内山vsコラレスの敗因? 経験知不足、国内専門王者の弊害が一番大きいんじゃないかな? 衰えやモチベーション低下ではなく

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万歳イメージ
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2016年4月27日。
大田区総合体育館で行われたWBA世界S・フェザー級タイトルマッチ。11連続防衛中のスーパー王者内山高志が暫定王者ジェスレル・コラレスに2R2分59秒でKO負けを喫する大波乱が起きた。

年内の防衛記録更新に加え、海外進出やビッグネームとの対戦も心待ちにされていた内山高志のまさかの初黒星。日本のボクシング界に大きなショックと失望感が流れている。

「井上尚弥の強さ、すごさを考える。カルモナ戦の予想? KO勝ちでいいんじゃないの?」

何も言い訳できないほどの完敗。最初のダウンで勝負あり

内山高志の敗北。
この衝撃が日本ボクシングファンの間を駆け巡っている。

曰く歴代最強王者。
曰くKOダイナマイト。
曰く歴代KO率日本No.1。
曰くPFPに入るべきは山中ではなく内山。

日本ボクシング界屈指のハードパンチャーであり、類まれなる総合力を兼ね備えたコンプリートファイターの内山がまさかの敗北である。

それも無名の暫定王者ジェスレル・コラレスを相手にぐうの音も出ないほどの完敗。海外進出や防衛記録更新の期待もむなしく、オール・オア・ナッシングの掟どおりすべてを失うという波乱の結末である。

「ジェスレル・コラレスが内山を粉砕!! 暫定王者がまさかのアップセット!!」

2Rに奪われた最初のダウン。勝負はあれでほぼ決したと言っても過言ではない。
常々「打たれ弱い」と言われていた内山ではあるが、あのタイミングでもらってしまえば打たれ弱いもクソもない。それほど切れ味鋭い左のカウンターだった。

「「モチベーション」とか「メンタル」とかホント好きだよな。笑わせんなよ。内山は実力でコラレスに負けたんだよ」

負けるべくして負けた内山。やっちゃいけないことを全部やっていた

今回の敗北を受けて、以前に書いたコラレスvs内山戦についての記事を読み返してみた。
概ね内山勝利の予想をしているのだが、その中でも「これさえ起きなければ大丈夫だろう」という最悪の「これ」がことごとく現実のものとなっていたことに驚き、そして納得した。

「ああ、そりゃあ負けるわ」と。

「内山国内防衛ワロタ _( ̄▽ ̄)ノ彡 だから言っただろww 大田区総合体育館を想定しておけと」
「内山vsコラレスを予想する!! 4月27日の大田区総合体育館でトリプル世界戦開催!」

・相手の踏み込みに合わせたカウンターがあり、不用意な踏み込みには注意
・踏み込みが鋭く荒々しい連打もあるが、相当いいタイミングでもらわなければ大丈夫
・前半は苦戦する可能性がある

まだ相手の動きに慣れていない前半、不用意な踏み込みに強烈なカウンターを合わせられ、荒々しい連打につながれてのKO負け。
起きてはいけないことが全部起きている。
内山は負けるべくして負けた。そう言わざるを得ないのではないだろうか。

「八重樫vsテクアペトラ予想!! 激闘王の名にふさわしい戦いを見せて井上尚弥につなげ!!」

前半から飛ばすコラレスとスロースターターの内山のタイミングがドンピシャリだった

奥足重心の防御に傾向した技巧派。
右ジャブで距離を測りつつ、左のカウンターを狙う待ちのスタイル。
イメージ的にはアンセルモ・モレノをややおおざっぱにしたタイプ。
若さにものを言わせた荒々しさはあるが、全体的には防御勘に優れた身体能力系。ただし、常に奥足に体重をかけているので、バックステップにフォルトゥナほどのレンジはない。踏み込みの鋭さはあるものの、フォルトゥナに比べれば危険度はやや落ちる。

過去の試合を観た上でのコラレスに対する僕の印象は大体こんな感じだった。

「【再戦展望】内山vsコラレス大みそか決戦。苦戦必須? 引退を賭けた大一番のリング」

そしてvs内山戦を改めて観直してみたが、正直に申し上げて印象はそこまで変わっていない。

いい選手には間違いない。
だが、フォルトゥナやウォータースと比べれば一段落ちる。
この選手に対しての僕の評価は相変わらずこんな感じである。

「井上がカルモナに大差判定で勝利!! 意外と苦戦? 拳を痛めて攻撃力が半減」

予想外だったのは、試合開始から思った以上に飛ばしてきたなというくらいである。
もう少し防御重視で様子を見ると思っていたが、内山の打ち終わりにあれだけ振り回してくるのはちょっと意外だった。さらに、スイッチヒッターであることも知っていたが、1Rからあんなにサクサクと使ってくるのも予想していなかった。

もう少し相手の様子をうかがって試合を組み立てていく選手だと思っていたが、初回から自分の引き出しを全開にして襲いかかってきた。
左を中心に組み立てようとした内山を見て、すぐにオーソドックスにスイッチする切り換えの早さは本当に見事だったと思う。

「村田が香港でベドロソと対戦!! 世界戦に突き進む村田のプロ10戦目を予想する」

恐らくコラレスには体力的な余裕がなかったのだろう。減量苦や試合前のゴタゴタのせいで、ガス欠に近い状態で試合に臨んでいたのだ。
作戦としては序盤からアクセル全開で飛ばす。いけるところまで突っ走って、後はどうにでもなれ。これ以外に選択の余地はなかったということなのだろう。
そして一か八かのラフな作戦が、スロースターターの内山とモロにマッチしたということだと思う。

前半を相手の動きをインプットする時間に使う内山と、その隙を与えずに全速力で駆け抜けたコラレス。
ウサギとカメではないが、内山がコラレスとの距離感やパンチの軌道を覚える前にゴールテープを切ってしまった。そういうことである。

逆に言うと、あの2Rを何とかしのいで3、4Rでダメージを回復できれば、また違う展開が待っていたのかもしれない。ダメージを回復させた内山が5~7Rを使ってコラレスの動きに対応し、8、9Rでいつもどおりのドカン。もしかしたらそんな結末が待っていた可能性も少しはある気がする。

「井上尚弥が拳を痛めないために? 井岡スタイルに変更すればいいんじゃない?」

かといって、決して内山がコラレスに負けていないなどと言うつもりはさらさらない。
この試合に関しては内山本人も言っているように完敗だ。言い訳がいっさいきかないほど、完膚なきまでに叩きのめされた試合である。

よく聞くトレーナーの言葉を借りるなら、
「この日は内山の夜ではなかった」
というヤツだ。

「内山高志敗北における日本のジムの鎖国体質批判への考察」

敗因は突き詰めていけば「経験不足」。国内専門王者の弊害がここにも?

恐らく「慣れ」という面も大きかったと思う。
以前の記事でも申し上げたように、日本のジムがコレ系の選手を防衛戦に選択するのは本当に珍しい。海外のリングではこの手の身体能力系の選手はちょくちょく見かけるが、日本のジムがビッグネームでもない暫定王者との防衛戦ごときでこんなタイプを連れてくるケースはほとんどなかったのではないだろうか。

純粋な戦闘力だけを比較すれば内山>コラレスであることは間違いない。だが、こういうフリースタイル系の選手とやり慣れていない内山にとっては完全に初体験であり、未知の領域だったに違いない。

以前、フォルトゥナvs内山戦の勝敗予想をしたことがあるのだが、あれこれ考えた上でフォルトゥナの判定勝ちとさせていただいている。

「内山がフォルトゥナに勝てるかを予想する」

何度も言うが、内山高志という選手は日本屈指の名選手である。
フォルトゥナと比較しても戦闘力が劣っているとは決して思わない。
それでも内山の敗北を予想した理由は、長年島国チャンピオンをやっていた弊害が出るのではないかと思ったからである。
アメリカを主戦場とするフォルトゥナにはあらゆるタイプの相手と対峙する機会がある。だが、国内専門王者である内山がこういう身体能力系の選手に触れる機会は皆無だ。
実力の近い相手であればあるほど、経験値の差は大きく出てしまうのではないかと危惧したのである。

そして、結果的にはフォルトゥナよりもやや劣るコラレスを相手に国内専門王者の弊害が露呈してしまった。

試合時間が短すぎて何とも言えないが、この試合で内山が特別何かが変わっていたとは思わない。衰えはもちろん、油断があったわけでもないと思う。
「モチベーション」やら「戦う理由」やらといった要因もよく見かけるが、本人も否定しているようにそれはないと信じたい。

ただ、日本という島国で長年安定王者に君臨し続けたことで、変則への対応力がやや失われた面はあったのかもしれない。
いわゆるくぐった修羅場の数がキャリアの割に不足していたということなのだろう。

「山中は海外挑戦を思いとどまるべき? ソリスに2度のダウンを奪われ、よもやの大苦戦」

この部分を解消するのはジム業、プロモート業、マネージャー業の三位一体が常識の日本ボクシング界では、やはり相当難しいのではないだろうか。

日本に呼べる相手とのタイトルマッチや日本人同士で回しているうちは問題ない。国内開催であればスポンサーも探しやすい。
だが、内山のように日本に収まりきらないスケールを持った選手が出現したときにはどうしても持て余してしまうのである。帝拳ジムや大橋ジム、協栄ジムなど限られた大手しか海外と交渉するパイプやノウハウがない状況はどう考えても歪である。

現在の日本ボクシング界はこの部分が本当に焼け野原状態で、緊急に開拓を要する分野だと思う。さらに日本ボクシング界でひと儲けする余地があるのもこの部分であることは明白だ。そういう意味でも、亀田兄弟の今後には少し期待している。

「亀田兄弟の今後が見えた? これが亀田の進む道。日本ボクシング界の常識をひっくり返せ」

これは余談だが、「試合開始直後に両者を俯瞰で観た瞬間、内山の負けを確信した」とおっしゃっている方をお見かけした。
これが本当ならマジですげえ。
皮肉でも何でもなくすげえ。
予知能力というか洞察力というか、冗談抜きで人間業を超えていると思う。

ちなみに僕は、鼻くそをほじりながら「よっしゃ、がんばれ内山」などとのたまっていました。完全にただのパンピーですww

内山の今後。負けたことで身軽になった? 案外やりたいことができるかも

防衛記録更新を目の前に敗北を喫した内山だが、今後はどうするのだろうか。
現役を続けるかは本人次第だが、考えようによってはこの敗戦で旗色が変わる可能性もあるのではないだろうか。
防衛記録やジムの稼ぎ頭としての立場、そして「スーパー王者」という名の身動きが制限されるだけの妙な肩書き。

「内山vsウォータース予想!! 実現なるか?」

いろいろな足かせや肩の荷が下りて身軽になったことは間違いないと思う。ここから先は海外進出を含めて自分の希望が通りやすくなるような気がするのだが、いかがだろうか。

もちろんいきなりのビッグマッチは難しいだろう。だが、身軽になったことで有名どころと絡むのも不可能ではないように思える。「元王者」の肩書きを使えば前哨戦などの需要は案外多いのではないだろうか。

無冠になったのだから、いっそのことWBCのフランシスコ・バルガスへの挑戦を画策してもいい。もしくは衰えが顕著なガンボアを大田区総合体育館に呼んでしまうとか。ロマチェンコとの試合をゴネまくって飛ばしたウォータースとの再交渉もありだ。
負けたことは残念だが、選択肢が広がっていることにも注目したい。

「三浦vsバルガス壮絶決着!!」

何となく三浦vs内山のタカシ対決Vol.2もありそうな気がするが、個人的にはあまり興味をそそられない。

もちろん内山の気持ちが最優先されることではあるが、じっくりと考えて結論を出してもらえればと思う。

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