タパレスが大森を11RTKOで粉砕。顎を骨折した大森は病院直行する。意図的な体重超過が「あり」な件【結果・感想】

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体重計イメージ
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2017年4月23日にエディオンアリーナ大阪で行われたWBO世界バンタム級タイトルマッチ。同級前王者マーロン・タパレスとランキング6位大森将平が対戦し、11R16秒TKOでタパレスが勝利した試合である。
 
2015年12月以来の再戦となった両者。
序盤からガードを意識して慎重に攻める大森に対し、タパレスは打ち終わりを狙ってラフなパンチを振るう。
 
右のジャブを出して距離を測り、ボディ中心にタパレスを攻める大森。5Rにはタパレスが身体をくの字に折るほどのダメージを与えて一気に攻めるが、逆にタパレスのカウンターを被弾するなど倒すまでには至らず。
 
その後ピンチをしのいだタパレスがリズムを取り戻し、失速した大森の顔面に次々にパンチをヒットさせる。
 
「井岡一翔の倒し方? ノクノイ戦の感想を含め井岡に勝てそうな選手を考える。まあ、アイツしかいない」
 
10Rに強烈なラッシュを浴びてダウンを奪われた大森だが、このラウンドは何とか持ちこたえる。
しかし、ダメージの残る11R開始直後、コーナーに詰められたところでレフェリーに試合をストップされてしまう。
 
なお、この試合はタパレスが前日計量に失敗しており、タパレスはベルトはく奪。大森が勝利した場合のみ新王座となる試合だった。
 
「ポーターvsベルト感想。体力腕力万歳ポーターがベルトを突進力と腕ぶん回しでKOする」
 

相変わらず、大森に対する辛辣な評価の数々。いや、そこまで言わなくても……というくらいドン引きしております

タパレスの計量失敗により、まさかの王座はく奪からスタートした今回の世界戦。
2015年のリベンジを果たしてすっきりと王座を獲得したい大森だったが、結果は11RTKO。それも顎を折られての惨敗である。
 
全体の印象としては、タパレスの経験値が大森のパワーを上回った感じだろうか。
僕個人の感想としても「タパレスやっぱりさすがやな」である。
 
 
だが世間的な評価を見ると、どうやらタパレスがすごかったというより「大森が情けなさ過ぎた」と感じた方が大半を占めているようである。
 
「過去最強カネロがヘロヘロチャベスを寄せつけず。体重差マッチを圧勝でクリア。ってか、この試合はアカン」
 
「東洋太平洋レベル」
「世界をとれる器じゃない」
「大森弱い!!」
「攻めてる側がスタミナ切れとかありえない」
「手打ち過ぎて話にならない」
「まったく勝てる雰囲気がなかった」
「気持ちで負けてる。がっかり」
 
マジな話、そこまで言いますかレベルの罵詈雑言には目を覆うばかりである。
久保隼vsセルメニョ戦の際もそうだが、穴の多い選手に対する鬼の首を獲ったような批判には毎回ビックリしてしまう。
 
「久保隼vsセルメニョ感想。ナイスファイト久保。万全の準備をした上での好試合」
 
別に「がんばっている選手に失礼だ」などと言うつもりはないが、そこまで全力で否定せんでも……という気持ちがないでもない。むしろ、否定どころかマイナスになっとるじゃないですかwwみたいな。
 
まあ、あまり人のことは言えないのだが。
 
「拳四朗vsガニガン・ロペス戦を予想してみる。拳四朗勝利が大方の予想みたいだけど、ガニガン・ロペスもいい選手」
 

高いガードと奥足重心の大森。前回の反省を踏まえた防御中心のスタイル

この日の大森は1にも2にもガード意識
奥足重心の構えでガードを高く上げ、顔面を中心に急所を守る。そして、とにかく打ち終わりにすばやくガードを戻すことを最優先に考えるスタイルである。
 
おかげで致命打を負う危険性は大きく減ったが、その分パンチのスムーズさは失われていたように思える。
前回の大森を観ると、やや右手を下げてリラックスした構えから自然なフォームでジャブを出していることがわかる。恐らくあれが大森本来のリードなのだろう。
 
「亀田和毅vsイバン・モラレスはわかるわ~ww はっきりと意思が見えるマッチメークはいいね。3兄弟末っ子対決」
 
だが、それでは前回同様、タパレスのカウンターの餌食になる可能性が高い。
この日の大森は、高くガードを上げた位置からそのまま右を打ち出すことを意識していた。ただ、そのためにスムーズさが失われ、パンチのつなぎに若干の引っ掛かりを感じたことも確かである。
 
まあ、あっという間にKOされた前回の教訓を活かした上での決断だったとは思うが。
 
「インドンゴがバーンズ討伐を果たして王座統一。おもしれえ試合ww 野生動物のようなインドンゴにビックリ」
 

大森は防御中心のスタイルに慣れていなかった。体力が低下し、右が出なくなったところをタパレスに攻められた

また、6R以降にガクッと右の数が減ったところを見ると、恐らく大森はこのスタイルにまだ慣れていないのだろう。
体力が続く前半は右で距離をとる意識が働くが、消耗するにしたがって手数が減り、両腕を大振りする雑なボクシングに変貌していく。
 
特に7R以降はその傾向が顕著だった。
ラウンド前半はねじを巻き直して右を意識するのだが、中盤以降パタッと止まる。そして、最後はグダグダ状態でゴングを聞く。
おかげで、半分以上の時間をタパレスが圧倒している印象を残してラウンドを終えるのである。
 
「井上vsリカルド・ロドリゲス感想。だーめだ、ムリムリ無理無理。無謀な挑戦お疲れロドリゲス。井上はさっさと階級上げなさい」
 
確かに右はぎこちない。
それでも、ガードの上からでもタパレスの身体が流れるほどの威力があり、そのパワーを活かせなかったのが本当に惜しい。
現に右が出ている時間帯は大森が有利に進めていたと思う。ロープ際で「あわよくば」のシーンまでは持ち込んだのに、そこから先が続かなかったのは非常に残念だった。
 
もちろん顎に甚大なダメージを負ったせいで、身体に力が入らなかったのもあるのだろうが。
 
「マイキー・ガルシアvsブローナー決定!! マジかよスゲー試合だよこのマッチメイク。体重超過あり?」
 
散々ガードを意識しても打ち終わりに身体が流れてしまう大森と、フルスイングしても打ち終わりにほとんど体勢を崩さないタパレス。
今回の両者に決定的な差があるとすれば、そのあたりだろうか。
 
めちゃくちゃ乱暴なたとえだが、僕の中でのタパレスは「ラフな西岡利晃」というイメージである。やはりフィジカルがしっかりしていれば、それだけ復元力もアップするのだろう。
 
「5度ダウンのカールソンが山中に敗れる!! 神の左()を活かすための神隠しの右()が冴え渡るww」
 
え?
大森の左って“魔の左”って呼ばれてるの?
神の左()の次は魔の左()か。
おいおい、ついに魔界にまで足を踏み入れちゃったのか。
誰でもいいから現世でパンチ打ってくれよww
 
「ラフファイトとか体重超過とか、別にアリだよな? というお話」
 

大森将平、サウスポーが苦手過ぎじゃないですかね? 長谷川穂積との練習って意味あったんですかね?

実を申し上げると、僕はこの大森将平の試合を観たのは前回のタパレス戦と今回の再戦のみである。2016年末にリー・ハスキンスとのタイトルマッチが決定した際も、相手がサウスポーということでタパレス戦以外は未視聴のまま。
 
「大森がハスキンスに挑戦!! エストラーダ埋蔵金出ました。やりたい放題のくそったれ英国紳士をぶっとばせ」
 
しかも前回は何もできずにけちょんけちょんに負けているので、この選手の試合をしっかりと観たのは実質今回が初めてである。
 
その大森将平マニアwwの僕が思うに、この人ってサウスポー苦手過ぎませんかね?
強い弱い以前に、ちょっとぎこちな過ぎじゃないっすかね?
 
左を出すと、打ち終わりに身体が流れてカウンターを狙われる。
右を出すと、パンチを戻す動作に合わせて踏み込まれてカウンターを狙われる。
腕を振り回すと、インサイドからあっさりストレートをねじ込まれる。
 
「地の利とか日本人ボクサーがタイで勝てない理由とか。世界戦19敗1分を引き起こしたマモノ()についてのお話」
 
対オーソドックスのときもこんな感じなんでしょうか。
タパレス戦以外の試合を観てないから知らないし、観る気もないんですが。
 
確かにほとんど経験のない左対左で、なおかつ最初の相手がタパレスというのは厳しいのかもしれないが。
 
一応申し上げておくと、タパレスってめちゃくちゃいい選手ですからね?
2016年7月のプンルアン戦を観れば一目瞭然ですからね?
 
「亀田和毅国内復帰初戦を判定で飾る!! 後楽園ホールに行ってきたぞ」
 
ちなみに解説の長谷川穂積が「大森と一緒に練習した」と言っていたが、サウスポー対策としてお願いされたのだろうか。それとも、単純な取材として?
 
仮にサウスポー対策として長谷川穂積を呼んだのなら、ちょっと違う気がするが。身体能力と見切りの長谷川と、位置取りとラフなスイングを得意とするタパレスではあまりに別物で、参考になるとは思えない。
知らんけど。
 
「井上拓真vs久高寛之感想。久高がクソよかった。井上は1年ぶりの復帰戦でベテラン強豪に判定勝利。2018年の世界挑戦」
 

体重超過をやらかす選手に集まる批判。僕は実を言うと、案外「あり」だと思っております

完膚なきまでに大森を叩き潰し、KOで勝利を飾ったタパレス。
だが、この選手の体重超過に対しては、当然ながら多くの批判が集まっている。
そして、相次ぐボクシング界の体重超過には重い罰則を設けるべきだという声も方々から聞こえてくる。
 
「クロフォードがモリナに圧勝! でもスター候補がそれでいいのか? ホントに強いのかクロフォード」
 
ただ僕自身、この件についてはそれほどイライラしていない。
もちろん「体重超過がOK」などと言う気はないのだが、ありかなしかで言えば「あり」かなぁと思っている。
 
たとえば、今回のタパレスは減量に失敗したあとに「この階級にこれ以上とどまるのは無理」とコメントしている。
ということは、たとえ防衛に成功していても、今回限りでタイトルを返上していた可能性が高い。
 
「田中恒成が激闘の末にアコスタを退ける!! すっげえ試合! アコスタも間違いなく最強の挑戦者だった」
 
つまり1度の防衛で返上するか、減量失敗ではく奪されるかの違いだけで、試合に勝ちさえすればそこまで傷は大きくならない。
それどころか、いい勝ち方をすれば「減量苦がなければここまで動ける」ことをプロモーターや観客にアピールできる。
今回のファイトマネーと罰金がいくらだったのかは知らないが、試合に勝つことで得られるリターンを考えれば、長期的にはプラスに働くと判断したのだろう。
 
「カネロ・アルバレスvsチャベスJr.決定! ビバ メヒコ! 大絶賛の時間だあああぁぁぁ!!」
 

「減量失敗」が兵法として成り立っている。制度を最大限利用する選手を責めるのではなく、穴だらけの現行ルールを批判した方がいい

もちろん試合に勝つことが大前提だが、
 
・命を削って減量を成功させ、
・フラフラの状態で防衛を果たし、
・ダメージを負ったまま階級アップする
 
ことと、
 
・減量をあきらめて戦力を維持し、
・王座はく奪と罰金(と信用の低下)を受け入れた上で、
・周囲に強さをアピールして、
・健康なままの状態で階級をアップする
 
ことを天秤にかけ、王座はく奪を受け入れた方が得だと判断するのは普通にあり得る話である。
 
「比嘉が半病人エルナンデスを5回ダウンさせてTKO勝利!! パーフェクトレコードで世界初奪還を果たす」
 
つまり、認定団体や「王者」の増加によって世界タイトルの価値が低下した現在、減量失敗が立派な兵法として成立しているのである。
 
 
僕は基本、スポーツというのは化かし合い、いかに相手の嫌がることをやるかがカギになると思っている。正々堂々などクソ食らえだし、コンタクトスポーツにおける反則は、バレなければ反則ではないと考えている。
 
「比嘉大吾vsエルナンデス予想。和製ロマゴン? ちょっと違う気がするけど、期待の比嘉大吾が王座初奪還に挑戦」
 
要は、ルールを侵しても大した罰則がないのなら、それを目いっぱい利用するのは決して間違いではない。リスクとリターンを比較して、リターンの方が大きいと思えば意図的な体重超過も「あり」なんじゃないの? バスケのファウルと同じようなもんでしょ? みたいな。
 
 
繰り返しになるが、体重超過がいいなどと言うつもりはない。
ただ、現状はそれが「兵法」として成立していることも確かで、確信犯的な減量失敗をやらかしても大したダメージにはならない。本当にアカンのは、人気さえあればそういうルール違反がうやむやになってしまう状況の方である。
 
要するに批判すべきは罰則のない現行ルールであって、制度の抜け道を探る選手や陣営の姿勢は「あり」なんじゃないの? 選択肢として「減量失敗」が存在するのは仕方ないんじゃないの? と言っている。
 
田中恒成vsアンヘル・アコスタ予想。過去最強の挑戦者が愛知に来るぞ」
 
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