言うほどいい試合かこれ? 長谷川穂積がウーゴ・ルイスにTKO勝利で5年ぶりの王座奪取!! すまん長谷川、あんまり感動せんかった【結果・感想】

NO IMAGE

日没海イメージ
「ボクシング記事一覧リンク集」へ戻る

2016年9月16日にエディオンアリーナ大阪でWBC世界S・バンタム級タイトルマッチが行われ、元世界2階級王者でランキング5位の長谷川穂積が同級王者ウーゴ・ルイスに挑戦。9R終了TKOで勝利を挙げ、5年5ヶ月ぶりに世界王座に返り咲いた。

「負けたら引退と決めていた」とのコメント通り、背水の陣で挑んだ長谷川穂積の通算16度目の世界戦。序盤4Rまでは公開採点でリードを許すものの、試合中盤以降リズムを掴んで盛り返し、見事に9Rに王者ルイスのギブアップを呼び込む。

「神の左()炸裂でモレノを撃破!! 山中慎介が宿敵とのリマッチを制して11度目の防衛に成功!!」

かつて日本ボクシング界のエースに君臨し、5年以上王座から遠ざかった今もなお「チャンピオン」と呼ばれるほどの輝きを見せるカリスマサウスポー長谷川穂積。ついに悲願の3階級制覇を果たし、ボクシングファンの感動を生んだ1戦である。

「長谷川穂積のベストバウトはあの試合だろ? 壮絶な打撃戦の最中に長谷川を覚醒させ、その後の道すじを決定した7R」

申し訳ないです。そんなにいい試合に思えませんでした……

最初にお断りしておくが、僕はこの試合を観たのが深夜の録画放送である。しかもその時点ではすでに結果を知っており、どのラウンドでどんな形で決着がついたかも見聞きした状態での視聴だった。
要するに、通常とは若干異なるテンションでこの試合を観たわけである。

と、ここまで思いっきり予防線を張った上で申し上げたいのだが、

この試合ってそこまでよかったか?

もちろん長谷川穂積の勝利が大きな感動を生んだことは知っている。会場で生観戦した方、スカパーで視聴した方。多くの方が長谷川穂積の勝利に熱狂し、「魂のボクシングを見せてもらった」という絶賛の声は、僕の耳にも聞こえてきていた。

逆にそのせいで期待が高まり過ぎたのかもしれない。
深夜の時間帯ということで、脳みそがフワフワしていたこともあるのかもしれない。

「ミラン・メリンドが一か月で? 八重樫に挑戦? マジかよそれこそ本物の激闘王じゃねえかww」

ただ、残念ながら僕はこの試合にあまり感情移入することができなかった。

もちろん日本ボクシング界のカリスマである長谷川穂積の勝利はすばらしい。3階級制覇を達成したことも、35歳という年齢で返り咲いたことも全部すばらしい。

それを踏まえた上で、
「バッティングだらけのただの泥試合」
というのが僕の率直な感想である。
ファンの方には本当に申し訳ないのだが。

「ウーゴ・ルイスに挑戦! 長谷川穂積最終章開幕。ラストファイトか? 大阪で引退をかけて3階級制覇へ」

9R終了ウーゴ・ルイス棄権により、長谷川穂積のTKO勝利。

再三のバッティングで鼻がおかしくなっていたところに、9Rの打ち合いでとどめをさされた。
ルイス棄権の真相は恐らくこんなところだろう。

あれを「ルイスは気持ちが弱い」と言うのか、怪我の状況を考えれば仕方なかったのかは何とも言えない。
だが、結論としては「バッティングだらけの泥試合の末に負傷ギブアップ」というのがファイナルアンサーなのではないだろうか。

「リナレスがクローラに勝利!! 才能が凡人の努力をあっさり凌駕する」

長谷川穂積はいつも通りのカウンターの1発狙い。え? 長谷川にアウトボクシングなんかできるわけねえじゃん。というか、それやると君ら怒るじゃん

長谷川穂積の動きは本当にいつも通り。
前手の右を小刻みに動かし、距離とタイミングを測ってステップイン。
1、2発のパンチを打ち込み、頭を下げてまっすぐ下がる。
瞬間的にサイドにステップして頭の位置を変える。
ルイスの右の打ち始め、打ち終わり、パンチの戻り際。
打ち込むタイミングに多少の違いはあるものの、基本的にやっていることはこれだけである。

「覚醒した田中がフエンテスに圧勝!! “中京の怪物”が絶不調のフエンテスを5RKO」

あの細かく動かす右がウーゴ・ルイスの左を封じ、得意のワンツーの発動を遮断する効果を発揮していたことは確かだが、正直それを長谷川本人が意識してやっていたかは定かではない。なぜならいつも通りだから

だが、あの小刻みな右によってワンツーを封じられたルイスが攻撃の手を狭められたこともまた事実である。
左を封じられたせいで、ルイスは初弾から右を打ち込まざるを得ない。しかも長谷川のステップインのスピードについていけずに身体が硬直して、思うようなパンチが出せない。
結果的にステップインした長谷川の打ち終わりを狙う以外にできることがなくなり、単調な試合がさらに単調になっていったのである。
 
「海外挑戦にはインパクトのあるきっかけが必要なのかね? NHK BS1「あの負けで私は強くなった「ボクシング・長谷川穂積」」を観て」
 
「12R動き回ってアウトボクシングをし続けろ」
「距離をとって勝利を最優先したボクシングを貫け」

今回の試合前にこういった言葉を多く聞いた。
だが、長谷川穂積にそんなことが不可能なのは明白である。

以前にも申し上げたように、長谷川穂積という選手はアウトボクサーではない。相手の攻撃を紙一重で見切り、自分のパンチだけを当てるカウンター使いである。
上体の動き、前後の動き。
防御勘とスピードを最大限に活かした至近距離での打ち合いが得意なボクサーファイターである。
そんな選手に、冷静に距離をとってアウトボクシングなどという芸当ができるわけがない。
 
「ラフファイトとか体重超過とか、別にアリだよな? というお話」
 
むしろ、ウーゴ・ルイス相手にフルラウンドアウトボクシングをやりきったのは亀田興毅である。
しかも君ら、アウトボクシングで勝利した亀田興毅にキレてたじゃないっすか。「亀田は何もしていないのに勝利した。あの判定は八百長だ」って怒ってたじゃないっすか。

それを長谷川穂積には「アウトボクシングしろ」って、ちょっと変じゃないっすか?

「亀田兄弟の今後が見えた? これが亀田の進む道。日本ボクシング界の常識をひっくり返せ」

才能とセンスは本当にすごい。マジでリゴンドーになれたんじゃないのか?

タイミングを測り、ステップインして数発のパンチを打ち込む。
打ち終わりに相手のパンチを紙一重でかわし、バックステップで距離をとる。相手が攻撃姿勢に入ったときにはすでに目の前から消えている。
これが長谷川穂積のボクシングであり、身体能力と勘のよさを最大限に活かしたカウンタースタイルである。
 
「レイ・バルガスvsロニー・リオス予想。亀海vsコット、マクレガーvsメイウェザーもいいけど、この試合も楽しみ」
 
逆に言うと、「身体を振ってジャブを突いて左右に動いてアングルを変えながらじっくり距離を詰めて〜」という過程をすっ飛ばした怠け者ボクシングとも呼べるわけで、このスタイルを好きではない人は一定数存在するのではないだろうか。

そして、これも再三申し上げているように、このスタイルは身体能力に頼る部分が大きいために劣化のスピードが速い。好不調の波が激しく、試合ごとラウンドごとに出来不出来が入れかわる不安定さと隣り合わせなのである。
しかも、キャリア後半になればなるほどその傾向は顕著になり、観る者をハラハラさせるのだ。

「安定王者へまっしぐら? ハスキンスがスチュアート・ホールに判定勝ち!!」

だが、絶好調時の動きはやはり特筆もので、切れ味鋭い刃物のようなカウンターはこれまで見たこともないほどの輝きを放つ。

スピーディなステップインから左をヒット。そこから相手の反撃を紙一重でかわし、バックステップで距離をとる。

今回の試合でも時おり見られた動きはまさしく全盛期のそれで、本当に才能とセンスだけならこの15年でもダントツの日本一ではないかと思わせるほどだった。

仮にこの選手が勝利だけを追求するようなメンタルを持ち合わせていれば、もしかしたらギジェルモ・リゴンドーになれたのではないだろうか。そんな妄想をしたくなるほどの凄まじい才能ではないかと思う。

そして、多くのオーディエンスは長谷川穂積の魅せる一瞬の煌めき、それと隣り合わせの不安定さに魅了されるわけである。
 
「岩佐vs小國を予想してみる。自信ないけど、岩佐のワンサイドでいいんじゃない? 赤っ恥覚悟の強気予想だけど」
 
ちなみにだが、今回の試合での長谷川穂積の調子は、まあ「普通」だ

ステップインのスピードも普通。
見切りのよさも普通。
バックステップのレンジも普通。

そして、パンチを被弾して我を失うのも普通
恐らく9Rの打ち合いでルイスに打ち勝ったところがこの試合のハイライトだと思うが、あれはある意味相手がルイスだったから打ち勝てたシーンである。

あの打ち合いはルイスの直線的で力任せの大振りラッシュだったからこそカウンターを合わせられたのであって、たとえばあれがキコ・マルティネスだったらそうはいかない。
至近距離でもガードを上げて頭を振り、攻防の流れを意識しながらパンチを出すキコ・マルティネスであれば、あのシーンは間違いなく逆の結果になっていたはずである。

「サンタクルスがキコ・マルティネスにKO勝利!! インファイターのマルティネスを5Rで沈める」

やっぱりバッティングのアピールって冷めるんだよね。長谷川だろうが関係なく

そして、僕が今回の試合が微妙だったと感じる一番大きな理由が、バッティング後の長谷川のアピールであり、それに同調する会場の雰囲気である。

「顔面崩壊で完敗和氣。ダメだ、全然感動しなかった…。グスマン4度のダウンを奪い世界タイトル獲得!!」

再三のバッティング、さらにルイスが長谷川の足を踏むたびに両者の動きが止まり、会場からはルイスへの容赦ない罵声が飛ぶ。

だが、あれはどう見てもしょうがない。
ウーゴ・ルイスという選手は左右への動きには滅法弱く、相手と正対してこそ強さを発揮するタイプである。しかも長谷川の作戦は相手と正対した状態からステップインしての1発狙いのみ。
当然ルイスはそのステップインに合わせて打ち終わりを狙うのだから、両者の頭が当たりやすいのは必然である。もちろん足を踏んでしまうこともある。

あんなことでいちいちカリカリしてたらボクシング観戦なぞやってられないし、試合も止まっていないのにバッティングをレフェリーにアピールする長谷川もいただけない。

というか、何度もレフェリーが両者に注意を促していたが、あれはマジでどうなんだ? 僕には長谷川が地元采配に守られているという印象しか受けなかったのだが。

「いいじゃん亀田和毅。そうそう、これをやって欲しかったんだよね。エドガー・マルティネスを1RKO」

幻想の世界で生き続ける正義のヒーロー。それが長谷川穂積だ

再三のバッティングアピール。
足を踏まれるたびに試合を自ら止めてしまうメンタル。
さらにラウンド開始時に必ず行うグローブタッチ。

恐らく長谷川穂積という選手は夢の世界の住人なのだ。
幻想の世界で生き続け、自身の理想とするヒーロー像を追う。正々堂々と真正面から相手に立ち向かい、全力をもって相手に勝つ。卑怯な手など絶対に使わない正義の味方。

「亀田和毅は日本ランカーと試合しなさい。協栄ジムで練習しなさい。いやいや、なぜそんなことが言えるの?」

いわゆる勝利優先の現実路線を選択する選手とは真逆のボクサーであり、この選手の試合が多くの人の心を打つのもそのせいなのだろう。
加えて、一瞬の隙をついて切れ味鋭いカウンターを打ち込むスタイル。居合い抜きというか、静から動への瞬間的な迸りというか。
それらの要素が相まって、この選手のわけのわからないカリスマ性を生み出しているのである。
僕は別に好きでも嫌いでもないが。

「コバレフvsウォード予想!! PFP最強を賭けた2016年最大のメガマッチ!!」

まあ、もともと僕はこの試合が決まった経緯にも納得していなかったし、試合前に左の拳を怪我していたという話を聞いたときも「何じゃそりゃ」と思ってしまった人間である。

確か井上尚弥が腰や拳を痛めたことに「コンディション管理がなっていない!!」と憤っていた方がめちゃくちゃ多かったと記憶しているが、今回の長谷川穂積は別にいいのか?
そもそも以前にも試合前に足首の靭帯を断裂したとか言ってなかったか?
本当によくわからん。

「井上尚弥がペッチバンボーンに10RKO勝ち!! 井上が何者なのかがいまだに謎…。すごいのはわかるんだが」

要するに「長谷川穂積だから」ですべてが解決するということなのだと思うが。

とはいえ、何だかんだで3階級制覇は素直にすごいことだし、どんな試合内容だろうがお見事だったことに変わりはない。そもそも今回は日本でレイ・バルガスを観るための当て馬として長谷川穂積を応援していたわけで、そういう意味でも万々歳の結果である。

「レイ・バルガスがムニョスに勝利し、また一歩王座へ近づく。でも見た目ほど圧勝じゃなかったな」

「ボクシング記事一覧リンク集」へ戻る


 

 

 

【個人出版支援のFrentopia オンライン書店】送料無料で絶賛営業中!!