エイドリアン・ブローナー完勝!! アーラフベルディエフをスピードとテクニックで圧倒して12回TKO勝ち!! WBA世界S・ライト級王座獲得

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浜辺イメージ
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ブローナーがアーラフベルディエフを圧倒!! S・ライト級王座を獲得する!!

2015年10月3日(日本時間4日)、アメリカ・オハイオ州のUSバンク・アリーナでWBA世界S・ライト級タイトルマッチが行われた。

ランキング2位のエイドリアン・ブローナーが同級5位のカビブ・アーラフベルディエフを12R、2分23秒でTKOで下し、新チャンピオンの座についた。

「村田諒太の課題が見えた? 実力は? ガナー・ジャクソンに判定勝ちでラスベガスデビュー戦を飾ったものの、派手なKO勝利とはいかずにアピール不足か」

ショーン・ポーターvsキース・サーマンなくなってるじゃねえか!!

正直に言うと、この試合にはあまり興味がわかなかった。
アーラフベルディエフではどう考えてもブローナーには敵わない。ジェシー・バルガスにもスピード負けしていたし、ブローナーの動きについていけるはずがない。
特別突進力があるわけでもないので強引にインファイトに持ち込むこともできない。恐らくブローナーのスピードに翻弄されて徐々に手が出なくなったところで、ガードの間を打たれまくる。
防御に偏重しながらピンポイントでカウンターを打ち続けたブローナーが大差判定勝ち。こうなるとしか思えない試合だった。

「テレンス・クロフォード防衛!! ハンク・ランディを5RでKOに沈める見事な勝利!!」

元はといえばこの試合はショーン・ポーターvsキース・サーマンの試合とのダブルメインで行われると言われていた試合だったのだ。
それが実は正式決定ではなく、いつの間にかなくなっていたのである。
ショーン・ポーターvsキース・サーマンの一報を聞いたときは非常にワクワクして偉そうに予想記事まで書いたのだが、まさしく赤っ恥である。

「キース・サーマンvsショーン・ポーター予想!!」

毎度思うのだが、ボクシング界のこの交渉期間の長さはどうにかならないものだろうか。散々やきもきさせた結果、決裂というパターンがあまりに多すぎる。

序盤でアーラフベルディエフの動きを攻略したブローナーが優位に試合を進める

展開としては予想通りといえば予想通りだったのだが、この日のブローナーの動きは本当によかった。

1、2Rは左で距離を測り、アーラフベルディエフのパンチの伸びや軌道をインプットする。
時折鋭い飛び込みからの右でアーラフベルディエフの顔面を軽くヒットし、すぐに飛び退く。アーラフベルディエフが出てくれば大きくバックステップして距離をとる。
左を出しながらダッキングでサイドにステップして身体を入れ替える動きも健在だ。斜めに身体を傾けながらアーラフベルディエフの右をかわし、スマッシュ気味のショートアッパーで迎撃。この日のブローナーには一瞬一瞬の動きにキレと閃きが感じられた。

「ケル・ブルックvsディエゴ・チャベス予想!!」

立ち上がりの1、2Rでほぼアーラフベルディエフの戦力インプットは完了したのだろう。3Rに入るとブローナーが徐々にアーラフベルディエフのパンチにカウンターを合わせ始める。
いや、カウンターというよりパンチの速度で圧倒すると言った方が正しいか。アーラフベルディエフがモーションに入った瞬間、軽いジャブで顔面を捉えるのだ。

「ピーター・クイリンvsダニエル・ジェイコブス予想!! 注目の強打者、ブルックリンの友人対決!!」

対するアーラフベルディエフはブローナーの動きについていくことができない。
頭を振りながら前進するアーラフベルディエフだが、ブローナーのパンチの早さに徐々に手が出なくなる。先に手を出しても、ブローナーのパンチの方が先に到達する。
さらにガードを固めて後退すれば、ブローナーのいきなりの右が飛んでくる。意を決して前に出てもL字ガードと上半身の動きに阻まれ、クリーンヒットを奪うことができない。

マイダナほどの突進力もなければ、ブローナーのガードを突き破るほどのハンドスピードもないアーラフベルディエフ 。サウスポーである利点を活かしたいところだが、今日のブローナーにはまったく通用していない。

手も足も出ないアーラフベルディエフ。ブローナーの動きが冴えわたる

5R以降は完全にブローナーが試合を掌握する。
手の出なくなったアーラフベルディエフに左、右と立て続けにヒットし、右をバックステップでかわしながら右のカウンター。顔面だけでなく、ボディにも的確にパンチをヒットさせていく。至近距離で打ち合っても当たるのはブローナーのパンチのみ。たまらずアーラフベルディエフがサイドステップで左に回ろうとすれば得意の左ショートフックで迎撃。ロープ際でのブローナーのボディワークも冴えわたる。

一方のアーラフベルディエフ。
手を出せばブローナーのカウンターの餌食になり、ガードを固めてもピンポイントで打たれる。至近距離でも打ち負け、距離をとれば踏み込まれて被弾する。翻弄されまくって手も足も出ない状況。もはや完全に詰んでいる。

打たれ疲れたアーラフベルディエフ。できればブローナーは倒したいところだが……

8R以降、アーラフベルディエフにやや疲れが見え始める。
対するブローナーは依然として絶好調だ。完全に距離を支配し、自由自在に出入りを繰り返す。序盤はまれにアーラフベルディエフのパンチをもらうシーンが見られたが、今ではすべてのパンチを余裕を持って見切っている。

こうなると後はブローナーのKOを期待したいところだが、基本的に後ろ足に重心を乗せて防御を意識した打ち方なので致命的なダメージを与えるのは難しい。細かいパンチを当てながら安全運転でラウンドを消化し、いいタイミングでパンチが入ればあわよくば倒せるかもという考えなのだろう。
9Rに右のショートアッパーが絶妙のタイミングでアーラフベルディエフのアゴを捉えたが、そこから畳み掛けるほどのダメージではなかった。

11Rにアーラフベルディエフが勝負を賭けて前に出るが、ブローナーは落ち着いて対処する。
頭を下げて両フックを振るうアーラフベルディエフにブローナーも応戦。パンチの正確性、スピードで圧倒するブローナー。打ち合いの中でアーラフベルディエフの顔だけが弾ける。そしてアーラフベルディエフが後退。決死の攻めも今日のブローナーには通じない。
いや、今日のブローナーは本当に強い。

ブローナーのバンテージがはがれて試合が中断したのもアーラフベルディエフにとっては痛かった。ここからというところでプッツリと流れが途切れてしまった。

ブローナーのラッシュでアーラフベルディエフがついに力尽きる

そして最終12R。
ブローナーのカウンターが立て続けにアーラフベルディエフの顔面を捉える。
2人の距離が詰まり、ブローナーの右から始まるラッシュでアーラフベルディエフの動きが止まる。さらに追い打ちをかけるブローナー。アーラフベルディエフがバランスを失ったところでレフェリーが試合を止める。
12R、2分23秒でブローナーのTKO勝ち。
WBA世界S・ライト級の王座を獲得に成功した。

今日はブローナーの日。本気になったブローナーは強かった

ほぼ完璧なブローナーの試合だった。
自分が有利になると相手をなめる悪い癖のあるブローナー。この辺は少しザブ・ジュダーとかぶるのだが、この日のブローナーはその心配もなく最後まで集中力を切らさずに戦っていたと思う。

そしていつも思うのだが、このボクサーは最終ラウンドになるとそれまでよりも強めのパンチを打ち込んでくるように見える。
ナックルを固めて、力を入れたパンチで襲いかかるのだ。KO狙いで盛り上げるためなのかはわからないが、突然パンチの強度が上がることで対戦相手は戸惑うのではないだろうか。

「ビクトル・ポストルやべえ!! 強いボクサー見つけた!!」

もう一度言うが、この日のブローナーは本当に強かった。
結果が見え過ぎてあまり期待していなかったが、結果的にブローナーの強さを十分楽しめた試合だった。

「ブラッドリーvsリオス予想!! 危険なインファイターを迎え撃つブラッドリー。打ち合い必至のサバイバルマッチを制するのはどっちだ?」

実際はどうだかはわからないが、この試合に向けてものすごく練習を積んできたのではないだろうか。
前回のポーター戦に敗れたことで自身の商品価値に危機感を感じたのだろう。圧倒的な差を見せつけて勝たなくてはならないという決意のようなものが感じられた。

「ショーン・ポーターがブローナーを12R判定で下す!!」

本人はウェルター級を主戦場としたいのかもしれないが、どう考えても適正階級はS・ライト級だろう。やはり相手に身体負けしない階級でやれるのは大きい。

ブローナーの理想形はバーナード・ホプキンス。メイウェザーではない

メイウェザーの再来といわれたブローナーだが、広いスタンスで踏ん張って構えるために思ったよりもフットワークが使えない。これがメイウェザーとの決定的な違いなのだが、ブローナーがインファイターを苦手とする大きな要因の一つでもある。
さらにウェルター級としては身体の線が細すぎるため、ショーン・ポーターやマルコス・マイダナのような突貫ファイターの突進を受け止めることができなかったのだ。

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また、踏み込みが鋭いタイプやストレートがまっすぐに伸びるタイプにも苦戦するのではないだろうか。例えばマニ―・パッキャオ。もしくは、ちょっと古いがフェリックス・トリニダードやオスカー・デラホーヤなどだろうか。上述のジェシー・バルガスでもいい勝負ができるように思えるが、ブローナーをつかまえるにはもう少しスピードと積極性が欲しいところではある。

前にも言ったのだが、ブローナーはもっとスタンスを狭めてリラックスするべきではないかと思っている。今のように足を広げて踏ん張ったスタンスだと、本人のポテンシャルを活かしきれないと思うのだ。
上半身の柔らかさとL字ガードを駆使した抜群の防御勘はわかるのだが、あのスタンスだとどうしてもフットワークは鈍る。しかも後ろ足に体重がのった状態でパンチを出すことが多いので、いまいちパンチに迫力がないのだ。
キレとスピードは文句なしだが、よほどいいタイミングでもらわない限り倒されることはないと対戦相手には思われているのではないだろうか。突進力のあるファイターであればなおさらである。

ブローナーが天才であることに異論はないが、残念ながらスペシャルではない。
これも前に言ったのだが、ブローナーはせいぜいスピードがあってイキっているデビッド・リードだ。
この程度の才能で、メイウェザーやロイ・ジョーンズのようなスーパーマンの真似をしてはいけないのである。現実を直視して、素直にバーナード・ホプキンスのような省エネスタイルを目指せばいいのだ。そうすればS・ライト級で敵なしになれるはずだ。

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