アンソニー・ジョシュアがチャールズ・マーティンに圧勝!! 筋骨隆々のプロスペクトが見た目どおりのパワーで曲者サウスポーを一蹴して王座獲得【結果】

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O2アリーナイメージ
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2016年4月9日(日本時間10日)、IBF世界ヘビー級タイトルマッチが英国ロンドンのO2アリーナで開催された。

同級4位のアンソニー・ジョシュアが王者チャールズ・マーティンに挑戦し、2R1分30秒でKO勝ちを収め、タイトル奪還に成功した。

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ヘビー級スター候補ジョシュア、圧巻の勝利

圧巻のアンソニー・ジョシュア。
そう申し上げて間違いない試合だった。

同時に、チャールズ・マーティンの奮闘に少なからず期待していた身としては残念な気持ちも強い。
マーティンの掴みどころのないスタイルであればジョシュアも苦戦するのではないかと思っていたが、ヘビー級スター候補にとってはまったくもってイージーな相手だったようである。

アンソニー・ジョシュアさすがっす。
恐れ入りました。

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フィジカルで押しきったが、課題を露呈したディリアン・ホワイト戦

これまですべての試合をKOでクリアしているジョシュアだが、前回のディリアン・ホワイト戦はキャリア初の苦戦と言ってもいい試合だった。
そしてこの試合を見る限り、付け入る隙はいくつかあると感じていた。

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スピードとセンス抜群の野性的な動きが特徴のホワイトをジョシュアは明らかに持て余していた。最終的にはフィジカルとサイズの差で押しきったが、技術的な部分では間違いなくホワイトの方が上だった。

まずフットワーク。
ジョシュアにはいわゆる左右へ動く標的への追い足がない。
まっすぐ前に出てまっすぐ下がる。基本的には直線的な動きしかないためにホワイトのような相手を捕まえるのにはかなり難儀する。

そして中間距離で出せるパンチの少なさ。
軽く左を出して距離を測り、右の強打につなげる。これが中間距離での基本パターンであり、ほぼすべてである。それ以外にさしたる引き出しがないために、攻防兼備の多彩なパンチを持った選手と対峙するとやや翻弄されてしまうのである。

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ただ、申し上げたようにこの試合は両者にかなりのフィジカル差があった。両者のサイズやパワーが違い過ぎたために、ジョシュアはそこまで苦労せずに懐に近づくことができていた。
常にカウンターを狙っていたホワイトだが、パワー差ではじき返され続け、無理やり接近戦に持ちこまれてしまっていたのである。

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ラウンドが進むにつれて体力を削られ失速するホワイトに対し、徐々にパワーの差を見せつけて有利な展開に持ち込むジョシュア。
身長差をカバーするために伸びあがるような踏み込みを見せるホワイトと、さらっと出したジャブで迎撃してしまうジョシュア。

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スピードやセンスでは上回っているのに、圧倒的なフィジカルですべてをチャラにされる。悲しくなるほどの体格差、パワー差である。

何度も言うように僕はフィジカル至上主義者だ。
そして、この試合はフィジカルの強さがテクニックをあっさりと凌駕した典型的な試合だったと思う。

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チャールズ・マーティンのサイズがあればいけるかと思ったが……

苦戦の末にフィジカルの差でディリアン・ホワイトを退けたアンソニー・ジョシュア。

そこで今回のチャールズ・マーティンである。
マーティンはホワイトほどのセンスを持ったボクサーではないが、クネクネと掴みどころのないスタイルで相手を翻弄することができる。意外とパンチも固い。身長198cmのジョシュアに対し、マーティンは196cmとサイズも負けていない。

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パワーは完全にジョシュアだが、サウスポーという利点を活かしながら戦えば、もしかしたら勝機があるのではないかと期待していた。グラスコフ戦での戦いぶりを見ても、相当やりにくいタイプであることは間違いない。ひょっとしたらチャールズ・マーティンならジョシュアに一矢報いることができるのではないだろうか。そんな淡い期待を持っていたというわけである。

ダメでした。
いや、ダメでしたね。
チャールズ・マーティン、まったく歯が立ちませんでした。

ジョシュアはいつもどおり軽く左を出しながら距離を測る。そこから大きく踏み込んでの右。やっていたのはほぼこれだけである。

「タイソン・フューリーさんは何をなさりたいんですかねぇww」

対するマーティンはフェイントの掛け合いからジョシュアの右に合わせて左を打ち込む。
だが、ジョシュアの踏み込みが思ったより鋭いのか、うまく距離が合わずに前で止められてしまう。
僕としてはこの瞬間に右に回り込んでのカウンターを狙って欲しかったのだが、残念ながらマーティンはジョシュアの踏み込みから逃れるだけのフットワークを持っていなかった。

軽くジャブを出し、踏み込んで右を放つジョシュア。徐々にタイミングと距離が合い始める。1Rの終盤、ジョシュアの右がかなり危ないタイミングでマーティンの顔面をかすめる。

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マーティンはジョシュアの打ち終わりを狙って左を返すが、すでに距離を掴んだジョシュアはバックステップで楽々と避ける。

あ~、ヤバいな~。
マーティン、これはヤバい。
右がいつ当たってもおかしくない。
そう思っているうちに1R終了のゴングが鳴る。

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右のカウンター炸裂!! マーティンは何もできずにKO負け

2Rに入ると、両者の距離がやや詰まる。
ジョシュアがプレッシャーを強めてマーティンに近づく。
だが、このラウンドのジョシュアはなかなか自分から手を出さない。
チョンチョンと左を動かしてはいるものの、ガードを上げてマーティンの攻撃のタイミングを測るように身体を振るだけ。

カウンターを狙われていることに気づいたマーティンも自分からは手を出せずにいる。

こう着状態のまま1分が過ぎる。
じれたマーティンが意を決したように大きく踏み込んで右を出す。
ジョシュアがマーティンの右をガードし、戻り際に合わせて踏み込む!!
ジョシュアの右フックがマーティンのアゴにヒット!!
吹っ飛ぶようにダウンするマーティン!!

うわ~……。
完全に狙ってたな。

「ワイルダーがアレオーラを下してV4!! 圧勝? 意外と危なかったぞこの試合」

ジョシュアはマーティンの右ガードが低いことに1Rで気づいたのだろう。
そしてラウンド序盤はタイミングを測り、見事に決めてみせた。

恐らく1R目でジョシュアは「この試合は勝てる」と確信したのだと思う。そして、せっかくだからカッコよく倒してやろうとでも考えたのだ。強気といえば強気だが、それを狙ってできるあたりスターの資質は抜群である。

何とか立ち上がったマーティン。だが、対峙したジョシュアの背中から余裕の雰囲気が漂う。

踏み込んで右を打ち込むマーティン。
そこに右を合わせるジョシュア。
アゴにモロに被弾したマーティンが吹き飛ばされるように再びダウン!!

1度目とまったく同じパンチ、まったく同じタイミングのカウンターである。

余裕のジョシュアがうっすらと笑みを浮かべながらニュートラルコーナーへ戻る。

レフェリーがカウントを数える。
どうにか立ち上がったマーティンだが、ここでカウントアウト。
2R1分30秒アンソニー・ジョシュアのKO勝利!!
圧勝である。
 
「新旧超人対決クリチコvsジョシュア予想。ヘビー級最強決戦の行方は? ジョシュアはクリチコに引導を渡せるか?」
 
ジョシュアはパワーだけでなく、スピードでもマーティンを上回っていた。マーティンは期待していた左右へのフットワークもなく、なすすべなくマットに転がされた。まさしく圧倒的な実力差のある試合だった。

個人的に期待していたチャールズ・マーティンだったが、ヘビー級スター候補の前に何もできずにやられてしまった。

以前の記事で「チャールズ・マーティンはヘビー級の台風の目になるんじゃないか?」と申し上げたが、見てのとおり出てきた瞬間にサヨウナラを言う間もなく消えてしまった。

「ワイルダーがスピルカを衝撃KOで下して防衛成功!!」

できればこの選手をもう少し見ていたかったが、さすがにアンソニー・ジョシュア相手では荷が重すぎたということか。

何かアレだ。
スケールが違いました。

ヘビー級戦線がおもしろい。ジョシュアもその1人に食い込め

盤石の強さでIBF世界王者を獲得したアンソニー・ジョシュア。
とはいえ、前回のディリアン・ホワイト戦で感じた課題は克服されたわけではない。
フットワークに対する追い足のなさと中間距離で出せるパンチの種類の少なさ。主にこの2つがジョシュアの課題ではないかと申し上げたが、今回のマーティン戦ではそこに至る前に倒してしまった。

もしかしたら、これだけのフィジカルがあれば細かい技術は必要ないのかもしれない。筋骨隆々の身体から生み出されるパワーとスピード、至近距離での多彩なコンビネーションを駆使すれば並みの選手ならで圧倒できてしまうのだろう。

だが、今後タイソン・フューリーやワイルダーに勝つためにはどうしても避けて通れない部分だと思うのだが、どうだろうか。
長年続いたクリチコ政権が倒れて、せっかくヘビー級がおもしろくなってきたところである。期待の持てるスター候補はどんどん出てきて欲しい。

「クリチコに勝ったタイソン・フューリーがおもろすぎる件ww」

アンソニー・ジョシュアの今後だが、できればルイス・オルティスとの試合が観てみたい。
ルイス・オルティスが相手なら、この選手の課題をテストするには最適ではないだろうか。WBA暫定王者という微妙な立ち位置なのでなかなか実現は難しいだろうが。

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