ジョシュ・テイラー圧勝…。バランチェクに風は吹かず。リードとインファイトに差があり過ぎた。vsプログレイスはどうだろうな【結果・感想】

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ビルイメージ
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2019年5月18日(日本時間19日)、英・スコットランドで行われたWBSS S・ライト級準決勝。IBF同級王者イバン・バランチェクにランキング3位のジョシュ・テイラーが挑んだ一戦は、3-0(117-109、115-111、115-111)の判定でテイラーが勝利。IBF王座戴冠を果たすとともに、WB&WBCダイヤモンド王者レジス・プログレイスとの決勝戦にコマを進めた試合である。
 
 
開始早々、鋭いジャブを出しながら軽快なフットワークを見せるテイラーに対し、バランチェクは持ち前の突進力と左右フックのフルスイングで前進する。
だが、そのつどテイラーに動き出しを狙われ、うまく自分の得意な距離まで詰めることができない。
時おりコーナーに追い詰めて腕を振り回すものの、テイラーにあっさりとサイドに回られ、細かいジャブを被弾する。
 
そして、テイラー有利で迎えた6R。
このラウンドもバランチェクは右を出しながら前に出るが、そこにテイラーの右がドンピシャのタイミングでヒット。この1発でバランチェクが腰から落ちるようにダウンを喫する。
すぐに立ち上がって再開するものの、ダメージは明らか。ラウンド終了間際にコーナーで連打を浴びて2度目のダウンを奪われてしまう。
 
このラウンド以降、テイラーはインファイトに切り替え近場での差し合いを展開する。コンパクトで精度の高いコンビネーションでバランチェクを圧倒し、ペースを掴んだまま終盤へ。
 
最終ラウンドにやや反撃を許したものの、カウンターとフットワークを駆使して乗り切り判定勝利。初の王座戴冠に成功した。
 
「ジョシュ・テイラーvsレジス・プログレイス訴訟で消滅? 実現すると思ってるんですけどね。英国開催一択なのに何やってんの」
 

日本のファンの間では空気だったけど、現地では盛り上がってたんじゃない? 決勝は素直に日本と英国でやるべきだよな

井上尚弥の圧勝により、日本のファンの間では完全に空気と化したこの試合。
 
だが、少なくとも現地ではそうではない。画面からは会場の盛り上がりが十分伝わってきたし、さすがは地元の人気者ジョシュ・テイラーだなと思わされる熱気を感じることができた。
 
この分なら決勝戦もグラスゴーで開催すれば成功は間違いない。
レジス・プログレイスにとってはアウェイになってしまうが、無理やり日本に連れてこられてうすら寒い空気の中でやらされるよりははるかにいい。グダグダ感満載だったWBSSシーズン2も、最後の最後で何とか格好がつきそうな気配か。
 
「知ってた定期。ドネアがヤングを左フックで粉砕KO。やっぱりスピード&パワーが大正義。1発の威力がすべてをチャラにする」
 
あとはアレだな。
「ボクシング新興国の第三国で開催するぜ」などとイキったりせず、ジョシュ・テイラーvsレジス・プログレイスは英国、井上尚弥vsノニト・ドネアは日本で開催することだろうな。
成功が約束されているのに、わざわざ「俺ってすげえ」をやる必要はない。
 
わかってると思うけど、人間、何だかんだで素直が一番やで?
 
ただ、京セラドームは止めとけ。もしもドーム開催を考えているなら、無難に東京ドームにしとけ。
 
もう一度言うけど、人間素直が一番やで?
 
「完敗の伊藤雅雪。へリングに最後まで追いつけず…。これ系の相手はどうしても鬼門になるよな。この先避けては通れないけど」
 

ジョシュ・テイラーのうまさが目立った試合。バランチェクはいい勝負すると思ったけどダメでしたね

余談が長くなったが、ようやく試合の感想を。
 
まず、今回はジョシュ・テイラーがうまかった
 
予想記事でも申し上げたように僕はこの試合はもう少し拮抗すると思っていたのだが、まったくそうはならず。全ラウンドを通してほぼテイラーのペースで進み、バランチェクは見せ場らしい見せ場すら作れない。正直、ここまで一方的になったのは予想外だった。
 
「テイラーvsバランチェク実現? WBSSとかいう壮大な茶番に幸あれ。アリトロフィーの名誉()よりも実が欲しいんだよ」
 
イバン・バランチェクという選手の持ち味は何と言っても突進力と躊躇のないフルスイング。
前戦のアンソニー・ヤード戦でもサウスポーのヤードをいっさい苦にせずあっさりと距離を詰め、至近距離で思う存分腕を振り回した。ローブローや後頭部への打撃を何度注意されてもまったく気にするそぶりも見せず、両腕をとことん強振しまくる思い切りのよさ。そして、それを12R継続するスタミナ。
このラフファイトがうまくハマれば、ジョシュ・テイラーにも勝てる可能性は十分ある。
 
なおかつ、この選手はロシア出身で自分のファンベースがあるわけでもない。
負ければ王座と無敗レコードを同時に失う中、地元判定がキツいと言われるグラスゴーに乗り込まなくてはならない状況。
諸々を考えると、今回はぜひとも勝ってもらいたかったのだが……。
 
大方の予想を覆せずジョシュ・テイラーに屈してしまったのは何とも残念である。
 
「僕のジョシュ・テイラー優勝! プログレイスを僅差判定で下す。WBSS S・ライト級おもしろかったな」
 

リードとインファイトに差があったかな。動き出しを狙いまくって突進を寸断された

具体的には、リードとインファイトに大きな差があった気がする。
 
突進力とフルスイングを持ち味とするバランチェクだが、基本的には左右フックの連打のみ。攻撃パターン自体は多い方ではない。
また、どちらかと言えばヘッドハンター気味で、すべての攻撃は左フックを起点にスタートする。
 
そして、この試合でジョシュ・テイラーが狙ったのがここ。
身長173cm、リーチ170cmのバランチェクに対し、テイラーは身長178cm、リーチ177cm。バランチェクが自分の攻撃パターンに持ち込むにはテイラーの懐に入る必要があるのだが、テイラーはサイズ差を活かしてそれをさせない。
 
スタンスを広く構え、モーションの大きなバランチェクの動き出しに的確なジャブをヒット。バランチェクはそのつど顔を跳ね上げられ、左フックを出すタイミングをつかめない。
また、何とか懐に入っても攻撃姿勢に入った瞬間にさっと肩でスペースを潰される。外旋回のフックのさらに内側に踏み込まれ、逆に懐で連打を浴びる流れ。
 
「ラッセルさんちっす! 年一のお仕事ご苦労さまッス! キコ・マルチネスに勝利し2019年の勤務を終える。長谷川穂積とは一味違う?」
 
今回のテイラーはとにかくバランチェクの左フックへのケアがすばらしかった。
鋭くコンパクトな右リードで突進を寸断し、近い位置では低い姿勢でバランチェクの懐に潜って細かいボディをヒット、相手の体勢が整う前にサッと離れる。
 
腕が伸びる位置での対峙を極力避け、バランチェクに満足に腕を振らせない。
 
 
左フックが機能しないバランチェクは中盤から右で飛び込む作戦に切り替えるのだが、恐らくテイラーにとってはそれも想定内。バランチェクの踏み込みと同時に一歩前に出てスペースを潰し、絶妙なタイミングで右カウンターを叩き込む。6Rに喫したダウン以降、バランチェクの突進力は一気に弱まってしまった。
 
「井上尚弥w 理不尽な左と意味不明なタイミングでロドリゲスを片付ける。パワー勝負に切り替えた瞬間だったな」
 

ダウンを奪って以降はインファイトへの切り替え。バランチェクの射程のさらに内側へ


また、インファイトに切り替えた後半もよかった。
 
的確なリードと要所でのボディに加え、2度のダウンで大きくダメージを負ったバランチェク。前半ほどの突進力はすでになく、得意のフックにも力感がない。
 
これを確認したテイラーは7R以降、自ら前に出て打ち合うスタイルに移行する。
 
動き出しを狙って右リードを当て、そのままスルスルッと近づき右ボディ。
バランチェクのフックを両腕でガードし、戻り際にもう一歩距離を詰める。
そして、内側で細かい連打を浴びせてバランチェクを後退させる。
 
ラフな打ち合いを持ち味とするバランチェクだが、実はインファイトがそこまで得意ではない(っぽい)。確かに躊躇のないフルスイングは危険だが、殺傷力を発揮するにはある程度のスペースがいる。
 
逆にテイラーはインファイトでも力強さを発揮する。
2018年6月のビクトル・ポストル戦でもポストルの左ジャブを大いに持て余したが、距離を詰めてのインファイトに活路を見出している。
 
「ベストバウトきました。テイラーvsポストル興奮したわ〜ww ポストルに感動したかな。どっちもよかったけど」
 
肩で強引にスペースをこじ開け、腰の回転と足の踏ん張りで威力のあるフックを打つ。バランチェクの射程のさらに一歩中に踏み込み、糞詰まりを起こさせる。
遠い位置での右リードとともに、インファイトでもテイラーに分がある試合だった。
 
 
てか、バランチェク自身は最終12Rに見せた打ち合いがやりたかったんだよな。
 
ジョシュ・テイラーが若干疲れたか、流したかは不明だが、あのラウンドは終始バランチェクの距離で展開していた。僕もあの流れが最初から続けばもしかしたら? と思っていたのだが、今回はテイラーのバランチェク対策がお見事だったと言うしかない。
 

vsレジス・プログレイスか…。さすがにジョシュ・テイラーでもキツそうな感じがするよ

なお、これで決勝戦はレジス・プログレイスvsジョシュ・テイラーとなったわけだが……。
いや〜、どうなんだろうなこれは。
 
先日もちょろっと申し上げたように、ジョシュ・テイラーにとってはかなり厳しい試合になりそうな……。
 
インファイトでも高次元な実力を発揮するテイラーだが、果たしてプログレイスに通用するかどうか。というより、キリル・レリクを撃沈させた悶絶ボディと瞬間移動のような前後へのフットワークをテイラーがインサイドで抑えきれるとは思えない。正直、近場での真っ向勝負ではお話にならず、あっという間にKO負けを喫してしまうのでは? とすら思っているのだが。
 
「やっばw プログレイスがレリクを顔面粉砕TKO。こんな一方的になるとは…。勝てるとしたらバランチェクの方が可能性高い?」
 
そう考えると、恐らくテイラーは離れて対峙する作戦を選択するはず。だが、じゃああの右リードがどこまでプログレイスの前進を止められるかという話。
 
序盤はそこそこ健闘するかもしれないが、徐々に距離を詰められ中盤辺りでプログレイスに捕まりジ・エンドという流れになる気が……。
いや、何とも言えないですが。
 
 
まあ、とにかくジョシュ・テイラーにはがんばってもらって、いい試合になるといいなと。
実は井上vsドネア戦と同じくらい楽しみにしてますよww
 
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