こんな会場でやっていいの? シャフィコフvsコミー戦がすごい試合だった!! イースターへの挑戦者決定戦にシャフィコフが勝利【結果・感想

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モスクワイメージ
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2016年12月2日(日本時間3日)にロシア・モスクワで行われたIBF世界ライト級挑戦者決定戦。
同級3位リチャード・コミーvs同級5位デニス・シャフィコフの一戦はシャフィコフが2-1(116-112、115-113、112-116)の判定で勝利。現王者であるロバート・イースターJr.への挑戦権を手にした。

シャフィコフの地元に乗り込んだコミーだったが、前回のイースターとの王座決定戦に続いての惜敗。2戦連続で惜しい試合を落とし、王座に手をかけながらも足踏みが続いている。

一方、激戦の末に勝利を掴んだシャフィコフは、戦績を38勝2敗1分20KOとした。

すげえ試合っす。こんな会場でやっていいようなヤツじゃない

シャフィコフ判定勝利!!
ギリギリの消耗戦を勝ち抜き、王座挑戦権を獲得!!

とりあえずこの試合の感想を。
「何これ、めっちゃいい試合!!」
「こんなどさ回りみたいな会場でやっていい試合じゃねえぞ!!」

はい。
すごい試合でした。

そして、こんなすごい試合が行われているのに、会場のショボさといったら……。

いろいろな意味で筆舌にし難い光景だった。
こんな骨太な試合が、言っちゃあなんだがこんなショボい公民館の空き部屋みたいな会場で行われていることに驚いてしまった。

「田中さ〜ん。12月2日だけど、1階の会議室押さえといて〜。コミーとシャフィコフが来るらしいから」
「は〜い。でもコミー? シャフィコフ? 誰ですかそれ?」

実を言うと、僕はこれまでリチャード・コミーの試合をあまり観たことがなかった
いい選手だという話は聞いていたのだが、存在も地味だしあまり興味がわかなかったというのが主な理由である。
ええ、自分、ミーハーなので。

先日のロバート・イースターJr.との王座決定戦も白熱したシーソーゲームだったそうだが、もちろん観ていない。WOWOWエキサイトマッチでO.A.されたことも知っていたし、コミーがダウンを奪ってイースターを追いつめたというのもどこかで読んだ覚えがある。

ただ、僕が「イースターの顔が嫌い」というクソしょーもない理由で視聴を見合わせていた経緯がある。

そんな感じでこれまで遭遇することのなかったコミーだが、実力者シャフィコフと激突するということで、初めて観てみようと思った次第である。

そして、あまりのいい試合に驚いてしまったというわけである。

ちなみにリチャード・コミーはガーナの選手なんですね。
確かにエラの張った彫りの深い顔立ちがちょっとアイク・クォーティっぽいかも。

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いつも通りの実力を発揮するシャフィコフ。多彩なパンチに凄まじい機動力

いつものように激しく上体を振りながら距離を詰め、様々な角度からパンチを出すシャフィコフ。
身体を振り子のように動かし、規則的なリズムで絶えずポジションを変えながら左右のフック、ストレートを振るう。

コミーのジャブをガードで弾きながらコーナーに追い込み、あらゆる角度から多彩なパンチを繰り出していく。
ガードの上から左のストレートを打ち、右足を踏み出してコミーの左側から右ボディ。頭を下げたまま斜めに左を打ち込み、今度は左足を踏み出してコミーの右側へ。
相手が右を強振できない位置から右ボディ、左フック。さらに右足をインサイドにねじ込んで懐に潜ってのボディ。コミーの顔が上がった瞬間にオーバーハンドの左を顔面に。

相変わらずの圧力。
相変わらずの機動力。
相変わらずの角度の多彩さ。
そして、相変わらずのフィジカルである。

あれだけゴリゴリやりながらもまったくバランスを崩さない。
12Rを戦い抜くスタミナもさることながら、豆タンクのような身体から沸き上がるパワー感はこの選手の一番の持ち味ではないだろうか。

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完全にリチャード・コミーを舐めてましたね僕は。こんなにいい選手だったとは

対するリチャード・コミー。
先ほど申し上げたように、僕はこの選手の試合をこれまであまり観たことがなかった。
そして、完全にこの選手を舐めていた。

理由は「ロバート・イースターに負けたから」

僕の嫌いなイースターに負けたコミーが強いわけがない。

全勝対決に惜しくも敗れた?
ハハッ!!
笑わせんなよ?
あんなムカつく顔したヤツに負けておいて、偉そうなことを言うんじゃねえよww
どうせ今回もシャフィコフに防御を崩されまくってロープ際で蜂の巣にされるんだろ?

そんな感じで、試合を観もせず勝手に「大したことない」認定をしていた。

めちゃめちゃいい選手じゃねえか!!

ビックリした。
まさかあのシャフィコフの攻撃をあそこまでしのぐとは。
しのぐだけでなく、逆に押し返してみせるとは。

シャフィコフの圧力に崩されそうになりながらもギリギリで持ち堪えるコミーに感動

身体を振りながら間合いを詰めるシャフィコフに対し、常に自分から手を出すコミー。
距離を詰められては分が悪いと判断したか、なるべく自分の手が伸びる位置でシャフィコフの攻撃を防ぐ作戦である。

だが、そこはやはりシャフィコフ。
スナップの効いたコミーのジャブを堅いガードと上体の動きではたき落とし、お構いなしに近づいていく。

コーナーに詰められ、絶体絶命のコミー。

このシーンを観て、無能な僕はもちろんこう思った。
「はいはい、これでいつものパターンですね」

オリンピック出場経験もあるジャメル・ヘリングが前回の試合でシャフィコフに枯れ枝のようにKO負けを喫したが、この試合も似たような結末が待っていると確信した。

だが、そこは実力者リチャード・コミー。堅いガードでシャフィコフの連打をしのぎきり、一瞬の間を突いてパンチを返す。ヘリングとの格の違いをまざまざと見せつけるのである。

ロープの反動を利用してパンチを放ち、シャフィコフとの間にスペースをこじ開ける。そして、すぐさまシャフィコフの振り子に合わせてシャープなコンビネーションを打ち込む。
シャフィコフが左に身体を振れば左。右に身体を振れば右。相手の進行方向に合わせ、振り子が振り切れる位置にピンポイントでパンチを打ち、シャフィコフを後退させる。

完全にスペースができたところで身体を入れ替えコーナーから脱出。
さらにダッキングでシャフィコフのパンチをかわし、そのまま頭を相手の懐に押し込む。
低い姿勢で足を踏ん張り、シャフィコフがパンチを出せない状態をキープしたままリングの中央まで押し戻す。

そして再び自分から手を出し、シャフィコフの突進に対抗する。

いや、さすがである。
リチャード・コミー、こんなにいい選手だったとは。
やっぱりあのクォーティと同郷なだけある。
エラの張った輪郭と彫りの深い顔は伊達じゃない。

「いったいどの口が言うんだ」と怒られそうだが。

「バーンズvsレリクとかいう隠れ名試合。疑惑の判定に興味がわかないのはおかしいのかな?」

勝敗を分けたのはスタミナの差。シャフィコフの細かい組み立ての巧さも光った

愚直な前進。
無尽蔵のスタミナ。
至近距離での多彩なパンチと細かいシフトチェンジ。
どんな相手にも屈しない強靭なフィジカル。
いつも通りの実力を遺憾なく発揮したシャフィコフ。

堅いガード。
鋭く正確なコンビネーション。
身体をうまく使ってピンチを切り抜ける試合巧者ぶり。
さらにシャフィコフにも負けないフィジカル。
こちらも文句なしのトップクラスの実力を見せたコミー。

判定結果が示すように、終盤までまったく結果がわからないほど拮抗した試合だった。

あえてシャフィコフの勝因を挙げるとすれば、やはりスタミナの差だろうか。
とりあえず言えるのは試合中盤まではほとんど互角の展開だったということ。
まあ、終始ペースを握っていたのはシャフィコフだと思うが、ヒット数という部分で。

だが、後半8、9Rあたりから徐々にコミーがシャフィコフの圧力に耐えきれなくなってきたように思える。

これまでは先に手を出してシャフィコフの突進をストップしていたコミーが、ガードを上げたままロープを背負うシーンが目につき始めたのがちょうどこのラウンドである。

横の動きに対応されていると感じたシャフィコフが5Rあたりから縦の動きも入れるようになったのだが、それが効いてきたのもこのラウンドだったのかもしれない。

サウスポーにスイッチして相手から的を遠ざけようとしたり、身体が突っ立ったところでシャフィコフの左をモロに被弾したりと、苦し紛れのアクションを起こすコミーの姿が印象的だった。

つまり、こういう消耗戦を常にくぐり抜けているシャフィコフと、フィジカル勝負では分が悪いコミー。その両者の差が終盤の4Rで表面化した。そういう試合だったのではないだろうか。

「ウケルw これリボリオ・ソリス負けなの? マクドネルが不思議判定発動? で防衛成功。試合後に階級アップを示唆する」

2017年のライト級戦線が楽しみ。バルテレミやロマチェンコがトップ選手とどう絡むのか

強敵コミーを自分の土俵に巻き込み、見事に僅差の判定勝利を飾ったシャフィコフ。
何度も言うが、本当にいい試合だった。
これだけの試合がこんな会場で行われていることにビックリしたし、リチャード・コミーという選手を舐め腐っていた自分の愚かさにも驚いてしまったww

さらに言うと、このデニス・シャフィコフに接近戦で勝利したランセス・バルテレミがいかにすごかったか。そのことにも気づかされた試合である。

以前、バルテレミvsシャフィコフの試合を観て「シャフィコフごときにあんな簡単に懐に入られちゃダメだ」と言った覚えがあるのだが、マジでとんでもない。我ながら無能極まりない話だ。

「バルテレミーがシャフィコフに判定勝ち!! IBFライト級王座獲得で2階級制覇!!」

とりあえず今回は本当にナイスファイト。

このライト級は2017年にマイキー・ガルシアvsズラティカニン戦があり、いずれS・フェザー級からロマチェンコが上がってくる階級である。

「マジでやるんかマイキー・ガルシアvsズラティカニン。失われた2年間を取り戻せ」

クローラに勝利したホルヘ・リナレスの動向も気になるし、僕の好きなバルテレミがトップ戦線にどう絡んでくるかにも注目したい。加えてシャフィコフvsイースターJr.も楽しみである(嫌いだけど)。

「リナレスがクローラに勝利!! 才能が凡人の努力をあっさり凌駕する。スピード&パワーの大正義」

華やかさと渋さが入り混じるライト級に2017年も注目していきたい。

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