黄昏時のサーマンが若き王者パッキャオ(40)に2-1で敗れる。肘も痛いし足も動かない。だから僕はサーマンに感動したんです【結果・感想】

黄昏時のサーマンが若き王者パッキャオ(40)に2-1で敗れる。肘も痛いし足も動かない。だから僕はサーマンに感動したんです【結果・感想】

ベガスイメージ
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2019年7月20日(日本時間21日)、米・ネバダ州ラスベガスで行われたWBA世界ウェルター級王座統一戦。同級スーパー王者キース・サーマンと正規王者マニー・パッキャオの一戦は、2-1(115-112、115-112、113-114)の判定でパッキャオが勝利。王座統一に成功するとともに、史上最年長のウェルター級王者となった試合である。
 
 
30歳のスーパー王者キース・サーマンに対し、40歳の正規王者マニー・パッキャオ。10歳差の両者の対決は、序盤から一進一退の攻防が繰り広げられる。
 
初回、スピーディな連打でいきなりパッキャオがダウンを奪うが、サーマンも持ち前のスピードと当て勘を発揮して応戦。
パッキャオが得意の連打でサーマンの足を止めると、サーマンもすぐさま右のカウンターでパッキャオの顔を刎ねあげる。時おり棒立ちでパッキャオのラッシュを受けるシーンも見られたが、何とか持ちこたえて反撃に移るサーマン。お互いに譲らない好試合が続く。
 
ところがパッキャオの動きは後半になっても落ちず。
10Rには盛大にボディを効かせてサーマンを後退させるなど、最後まで豊富な運動量を保ったまま試合終了のゴングを聞く。
 
結果は2-1の僅差でパッキャオが勝利。
大歓声の中、公務が多忙につき「来年またファイトすると思っている」と宣言。噂に上がっていたアミール・カーン戦やフロイド・メイウェザーとの再戦を否定した。
 
まさかのパッキャオvsスペンスJr.か。実はメイウェザー 以上にオレ様ルールのパッキャオだけど、それが許される格があるんだよ
 

パッキャオvsサーマンおもしろかった!! 僕の中では年間最高試合かもしれない

マニー・パッキャオvsキース・サーマンによる2019年のウェルター級のビッグマッチが終了した。
結果は2-1(115-112、115-112、113-114)の判定でパッキャオの勝利。王座統一に成功するとともに、戦績を62勝7敗2分39KOとした一戦である。敗れたキース・サーマンはキャリア初の黒星となり、戦績は29勝1敗1無効試合22KO。今後の再起に期待がかかる。
 
 
なお、僕はこの日は朝から用事があってリアルタイムでは観られず、かなり遅い時間にようやく視聴を終えた次第である。
 
そして、「めちゃくちゃおもしろかった」
 
 
いやまあ……。
先日の予想記事でも申し上げたが、当初僕はこの試合にあまり興味がなく。
ブランクが長くいまいちやる気も感じられないキース・サーマンと、政治家との掛け持ちが忙しい40歳のパッキャオ。
両者がどんなコンディションでリングに上がるかも予想がつかず、どうにもテンションが上がらない状態が続いていた。
 
「パッキャオvsサーマンちっともわからん。パッキャオのコンビネーションか、サーマンの足か。サーマンは早くランニングマンに改名しろ」
 
ただ、何だかんだと言いながら観ることは間違いないし、何よりパッキャオの試合はおもしろい。
 
なので、余計なご託を並べるのはやめて素直に楽しもうと思っていたところ……。
予想をはるかに超える感動的な光景に出くわしてしまったww
 
マジな話、僕の中では今のところ年間最高試合
先日の中谷正義vsテオフィモ・ロペス戦もめちゃくちゃ感動したが、今回のパッキャオvsサーマン戦はそれをわずかに上回る(僕の中では)。
 

キース・サーマンにめちゃくちゃ感動した。散々ネタキャラ扱いしてきたことを全力で謝罪させていただくw

何と言っても、今回はキース・サーマンに感動してしまった
 
僕はこれまでこの選手に対して「持久走での逃げ切り大好きマン」「才能だけでここまできた人」など、散々言いたいことを言ってきている。
 
また、怪我を理由にブランクが長引く中、頻繁に来日を繰り返していることについても「後楽園ホールとバークレイズ・センターの往復しかしてねえじゃねえかw」と、完全にネタキャラ枠に認定していたことも告白しておく。
 
「久々のキース・サーマンがホセシト・ロペスに大苦戦。2-0の判定で防衛成功。2年間、水道橋とNYの往復しかしてないからなw」
 
IBF王者エロール・スペンスからの統一戦要求をはぐらかしつつ、日本を満喫。
この微妙な感じをダラダラと続けるのははっきり言ってつまらないし、どこかでデカい勝負をしないとホントにネタキャラのまま終わるぞ? などと思っていた次第である。
 
それがまさか。
ここまで感動的な試合を見せてくれるとは。
冗談でも何でもなく、僕は今回の試合はキース・サーマン史上もっとも好きな一戦と断言できる。
 
「ルイス・ネリの馬力。パヤノ善戦もボディ1発で沈む。リバウンドありきのバンタム級なんだろな。見るからにデケえし」
 

サーマンの出来はよくなかった。でも、今の自分に唯一できるファイトスタイルでパッキャオ(40)に肉薄した

一応申し上げておくと、サーマンの出来自体はあまりよくなかったと思う。
 
ブランクのせいで足が動かず、1発1発のパンチに力も乗らない。以前はサウスポー相手には左のボディをぶん回して前進を止めていたが、この試合ではそういったパンチはほとんど見られない。むしろ恐る恐る腕を伸ばしているイメージで、左腕or左拳に何らかの異常を抱えていることは明らか。
 
正直、縦横無尽に動き回りながら殺傷能力の高いパンチを振るう全盛期の姿とはほど遠い状態である。
 
手打ちの左ではパッキャオのプレスは止まらず、バックステップが効かないので連打からも逃げきれない。
必然的に前に出て打ち合うしか方法がなく、これまで見せたことのないプレスで勝負をかけざるを得ない。
そして、それが何とも言えない終末感、危機感を醸し出していた。
 
岩のようなティム・チューがジェフ・ホーンさんの心と身体を分断する。コンスタンチンの遺伝子に長いリーチを上乗せした
 
Twitterのフォロワーさんに教えていただいたのだが、サーマンは慢性的な肘の痛みに苦しんでおり、すでに両腕ともにボロボロ。手術も経験済みで、練習再開までに半年かかったせいで持ち味の下半身のバネも失ったという。
 
なるほど。
それで一連のやる気のなさや、今回の鬼気迫るファイトに合点がいった。
サーマンはもはや本来の自分を取り戻すことは不可能だと悟っていて、その中で唯一できるのが前に出て打ち合うことなのだと。
 
左フックのぶん回しと12R動き続けるバネを失った今、パッキャオに勝てる方法があるとすれば至近距離での打ち合いのみ。
自分から前に出てスペースを潰し、天性の当て勘を活かした右のカウンターに勝機を見出す。左の連打はあくまで見せパンチで、本命の右を当てるための布石として使う。
 
一見するとファイトスタイルを変えただけにも思えるが、その裏では相当な覚悟があったのだと想像する。
自分に残されたものを総動員しての一点勝負。その姿には問答無用で心動かされるものがあった。
 
繰り返しになるが、今回のキース・サーマンは僕の中での過去最高と言わせていただく。
 
「スペンスvsポーター予想。ポーターはどう対抗すればいい? 僕にはスペンスが大差で勝ちそうに思えるんだが」
 
何かアレだな。
アリスの「チャンピオン」を思い出したよね。
チャンピオン
アリス
ロック
¥250

“やがてリングと拍手の渦が
一人の男を飲み込んでいった
You’re King of Kings.
立ち上がれ もう一度その足で
立ち上がれ 命の炎を燃やせ”
 
“獣のように挑戦者が
襲いかかる 若い力で
やがて君は 静かに倒れて落ちた
疲れて眠るように”
 
一つ問題があるとすれば、“獣のような若い力を持った挑戦者”が政治家とボクシングを掛け持ちしてるひげ面の40歳ってことくらいかww
 
「ベテルビエフvsグヴォジクとかいう地球が割れるかもしれない統一戦。退路を断った爆腕と重量級の拳四朗楽しみやね」
 

怪我が長引くのってしんどいからね。スペンスではなくパッキャオを選択したのも理解できる


まあでも、怪我ってホントにしんどいからね。
今回のサーマンのように完治はしない、いつ治るかわからない状態だと、これまで積み重ねてきたものが根底から崩れる感覚になるんだよな。
 
しかも29〜31、2歳前後って、ちょうど身体のキレが落ち始める時期でもある。個人差はあるだろうが、長期のブランクが致命傷になる可能性すら……。サーマンのような下半身のバネが生命線のタイプにとってはなおさらである。
 
恐らく王者としてのモチベーションを保つだけでも相当な精神力を要するだろうし、エロール・スペンスとの統一戦どころではない。大金が期待できるパッキャオ戦を選択したのも、改めて考えればめちゃくちゃ理解できる。
 
何となくだが、仮にこれでサーマンが引退しても個人的には納得してしまいそうな気がする。
 
「井上拓真vsウーバーリ。クッソ厳しそうな相手だけどがんばれ拓真。統一王座戦で初の兄弟W世界戦が実現」
 
いや、申し訳ないっす。
本来はパッキャオの化け物っぷりを大いに語るべきだし、怪我を押してリングに上がるよりも怪我をせずに普通に勝つ方がすごいというのも重々承知しているのですが。
 
ただ、今回のキース・サーマンがあまりに人間臭くて……。
 
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