映画「ブラック・クランズマン」感想。スパイク・リーとかいうYouTube最強投手。こいつ、30年間ず~っと「ブラック・パワー」言うとるな

映画「ブラック・クランズマン」感想。スパイク・リーとかいうYouTube最強投手。こいつ、30年間ず~っと「ブラック・パワー」言うとるな

コロラド州イメージ
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映画「ブラック・クランズマン」を観た。
 
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「ブラック・クランズマン」(2018年)
 
1979年、ロン・ストールワースはコロラド州の警察署で初の黒人刑事として採用された。小さいころから警察にあこがれていた彼は、他の白人刑事から冷遇、嫌がらせを受けながらも前向きに捜査に精を出す。
 
ある日、白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)のメンバー募集広告を目にしたロンは電話口で黒人差別をまくしたて、勢いで入団面接にまでこぎつけてしまう。
 
だが、黒人であるロンはKKKのメンバーと顔を合わせることができない。そこで同僚刑事でユダヤ人のフリップに潜入捜査の協力をしてもらうことに。
 
これにより、電話をするのはロン本人、KKKのメンバーと会うのはフリップという、2人で1人を演じる奇妙な潜入捜査がスタートする。
 
 
そして面接当日。
待ち合わせ場所でフリップを出迎えたのは、KKKコロラドスプリングス支部メンバーの1人であるフェリックス。彼は黒人と同じくらいユダヤ人を嫌う武闘派で、フリップの出生にも容赦のない疑いをかける。フリップの言動、しぐさに逐一目を光らせ、ことあるごとに薄笑いを浮かべながら彼を問い詰めるのだが……。
 
 
かつて黒人刑事がKKKに潜入捜査したという実話をもとに、「ドゥ・ザ・ライト・シング」「マルコムX」のスパイク・リー監督が製作、共同脚本を兼ねて映画化した作品。2018年アカデミー賞で6部門にノミネート、脚色賞を受賞している。
 
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よくも悪くもスパイク・リーだった。あまりこの人の作品が刺さらないんですよね…

スパイク・リー監督の自信作ということで、それなりに期待していた今作。
 
たまたまタイミングが合ったので映画館に足を運んだのだが、なるほど。よくも悪くもスパイク・リーというか、想定の範囲内というか。予告動画を観て多少期待はしていたのだが、はっきり言って意外性は皆無。全体を通して「ですよね~」「そうなりますよね~」といった感想である。
 
いや、当たり前だがこの映画をおもしろいと言う方を否定するつもりはない。
主要なレビューサイトを見ても概ね5点満点中3.5~4.5点前後と高評価が並ぶ。中には「スパイク・リー監督の最高傑作」「凄まじいものを観てしまった」といった大絶賛のコメントも散見され、人種差別に対する怒りと強烈な皮肉を描いたスパイク・リーの作風が多くの方に支持されていることを改めて確認できた次第である。
 
要は、単に僕がこの人の作品にあまり刺さらないというだけの話。
デビュー作の「ドゥ・ザ・ライト・シング」もいまいちだったし、代表作である「マルコムX」も「お、おう」という感じ。
 
「映画「ドゥ・ザ・ライト・シング」。人種問題に切り込んだ? 他人の考えを許容できない器の小さいバカどものなれの果て」
 
「マルコムX」に関しては長過ぎてダレた部分もあるが、似た系統の作品であれば個人的にはエドワード・ノートン主演「アメリカン・ヒストリーX」を推したい。

 
荒れた生活を送っていた主人公が刑務所で改心し、出所後に様変わりした姿を見せる。始めは周囲の人間も戸惑うものの、徐々に彼の思いの強さに影響されて変わっていく。
だが、突如として大事な人(自分)が殺され、問題の根深さ、現実の非情さを突きつけられる。
 
どちらの作品も流れとしては同じだが、やや冗長な「マルコムX」と違って「アメリカン・ヒストリーX」には無駄な部分がほとんどない。
 
「いくら憎んでも答えは出ない」
「怒りは君を幸せにしたか?」
 
校長先生のこのセリフはなかなかくるものがあったよね。
 
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コメディ色の強い映画だと思っていたら違いました。軽いタッチにしようという意図はわかったけど、微妙にズレてる

思いっきり話が逸れたが、具体的な映画の感想について。
 
実を言うと、僕はこの映画をコメディ色の強い作品だと思っていた。
 
アフロ頭の黒人がいきなり「俺は黒人が嫌いだ」「白人のアメリカ万歳」と電話口で喚き散らす。それに対し、電話の相手が「私にはわかる」「君は完璧な白人だ」と答える。
その光景をブラックミュージックをバックにコミカルなナレーションで見せられれば、そう思うのも仕方ないのではないか(僕だけ?)。
 
しかも、監督によると「人種差別という重いテーマをそう感じさせず、全体を通して軽いタッチで描いた」とのこと。
 
なるほど、これは期待していいのか?
「ドゥ・ザ・ライト・シング」は観たことを後悔するくらいに胸糞の悪さが残ったが、今回はそうでもないのか?
よし、時間もできたしちょっと観に行ってみるか。
 
そんな感じで映画館に足を運んだのだが、全然違ったなぁと。
 
「感想「ウトヤ島、7月22日」とかいう実写版コール・オブ・デューティ。72分間ワンカットって自己満にしか思えないんだよな」
 
実際にはコメディパートらしきものはほとんどなく、終始シリアスな雰囲気のままストーリーは流れる。
 
KKKの過激派フェリックスに追い詰められるフリップと、それをなだめる支部長のウォルター・ブリーチウェイ。立場はウォルターの方が上だが、彼はメンバーの暴走をうまく抑えることができない。その様子からも、この組織が決して一枚岩ではないことがうかがえる。
 
危ういバランスの上に成り立つKKKメンバーに囲まれ日々を過ごすフリップを尻目に、ロン本人はパトリスお姉さんと楽しくデート中。
「潜入捜査」とはいうものの、危ない橋を渡るのは常にフリップの役目。ロンはパトリスと一緒にいるところをフェリックスに見られたりと、むしろ足を引っ張っているのではないかと思うほど。
 
テーマ、切り口はいいのだが、こういったちぐはぐさが目につくせいで感情移入しにくい。
なるべく重い空気を出さないようにという意図はわかるのだが、な~んかズレてる。
 
もっと言うと、この設定、このスペックでコメディ色を強めないでどうする? という思いもあったりなかったり。
 
 
てか、スパイク・リーって30年間ず~~っと「ブラック・パワー!!」「ホワイト・パワー!!」言うとるよな。過去から現在において人種差別問題がまったく終わっていないことの証左なのかもしれないが、どの作品を観ても(そんなに観てないけど)結局はそこに着地するパティーン。
 
「マルコムX」のデンゼル・ワシントンから親子二代で「ブラック・パワー」言い続けとる。

 

スパイク・リーはYouTube最強投手。ハイライト動画だけならめちゃくちゃ視聴意欲をそそられる

そう考えると、やはりスパイク・リーはYouTube最強投手だよなぁと。
 
いわゆる「昔のピッチャーのハイライト動画を観ると、めちゃくちゃすごく思える」現象。ハイライトだけなら凄まじい選手に感じるが、生涯成績や細かい部分を見ていくと実はそこまでではない。僕の中では江川卓がそれに当たるのだが、スパイク・リーはまさに映画監督版江川と言える。
 
いや、マジでそう思いません?
 
↓「ドゥ・ザ・ライト・シング」予告

 
↓「クルックリン」予告

 
動画だけを観るとめちゃくちゃ視聴意欲をそそられる
まあ、予告動画なので当たり前と言えば当たり前なのだが、スパイク・リー作品は特に顕著(な気がする)。
 
逆に予告動画ではそうでもなかったけど、本編を観て度肝を抜かれたのが「42 ~世界を変えた男~」

以前に申し上げたが、この作品はマイ・フェーバリット・ムービーのベスト3に入るくらいよかった。

 
もちろんこれも僕の独断と偏見なので、誰かに強要する気はございません。
 
「「東のエデン」感想。自民党政権をぶっ壊して日本を立て直す救世主たらんことを」
 

フリップが自らのアイデンティティを意識する部分は共感できた。憎悪と向き合い、自分の価値観を見直す


なお、この作品で僕が共感できた数少ない部分は、アダム・ドライバー扮するフリップが自らのアイデンティティを意識するシーン。
 
KKKメンバーの容赦ない白人至上主義、黒人やユダヤ人に対する傲慢な偏見を目の当たりにして、フリップの中に複雑な感情が芽生える。
フリップはこれまで自らの出生、アイデンティティについて深く考えたことはなく、強い主義主張を持っているわけでもない。だが、白人至上主義の扇動メンバーの目に余る言動、行動は、彼に自分の中に流れるユダヤ人の血を意識させるきっかけを与えてくれる。
 
 
これねえ……。
わかる気がするんですよね。
 
アダム・ドライバー本人もインタビューで「憎悪と直接向き合うことは自分の価値観を見直すきっかけになる」と答えているし、あまりに衝撃的な事象に直面すると価値観が変わるというのは普通にあるのだと思う。
 
「「未来のミライ」感想。芸術的にクッソつまらんのだが。くんちゃんウザ過ぎワロタw デキる母親鼻につき過ぎワロタw」
 
ちなみにだが、僕が自分の出生を意識するきっかけとなったのは2011年に起きた東日本大震災。
正直、それ以前は自分の出生や住む国がどうか? といった話にあまり頓着がなく、選挙に行くのも「めんどくせえなあ」と思うことも多かった。
 
だが、あの震災で多くの命が失われ、自分もその中の1人になり得る現実を目の当たりにしたことで考えが少し変わった。
 
自分が日本人であること、突然生命の危機に直面する可能性があることを強く意識し、政治や日本の情勢にも関心を持つべきだと思うようになった。
もちろんまだまだ未熟な人間には違いないが、日本という国が少しでもよくなればいいと願いつつ、日々の生活を送っている次第である。
 
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