田中将大、2本のソロ本塁打に泣き今季5敗目。なぜ今年は被本塁打が増えたのだろうか【ブルージェイズ戦】

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夏イメージ
田中将大、2本のソロホームランで2失点。3安打のうちの2本がホームランによる失点で今シーズン5敗目(8勝)。

「田中マー君、2発のホームランに沈む。大一番に敗れ、2015年シーズンを終える」

ニューヨーク・ヤンキースに所属する田中将大投手が9日(日本時間10日)、本拠地ヤンキースタジアムで行われたトロント・ブルージェイズ戦に先発。6回を3安打2失点に抑えたものの打線が2試合連続の完封負けと援護がなく5敗目(8勝)を喫した。

「田中将大、タイガース戦に登板。勝敗つかずも7回途中1失点の好投!!」

2失点はいずれもソロホームランで、今シーズンの被本塁打数が18本と早くも昨年の15本を上回ってしまった田中。「一発病」などと揶揄されることもあるが、果たして今後に改善の余地はあるのだろうか。

立ち上がりにいきなりドナルドソンにホームランを許す! それでも調子は悪くない

初回の田中。先頭打者のトロウィツキーをスライダー、ツーシームで追い込み、6球目のスライダーで三振にとる。
うん。まだ1人目だが、今日の田中の球はなかなかよさそうだ。

続く2番ドナルドソンへの初球。初球94マイルのフォーシームがシュート回転でど真ん中に。この球をドナルドソンがスイング一閃!!
カチッ!!
小気味いい炸裂音を残して打球は右中間スタンドへ一直線。
ホームラン!!
いきなり失点の田中。今日もさっそくの被弾だ。
いやしかし、あの球を軽々スタンドインするドナルドソン。さすがである。

その後は3番バティスタ、4番ナバロをスライダー、ツーシーム、スプリット、カーブと様々な球種を駆使して打ち取った田中。
ホームランを打たれはしたが、投げている球は悪くない。中四日の影響もあまり感じさせない立ち上がりだ。
打たれてしまったものはしかたがない。ここから切り替えていこう。

2回の田中。先頭打者5番コラベロにはすっぽ抜けのスライダーをヒットにされたが、後続を抑えて無失点。
やはり今日は調子がよさそうである。特にスプリットはいい。ストライクゾーンから低めに加速するように落ちていく軌道で、これは好調時の田中のスプリットだ。スライダーはやや曲がりが大き過ぎるように見えるが、キレ自体は抜群だ。6番のスモークを三振にとったスライダーなどは素晴らしい変化を見せていた。後はツーシームの制球を気をつけさえすれば順調にいくのではないだろうか。

3回。
この試合、初めての三者凡退で切り抜ける田中。
やはり投げている球は素晴らしい。ツーシームのキレも悪くない。グイッと右打者の手元に食い込むような軌道で、相手にまともなスイングを許さない。そして外角に逃げるスライダー。この球にもキレがあるので打者には相当遠く見えるはずだ。

9番の左打者リベアには外角フォーシームからカーブ、そしてツーシーム。最後はスプリットでサードゴロと、まったくチャンスを与えない組み立てを見せた田中。今日はとにかくキレのいい変化球で、ゾーンを広く使えている。

ただ、1番打者のトロウィツキーをライトフライに打ち取った球。これはかなり危ない球だった。外角からど真ん中に入るツーシーム。こういう右打者の外角からストライクにするツーシームの投げミスは恐い。ひやっとしたが、トロウィツキーが打ち損じてくれて助かった。

またしてもソロホームラン!! 調子はいいのにもったいない

4回。
初回にホームランを打たれているドナルドソンを0-2からのスプリットで三振にとり1アウト。このスプリットが内角低めのこのコースに決まっていれば、まず打たれることはない。

続く3番バティスタ。
初球のスプリットが外角に外れて1ボール。
2球目。内側を狙ったツーシームが真ん中やや外寄りに。薙ぎ払うようにバットを振り抜くバティスタ。
バシっ!!
打球は一直線にレフトスタンドへ!!
ホームラン!!
またしてもホームラン!!これで得点は0-2。

あ〜〜、これは打たれるよ。
さすがに今の球はホームランボール過ぎた。今日はツーシームが抜けて真ん中に入るパターンが多い。そしてその球を確実に捉えられている。他の球はいいのに、それだけが残念だ。

続く4番ナバロ、5番コラベロを打ち取った田中。
結局、この回をホームランの1失点に抑える。本当に調子はいい。
特に5番コラベロを打ち取ったスライダー。あの右打者の外角に鋭く逃げていく軌道はそうそう打てるものではないだろう。間違いなく今日の田中はいいのだ。それだけにツーシームの投げミスが悔やまれるところだ。

5回に入ると、ブルージェイズの下位打線を相手にさらに田中が調子を上げる。
先頭打者の6番スモークを外角のスライダーで三振に、続くペニントンを初球のスプリットで内野ゴロに打ち取る。8番ピラーがセーフティバントを試みるが、田中が落ち着いて処理して3アウト。あっという間の三者凡退である。

6回。
先頭の9番リベアへの初球。91マイルのツーシームがまたしても真ん中高めへ。
危ない!! と思ったがリベアが見送る。いや、助かった。このツーシームが投げミスになった半速球は本当に恐い。

フルカウントとなったところで、3回、4回とサインに首を振る田中。キャッチャーがマウンドに駆け寄りひと言、ふた言言葉を交わす。そして投じた勝負球は内側へのスプリット。これをリベアが空振り三振!! ナイスボールだ。

続く1番トロウィツキーを絶好調の外角スライダーで追い込み、最後は88マイルのスプリットを引っ掛けさせてサードゴロ。2アウト。

そして2番ドナルドソン。ホームランを打たれている強打者との本日三度目の勝負だ。
初球、外側の85マイルのスライダー。やはり今日、頼りになるのはこの球だ。
ドナルドソンがバットを鋭く振り抜く!!
バチッ!!
激しい打撃音とともに打球がセンターに伸びる、伸びる。
しかしフェンス手前で失速。エルズベリーがキャッチして3アウト。
お〜、打ち取った〜。
オッケー!! ナイスピッチング!!

5敗目が記録された田中。被本塁打の多さの原因は何なのだろうか

結局6回を投げ終わり、球数が80球となったところで田中は降板。チームはブルージェイズの投手陣を打ちあぐね、2試合連続の完封負けとなった。
先発の田中は6回2失点、無四球の5奪三振と効率よくアウトを積み重ねたが、打線の援護なく5敗目(8勝)を喫した。

2失点はいずれもソロホームランと相変わらず被本塁打の多さが目につくが、監督のジラルディも「田中はすばらしいピッチングをした」と、問題視していないコメントを残している。
なお、80球という少ない球数での降板については「怪我から復帰後、初めての中四日登板であることを考慮して」のことだったと明かしている。

何度も言うが、今日の田中はよかった。そして故障開け後初めての中四日での登板も問題なく消化したことも価値があるのではないかと思う。
被本塁打の多さについてだが、これは前回の記事でも言ったがある程度は仕方のないことだと思う。

「田中将大登板結果。今季16本目の本塁打を浴びるも6回3失点で今シーズン8勝目」

今シーズンの田中は球数をできるだけ少なくする投球スタイルを模索している。ストライクをどんどん先行させて少ない球数で打者を打ち取っていくスタイル。なおかつ、全力投球の場面をなるべく少なくしつつ、うまく打者の芯を外して打たせてとるピッチングである。

そうなると当然ツーシームの比重が大きくなるのだが、このツーシームはコントロールミスをすると打ち頃の半速球になる諸刃の剣である。しかもある程度力をセーブした状態で投げているので、打者からすれば「待ってました」と言わんばかりのホームランボールになってしまうのだ。そしてメジャーの打者はこのわずかなコントロールミスを見逃さずに捉えてくるのである。

力をセーブした田中の投げミス+ミスショットをしないメジャーの打者。
要するに、この2つの理由で今シーズンの田中は被本塁打が多くなっているのである。

今シーズンの開幕前、田中はシーズンを通して高水準で安定した投球をすることを目指すと宣言していた。これは一度のビッグピッチよりも、6回3失点以内のQSを数多く続けることに価値を見出していることを意味している。
昨シーズン前半のように中四日の登板間隔で飛ばしていくと間違いなくシーズン半ばで失速する。肘に不安を抱えているということもあるだろう。

正直、今シーズンの田中に胸のすくような快投を期待するのは難しいと思っている。一試合の中で投げミスをまったくしないというのは物理的に不可能だし、先ほども言ったようにある程度力をセーブした状態での投げミスをメジャーの打者は見逃してくれない。そう考えると、今後も間違いなく本塁打は打たれるだろう。
なおかつ肘に不安を抱えた田中を考慮して、交代は早めに行われるだろうから防御率の劇的な改善も望めないはずだ。

「田中マー君、今季初完投で9勝目。被弾に泣かされた雪辱を晴らす!!」

日本時代の圧倒的な姿を知っているファンからすれば、物足りないことこの上ないと思うが、これが田中将大の選択したスタイルである。受け入れがたいとは思うが、受け入れなくてはならないのだ。

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