海外挑戦にはインパクトのあるきっかけが必要なのかね? NHK BS1「あの負けで私は強くなった「ボクシング・長谷川穂積」」を観て思ったこと

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防衛戦闘機イメージ
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先日、NHK BS1で放送された「あの負けで私は強くなった「ボクシング・長谷川穂積」」を観た。
 


2017年3月29日に放送された番組で、3階級制覇王者長谷川穂積が自身のボクシング人生を振り返るという内容。
 
現役生活の中でもっとも大きな敗戦だという2010年4月30日のフェルナンド・モンティエル戦。この試合を長谷川とモンティエルが2人で振り返るシーンを中心に構成される番組である。
 
 
だいぶ前に放送された番組なので、今さら? という話ではあるのだが。
しかも僕が観たのは再放送の方で、なおかつ浅田真央引退特番のせい? でいきなり放送日が変更になるという間の悪さ。一生懸命用事を済ませて帰ったら、見知らぬ番組が放送されていたときの絶望感は筆舌に尽くし難い。
 
とはいえ、番組自体はおもしろかったし、いろいろ「ふーん」と思うこともあったので、今回はそれについての感想を書いてみようと思う。
「もうええやろ」と思う方もいるかもしれないが、そんなことは気にせず突き進みたい。
 
「亀田興毅が政令指定都市13個分の視聴数動員ww 「俺に勝ったら1000万円」企画の視聴数が1300万ってどうかしてるぜww」
 

モンティエルの夢が「東京で世界王者になること」というのは衝撃的だった

「人生を変えた“敗北”」
 
元3階級王者長谷川穂積さん36歳が現役中唯一負けて「悔しい」と感じた相手、フェルナンド・モンティエル宅を訪ねて当時を振り返る番組である。
 
現役最後の相手となったウーゴ・ルイスが出迎えにきたり、番組の最後でモンティエルとスパーリングをしたり。長谷川穂積ファンにとっては、最初から最後までたまらない内容だったのではないだろうか。
 
「言うほどいい試合かこれ? 長谷川穂積がウーゴ・ルイスにTKO勝利で5年ぶりの王座奪取!!」
 
もちろん僕自身も「おお!!」と思うことはたくさんあり、相変わらず家族と仲のよさそうな長谷川には妙な安心感を覚えた。
 
中でも、モンティエルの「将来の夢」が「東京で世界王者になる」だったこと。そして、長谷川との試合でそれを達成したことは、いろいろな意味で衝撃的だった。
 
やっぱりボクシング軽量級のメインストリームは日本なんだなぁと。
 

モンティエルに負けたことで、長谷川穂積の「海外進出の夢」が頓挫した。そこから壮絶なボクシング人生第二章がスタートした

ただ、それ以上に僕が「なるほどね〜」と思ったのは、長谷川本人が口にしていた「モンティエルに負けて海外挑戦がなくなった」という言葉。
マネジメントを担当していた帝拳ジムが、11度目の防衛後に長谷川の希望でもある海外進出を計画していたとのこと。だが、その試合で負けたために計画が頓挫してしまったという。
 
番組で本人も言っていたように、この頃の長谷川はまさしく全盛期。どんな相手でも負けるイメージが沸かない、完全な無双状態だった。
そして、「海外進出」を口にするようになったのもちょうどこの頃のこと。同い年の松坂大輔が2006年にレッドソックスに移籍したことにも刺激を受けたと言っていた覚えがある。
 
「松坂大輔さんの2017年成績予想【定例報告】オープン戦ラスト登板で広島を相手に7回無安打無失点」
 
10度連続防衛、しかも5度連続KO防衛。
日本でやることがなくなりつつある状況で、海外進出を目指すには絶好のタイミング。
その最後の砦として用意されたのが強敵フェルナンド・モンティエルとの一騎打ち。この勝利を手みやげに堂々とラスベガスに進出する。
すべての計画は完璧のはずだった。
 
だが、この大一番に完敗したことで、長谷川穂積と陣営の計画は頓挫してしまう。
 
「井上尚弥に勝てる選手? バンタム級で誰が井上尚弥を倒せるか、どうすれば勝てるかを妄想してみる」
 
それ以降の長谷川穂積のボクシング人生はご存知の通り。
2階級制覇を達成するものの、持ち前のスピードと見切りに狂いが生じ、勝ったり負けたりを繰り返すようになる。
それでも諦めずに這い上がり、最後の最後で見事に3階級を達成しての大団円。
 
なるほど。
確かに「あの負けで私は強くなった」ってヤツですね。
 
「ガンボアvsカステリャノス感想。ガンボアの身体がデカ過ぎてアレだった。ところで内山の今後は?」
 

長谷川穂積には2度の海外進出のチャンスがあった。チャンスを活かしたのが西岡利晃で、活かせなかったのが長谷川穂積

近年、ますます有力選手の海外進出が望まれる日本ボクシング界。
特に西岡利晃や三浦隆司、亀海善寛が一定の地位に上り詰めたことで、その声は大きくなるばかりである。
 
だが、必ずしもそれがうまくいっているとは言い難い。
上述の長谷川穂積や山中慎介、内山高志などは、海外の強敵との一騎打ちを期待され、裏切られるを繰り返すうちに全盛期を過ぎてしまった。
 
「内山再戦でコラレスに惜敗!! 2-1の判定でリベンジ失敗で引退か?」
 
また大橋ジムの井上尚弥には5月の防衛戦後に海外からのオファーがあるという話だが、果たしてどうなるか。
 
 
今さら言っても仕方ないのだが、日本人ボクサーが海外進出(特に米・ラスベガス等)するのは本当に難しいのだと思う。
もちろんテレビ局や後援会など、諸々のしがらみもある。ファンの土壌もない地にポッと出で行っても相手にされないというのもある。当然、アメリカでは軽量級が軽視されるのも影響しているはず。
 
そして、その状況を打破する唯一の方法が「世界的に名のある選手に完勝した」実績なのではないかと思う。
 
「村中優惜しい!! ヤファイを追い詰めるが、最後の最後で失速。敵地で絶好のパフォーマンスは次につながる」
 
たとえば長谷川穂積で言えばvsモンティエル。
日本国内で何度防衛を繰り返そうが「お前誰やねん」状態で、どれだけ「強いぞ」と叫んでも「ふ〜ん」で終わってしまう。
だが、ラスベガスのリングに上がった経験のあるモンティエルを倒せば一気に見る目が変わる。
 
つまり、ジョニゴンやラファエル・マルケスを倒してドネア戦にこぎ着けた西岡利晃と、モンティエルやジョニゴンに負けてチャンスを逃した長谷川穂積の差。
状況に違いはあれど、長谷川穂積には少なくとも2回、海外進出の足がかりとなる試合が用意されていた。
 
「長谷川穂積のベストバウトはあの試合だろ? 壮絶な打撃戦の最中に長谷川を覚醒させ、その後の道すじを決定した」
 

実は山中慎介にもチャンスがあった。モレノ戦での微妙な判定によって海外進出が頓挫した

さらに、それを言うなら山中慎介も同様である。
2015年のアンセルモ・モレノVol.1が微妙な判定勝利だったことで、海外への扉が閉ざされた感が強い。
あの試合に明白な勝利を飾っていれば、もしかしたら海外進出が実現していたのかもしれない。
「防衛9度、しかもアンセルモ・モレノに完全勝利」という実績があれば、海外進出にそれなりの説得力を持たせることができる。
「防衛11度、しかもフェルナンド・モンティエルに完全勝利」の実績を引っさげて海を渡る予定だった長谷川穂積との状況は近い。
 
「山中がモレノに判定勝ち!! 僅差判定で辛くもモレノに勝利」
 
だが、あの試合で物議を醸したことで、海外でのビッグマッチ実現の交渉材料としては弱くなってしまった。ダルチニャンに勝利した2012年に行っておけばという気もするが、防衛回数1度ではそれはそれで弱い。
 
つまり、すべてのタイミングと実績、実力が伴わなってこその海外進出。条件が一つでも欠けた場合、軽量級の日本人ボクサーが海外でビッグマッチを実現するのは不可能に近い。そういうことなのかなぁと思った次第である。
 
「山中vsルイス・ネリ予想!! 最大にして最強の挑戦者登場? 13度目防衛戦をクリアしてカンムリワシに肩を並べろ」
 
ちなみに、その条件を内山高志に当てはめるのであれば2015年のジョムトーン戦だろうか。
「防衛10度、しかもジョムトーン・チュワタナを2RKO」。
ジョムトーンのネームバリューが若干アレだが、説得力としてはバッチリだと思う。といっても、結局次の相手はオリバー・フローレスだったんですけどね。
 
「内山がフローレスを粉砕!! 誰がゴリラをリングに上げていいって言ったよww」
 

カンムリワシを便利使いしやがってww 偉大だと言ったり、無意味だと言ったりどっちやねんww

僕自身、何でもかんでも「海外海外」「強豪強豪」と喚き散らすここ最近のボクシング界の風潮には辟易している。
 
先日の井岡vsノクノイ戦でも、具志堅の14度防衛に並んだという報道に対して「偉大な具志堅の記録を井岡ごときと並べるな」と憤る方たちには本当にビックリさせられた。
「え? 山中が防衛記録に近づくたびに『そんな記録は無意味だ!!』っておっしゃってたじゃないっすか」
 
「井岡一翔の倒し方? ノクノイ戦の感想を含め井岡に勝てそうな選手を考える」
 
どちらも「あの時代とは状況が違うから比べる意味がない」という意味では一貫しているが、それにしてもカンムリワシの便利使いには驚かされるばかりである。
 
また、ロシアでトロヤノフスキーに敗れた小原佳太や、ラスベガスでオスカー・バルデスに挑んだ大沢宏晋、英国でリー・ハスキンスにKOされた岩佐亮佑など。ジムの力関係やトップ戦線に入り込む余地がない状況でやむなく海外のリングに上がる選手と、山中や長谷川、内山を同列で語る意味もよくわからない。
 
「比嘉大吾vsエルナンデス予想。和製ロマゴン? ちょっと違う気がするけど、期待の比嘉大吾が王座初奪還に挑戦」
 
「無謀」と言われても、仕方なく海外のリングに上がる選手は勇敢で、国内でやることがなくなって海外進出を模索する名王者はヌルいって、まったく別次元の話じゃないっすか? 比較しても意味なくないっすか? みたいな。
 

「海外進出」と言うのは簡単だけど、実現するのは難しい。だけど、それを内側の人間が言っちゃダメだよね

ただ、それをボクシング関係者が言うのはちょっと違うとも思っている。
 
「海外海外と言うのはいいが、状況を考えてほしい。日本人選手が海外に行ってお客が集まるのか、ファンの土壌はあるのか。戦績に見合ったファイトマネーは出せるのか」
 
たまにこういった内容の発言をボクシング関係者がしているのを耳にするが、正直それを言ったら終わりである。
 
「京口世界王座!! アグルメドとの激戦を制す。いいですね京口! こういう試合が観たかった。最短世界一は無意味? まあ商売だから」
 
要は、日本のボクシング界というのは、
 
「世界王者になったらその先はありません」
「海外にはもっと強い相手がいるけど、そういう相手との試合は組めません」
「世界王者になればそこそこお金は稼げるけど、ガチのビッグマネーが出るような試合はありません」
「テレビ局と後援会にプロテクトされて、細々と防衛戦をこなす夢のない世界です」
 
ということを、堂々と宣言してしまっているのである。
 
「拳四朗vsガニガン・ロペス戦を予想してみる。拳四朗勝利が大方の予想みたいだけど、ガニガン・ロペスもいい選手」
 
彼らが誰を相手に息巻いているのか知らないが、これは内側の人間が絶対に言ってはいけないことだと思う。
まあ、日ごろから「ガチのマッチメークを求める本物のボクシングハァン()」の身勝手な声にイライラさせられているというのは容易に想像できるが。
 
そりゃ、こんな記事も出ますわな↓
「日本は“ボクシング大国”なのか?増える王者の陰で、競技人口が危機」
 
「トリプル世界タイトルマッチ」「ダブル世界タイトルマッチ」などとやっているのは、別に日本のボクシング界が隆盛を極めているからじゃない。ただ単に、抱き合わせにしないと視聴率がとれないというだけの話である。
 
「村田諒太vsハッサン・ヌダム・ヌジカム(アッサン・エンダム)予想。これ普通に勝てるんじゃねえの?」
 
すでに多くの人がわかっているように。
 
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