地の利とか日本人ボクサーがタイで勝てない理由とか。世界戦19敗1分を引き起こしたマモノ()についてのお話【中編】

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アドバンテージ
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前回「ラフファイト」「体重超過」について好き勝手に列挙してみた。
ジェフ・ホーンやシーサケットの頭突き、アンドレ・ウォードのローブローまがいのボディなど。反則ギリギリのラフな行為は是か非か。
 
「ラフファイトとか体重超過とか、別にアリだよな? というお話【前編】」
 
個人的な意見としては「全然あり」で、レフェリーの傾向を見定めたスレスレのラフファイトや、死角での反則打などはむしろお見事ですらあると申し上げている。
 
また体重超過に関しても同様である。
出場停止や多額の罰金などの大きな厳罰がなく、公式な勝敗として記録されるのであれば意図的な体重超過も悪くない。
 
有利な状況を作るためにルールを最大限利用したり、制度の抜け穴を探すなど勝負事では当たり前。批判されるべきはグダグダな運営や反則を見逃すレフェリーであって、選手ではない。
 
「ウォードが再戦に完勝!! コバレフがキャリア初のKO負けでリベンジ失敗。仕方ないね。ちょっと差があり過ぎたよな」
 
というか、勝利のために策を弄することの何がいかんの?
「あのパンチは低かった」と目くじらを立てるのではなく、「あの低さならOK」と判断してそこを狙い打った選手をほめる方がよっぽど前向きじゃないですか?
 
といった内容のお話である。
 
 
そして、今回はその続編として「地の利」について。
これも前々から興味があったことなので、勢いに任せて書いてみようと思う。
 
なお、前回同様あくまで僕の考えであり、理解してくれなどと言うつもりはないです。その辺よろしく。
 
「シーサケット勝利!! PFP No.1 ロマゴンに判定で大金星を挙げる!! すっばらしいねシーサケット」
 

ホームアドバンテージ、「地の利」は絶対にある。村田vsエンダム戦が不満なのはわかるが、過去に日本人選手に有利な判定が出たこともある

まず大前提として「地の利」というのは絶対にあると思う。
 
ホームとアウェイの違いはもちろん、会場の雰囲気を含めてAサイド有利の状況ができやすいのは間違いない。
 
なので、軽量級(ミニマム~フェザーくらいまで?)の地盤のある日本において、日本人選手が優位性を享受できるのは必然と言える。
 
具体的にパッと思いつく範囲では、
 
・時差がなく慣れた会場でやれる
・食事の心配がない
・ホーム寄りのジャッジが出る(ことが多い)
・会場全体が味方
 
といったところだろうか。
 
特にジャッジについては、「まあ、そうなんだろうな」と言うしかない。これまで「おや?」と思う判定も何度か見ているし、実際に大きな非難が起きたこともある。
 
「ヘビー級のビッグマン無双を打破するには? ワイルダー、ジョシュアの2強を打倒するてっとり早い方法を考える」
 
物議を呼んだ村田諒太vsアッサン・エンダム戦のジャッジが、WBAから謹慎処分を科されたことは記憶に新しい。帝拳ジムの会長もたいそうご立腹だったとのこと。
 
「村田諒太何がしたいんだ問題。やっぱり計算高いよなこの人。他人からどう見られるかのケアが半端じゃねえ」
 
だが、これまで日本人選手に有利な判定がなかったなどとは口が裂けても言えない。
今さらあの試合を蒸し返すつもりもないが、過去の判定結果を鑑みれば「どっちもどっちじゃないっすか?」という思いが強い。
 
というか、アンダーカードの拳四朗vsガニガン・ロペス戦がすでに疑惑の判定だからね。村田の陰に隠れて目立たないけど、ロペスがゴネてるんじゃなかったっけ?
 
「見どころ満載の拳四朗vsガニガン・ロペス。思った以上におもしろかった試合。拳四朗が大接戦を制す」
 

僕が思う一番の「地の利」はリング。広さと固さの規定に幅があり、対策を立てやすい

ホーム側の「地の利」において、個人的に一番大きな要因だと思っているのが会場の環境。具体的にはリングの広さと固さである。
 
JBCの公式ルールによるリングの規定は、
 
「広さは18ft(5.47m)以上24ft(7.31m)以内。フロアはフェルトもしくは畳、または同程度の柔らかい下敷きを置いて、その上をキャンバスで覆う」
 
とある。
 
P28の「第5章 試合の管理」
 
つまり、リングの広さには最大で1.84mの幅があり、足場の固さはフェルトでも畳でも可という曖昧さである。
 
アウトボクサーは広く固いリングの方が得意だし、ベタ足で前に出るインファイターは狭いリングの方が有利になる。
柔らかい足場ではアウトボクサーのフットワークは鈍るはずで、リングの状態が試合展開に影響しないはずがない。
 
これ、あまり言われていないのだが、結構大事なことだと思っている。
 
先日の村田vsエンダム戦では、エンダム側が日本開催を受け入れる代わりにリングを広めにするという条件を提示したとか。試合を観直してみると、確かにリングが一回り広いように感じる。
 
「村田vsエンダム感想。疑惑の判定負け? 素人がプロに口出すな。やったことがないヤツが語るな理論」
 

タイで勝てない日本人? それも実は僕の中で説明がついている

また過去20戦0勝19敗1分と、日本人ボクサーにとってタイでの世界戦は鬼門と言われている。
 
ジンクス()やプレッシャー()、マモノがいる()などさまざまな説があるが、これも実はこの辺に理由があるのではないだろうか。
 
タイで行われる試合を観ると、リングが狭く感じることが多い。日本と同じく軽量級が中心のタイだが、それでもやたらと圧迫感を感じるケースが多々ある。
 
しかもタイのリングはキャンバスが柔らかい、滑りやすいという話も聞く。
 
さらに言うと、タイの選手はムエタイからの転向組が多く、足を止めての打ち合いに慣れている。
 
・狭いリング
・柔らかく滑りやすい足場
・元ムエタイ選手
 
この環境下でインファイターが増えるのはある意味必然であり、それこそがタイにおける「地の利」に他ならない。
 
「八重樫がサマートレックをパワーで圧倒!! あれ? 肉体改造でもしたか? ここまでパワフルにねじ伏せるとは」
 
たとえばWBC世界ミニマム級王者ワンヘン・ミナヨーティン。あの選手などはその最たる例である。
 
ロマゴンばりのコンビネーションと巧みなポジショニングを持ち味とするワンヘンではあるが、アウトボクサーにかく乱された際の対応力は未知数とも言われている。
 
ただ、狭く滑りやすいタイのリングで試合をする限り、そういう状況に陥る確率は極めて低い。
つまり、タイから出なければ自分の土俵で試合ができるわけで、負けることはまずない。あるとすれば、得意のインファイトで劣った場合のみ。
まさしくホームの選手に有利な「地の利」である。
 
「アローヨvsクアドラスはKOか判定で逃げ切るかの2択だよな。アローヨに勝ってほしいけど。そして岡田隆志とかいう隠れ名選手」
 
またワンヘンほどではなくてもタイには似たようなインファイターが大勢いるわけで、日本で需要があるのも大いに理解できる。
 
彼らを安いファイトマネーで日本に連れてきて、普段より1階級上の試合を組む。これで日本人選手に自信をつけさせるためのかませ犬の完成である。
 
「星勝優とトラメイン・ウィリアムズがお気に入りな件。ここ数日の僕の推しメン備忘録」
 
タイ人との試合が多過ぎるという話はよく耳にするが、彼らにとって日本は出稼ぎの場としてちょうどいい。
競技人口の減少が止まらない日本側も、安いコストで呼べる彼らの存在は重宝する。完全に需要と供給の関係が成り立っている。
 
「岩佐圧勝で世界王者!! 小國は手も足も出ず、試合後に引退を表明。ラフさが足りなかったかな小國は」
 

佐藤洋太はジンクス()やマモノ()にやられたのではなく、シーサケットの実力とタイの環境に屈したってのがファイナルアンサーじゃないの?

そして日本人選手がタイで勝てない理由だが、モロにこれにはまっている感が強い。
 
たとえば2013年の佐藤洋太vsシーサケット・ソールンビサイ戦。
安定政権を期待された佐藤洋太が、当時「そこそこの挑戦者」と思われていたシーサケットに手も足も出ずに負けた試合である。
 
この敗戦は日本では驚きをもって受け止められ、「タイでの暑さ対策に失敗した」「セレモニーの長さがコンディションに影響した」など、多くの要因が語られていた。
 
「三浦仁選手はいいっすね。てか、エカテリンブルク日露対抗戦おもしろかったww 金子大樹ロシアで散る」
 
もちろんタイの暑さや湿度、想像の域を出ないが無駄に長いセレモニーが影響したというのはあると思う。
佐藤がリング上で20分以上待たされたという話も聞こえてくるくらいである。タイの運営のグダグダさは察するに余りある。
 
「比嘉大吾が9RTKO負け。体重超過で王座剥奪、連続KOも途切れる。てか、新王者ロサレスすげえいい選手」
 
だが、一番の要因としてはやはりリングの広さや固さ。
あの試合のリングが特別狭かったとは思わないが、あれだけ佐藤の足が動かないのを見ると、足場は相当悪かったのではないだろうか。
 
おかげで佐藤の機動力は失われ、インファイトのスペシャリストであるシーサケットのカモに成り下がった。
一応、僕の中ではこういう説明がついている。
 
当たり前だが、シーサケットが予想以上にいい選手だったことは大前提である。
 
「比嘉が半病人エルナンデスを5回ダウンさせてTKO勝利!! パーフェクトレコードで世界王者に」
 
また、そう考えるといろいろなことにも納得がいく。
WBCユースタイトル戦を勝利した比嘉大吾は典型的なインファイターだし、WBA暫定王座を獲得した江藤光喜は開き直って打ち合った末の戴冠を果たしている。
プンルアン・ソーシンユーとの激闘を制したマーロン・タパレスも、壮絶なインサイドの奪い合いを経ての勝利。
足場による影響が少ない選手が勝利を挙げていることになる。
 
つまり、これが僕の思うタイで日本人が勝てない理由。ジンクス()やプレッシャー()やマモノ()の正体ではないかと思っている。
 
「タパレスが大森を11RTKOで粉砕。顎を骨折した大森は病院直行する。意図的な体重超過が「あり」な件」
 

選手のスタイルに合わせてリングをいじるなんて普通でしょ? 卑怯とかではなく、勝つための当たり前の兵法じゃないの?

繰り返しになるが、ホームのAサイド側が「地の利」を享受できる一番の要因は会場の環境。具体的にはリングの広さや足場。これが僕の基本的な意見である。
 
そして、それに対して公平性を欠くなどと騒ぐのはまったくのナンセンスだと思っている。
 
村田vsエンダム戦のように、交渉段階で自分に有利な状況を作るのは当たり前。卑怯とかそういう次元の話ではない。
試合の規模が大きくなればなるほど開催地にこだわるのも当然で、これも「ラフファイト」「体重超過」同様、勝つための立派な兵法である。
 
「ジャーマル・チャーロさんミドル級初戦キター!! セバスチャン・ヘイランド戦予想」
 
2007年に行われた内藤大助vs亀田大毅戦において、タレントのなべやかんが「リングが規定より狭い」「キャンバスが柔らかすぎる」とブログに記して話題になった記憶がある。
 
当時ゴシップ週刊誌や亀田家のアンチの間であれこれと言われていたが、正直僕には何がしたいのかよくわからなかった。
 
申し上げたように、勝利のためにルールを最大限利用するなど勝負事では当たり前である。それをわざわざ、鬼の首を獲ったように喚く意味がわからない。
 
「亀田和毅vsイバン・モラレスはわかるわ~ww はっきりと意思が見えるマッチメークはいいね」
 
そもそも規定より小さい、柔らかいなど、テレビ画面でわかるものなのか。それが可能なのであれば、なべやかんはさっさとその眼力を活かせる場に転職した方がいいと思うのだが。
 
しかも結局騒いでいたのはゴシップ週刊誌のみ。それ以外に相手にされていないのだから、要はそんなもんなのだろう。
 
「村田ズルいww このタイミングでエンダムと再戦決定って、こんなの村田が勝つに決まってるじゃんか」
 

もっとリングについては注目されてもいいと思うんだけどな。逆に無頓着なのもどうかと思うし「どこでやっても一緒だぜ!!」ってのは違う気がする

そもそもリングの広さや足場について、想像の範疇を出ないような現状が僕には理解できない。
タイのリングは「滑る」「柔らかい」という話が都市伝説レベルにとどまっているなど、言語道断である。
 
 
たとえば野球では、球場特性を考えたチーム編成などはごく普通に行われている。
 
2000年代前半の落合中日や2006年の日ハムは、鉄壁の外野陣を擁して球場の広さをカバーした典型的なチームである。
さらに長打力をタイロン・ウッズやセギノールなどの外国人、福留や小笠原などの長距離砲に丸投げし、ダルビッシュ、川上憲伸のスーパーエースが相手をねじ伏せる王道野球を実現している。
 
また統一球導入前だったこともあり、名古屋ドームでは飛ばないメーカーのボールを使用していたとも聞く。
 
MLBに移籍した日本人投手が固いマウンドや滑るボールに苦労するのはもはや鉄板だし、グラウンドが人工芝から天然芝に変わったために野手がクソ化するケースも後を絶たない。
 
デーゲームとナイトゲームで風向きが変わる球場もあると言われ、さすがに「同じ野球だろ?」と言いたくなるほど彼らは環境に対して神経質である。
 
「リゴンドーに勝てる選手見つけた。リゴンドーの倒し方、勝ち方考えた。無謀な挑戦を前向きな妄想に」
 
それに比べてボクシング界は環境に無関心というか、ホームに慣れ過ぎているというか。
野球と比較するのはナンセンスかもしれないが、もう少しこだわってもいいのでは? という気はする。
 
「日本人はタイで勝てない理由を場所や環境のせいにする」という声を聞いたこともあるが、いったい何を言っているのか。
敗因が環境にあるのなら、それを精査して次に生かす。何かおかしいことがあるだろうか?
「~のせい」や「言い訳」という言葉は相手を凹ますのに便利だが、すべての思考を停止させる魔法の言葉でもある。
 
ボールが滑るだけで投手のパフォーマンスに影響が出るように、リングの状態一つでボクサーの動きは大きく変わる。それくらい選手は繊細だし、世界戦の舞台は厳しいはず。
 
なので、リングの広さや固さなどの情報はもっと注目されてもいいと思う。現状「地の利」に対して無頓着過ぎる気がしないでもない。
 
「どこでもやってやるぜ!!」ってイキるのは一見カッコいいけど、ちょっと違うと思うんだよな……。
 
「井上尚弥がニエベス相手に米国デビュー。アローヨ兄弟より数段マシじゃない? アントニオ・ニエベス知らないけど」
 
だいぶ長文になったが、「地の利」に関しては以上である。
 
そして次回は「後編」として、ボクシングにおける「スタッツ」の話を取り上げてみたいと思う。
 
「ヒット率、ヒット数以外のスタッツのお話。リングの広さとか温度とかの表記。見えなかった自分が見えるはず【後編】」
 
といっても数字に詳しいわけではないので、これまで通り僕の意見を好き勝手に列挙するだけですが。
 
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