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映画「破天荒ボクサー」感想。5点満点中2点かな。前提となる知識の範囲が広過ぎるし、エンタメor人物像の掘り下げのメリハリもビミョかった【長文】

ボクシング観戦, 映画・マンガ・ドラマ, 趣味, 雑談 | 2019年7月10日 | タグ: , , ,

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ボクシングイメージ
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映画「破天荒ボクサー」を観た。
 
〜〜〜〜〜
 
「破天荒ボクサー」(2018年)
 
将来を嘱望されるボクサー山口賢一は現在11連勝中。まさに日本タイトルマッチ挑戦への機運が高まっているところだった。
ところが本人のやる気とは裏腹に、いつまで待ってもタイトルマッチが決まる気配はない。
 
無為に過ぎる時間。
業を煮やした山口は突如としてJBCに引退届を提出し、フリーランスのボクサーとして海外に戦いの場を求めるのだった。
 
数年後、山口は当時JBC非公認だったWBOアジア太平洋暫定王座を獲得、ついには日本人初のWBO世界タイトルマッチのリングに上がることに成功する。
 
 
その後、JBCがIBFとWBOの2団体を公認したため、JBCに属さない山口は別の道を模索しなくてはならない。
 
そんな折、山口のもとにOPBFからタイトルマッチのオファーが舞い込む。キャリアの集大成としてこの試合を絶対に実現させたい山口は、日本での活動を再開するべく以前所属したジムへと向かうのだが……。
 
〜〜〜〜〜
 

 
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新宿「K’s cinema」のレイトショーに行ってきたけど、「まあまあ」でしたね

JBC(日本ボクシングコミッション)に所属せず、海外で活躍するボクサー山口賢一を取り上げた今作。ボクシングファンの間でちょろっと話題になっていた映画である。
そして先日、新宿にある「K’s cinema」でフラッと観てきたのでその感想を。
 
いや、すみません。
嘘つきました。
 
上映が1日2回、12:00と21:00という中途半端な時間なため、とてもじゃないがフラッとは行けない。めちゃくちゃめんどくさかったのだが、どうにか時間を調整して21:00のレイトショーに足を運んできた次第である。
 
 
で、感想としては「まあまあ」
表題の通りなのだが、点数をつけるとすれば5点満点中2点くらい。
 
「休日の前日にたまたまテレビをつけたらやってました」
「ああ、ぼちぼちおもしろかったね」
 
観て損したとは言わないが、わざわざ無理してレイトショーに行くほどではない。
そんな感じのドキュメンタリーだったなと。
 
まあ、自分の中で期待値が高かったせいもあるが。
 
「「はじめの一歩」が酷すぎる。マンガ史に残る汚点。まさか井上尚弥の試合を丸パクリするとは…」
 

ドキュメンタリーとしては純粋に楽しめた。主人公山口賢一が自ら道を切り開く様はなかなか興味深い


まずよかった点についてだが、今作はドキュメンタリーとして純粋に楽しめた。
 
 
主人公山口賢一がタイトルマッチ実現のためにあの手この手を尽くして動き回るわけだが、そのつど組織からの妨害に振り回される様子がおもしろい。
 
OPBFタイトルマッチに出場するにはJBC管轄での活動資格を回復しなければならず、それにはかつて所属したジムの許可が必要になる。だが、ジムの会長は後ろ足で砂をかけるように去っていった山口を目の仇にしており、聞く耳を持たない。
 
仕方ないので話のわかるスポンサーと連れだってかつてのジムに足を運ぶのだが、活動再開を許可する代わりに理不尽極まりない条件を提示されてしまう。
 
正攻法では不可能だと悟った山口は、次はOPBFに直接働きかけることに……。
 
 
といった感じで、タイトルマッチ実現の道を模索していく流れ。
 
現在の山口は現役選手ではあるが、同時にジムを経営しながら若手の指導にも携わる立場。自分1人ならやりたい放題できるが、今後のことを考えるとこれ以上軋轢を生むのは得策ではない。
 
己の道を貫くと決めたものの、どうしても感情は揺れ動く。
思い通りにならない状況に我を失いそうになる山口を周囲が諭したり、自らを奮い立たせたり。
 
同じフリーランスの若手選手をサポートしつつ、道なき道を切り開いて世界戦にこぎつける過程はなかなか興味深いものがあった。
 
「「リクドウ」が井上尚弥vsパヤノ戦にそっくりだったと聞いて。マジか。はじめの一歩だけじゃなく、ここにもアカンことが…」
 
その他、ランキング制度の裏側や試合前の控室の様子など。普段目にすることのない部分を垣間見ることができるのも、今作のいいところである。
 

絵面が地味だよね。あまりに淡々とし過ぎて入ってこないというか

続いて、(僕が)いまいちだ(と思)った点について。
 
とりあえず、絵面が地味
果てしなく地味。
 
何と言うか、全体的に淡々としていてめちゃくちゃ味気ない。
ドキュメンタリーなのである程度仕方ないのかもしれないが、それを踏まえた上で。
 
 
実を言うと、個人的にはもっとジメジメとしたものを想像していた。だが、実際には思った以上にあっけらかんとした内容。もちろんそれが悪いとは言わないが、あまりにも淡々とし過ぎているせいでいまいち引き込まれるものがない。
 
「「ワイルド・スピード/スーパーコンボ」が楽しみでしかない件w ピッコロとベジータの共闘なんて、俺たちが夢見たスピンオフ」
 
上映後に武田倫和監督の登壇があったのだが、彼が言うには山口賢一という選手は非常に魅力的な人間とのこと。サービス精神の塊のような性格で、自然と周りに人が集まるタイプ。監督自身もその人柄に惹かれたのが今作を撮る大きな動機になったという。
 
ただ本編を観る限り、人間山口賢一の魅力を掘り下げるような描写は少ない。どちらかといえば、JBCを始めとするボクシング業界の歪さに焦点を当てた内容が中心となっている。
 

試合のシーンをもう少し増やしてもよかったよね。ド派手なKOや真っ向からの打ち合いでエンタメに振り切れば…


また、試合のシーンが少ないのもだいぶ気になった。
 
冒頭、いきなりJBC時代の山口賢一のKOシーンからスタートするのだが、すっげえ強い。本人もインタビューで言っていたが、27、8歳の全盛期であれば日本王座どころか世界タイトルにも手が届いたのでは? というくらい。
 
なので、もう少し本業にフォーカスしてもよかったのかな? とは思う。
いわゆる「ボクサー山口賢一」がどれだけの実力者だったか。KOや真っ向から打ち合うシーンを増やして華やかさを強調すれば、ここまで地味な絵面にはならなかったのではないか。
 
「映画「銀魂2」感想。前作を超えようとして空回りしまくったな。詰め込み過ぎて食傷気味」
 
人間山口賢一の魅力をとことん掘り下げるか、ボクサー山口賢一にスポットを当ててド派手な作りにするか。どちらか一方に振り切った方が、エンターテイメントとしてはよかったのかなぁと。
 
ラストのWBFタイトルマッチなんて、リングが狭過ぎて完全な泥仕合だったからね。言っても仕方ないけど、あそこまで狭いリングじゃ山口のよさが出せないでしょ。
 
 
というか、監督は再三「山口賢一の人間的な魅力」を強調していたが、正直その辺は僕にはよくわからない。
 
中盤あたりで渋滞中の高速道路の路肩を山口賢一がヘラヘラしながら走るシーンが出てくるのだが、は? 何してんのお前? と。
 
どんな理由があったのかは知らんが、ああいう最低限のルールを破って平然としている人間は個人的に大嫌い。
ジョーシキ()にとらわれずに蔓延するドーチョーアツリョク()とやらに挑むのは大いに結構だが、とりあえずアホでも知ってるルールくらいは守れよってね。
 

そもそも誰に向けた映画だったの? 前提となる知識が高度過ぎて壮絶な置いてきぼりを食う

そして、僕がもっとも気になった点として、誰に向けての映画なのかがよくわからなかったというのがある。
 
武田監督が、
「ボクシング人口はどんどん減っている」
「ボクシング界に快く思われていないせいでこの映画が広まりにくい」
「映画の感想をSNSなどでどんどん拡散してほしい」
と訴えていたが、残念ながらこれは気安く他人に薦めるような映画ではない。
 
理由は単純で、前提となる知識の範囲が広過ぎること。
作中で起きる状況を理解するにはボクシングに関する知識が必須なのだが、それがあまりに高度。
 
 
恐らくだが、ボクシングに詳しくない方がこの映画を観てもポカンとするだけ。
山口賢一がどれだけがんばったか、いかにボクシング界が旧態依然としているか。また、なぜ彼はいきなり呼び出されて脅迫まがいの叱責を受けているのか。
 
根幹をなす部分にまったくついていけず、壮絶な置いてきぼりを食うこと請け合いである。
 
「映画「リアル・スティール」を全力で人におススメする理由。親子愛、恋人、格闘技、ロボット…。近未来版ロッキーの躍動にニヤニヤが止まらないw」
 
マジな話、これはどの客層を想定した映画だったのか。
 
ボクシングの関係者に向けてなのか、それとも僕のようにド平日のレイトショーに足を運ぶようなマニアックな人間を対象としているのか。仮にそうだとしたら、こんな局所的な範囲(この日は10人未満)で共感を得ることにどれだけの意味があるのか。
何とも言えないところである。
 

この映画を観る上で必要な知識はこんな感じ。なお、正しいかどうかについての自信はない

一応、この映画を観る上で前提となる知識は、
・日本のジム制度
・ジムと日本プロボクシング協会、JBCの関係
・JBC公認団体
といったところだろうか。
 
 
まず、日本で滞りなく試合をするには選手はJBC管轄のジムに所属する必要があり、なおかつジム内で一番力を持つのは会長である。
 
そして、興行を打つ際は基本的に所属ジムがプロモーターを兼任するため、会長のさじ加減で選手を優遇することも干すことも可能になる。それだけでなく、移籍を希望する選手の申し出を拒否することもできてしまう状況。
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つまり、今作の山口賢一は所属ジムの待遇に不満を持ち、JBC管轄を飛び出して独立した選手ということになる。
 
 
また、JBCクラブオーナーライセンス保持者(ジムの会長)で構成される「日本プロボクシング協会」なる組織が存在するのだが、これは名目上はJBCとは別の独立組織。
ただ、協会員になるにはJBCクラブオーナーライセンスが必要なため、JBCとは切っても切れない関係。実質JBCの傘下にあると言えるのかもしれない。
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続いて公認団体について。
現在、JBCが公認している世界タイトル統括団体はWBC、WBA、IBF、WBOの4つ。各団体、各階級に王座が存在しており、これが「ボクシングは王座が乱立し過ぎてベルトの価値が下がった」と言われる一番の要因となっている。
 
その他、WBCユースやWBO-AP、OPBFなど、各団体の下部タイトルやアジアタイトルがJBCの認可を受けている。これらは名目上は日本王座の上位に位置し、獲得することで主要4団体の世界タイトルへの挑戦がしやすくなるとされている。
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そして上記4団体のほか、世界にはIBO、WBF、UBO、WPBFといったJBC非公認の団体がいくつも存在する。最終的に山口賢一がタイトルマッチを実現したWBFもJBC非公認の団体である。
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以上を踏まえた上で今作を振り返ると、
 
1.キャリアの集大成としてOPBFのタイトルマッチ実現を目指したが、元所属ジムの承諾を得られずJBC復帰を断念
2.JBC非公認団体であるWBFの世界王座が空位であることに気づき、自らオファー→タイトルマッチの許可を取りつける
3.ジムの会長連中で構成される日本プロボクシング協会が、山口賢一の独自興行を快く思わず圧力をかけた
 
といった流れになる(と思う)。
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いやいや、誰がこんなややこしいこと知ってんだよww 主要4団体をテニスのグランドスラムに置き換えるとわかりやすい?

マジな話、こんなややこしい事情を把握しなければならない映画など、他人に薦められるわけがない。
「ドラマ未視聴の方はこの映画は理解できない」パティーンと同様、あまりに不親切かつハードルの高い話である。
 
 
てか、興味がない人はJBCとWBCの違いどころか、K-1とボクシングの違いすらわからんでしょ。
武田監督も「最初はすべてを理解できたわけではないのですが」と言っていたが、うん、それが普通ですよ。
 
そもそも論として、僕も上記の理解で本当に正しいかどうかは自信がない。
しかも、少しでも間違うと、その瞬間に「いや、ちげえしww」「わかってねえなオイww」といった嘲笑が飛んできそうな雰囲気すら感じる(偏見)。
 
 
たとえばだが、世界王者をテニスのグランドスラムになぞらえると、多少はイメージしやすくなるかもしれない。
 
4大大会(全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン、全米オープン)を主要4団体(WBC、WBA、IBF、WBO)と考えて、各大会の優勝者を強引に「世界王者」と呼んでいる状況。全員がおかしなことだとわかってはいるが、やはり「世界王者」という肩書きの持つ魔力には抗えないよね。みたいな。
 
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まあでもアレだ。
難しいっちゃ難しいよな。
 
あまり説明を増やすと説教臭くなるし、まったく触れないわけにもいかない。とはいえ、どのみち2時間弱ですべてを語るのは不可能。
 
題材としてすばらしいとは思うが、マニアックな分扱いにくい。
それを無理やり両立しようとした結果、どっちつかずのモヤっとした作品になったってことかな。
 
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