京口世界王座!! アグルメドとの激戦を制す。いいですね京口! こういう試合が観たかった。最短世界一は無意味? まあ商売だから【結果・感想】

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最短タイトル獲得
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2017年7月23日に東京・大田区総合体育館で行われたIBF世界ミニマム級タイトルマッチ。
同級9位の京口紘人が王者ホセ・アルグメドに挑戦し、3-0(116-111、116-111、115-112)で勝利。新王者となった試合である。
 
初回からトリッキーな動きで攻める王者アルグメドだが、京口は高いガードと得意のボディブローで対抗。中盤まで一進一退の攻防が続く。
 
「田口vsバレラ感想。ベストバウトきたか? やっぱり田中恒成に勝つ可能性のあるのは田口だよな」
 
終盤、やや失速の見えるアルグメドに京口が左のフックをヒット。グラついたところを逃さず追撃し、キャリア初のダウンを奪う。
その後も激しい消耗戦となったが、結果的にこのダウンが決め手となって判定勝利を挙げる。
 
なお、勝利した京口はプロデビューから1年3ヶ月での王座奪取となり、見事日本人最短記録を更新した。
 
「俺のウィリー・モンローJr.さんキター!! サンダースとのタイトルマッチでついに2度目の王座挑戦。よしお前ら、震えて眠れ」
 

京口紘人ナイスファイト。よく知らなかったけど、いい試合だったと思います。知らなかったけど

まず、何をおいても京口ナイスファイト。
やりにくいアルグメドを相手に、めちゃくちゃいい試合だったと思う。
 
 
正直申し上げると、僕はこれまで京口紘人という選手のことをほとんど知らなかった。
傷害や飲酒運転で捕まった京口との区別もついておらず、「世界戦決定!!」と聞いても「お? 何か逮捕されてなかったっけ?」という感じで、兄弟ということすら把握していなかった。
 
おまけに過去の試合をいくつか観てもいまいちピンとこず。
 
「日本一恵まれた男、河野公平がレックス・ツォーに敗れる。中国の英雄に打撃戦の末に負傷敗戦。惜しい! 勝てる試合だったな」
 
「派手な外見や強気な言動とは真逆の堅実なスタイルだなぁ」
「ガードへの意識が強いのかな?」
「左のボディ打ちがうまいのかな?」
「でも、あまりスケールの大きさは感じないなぁ」
程度で、「まあ、よくわからないけどがんばってね」という非常にフワッとした印象しか残っていなかった。
 
 
へえ、あのボディ打ちは辰吉直伝なのね。
 
そういえば「辰吉二世」とか呼ばれてたのは兄貴の方か。
 
というか、本物の辰吉二世は結婚して三世が誕生してなかったか?
でも、あくまで辰吉本人から見れば三世だけど、よく考えたら二世にとっては二世だよな。
 
って、ややこしいわ!!
 
みたいな。
 
「コラレスゥゥウウ〜〜……。カスティジャノスに大苦戦の末ベルトを守る。負傷判定で3度目の防衛成功。負けに近い勝利ってヤツ?」
 

京口は足のない村田諒太。ダーティファイトのアルグメドはめっちゃやりにくいぞ

そして、実際に京口の試合を観て思ったのが、
「ああ、これはフットワークのない村田諒太だわ」
 
ガードが高く、接近してのボディを得意とするファイター。
 
「木村翔が五十嵐を根元から粉砕。大振りで恐怖を植え付けて真ん中を右でドーン。圧巻の五十嵐対策でしたね木村翔」
 
あまり連打が出る方でもなく、どちらかと言えば1発で効かせて勝負を決めるスタイル。
事前に相手を研究し、作戦を貫き通すメンタルとクレバーさもある。
 
「爆腕!! 村田がブルーノ・サンドバルにド迫力KO!! 世界前哨戦で格の違いを見せつけ3RKO」
 
村田ほど攻防分離ではないが、村田ほどの追い足はない。
 
ただ、相手の出方によって動きを変える臨機応変さもありそうで、思っていたよりも全然いい選手だというのが僕の印象である。
 
 
対するホセ・アルグメド。
この選手の特徴はひと言で言うと「めっちゃ嫌らしい」。
 
妙なタイミングで伸びるパンチと、至近距離でのもみ合いの強さ。
さらに拳と同時に頭を当てたり、腕を絡めて相手の動きを封じたりというダーティさもある。
 
特に大きく踏み込んで打ち込むストレートは本当にやっかいで、2015年にこの選手に敗れた高山勝成が言うには「予想よりもさらに拳一つ分伸びてくる」とのこと。
身長160cm、リーチ164cmとそこまで突出した体格ではないが、身体全体を投げ出すように打つために手元でグイッとくるイメージである。
 
「ウォードが再戦に完勝!! コバレフがキャリア初のKO負けでリベンジ失敗。仕方ないね。ちょっと差があり過ぎたよな」
 
また、バッティングを偶発させる術にも長けており、多くの選手が手を焼く要因でもある。
 
大きく踏み込むと同時に頭を下げ、顔を背けるようにパンチを打ち込む。
そのまま相手の懐に潜り込み、そこからグイッと勢いよく頭をカチ上げる。
うまくいけば一番固い部分が相手の側頭部や顎に当たるし、たとえ当たらなくても警戒心を植え付けることができる。しかもボディを打つスペースも確保できる。
 
一石二鳥というか一石三鳥というか。
確かに高山勝成のようなタイプが巻き込まれてしまうのもわかる気がする。
 
「ひっでえ試合。チャーロ兄がKO勝利って、ヘイランドとかいうヤツ、試合できる状態じゃねえじゃんか」
 

アルグメドのダーティファイトに対応した京口。序盤からカウンターと踏み込みで迎撃する

ただ、今回の京口は、このアルグメドのダーティファイトに見事に対応してみせた。
 
アルグメドの踏み込みに合わせて自分も踏み込み、アッパーやフックのフルスイングで迎撃。すばやく間合いを詰めてアルグメドに腕を振るスペースを与えない。
そして、どんな局面でも絶対にガードを崩さず、懐に入られた際は肘で押さえつけるように上から潰す。至近距離で得意のボディをヒットし、ダーティファイトの発動を封じる。
 
「那須川vs藤田がおもしろかった!! 那須川天心がボクシング? やらなくていいんじゃない? 転向する意味ある?」
 
特に目を引いたのが序盤5Rまでの接近戦。
アルグメドの突進に怯まず、自分も前に出てカウンターを狙う作戦は本当によかった。
あのカウンターと至近距離でのボディで相手の踏み込みを鈍らせたおかげで、6R以降はバックステップを織り交ぜて優位に試合を進めることができた。
 
「海外挑戦にはインパクトのあるきっかけが必要なのかね? NHK BS1「あの負けで私は強くなった」
 
解説の長谷川穂積が「もっとバックステップを使って距離をとった方がいい」と言っていたが、ちょっと違う。
 
序盤は自分も前に出て、相手の突進を真正面から受け止める。それでアルグメドの体力を奪うと同時に警戒心を植え付け、後半に勝負を賭けるというのが今回の作戦だったのだと思う。
恐らく序盤から「バックステップで距離をとって〜」などとやっていたら、高山勝成の二の舞になっていたはず。
 

ラフなファイトへのおかしなアピールをせず、冷静に熱く対処したのはすばらしかった。京口という選手は他の誰よりもプロフェッショナルだった

さらに言うと、僕がこの京口という選手をホントにいいなと思ったのが、アルグメドのラフファイトへの妙なアピールがなかったこと。
 
頭をぶつけられても、首に腕を絡めて振り回されても動じず騒がず。
むしろレフェリーに見えない位置で側頭部を連打したり、頭を上から押さえつけたり。
 
 
いや、そうなんですよね。
至近距離での打ち合いの最中に反則打やバッティングをアピールしたり、相手から目線を切ってレフェリーを見たり。過去にそういう選手を何人も観たが、ああいうのは絶対に違うと思う。
 
勝つか負けるかの一発勝負の世界戦で、勝手に試合を止めてアピールするなど、普通に考えてあり得ない。しょーもないことをやってないで、さっさと打ち返せよという話である。
 
「ラフファイトとか体重超過とか、別にアリだよな? というお話。パッキャオやシーサケットのヘッドバット、アンドレ・ウォードのローブローなど」
 
そういう意味でも、今回の京口は間違いなくプロフェッショナルだった。
 
恐らくアルグメドが相手ということで、こういうラフな試合になることは想定していたのだろう。
 
絶対に顎を上げず、両腕で顔を隠しながら肘でアルグメドの頭を押さえつける。
 
相手の出方を予想し、対処の方法を用意する。
そして、試合の中でアドリブを効かせてラフファイトでお返しする周到さ。
お見事のひと言である。
 
もしかしたら、この選手は実力的にはまだまだ課題が山積なのかもしれない。
「フットワークのない村田諒太」と申し上げたように、あのスタイルでいくなら追い足があった方がいいし、ジャブを含む連打が出せるようにもなりたい。あまりにも動きが直線的過ぎるイメージもある。
 
ただ、そういう細かい話はともかく、大一番への準備と覚悟
その部分において、京口紘人という選手は他の誰よりも実践向きだった。
 
「金子大樹引退?! マジでか。内山引退→しゃーない。三浦引退→ワカル。山中陥落→完敗だね。てか会長老害過ぎワロタww 金子引退→は?」
 
世界戦が早いとか遅いとかの次元ではない。
ましてやプレッシャー()だとか、リスペクト()だとか、リングの上には人生がある()とかの話でもない。
 
単純にスポーツ選手としてすばらしかった。
 
「木村翔はワシが育てたww ゾウ・シミンにアウェーでジャイアント・キリング!! 大観衆の前で中国の英雄にTKO勝利」
 

8戦目の世界挑戦は早過ぎる? 国内でのサバイバルをしてこい? まあ、それはそれとして、人材難が半端ないよね

今回の世界戦において、「京口の8戦目での世界挑戦は早すぎる」という声はちょくちょく聞こえてきた。
どうやら、本来は国内のサバイバルを勝ち抜いてから挑戦すべきで、世界王者という肩書きが軽過ぎるというのがその方たちの主張らしい。
 
これについてはわからなくもないが、正直に言うとどうでもいい
 
それより、僕個人としては「ボクシング界ってマジで人材難なんだな」という印象の方がはるかに強い。
 
恐らくだが、選手が少ないために十分な試合が組めないというのが実情なのだと思う。
京口レベルのアマ出身選手になると、相手もそれなりでなくてはならない。だが選手の絶対数が少なく、まともに相手ができる選手は限られてくる。
 
しかも、その選手もジムのホープである可能性が高く、10戦未満でキャリアに傷がつくのはお互いに気が引ける。
かといって、タイから連れてきた観光ボクサーをいくらボコっても何の足しにもならない。
だったら「最短記録」という名目でさっさと世界挑戦させた方がええんちゃう? 箔もつくし。
 
つまり、にっちもさっちもいかない人材難を無理やりポジティブに置き換えた糞詰まりの応急処置。それがファイナルアンサーなのかなぁと、個人的には結論づけている。
 
「村田諒太再戦? 次戦? 何がしたいんだ問題。やっぱり計算高いよなこの人。自分が他人からどう見られるかのケア」
 

王座乱立に加えてWBOアジア・パシフィック(WBOAP)王座? 批判はわかるけど、商売だからね

また主要4団体で王座が乱立し、その上でJBCがWBOアジア・パシフィック(WBOAP)王座なるものもを承認したことで、さらに批判は高まっている。
 
ちょうどワタナベジムの渡辺均会長がJBC会長に就任したタイミングだったこともあり、ファンからは冷たい視線が浴びせられている。
 
「ベルチェルトに三浦隆司完敗……。対策されてたなぁ。何もさせてもらえなかったなぁ。そして、ベルチェルトはよく走りきったなぁ」
 
だが、実はこれについても僕の中ではそこそこ筋が通っている。それなりにボクシング界のことを考えての措置ちゃうの? とまで思っている。
同意してくれとは言わないが。
 
ボクシング界が潤うには、選手の所属するボクシングジムの経営が順調でなくてはならない。
そのためには、一概に有力選手を海外挑戦させることが最適解とは言えないんじゃないの? というのは、以前に申し上げた通りである。
 
「内山高志敗北における日本のジムの鎖国体質批判への考察。てか、ジム経営ってどうなのよ。「選手のことを考えろ」って気軽に言えるもの?」
 
ファイトマネーは高いが知名度は低い日本ランカーを多く抱えるより、一般会員を増やした方がジムにとってはコスパがいい。
 
ジムの宣伝のためには地上波への露出は必須で、広告塔としての「世界王者」の存在は不可欠になる。
 
当たり前だが、団体や地域タイトルの数が増えれば「王者」の人数も増える。
 
「ロマチェンコ攻略の糸口見っけ? マリアガボッコボコ。今日も対戦相手をオモチャにして遊ぶ」
 
そして、一般会員を集めるためには「王者と一緒に練習できる」というパワーワードはとてつもない破壊力を持つ。そこに「最短」という肩書きが加わればなおさらだし、WBOAP王者というのも響きだけなら何となくカッチョいい。
 
要は、ダイエットや体力づくり目的の一般人にどうやってボクシングを選ばせるか
 
「WBOAP王座がしょーもないなんてことは絶対ないから。小原佳太がWBOアジア・パシフィック・ウェルター級王座決定戦に勝利」
 
一般会員が増えればジムが潤い、選手のファイトマネーも上がる。魅力的なマッチメークも可能になる。巡り巡ってボクシング界に貢献するという流れである。
 
なので、もともと声がデカいだけで分母の少ない真のボクシングハァン()より、「テレビでやっていれば観る」程度のライト層に向けた施策を講じるのは、ある意味では理にかなっている。
 
「L・ヘビー級アツ過ぎもっと盛り上がって(^○^) バレラがスミスに大差判定勝利。神々の階級」
 
そう考えると、脊髄反射で渡辺会長を批判するのもどうなのよ? と思えてくるのだが、どうだろうか。
 
これを言うと嫌悪感を示されるのでアレなのだが、やっぱり金がないと話にならんのですよ。パッキャオもメイウェザーも金のために復帰したし、それは至極真っ当な理由ですよ。
 
繰り返しますが、同意してくれとは言っておりませんのであしからず。
 
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