2017年田中マー君はサイヤング賞を獲得できるか? 実はダルビッシュよりも可能性が高い? 2016年の成績と感想

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ニューヨークの公園
14勝4敗 防御率3.07 投球回199.2
これが2016年9月30日現在の田中将大(ニューヨーク・ヤンキース)投手の成績である。

防御率3.07はブルージェイズのアーロン・サンチェスに次ぐア・リーグ2位。
さらにメジャーでの一流投手の基準と言われる200投球回にあと1/3イニングと迫り、メジャー3年目にしてキャリアハイの成績を叩き出している。

ローテーション通りにいけば現地時間10月1日が2016年レギュラーシーズンのラスト登板となる予定である。だが、田中自身が右腕の張りを訴えたこともあって当日マウンドに上がるかは未定とのこと。

それでもメジャー3年目で堂々のピッチングを披露し続け、肘のケガへの懸念を実力ではね返してみせたことは確かな事実である。このままいけば、来シーズンの田中将大にはさらなる飛躍が期待できるのではないだろうか。
 
「もっと騒がれていい田中マー君のすごさ。今シーズンはマジでサイヤング賞推しメンです」
 

田中マー君覚醒? 肘の不安を吹き飛ばしてメジャーキャリアハイを叩き出す!! サイヤング賞の可能性はダルビッシュ以上か?

田中マー君の調子がいい。
シーズン開始直後はフォームにまるで力感がなく、伝家の宝刀と呼ばれたスプリットも落ちずに周囲を心配させた。

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だが5月6月と徐々に調子を上げ、7月以降は安定感抜群の投球で相手を翻弄する姿を披露してくれている。
7月の防御率が2.45で、8月の防御率が3.00。
肘の影響をまったく感じさせない内容で、ヤンキースのエースとして文句なしの活躍である。

これは単に調子が上がっただけなのか。あくまで一時的なもので、調子が落ちればまた打ち込まれるのか。
それとも完全に覚醒したと考えていいのか。そして、2017年シーズンにはさらなる成績向上が期待できるのか。

これについて僕個人の意見を申し上げると、ぶっちゃけ田中マー君は覚醒したと思う。実は2017年シーズンのサイヤング賞すらも期待していいのではないか。鼻で笑われるかもしれないが、割と真面目にマー君のサイヤング賞獲得はあり得ると思っている。

現状、日本人最強の投手は文句なしにレンジャーズのダルビッシュだが、正直サイヤング賞を獲得する可能性だけを考えれば田中マー君の方が上ではないだろうか。
誇張でも勘違いでもなく、田中マー君の総合力はダルビッシュ以上。ここ1、2カ月の投球を観て、かなりの確度でそう感じている次第である。

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投球パターンを月別で見ていくと、田中マー君の試行錯誤が伝わってくる

では、なぜ僕が田中マー君の投球内容をここまで買っているか。それについてご説明していきたいと思う。

まず、下記が田中マー君の2016年4月の球種の分布である。
4シーム:4.71%
2シーム:28.05%
スライダー:21.84%
カーブ:6.64%
カッター:6.00%
スプリット:32.76%

この時期は2シームとスプリットを投球の軸にしており、スプリットに至っては全体の30%を超えている。春先で直球系の威力がない時期だったこともあるが、さすがにスプリット30%はやり過ぎだ。

開幕直後だったこともあって「まだこれからだろ」とは思いつつ、2016年シーズンが前途多難だと感じていたことも確かである。

そして以下が5月の球種の分布。
4シーム:0.66%
2シーム:39.17%
スライダー:33.04%
カーブ:4.16%
カッター:3.94%
スプリット:19.04%

投球パターンがガラッと変わっていることに気づくと思う。
スプリットの割合が2割程度に減り、その分2シームとスライダーが大幅に増えている。

ちょうどこの頃はマー君のスライダーが高速化し、いわゆるスライダーとカッターの中間球である「スラッター」を投げ始めた時期にあたる。
スライダーの平均スピードも4月の84.14マイルから5月は85.41マイルと、概ね1.3マイルほどのアップが見られている。

またカウント別の球種を見ると、4月は0-2の状況でスプリットが42.86%、スライダーが14.29%。1-2の状況ではスプリットが36.59%、スライダーが41.46%。
それに対し、5月は0-2の状況でスプリットが18.18%、スライダーが42.42%、1-2の状況ではスプリットが23.08%、スライダーが51.28%。
要するに勝負球をスプリットからスライダーへの移行させているのである。

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さらに、0-2の状況で投じたスライダーのスピードの平均は4月が83.46マイルに対して5月は86.01マイル。勝負どころでのスラッターは相当なスピードが出ているのである。

これを観た僕は大いにテンションが上がり、下記の記事のように田中マー君覚醒か? と大騒ぎしている。

「田中マー君覚醒!! スライダーの高速化、スラッター化でレベルアップ。悪いなメジャー、もうマー君は打てないよ」

ちなみに、プレートを踏む位置を1塁側に変えることで結果が出たのもこの頃である。

「マー君、黒田流で勝った!プレート踏む位置を一塁側に変え7回1失点」

ヤンキース時代の黒田博樹を参考にして、右打者の内側に食い込む2シームの鋭さが増したとのこと。

それでも田中マー君は中四日に弱い。結局ガラスのエースだなぁ

ただ、同時に中四日での登板には相変わらず弱く、中五日の登板時を引き合いに散々批判されていたことも確かである。記憶が曖昧なのでアレだが、中五日での登板時の防御率が1点台だったのに対し、中四日での登板では5点台に跳ね上がっていたのではないだろうか。

6月は2度の中四日の登板で6回1/3 5失点、6回6失点といずれも打ち込まれ、月間防御率が4.12と大幅に落ち込んでしまっている。

調子がいいときは確かにすごい。だが、結局は中四日に対応できないガラスのエースだとガッカリしたのもこの頃である。
「あ〜あ、やっぱり田中マー君はこんな感じでのらりくらりとやっていくしかないのかな」

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4シームの威力が増したことで中四日に完全対応。すべての球種が高水準でまとまりを見せる

だが、7月に入ると少し様子が変わってくる。

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中四日登板となった現地時間7月22日のマリナーズ戦を6回無失点で切り抜けたのを皮切りに、
8月7日のインディアンス戦で6回1失点、
8月24日のマリナーズ戦で7回無失点、
9月10日のレイズ戦で7回1/3を1失点、
9月15日のレッドソックス戦で7回1失点
と、中四日の登板で見事な投球を続けるのである。

この間の投球パターンを見てみると、

7月の球種の分布が
4シーム:7.63%
2シーム:31.81%
スライダー:19.83%
カーブ:5.88%
カッター:11.98%
スプリット:22.88%

8月の球種の分布が
4シーム:22.00%
2シーム:15.71%
スライダー:26.06%
カーブ:5.36%
カッター:7.02%
スプリット:23.84%

9月の球種の分布が
4シーム:18.55%
2シーム:14.29%
スライダー:22.81%
カーブ:7.02%
カッター:9.02%
スプリット:28.32%

となっている。

ご覧のように5月に比べてスライダーの割合が減り、4シームが増えていることがわかる。
また、5月の時点で平均85.41マイルまでスピードアップしたスライダーが、7月〜9月では83.84マイルと抑え気味になっているのである。
だが、横の変化量を表すHorizontal moveは4月の1.22インチに対して7月〜9月では2.02インチと大幅に増している。

恐らく8月は今シーズンで一番調子がよかった時期なのだが、4シームの割合が最も上がっているのもちょうどこの月である。
平均球速も4シームが92.08マイル、2シームが90.23マイル、スプリットが87.50マイルで、いずれも月別での最高値をマークしている。さらに2シームの横変化量(Vertical movement)が-8.31インチ、スライダーが2.07インチと、こちらも月別の最高値を叩き出している。

この月の投球パターンを見ると、カウント0-0では4シームが26.67%、スライダーが20.00%。カウント0-1での割合が4シームが20.48%、スライダーが19.28%、カッターが24.10%、スプリットが21.69%である。

とにかく2シームの割合が大幅に減り、浅いカウントでは4シームをどんどんストライクゾーンに投げ込んでいることがわかる。そして、カウント0-2の状況ではスプリットの割合が44.44%と大幅に増えているのである。

つまり、4シームの威力が上がったことで初球からゾーンで勝負できるようになり、少ない球数で追い込むことが可能になった。
同時にすべての球種の威力がアップしたために、これまでのスプリット依存のパターンからさまざまな球種でカウントを整えられるようになった。
結果的に打者を追い込むまでスプリットを温存し、より有利な状況で勝負することに成功しているのである。

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右打者の外側にスライダーと4シーム、内側に2シーム。左打者の外側にスプリットと4シーム、内側にスライダーとカッター。内外自由自在のコーナーワークで打者を追い込み、ウィニングショットのスプリットで空振りやゴロを量産する。
1人の打者への球数が少なく済むので体力も温存でき、回り回って中四日への耐性も身につく。当然イニングも稼げる。
完全にメジャーの一流どころの仲間入りである。

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2016年8月のマー君はある意味完成型? プレートの位置を変えてすべての球がしっくりきたのかな

5月にスライダーがスラッター化したのを観て、僕はてっきりこの路線で進んでいくとばかり思っていた。

だが、田中マー君はスライダーを高速化させるよりも変化量を増やす方向に転換していった。縦の変化量を表すVertical movementも、4月の段階では3.67インチだったのに対して、8月は2.05インチ。スプリットのVertical movementが2.85インチなので、スプリットよりもスライダーの方が縦変化が大きくなっているのである。

スピードを抑え、縦横の変化を増やす。
恐らく5月の時点で、スラッターは身体にかかる負担が大きいと感じたのだろう。カウント0-2でのスライダーの平均球速が84.26マイルであることを鑑みるに、本気のスラッターを使うのは勝負どころに限定する。長いシーズンを乗り切るための割り切った判断である。

もしかしたらプレートの位置を1塁側から真ん中寄りに変えたことも影響しているのかもしれない。

↓こちらがプレートの1塁側に足を置いたという5月21日のアスレチックス戦

↓そして、こちらが8月19日のエンジェルス戦である。

5月時点に比べてプレートを踏む位置が真ん中に寄っていることがわかると思う。これによって、スライダーと2シームの変化量のバランスがしっくりきたのだろう。

ちなみにだが、5月21日の試合での球種の分布は、
4シーム:1.09%
2シーム:53.26%
スライダー:29.35%
カーブ:2.17%
スプリット:14.13%

見ての通り、確かに2シームの割合が多くなっている。
また、スライダーのスピードは85.01マイルでHorizontal movementが0.55インチ。ほぼスライダーとカッターの境界線がなくなっている状態である。プレートの一塁側から投げているために、スライダーの曲がりが悪くなったとも考えられる。

そして8月19日の球種の分布は、
4シーム:20.00%
2シーム:23.00%
スライダー:29.00%
カーブ:7.00%
カッター:6.00%
スプリット:15.00%

カウント0-0での割合が
4シーム:25.00%
2シーム:25.00%
スライダー:17.86%
カーブ:25.00%
カッター:3.57%
スプリット:3.57%

カウント0-2での割合が
2シーム:14.29%
スライダー:14.29%
スプリット:71.43%

特定の球種に依存することなく、各々の球を高水準で投げ分ける。なおかつ打者を追い込むまでスプリットを温存し、ここぞのときのウィニングショットとして使う。
さらに、初球に意表をついたカーブを投げているのも日本人投手的で興味深い。

4シーム、2シーム、スライダー、スプリット、カッター。そして勝負どころでのスラッター。そこにアクセントとしてのカーブ。
すべての球が高水準でまとまり、何か1つの球に依存することもない。球数を節約しながら打者を打ちとるメジャー仕様の投球パターンの確立である。
 
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こんな器用なピッチャー、他にいないぞ。やっぱりサイヤング賞獲得の可能性はダルビッシュよりも高いんじゃないか?

いや、すごい。
わずか2、3ヶ月でここまで試行錯誤を繰り返して一定の正解にたどり着いてしまうのだから、器用にもほどがある。

これだけ器用な投手がほかにいるだろうか。投手の数が多くて把握しきれていないのだが、ここまで完成度の高い投手はメジャーでもそうはいないと思う。
ダルビッシュや大谷翔平の投球は確かに他を圧倒する迫力があるが、安定感や総合力などでは断然田中マー君である。

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うまい例えが見つからなくて非常にもどかしいのだが、2012年黒田博樹と2013年岩隈久志のハイブリッドとでも言えばいいだろうか。
というか、実際この投球はもっと騒がれてもいいと思うのだが、どうだろうか。

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繰り返しになるが、2017年シーズンに田中マー君がサイヤング賞争いに食い込む可能性はかなり高いと思う。もちろん今シーズンの7〜9月までの調子を維持し、シーズン通して健康であることが絶対条件だが。

ただ、先日のインタビューで2017年3月のWBCに出たいと言っていたことが気になる部分ではある。WBCで大谷翔平と田中マー君のダブルエースは絶対に観たいところだが、それによってレギュラーシーズンのコンディションに影響しないことを願う。

サイヤング賞争いをするマー君も観たいし、日本代表のユニフォームを着て投げるマー君も観たい。本当に悩ましいところである。

だからもうアレだ。
両方がんばれ。

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