マティセ圧勝すげえ! テワ・キラムに何もさせずに8RKO勝利。レベルが違い過ぎたかな。ここまで圧倒するとは【結果・感想】

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剛腕イメージ
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2018年1月27日(日本時間28日)、米・カリフォルニア州イングルウッドで行われたWBA世界ウェルター級正規王座決定戦。同級1位テワ・キラム(ティーラチャイ・シッモーセン)と3位ルーカス・マティセの一戦は、8R1分21秒でマティセのTKO勝利。マティセが念願の王座獲得に成功した試合である。
 
 
序盤から鋭い左をマティセの顔面に当てるテワ・キラム。
対するマティセも細かく身体を振りながら高いガードで前進。ヒットのタイミングを測る。
 
中盤までテワ・キラムの左リードを持て余したマティセだが、8Rに飛び込み際の左でついにダウンを奪う。
 
テワ・キラムも何とか立ち上がり、懸命に連打で反撃するが、マティセの鋭い左を被弾して再びダウン。そのままレフェリーが試合をストップし、マティセの勝利が決定した。
 
「どん詰まりのリナレスvsヘスタ。お互いに相手の持ち味を打ち消し合った結果、大差判定でリナレス勝利」
 
なお、この試合はホルヘ・リナレスvsメルシト・ヘスタのWBA世界ライト級タイトルマッチとのダブル世界戦として開催されている。
 
「ま~た誰得マッチww サンダースvsマーティン・マレー。痛いの大っ嫌い。絶望的に退屈で平和な試合になる予感がするぞ」
 

マティセ圧勝!! テワ・キラムにほぼ何もさせず。ちょっと相手が悪過ぎたよね

まず試合を観た率直な感想だが、
「マティセの圧勝だったな」と。
 
僕はどちらかというとテワ・キラムが有利かと思っていたのだが、見事に大外れ。
まさか、ここまで両者に差があるとは思わなかった。
 
「ティーラチャイはいいね!! マティセと空位王座を巡って激突。タイ選手のウェルター級王者誕生してほしいぞ」
 
というか、今回はマティセがすご過ぎた
テワ・キラムもがんばったとは思うが、相手が悪かったと思ってあきらめるしかない。
今後チャンスがくるかはわからないが、この敗戦をバネに這い上がってくれればと思う。
知らんけど。
 
「比嘉大吾vsフエンテス予想。寒がりフエンテスさんが沖縄上陸。比嘉は凱旋防衛戦で連続KO継続なるか」
 

パワフルなジャブ使いのテワ・キラム。めちゃくちゃいい選手だけど、経験値が不足してたかも

身体が大きく、骨太で全体的にパワフル。
上背もリーチもあり、なおかつ左のリードが鋭い。
スピードはそこまでではないが、強靭なフィジカルと左の連打で相手を寄せつけない。
 
左のリードでスペースを確保してワンツー。
遠い位置から左を中心に徐々に相手を疲弊させ、タイミングが合えば倒しにいく。
だが基本的にはヘッドハンターで、左のバリエーション自体はそこまで多くない。
 
いわゆる「左のジャブが得意な剛腕」
これが、テワ・キラムの過去の試合を観た僕の印象である。
 
「ベテルビエフvsコーリン感想。攻略法が見えたような見えないような…。ベテルビエフの剛腕フィジカルにコーリンが撃沈」
 
そして、今回の試合で新たにわかったのが、
確かに左は切れるが、絶え間なく連打を出せるわけではない。
サイドに動きながらの連打や、相手の動き出しを狙うようなジャブというわけではない。
 
また、 ほぼすべての左が似たようなタイミングで顔面に飛んでくるので、慣れると読みやすい。
ゴロフキンやビクトル・ポストルのジャブに比べれば一段落ちる。
 
「久保隼陥落…。ダニエル・ローマンすごかった。こりゃ勝てんわ。まるでゴロフキンじゃねえかww」
 
また、恐らくこの選手はインファイトが苦手。
これまでは左のリードで主導権を握り、試合を通じて自分の距離をキープし続けることが可能だった。
だが、今回のように左をかいくぐられた場合、インサイドでできることが少ないような印象を受けた。
 
何となくだが、これはセンスというより経験値の差ではないか。
タイのリングでは、マティセほどの突進力のある選手と遭遇する機会は少ない。
いちばん大事な試合で、このレベルのプレスを初体験したのはちょっと痛かったかもしれない。
 
「気づくのおっせえw 岩佐vsサウロン。大差判定で岩佐が初防衛成功。ジリ貧の両者が後半に「あっ」ってなる」
 

僕の知るかぎりマティセのベストバウトかと。2Rでテワ・キラムの戦力分析を終え、あとはじわじわ追い詰めていく

対するマティセだが、申し上げたようにこちらは本当にすごかった。
 
マティセにそこまで詳しいわけではないのだが、僕が観た中ではダントツのベストバウト。マジな話、ここまでテワ・キラムを圧倒するとは思わなかった。
 
「イースターってこんなヤツなんだ。フォルトゥナに2-1で辛勝。顔が嫌いで観てなかったけど、インファイトしちゃうんだね」
 
ガードを高く上げ、身体を振りながらじわじわ近づく。
前後左右に動き、小さくアングルを変えてテワ・キラムの左の芯を外す。
時おりテワ・キラムの左にオーバーハンドの右を被せて後退させる。
そして、微妙に歩幅に変化をつけて踏み込み、パンチを当てるタイミングを探す。
 
序盤2Rを様子見に使い、テワ・キラムの戦闘力を測る。
3R以降、徐々に圧力を強め、射程内での攻防に持ち込む。
 
すべてが計画通りというか、マティセの計算通りに進んだ試合だったのではないか。
 
「スペンスがピーターソンを圧倒してギブアップ防衛。ボコボコやねピーターソン。スペンスは階級アップした方がよくね?」
 
今回のテワ・キラムは間違いなく判定勝利狙い。勝ちに徹するというか、とにかく露骨に当て逃げのポイントアウトでの勝利を目指していた。
 
恐らく参考にしたのが2015年のビクトル・ポストルvsルーカス・マティセ戦。
長身のポストルがマティセの動き出しに左リードを当てまくり、ほぼ何もさせずに10RKOで勝利した試合。
 
得意の左リードやマティセとのサイズ差を考え、もっとも効率的で可能性が高い方法だと考えたのだと思う。
 
だが、残念ながらテワ・キラムにはポストルほどの左の精度はなかった。
タイミングを見てクリンチで動きを封じる狡猾さも足りなかった。
 
連打は出るが、単調で読みやすい。
ポストルはマティセの動き出しの硬直を狙って左を出したが、テワ・キラムはやみくもに連打するだけ。
 
「待ってましたのデボン・アレクサンダー! オルティスとのサバイバル戦が2月にあるってよ」
 
マティセとしては、最初の2Rで「これならもらってもOK。芯は外せる」と感じたはず。じわじわと圧力を強め、大胆にテワ・キラムから余裕を削っていった。
 
「比嘉がフエンテスを1RKO。もうフライ級は十分でしょ。WBC狙いでシーサケットvsエストラーダの勝者に挑戦だろ」
 

6Rにはすでに手の内をすべて把握した感じかな。大胆に前に出て、最後は抜群のタイミングでの左

6R1分過ぎ。
テワ・キラムをコーナーに追い詰めたマテェセが放った渾身の右。
これがこの試合でマティセが見せた最初のフルスイングだったわけだが、恐らくこの時点ですべての準備は完了していたのだと思う。
 
「パッキャオがマティセを寄せ付けずに9年ぶりKO勝利。僕たちの英雄は世界一強い大統領(予定)。最高にカッチョいいだろ?」
 
テワ・キラムの左のタイミングはわかった。
サイドに動いている最中は手を出してこないので、大胆に詰めても問題ない。
強引に前に出ても、強烈なカウンターが飛んでくるわけじゃない。
 
相当やばいタイミングで被弾しなければ、倒される心配はほぼゼロ。
 
ラウンドが進むごとに、サイドステップからのカットインがどんどん大胆になっていった印象である。
 
「ロマチェンコ圧勝。リゴンドーにもノーマス。体重差じゃないぞ? 相性が悪過ぎた結果だぞ?」
 
そして、勝負を決めた8Rではさらに大胆に。
 
1歩目の踏み込みから左を出し、大振りの右につなげる。
打ち終わりだけケアして、あとはそれなりでいい。
 
ほとんど勝利を確信したような動き(後付けだけど)である。
 
ダウンを奪った左はコンパクトだったが、それ以上にその前に見せた大振りの右ボディストレートが効いていたのだと思う。
 
同じタイミングで踏み込み、最短距離をノーモーションで打ち抜く。
テワ・キラムは明らかにパンチが見えていなかったし、本当に凄まじいタイミングだった。
 
いや、もうマジですごい。
ここまでテワ・キラムをコントロールしたのはもちろん、身体の大きさやスピードだけではない奥深さを見せつけたマティセ。ちょっと感動的ですらある試合運びだった。
 
「大激戦のバルテレミーvsキリル・レリク!! まさかの苦戦のダークヒーロー、バルテレミーはクロフォード打倒を果たせるか?」
 
ついでに言うと、ビクトル・ポストルがいかにいい選手かというのも証明されたのではないか。
このマティセに何もさせずに勝利したのもすごいし、ダニー・ガルシアが対戦を避けたのもわかる。実はテレンス・クロフォードをもっとも苦戦させたのも、このポストルだということを強調しておきたい。
 

テワ・キラムはもう少し大胆さがあれば。どこかで思いっきり右の空振りでも見せておけば……

逆に敗れたテワ・キラムに関しては、ちょっと大胆さが足りなかったかなと。
せっかく回ってきたチャンスをモノにしようという思いは伝わったのだが、さすがに消極的過ぎた感が強い。
 
もちろん、あれだけ動いてジャブを出し続けたのはすばらしい。
ただ、マティセにまったく踏み込みを躊躇させられなかったのは痛い。
 
身体も大きくパワーもある。
だが、ちっとも恐くない
あれだけのフィジカルがあるのだから、どこかで1発右のマン振りを見せておけば、状況が変わっていたかも? とも思うのだが。
 
4Rや7Rなど、マティセが圧力を強めた次のラウンドでは、前に出て流れを変えようという意思は感じた。だが、あれではちょっと物足りない。
 
「拳四朗4RTKO!! ペドロサ手も足も出ず。いいですね拳四朗。ホントに期待できるぞこの選手。まあ、今回は相手が微妙だったけど」
 
「小さく小さく」
「コンパクトに」
「下から下から」
 
以前も申し上げたように、「コンパクトなパンチを最短距離で〜」というのは絶対的に正しい言葉だとは思う。
 
だが、やはりコンタクトスポーツにおけるスピード&パワーの大正義は揺るがないし、躊躇のないフルスイングによって与える恐怖というのは絶大なものがある。
 
「挑発大好きサンダース君がレミューをヒラヒラかわして大差判定勝利。試合後にゴロフキン戦を希望。さすがサンダースww」
 
マティセは「身体の大きさやスピードだけではない奥深さを見せた」が、逆にテワ・キラムはフィジカルの優位性を活かしてマティセをねじ伏せたかった。
 

木村翔のインタビューがすげえよかったという話。やっぱり躊躇なく腕を振れるってのはデカいんですよ(余談)

少し前の記事だが、個人的に「めちゃくちゃいいこと書いてあるな〜」と思ったヤツ。


「空振りも含めて、あれが木村翔のスタイル」
「木村翔とやるのは嫌。1Rからどんどんくるし、絶対に疲れる試合になるから」
「ボクシングを知っている人からしたら下手くそ」
 
何というか、いろいろなものが凝縮されていたインタビューではないだろうか。
 
大振りだろうが、打ち終わりに身体が流れようが関係ない。
空振りの風圧にビビって、相手も一緒に体勢を崩してるのだから問題なし。
 
結局いちばん嫌なのは、初回から躊躇なくぶん回してくる相手。
大振りしているからこそ、ど真ん中のコンパクトなストレートが生きる。
 
「小さくコンパクトに打ち終わりを気をつけて」は正しいけど、それだけが正解じゃない。
 
みたいな。
 
「木村翔が五十嵐を根元から粉砕。大振りで恐怖を植え付けて真ん中を右でドーン。圧巻の五十嵐対策でしたね木村翔」
 
2017年末の試合でいちばんおもしろかったのが木村翔vs五十嵐俊幸戦なのだが、このインタビューを読んで、さらに「木村選手すげえ」と思った次第である。
 
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