチの強弱がなさ過ぎた。
確かにハンドスピードはある。キレも抜群だ。
ただ、常に真っ正直に左から打ち始めるバリエーションのなさは致命的だ。あれだけ何度も同じパターンで打っていれば、どうしてもタイミングは覚えられる。いきなり右を出したり、もう少し緩急や工夫が欲しかった。

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自信を持ってアリを追い詰めるバルガス。伸びのある右が再三アリを捉える

アリの動きをインプットして自信たっぷりに前進するバルガス。ブラッドリーの手数の多さに圧倒された前回の試合とは大違いである。

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対するアリはバルガスにモーションを狙われていることがわかっているので、自分から手が出せない。打ち終わりのカウンターを狙うものの、相変わらずバックステップが間に合わずに被弾を許す。

こうなるとフィジカルに勝るバルガスは強い。
7R以降は完全にバルガスのワンサイドゲームである。

フットワークの最中に相手の正面に立ってしまうアリの悪癖を突き、ぐいぐいと前に出てコーナーに追いつめる。伸びのある左から上下へフックを散らし、アリの退路を奪う。

何とか状況を打破しようと、アリが足を止めてパンチを打ち込む。
だがこれもバルガスには通じない。軽々と防がれ、逆に反撃を許してしまう。
足を止めての打ち合いでことごとく優位に立つバルガス。幾度となくアリにロープを背負わせる。

じり貧のアリ。これは苦しい。

いよいよ追い詰められた8R終盤。
アリがバルガスの打ち終わりを狙って踏み込む。
その瞬間、バルガスの右がカウンターでヒットしてアリがダウン!!

アリのカウンターにさらにカウンターを合わせたバルガスの右である。
そして、実質この試合の勝負が決定した瞬間でもあった。

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青息吐息のアリに対し、仕上げの作業に入るバルガス

9R。
じわじわと前に出るバルガス。
ダメージの深いアリは足に力が入らない。軽く押されただけでロープにもたれるように倒れてしまう。

コーナーに追いつめられ、防戦一方のアリ。
すでに反撃する力も逃げるフットワークも残っていないか。

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バルガスがお手本のようなワンツーを放つ。
2発目の右をモロに被弾したアリが尻持ちをつくように倒れ込む!!

ああ、ヤバい。
これは止めるかも。

カウントの最中に何とか立ち上がるアリだが、目の焦点が定まっていない。
仕上げに入るバルガス。落ち着いた表情でじりじりとコーナーにアリを追いつめる。

この足運びの巧さがバルガスの持ち味だが、相手の正面に立ってしまう悪癖を持つアリとの相性は最悪だ。

アリをコーナーに追い詰め、またしてもお手本のようなワンツーを放つ。バルガスの右を被弾し、ガクッと腰を落とすアリ。身体を曲げてダウンをどうにか拒否する。バルガスが腰に回されたアリの腕を振りほどこうとしたところで、レフェリーが両腕を交差して試合をストップする。

9R2分9秒TKO!!
バルガス勝利!!

予想は外したけど、大満足の熱戦。こんな試合があるからボクシングはおもしろい

いい試合だった。
絶対につまらないと確信していたが、とんでもない。両者死力を尽くしたすばらしいタイトルマッチだった。

そして勝つのはアリだと予想していたが、まったく真逆の結果が待っていた。
以前からサダム・アリには期待していて「絶対出てくるから見とけよ」などと偉そうに吹聴しまくっていたのだが、出てきた瞬間に消えてしまった
ただ予想は外れたが、 いい意味で期待を裏切られた試合だった。

もしかしたらアリ自身、自分のフットワークがバルガスに通用しないことをわかっていたのかもしれない。大きく動くいつものスタイルではバルガスのプレッシャーから逃れることは不可能であると。それなら腰を入れた強いパンチで対抗した方が可能性は高い。たとえフットワークをトレードオフにしても勝利の確率は上がる。そう判断したのかもしれない。

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試合後のインタビューで「足をひねってしまった」とコメントしてブーイングを浴びていたが、恐らくそれも本当なのだろう。何度か変なバランスの崩し方をしていたし、あの戦い方以外に選択肢がなかったとも考えられる。

大いに期待したサダム・アリの初タイトル戦だったが、今回の試合を見る限りトップ中のトップと渡り合うにはやや力不足と言わざるを得ない。自分本来のスタイルを封印して接近戦を選んだことからもそれは明白である。
恐らく今のままではケル・ブルックやショーン・ポーターに勝つことは難しい。何かを変えなければ、このまま中途半端な第二勢力のまま終わる可能性が高い。

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とはいえ、ジェシー・バルガスのよさもたっぷり見られたし、ファンとしての目線ではオールOKである。こういうおもしろい試合が観られるのであれば、予想が当たろうが外れようがどうでもいい。

「ケル・ブルックはウェルター級で最強に最も近いボクサーだという事実に異議はないはずだが?」

不人気ブラッドリーの返上したタイトルを争う試合だった手前、注目度的にはまったくノーマークだったことは否めない。だが、これだけ緊張感溢れる好試合であれば文句なしである。トップ戦線をうかがう第二勢力同士のサバイバルマッチとしては十分過ぎる内容だったと思う。

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