ダークヒーロー・バルテレミーが曲者ミッキー・ベイに完勝!! 文句なしの最強だけど不人気。孤高の長身ボクサーファイターが圧勝防衛【結果】

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フロリダイメージ
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2016年6月3日(日本時間4日)に米・フロリダ州ハリウッドで行われたIBF世界ライト級タイトルマッチ。
王者ランセス・バルテレミーが同級11位の挑戦者で元王者のミッキー・ベイと対戦し、2-1(117-110、116-111、111-116)の判定でバルテレミーが王座防衛に成功した。

ミッキー・ベイの返上したタイトルをデニス・シャフィコフとの決定戦を制して獲得したバルテレミー。自分の持っていたタイトルに再び名乗りを上げたベイを退けることができるかに注目が集まった試合だったが、結果はバルテレミーが貫禄勝ちを収める。

終始プレシャーをかけ続け、ディフェンシブな挑戦者のガードを再三打ち破るさすがの展開。途中バッティングによるスリップをダウンと判定されてしまう不運な面もあったが、ボクシングのクオリティ、引き出しの多さでメイウェザーの秘蔵っ子を寄せ付けずにバルテレミーが文句なしの勝利を挙げた試合である。

さすがの実力者バルテレミー。ミッキー・ベイのディフェンスを突き破る

僕のオススメボクサーの1人であるランセス・バルテレミーの防衛戦。
確かな実力を持ちながらその見た目とファイトスタイルのせいで絶望的に人気が出ないことが容易に想像できるダークヒーロー。
いずれは中量級最大のホープであるフェリックス・ベルデホとの一戦をひそかに期待しているのだが、果たしてどうなるか。

「バルテレミーは強いし上手いぞ!! 内山も三浦も助かったな」

ベルデホの相手がつとまるほどの知名度と人気を得られるか、それとも危険度だけが高く、身入りの少ない不人気王者として避けられてしまうのか。エリスランディ・ララやリゴンドーを初め、絵にかいたような不人気スタイルというイメージの強いキューバのボクサーの中で頭1つ抜け出ることができるか。そういった点も含めてこの試合には注目していた。

「フェリックス・ベルデホがボクシング界を背負う?」

ただ、今回の相手もまた知名度的にはいまいちのミッキー・ベイ。
実力は申し分ないが、派手さや華やかさといった面では「地味」のひと言である。

正直ミッキー・ベイのことはあまり知らなかったのだが、何試合か観た限りでは身体能力の低いエイドリアン・ブローナーとでも言えばいいだろうか。メイウェザー・プロモーションズ所属ということで、いかにもメイウェザーが好みそうなディフェンシブな選手である。

「キービン・ララってそんなにダメか? 井岡が勝つと思うけど、普通にいい選手じゃないの?」

プレッシャーをかけて距離を潰すバルテレミー。ベイも足を踏ん張ってパワーパンチを返す!!

試合開始直後からバルテレミーがグイグイと前進して距離を詰めていく。
恐らくミッキー・ベイのバックステップの短さ、そしてジャブの少なさをあらかじめ想定していたのだろう。パワーパンチを打つにはある程度のスペースが欲しいベイに対し、接近してその距離を潰す作戦である。

「サンタクルスとフランプトン予想!! 身長と体格のサンタクルスに高速コンビネーションのフランプトンか?」

対するベイは、このバルテレミーの突進を正面から受け止める。
押し込まれないように足を踏ん張りつつ、前後左右に細かくシフトウェイトしながらパンチを返す。
たびたび両者の頭がぶつかりハラハラしたが、それもベイがバルテレミーの踏み込みに対して、より強い踏み込みで対抗していたせいだろう。

やや窮屈ながらも力のこもったパンチを放つベイ。
スペースを潰したいバルテレミーだが、ベイの厳しい反撃に距離を詰め切れない。
リーチも長くアップライトに構えるバルテレミーに対し、L字気味の構えから強く踏み込んでパンチを打つベイ。パンチの質は異なるものの、双方の射程距離に大きな違いはない。
だが、積極的に前に出て手数を出す分バルテレミーの方が局面局面でベイを上回る。

「ロマチェンコがゴロフキン化? マルティネスに手も足も出させず完勝!! アカンわこりゃww」

ベイのおざなりの左を高く上げたガードとウィービングで楽々防ぐバルテレミー。
フリッカー気味の左をベイのガードの間にねじ込み、大きく踏み込んで距離を詰める。
頭が当たりそうな位置で左右フックを打ち合う両者。バルテレミーがバックステップしてわずかなスペースを作り、細かい連打をベイにヒットする。力をフッと抜かれてバランスを崩したベイが無防備にバルテレミーのパンチを被弾する。パンチ自体は軽くダメージは少ない。

「ボンバー三浦vsサリドキター!! 好戦的インファイター対決がアメリカで実現。バルガス戦を上回る激闘に期待感」

踏み込みのタイミングを測るバルテレミー。そこに意表をついてベイが先手をとって踏み込む。ボディからの右フックがバルテレミーの頬を捉える。
ニヤリと笑ったバルテレミーがすぐさまロングのストレートで迎撃。このパンチがベイのこめかみを捉える!!

「マイキー・ガルシア(ミゲル・アンヘル・ガルシア)復活!! ライト級戦線の主人公が戻ってきたぞ」

テクニシャン同士のハイレベルな攻防。
その中で、局面ごとにバルテレミーが一歩ずつ上をいく。

そして、恐らくバルテレミーがベイとの距離を完全に掴んだのが7R。
それまでのラウンドもバルテレミー優勢ではあったと思うが、はっきりとした差がついていたわけではない。だが、中盤から後半にかけてはバルテレミーがベイを圧倒したと言えるのではないだろうか。

長い左でベイを突き放しながらプレッシャーを強めるバルテレミー。ベイの踏み込みからの左を鼻先で避け、最小限のバックステップからのリターンでパンチをヒット。そのまま一気に距離を潰す。覆いかぶさるようにベイに自分の体重を預け、ロープ際に押し込む。
徐々に疲弊した表情を見せ始めるベイ。保っていた糸が切れたように一気にバルテレミーにペースが流れる。

最終的にジャッジの1人が110-117でベイを支持したとのことで、それはさすがにビックリしてしまった。どうやらこのジャッジは地元放送局でも批判の的となっているようである。

ミッキー・ベイは間違いなく実力者ではあったが、結果的にはバルテレミーの圧勝。そういうことでいいのではないだろうか。

「俺的PFPのNo.1コバレフ登場!! イサック・チレンベに勝ってウォード戦へ進めるか?」

オールラウンドでのハイレベルさを発揮したバルテレミー。やっぱりいい選手だ

前回のシャフィコフ戦を観て、僕は「この選手を過大評価し過ぎていたかもしれない」と申し上げた。

「バルテレミーがシャフィコフに判定勝ち!! IBFライト級王座獲得で2階級制覇!!」

あの試合はバルテレミーが距離を保ったままポイントアウトすると予想していたが、実際にはそうはならずにインファイトでバルテレミーが押し切るという展開だった。
あの試合を観て、シャフィコフ相手にあんなにやすやすと懐に入られるのであれば、この選手は期待したほどではないのかもしれない。そう思ってしまったのである。

「最強巨神兵コバレフの攻略法判明? チレンベ(チレンバ)の大健闘で大差判定ながら不安を残す」

だが、今回のミッキー・ベイ戦を観て、どうやらそれは間違いだということに気づいた。
要するに、バルテレミーは何でもできる万能型の選手なのだと思う。
距離をとってアウトボックスに徹しようと思えばそれはたやすい。だが、バルテレミーが優先するのは相手との相性。相手が距離を詰められることを嫌うのであれば距離を詰め、インファイトが得意な相手であればアウトボックスする。自分が得意なスタイルを貫くというより、相手の得手不得手を見極めて自在にスタイルをチェンジする。そういうことではないだろうか。

「ジョー・スミスがフォンファラにアップセット!! 1RでのTKO勝利でトップ戦線殴り込み?」

この試合の結果を受けて前回のシャフィコフ戦をざっと観直してみたのだが、あの試合でのバルテレミーはあえてシャフィコフの距離で打ち合っている節がある。シャフィコフの突進が予想以上に強く、アウトボックスでさばくのが難しいと判断したのだろう。3R以降はあえて相手の得意分野で勝負し、なおかつ上回ってみせているのである。

いや、すごい。
相手によってスタイルを自在に変化させ、どの分野でもハイレベルなボクシングを展開できる。しかも、あえて相手の得意分野で勝負してねじ伏せてやろうという気概もある。
なおかつ今回はディフェンシブなミッキー・ベイに文句なしの判定勝利である。
勝利を優先するクレバーさと勝敗を超えた熱さを持ち合わせた多面性のファイター。それがバルテレミーという選手の真髄である。

この試合の次の日に開催されたフランシスコ・バルガスvsオルランド・サリド戦の方は2016年を代表する大激闘ではあったが、試合のレベル自体はこちらの方が上だと思う。

「ゾンビか!! サリドがバルガスを追いつめ惜しくもドロー!!」

試合自体はクソつまらないが。

フェリックス・ベルデホとの一騎打ちにたどり着けるか。今後の活躍に期待

以前の記事で「三浦も内山もバルテレミーが階級を上げてくれて助かった」と申し上げたことがあるが、ホントにそうだと思う。この選手がS・フェザーに君臨していたら自動的に狙えるタイトルが1つ減ることになる。
タイプ的にも防衛戦で日本に呼ぶような選手には思えないし、海外のリングでマッチメークするにも人気がなさ過ぎる。
だけどひたすら強い。文字どおり、まったく旨みのない曲者王者である。

今後、この選手はどのような路線を歩むのだろうか。
ビッグマッチを臨むのであればS・ライト級に上げてネームバリューのある選手と絡むのが手っ取り早いと思うが、僕の希望としてはフェリックス・ベルデホが出てくるまではこの階級で無双していてもらいたい。

「ベルデホダメか? マルティネスにはKO勝利したけど課題山積」

今回のように、人気と知名度はなくともディフェンシブでやりにくい相手に防衛を重ね、ひそかに防衛記録を延ばす。
そして実力と人気が隔離したダークヒーローの地位をガッチリと固めたところでフェリックス・ベルデホとの一騎打ち。光と影の好対照な2人の頂上決戦。それが僕のシナリオである。

しかし本当にいい試合だった。
ランセス・バルテレミー、改めて僕のお気に入りである。

試合自体はクソつまらないが。

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