ホプキンス引退!! ジョー・スミスにリングアウト負けで伝説に終止符。出がらし状態の51歳がラストマッチで豪快に散る【結果・感想】

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エイリアンイメージ
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2016年12月17日(日本時間18日)に米・カリフォルニア州にあるザ・フォーラムで行われたWBCインターナショナルL・ヘビー級タイトルマッチ。
王者ジョー・スミスに元世界王者のバーナード・ホプキンスが挑戦し、8R53秒TKO負けを喫した試合である。

この試合を最後に引退を表明していたホプキンス。
2014年11月以来、約2年ぶりにリングに上がった51歳の元王者は27歳のスミスを相手に大善戦。終始コーナーに攻め込まれる苦しい展開を強いられるも、要所でカウンターをヒットするなど互角の展開で中盤に突入する。

だが迎えた8R。
勝負を賭けたスミスのペースアップにホプキンスはついていけず、圧力に押されてリング外に落下。一度は立ち上がったものの、足首を痛めたと主張して試合続行が不可能となる。

1988年のデビュー以来、約30年間もの現役生活の中で数々の伝説を残したホプキンス。最後の試合においても、キャリア初のリングアウトという衝撃を残しての引退劇となった。
 
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ホプキンス伝説が幕を閉じる。約30年間の偉大なキャリアの終焉

伝説の終焉。

ホプキンスが負けた。
しかもキャリア初のリングアウトという豪快なTKO負け。
ボクシング界の伝説である51歳の散り際は、最後の最後まで豪快だった。
 
「嗚呼ゴロフキンww マーティロスヤンがんばったけどな。ゴロフキンの衰え? あると思います」
 
・IBF世界ミドル級タイトル20度防衛
・4団体統一王者
・フェリックス・トリニダードやオスカー・デラホーヤをKOで撃破
・11年以上負けなし
・最年長防衛記録(49歳3か月)

“The Executioner”の異名を持ち、全盛期の強さはまさに悪魔的。
誰にも超えることのできない壁であり続けたと同時に、憎たらしいほどの強さやリング上でのふてぶてしさによって「ボクシング界一のヒール」としての立場を確立する。

だが2010年台、40歳を過ぎた頃からホプキンスに向けられるまなざしに変化が起こる。
憎しみの入り混じった視線はリスペクトに変わり、残してきた功績の偉大さに比例するようにブーイングが歓声へと変わる。
“The Executioner”の異名はいつしか“エイリアン”に代わり、「若い力を知性とテクニックで抑え込む仙人」のような存在として認知されるようになる。

そして2014年。PFPトップ3に名を連ねるセルゲイ・コバレフに敗れ、ついにキャリアがストップ。

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だが、この選手がこれまで残してきた功績は決して色あせることはない。
モハメド・アリ、シュガー・レイ・レナード、マイク・タイソンなど、ボクシング界のレジェンドと呼ばれる人物は数多くいるが、その中においてもホプキンスの功績が見劣りすることはまったくない。

「老兵」と呼ぶにはあまりに若々しく気高い本物の戦士。
暗黒と栄光の狭間を走り続けたバーナード・ホプキンスの30年がついに幕を閉じる。

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終わったなホプキンス。明らかに身体が言うことを聞いてない

個人的に興味を引く試合が少なかった先週末だったが、さすがにこの試合だけは見逃すわけにはいかなかった。とにかく画面の前に張りつき、目を皿にして観戦した次第である。

そして、感想をひと言で申し上げると、
「ホプキンス、完全に終わったな」
である。

目いっぱいホプキンスを持ち上げておいてアレなのだが、正直観るのがキツい試合だった
 
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開始直後の1Rを観て思ったのが、
「ホプキンス鈍いな」

スミスのプレスに対して前後左右に激しく動くが、あっさりと正面に立たれてしまう。
得意のカウンターを打ち込むものの、踏み込みのレンジが短く当たりが浅い。
逆にスミスにカウンターを合わせられ、ピンチを迎えてしまう。
ロープに詰められた状態から左を打ち込むが、パンチに力が乗らずスミスの前進を止めることができない。
 
何というか、まったく身体が言うことを聞かない感じである。

相手の動きは見えている。
スミスが次にどう動くかも読める。

だが、それに身体がまったくついてこない。
すべての動作が緩慢で、バタバタと不安定な印象である。

少なくとも2年前まではこんな状態ではなかったと思うのだが。
 
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緩慢な動きの元凶は下半身の衰え。こうなると厳しいな

動きの悪さの原因は恐らく下半身
この日のホプキンスは、両足にまったく力が入っていなかった(ように見える)。

足を怪我しているのかは定かではないが、2年前に比べて足腰が弱ったことは確かだろう。

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バネが効かないのでスミスのプレスから逃れることができず、踏ん張りが効かないので前進を受け止めることもできない。
動き出しを狙って左をヒットしてもパワーがまったく足りず、スミスの前進が止まらない。あっさりロープを背負わされ、上半身に頼った防御に終始せざるを得ない。

膝のバネが効かないので、当然踏み込みのレンジも出ない。
上半身の柔軟性と抜群の見切りでクリーンヒットは防いでいるものの、正面衝突でまったく歯が立たない状況はどう考えても厳しい。
 
相手のジョー・スミスだが、正直僕はこの選手がそこまで強いとは思わない。
今年6月にアンドルー・フォンファラに大番狂わせを起こして大出世を果たしたが、あれも言ってみれば1発大逆転の勝利である。あの1発を当てるまでは相当押し込まれていたし、フィジカル面では完全にフォンファラに負けていた。
グイグイと前に出て腕を振り回すスタイルではあるが、コバレフやスティーブンソンと比べれば明らかに一段劣ると言わざるを得ない。
いい選手であることは間違いないが、ハイレベルなL・ヘビー級で王者に上り詰めることができるかは甚だ疑問である。

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ところがこの日のホプキンスは、スミスの突進さえまともに受け止めることができずにいた。

4、5Rと足を踏ん張ってフルスイングしているにもかかわらず、お構いなしに間合いを詰められる。
身体のど真ん中にボディを突き刺しているのに、である。

6Rにはあれだけ見事なカウンターをヒットしても、スミスはいっさい気にするそぶりもない。
動き出しのタイミングをバッチリ捉えた左は足止めにすらならない。

ホプキンスがあれだけの手を尽くしてるのに、ジョー・スミスは何も脅威に感じていない。もはや手の打ちようがない

7Rに入ると、スミスが若干戦法を変化させる。

より攻撃的に。

僕はてっきり、スミスの出足はこのラウンド以降鈍るのではないかと思っていた。
6Rにあれだけの上半身のさばきを見せられ、あれだけのタイミングでカウンターを被弾したのだから、少しは警戒するはず。もしかしたらここから先、ホプキンスの時間がくるのではないだろうか。

ところが、スミスの出足は鈍るどころか前傾姿勢に拍車がかかる

これまで出していた左のジャブをすっ飛ばし、ガードを上げたまま無遠慮に近づくスミス。

遠い間合いでパンチを出すとホプキンスのカウンターが飛んでくる。
だったら手を出さなきゃいい。

どうせ2、3発もらってもどうってことない。
ヤバいタイミングでのカウンターさえ注意すれば、体力差で押し切れる。
さっさと近づいて、自分の距離になったところで思う存分腕を振り回せばいい。

スミスのそんな思いがありありと伝わってくる7Rである。
 
つまり、あれだけ手を尽くしたホプキンスの反撃がまったく脅威になっていない
攻撃に強弱をつけ、距離とタイミングをバッチリ掴む。ありとあらゆる手段を講じた上で、完全に舐められてしまう
もはや手の打ちようがない状況である。

スピード&パワーをテクニックと知力で凌駕する選手は問答無用で尊敬に値する。だが、それでも最低限のフィジカルは必要ですよ

膨大な経験値と相手の動きを読む抜群のセンス。
バーナード・ホプキンスやアンドレ・ウォードは、文字通り「柔よく剛を制す」を地でいく選手である。

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これは僕の考え方だが、コンタクトスポーツにおいてのスピード&パワーは文句なしの大正義である。
つまり、圧倒的なフィジカルの差を知力とテクニックで制するのは、パワータイプの選手がテクニシャンを力で制するよりもはるかに難しい。ボクシングが階級制のスポーツであることからもそれは明白である。

そのせいかはわからないが、パワー型の選手を空転させるテクニシャンを好きだという人は意外に多い。僕自身も、それを実践する選手は問答無用でリスペクトするべきだと思っている。

ただそうは言っても最低限のパワー、最低限のスピードが必要なことは確かで、この日のホプキンスはその水準を下回っていたと言わざるを得ない。

恐らく49歳時点では維持できていた「最低限のフィジカル」が、この2年のブランクによって「世界トップレベルに対抗する上で必要な基準」をほんの少し下回ってしまったのだろう。書いていて完全に字面がおかしいのだが。

正直、8Rのリングアウトがパンチだろうがプッシングだろうが大した問題ではない。あれだけあっさりとリング外にふっ飛ばされる時点で、ホプキンスのフィジカルの衰えはどうにもならないところまできている。要は、引退致し方なしというヤツ。
 

辞める以外に手がないところまでやれるスポーツ選手は本当にすごい。それが30年間もの現役生活ならなおさら

ジョー・スミスに完膚なきまでにやられ、現役選手としての限界をまざまざと見せつけられたバーナード・ホプキンス。
あらゆる手を尽くし、足掻きに足掻いた結果の完敗ということで、観ようによっては清々しさすら感じさせる試合だった。

そして、それこそがバーナード・ホプキンスという選手の凄まじさと言っても過言ではない。

スポーツ選手が引退を決意する理由やタイミングには様々あり、一番いい時期に余力を残して辞める選手もいれば、ボロボロになるまで追い込んだ末に辞める選手もいる。
選手それぞれに引退の美学があり、どれが正しいと一概に言えるものではない。

ただ、今回のホプキンスのように「もうこれ以上手立てがない。辞める以外に道がない」ところまでできる選手というのは本当にすごいと思う。

基本的にスポーツ選手のキャリアは、

・若さと勢いで突っ走れる時期
・技術と体力がバランスよく両立する時期
・体力の低下を経験と技術で補う時期

という具合に、3つの時期に分かれている。

そして、3番目の「体力の低下を経験と技術で補う時期」をどれだけ延ばせるかによって、現役生活の長さが決まってくる。
ホプキンスで言えば2005年以降。ジャーメイン・テイラーに連敗を喫してからの時期である。

つまり、ホプキンスは現役終盤に当たる時期を11年間継続し、なおかつ世界のトップ戦線に君臨し続けたのである。

身体能力の低下する40代に知力と技術力を総動員し、ひたすら体力維持につとめて選手としてのクオリティを保つ。その濃密さは「努力」などという言葉で語り尽くせるものではない。
そもそもオスカー・デラホーヤにKO勝ちしたのが2004年。全盛期と呼べる時期を39、40歳まで続けている時点であり得ない話である。

特にボクシングのようなコンタクト競技はダメージも溜まりやすく、辞めどきを間違えれば健康を害する可能性も秘めている。

いかにホプキンスという選手が規格外か。
そのすごさに驚愕するばかりである。

「三浦大輔と黒田博樹の引退があまりにも見事で、FA移籍と生え抜きへの考えが揺らぎそうになった件」

自分を客観視し、現実主義を貫いたホプキンス。「エイリアン」という異名からは最も遠い存在

先日引退を発表した長谷川穂積が、確かインタビューで「今の自分は昔の自分より弱い」とコメントしていた覚えがある。そして「今の自分を客観的に見られる長谷川はすごい」と賞賛されていたと記憶している。

「長谷川穂積のベストバウトはあの試合だろ? 壮絶な打撃戦の最中に長谷川を覚醒させ、その後の道すじを決定した7R」

だが、恐らくホプキンスにとってそんなことは基本中の基本なのだ。

年齢を重ね、徐々に身体能力が失われていく中で若い力にどう対抗するか。
手持ちの武器をどのように使えばこれまで以上の結果を出すことができるか。
指の間からこぼれ落ちるように失われていく体力をどうやって維持するか。
 
とことん自分を客観視し、全盛期を過ぎた自分と真正面から向き合う。
最小限の労力で最大の効果を得るための近道を探る。
気の遠くなるほど長い時間をかけて、ホプキンスは現実主義を貫いてきたのである。

そして最後の残りカスまで搾り尽くした結果が今回のリングアウト負け。
ある意味、「エイリアン」という異名はホプキンスを表す上で最も失礼な呼び方である。「ここまで地球人っぽいヤツ、めったにいないぞ」というくらいに。

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