デボン・アレクサンダーまさかの敗北!! 復帰戦でアーロン・マルティネスに敗れる【ウェルター級10回戦】

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掌と太陽
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2015年10月14日(日本時間15日)に米アリゾナ州グレンデールのギラ・リバー・アリーナで、元IBF王者デボン・アレクサンダーの復帰戦が10回戦で行われた。

対戦相手はノーランクのアーロン・マルティネス。2015年6月にロバート・ゲレロと対戦し、僅差判定で敗れはしたもののノックアウト寸前まで追い込む善戦を見せたインファイターである。

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結果はまさかの3-0でアレクサンダーの判定負け。マルティネスのガチガチのインファイトにアレクサンダーがパワー負けした格好である。

マルティネスのインファイトを徐々にさばききれなくなるアレクサンダー

半身に近いサウスポースタイルで構えるアレクサンダーに対し、ほぼ正対して構えるマルティネス。全体重を預けるように身体を密着させ、アレクサンダーの顔面に右のフックとアッパー、そしてボディをねじ込む。
マルティネスの右に対して左のガードを上げているためにアレクサンダーはうまく反撃ができない。ちょうどマルティネスの右だけが強く振り抜ける体勢になるのである。

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それでも序盤は密着される前にパンチをヒットし、マルティネスの突進をうまく芯をずらしていなしていたアレクサンダー。右フックを引っかけ、左右ボディ。右にステップして身体を入れかえ右フックをヒット。このパターンでポイントを奪う有利な展開で試合を進めていた。

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だが、試合が進むにつれて徐々にマルティネスに押し込まれて後退するシーンが目立ち始める。
マルティネスがロープ際にアレクサンダーを押しこむ。その状態から相手の頭に自分の頭をこすりつけるように密着させ、顔面への攻撃を防ぎながら左右のボディを打つ。体格差を活かしてアレクサンダーの動きを封じるのだ。

序盤こそうまく身体を入れ替えて突進をいなしていたアレクサンダーだが、だんだんとマルティネスのパンチを被弾するシーンが増える。
ボクシングの精度という意味では完全にアレクサンダーなのだが、パワー面ではマルティネスに分がある。いかんせん強引な攻めに弱いアレクサンダー。体力差が顕著に表面化した試合の中盤以降、アレクサンダーのコンビネーションにも慣れたマルティネスが前進し続けて流れを引き寄せるのである。

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パワーのないアレクサンダーはこれをやられると本当に厳しくなる。
マルティネスが踏み込む瞬間にカウンターを狙うのだが、それはマルティネスも百も承知。ガードを高く上げて頭を下げ、なるべく的を小さくして前進する。身体を密着させた後はひたすらもみ合いながらラフなパンチを振り回す。

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強引な前進を繰り返すマルティネスに対し、アレクサンダーは踏み込み際のカウンターを防がれると次の手がなくなる。
肘で押す、ロープの反動を利用するなど、どうにかマルティネスとの距離をとろうとするものの、マルティネスはお構いなし。きっとこういうファイトは慣れっこなのだろう。踏み込み際のカウンターさえ気をつければどうにかなるという精神的な余裕も大きかったに違いない。

アレクサンダーまさかの判定負け。体力差が如実に表れた試合だった

7R開始早々、足を使って距離をとるアレクサンダー。
だが、すぐにマルティネスの強引な前進につかまる。右を当て、右サイドにステップ。その体制からチャンスを広げようとするアレクサンダーだが、流れた身体を素早く方向転換して再び前進するマルティネスにあっという間に身体を密着される。そして頭をつけていつもの打ち合い。
ロープを背にした状態でガードの間を打ち抜かれる。アレクサンダーの顔が派手に跳ねがある。

試合終盤になると、手応えをつかんだマルティネスがさらに力を入れてフックを振り回す。至近距離で遠心力を効かせた左右のパワフルなフックはショーン・ポーターを思わせる。アレクサンダーのガードごと吹き飛ばすような力感である。

10Rの終了間際にこのフックがカウンターでアレクサンダーを捉えるのだが、このパンチは恐らくちょっと効いた。一瞬アレクサンダーの動きが止まったし、ガクンと動きが悪くなったのである。

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結果は97-93、97-93、96-94の3-0の判定でマルティネスの勝利。
アレクサンダーは前回のアミール・カーン戦に続き、まさかの連敗である。

大金星を挙げたマルティネスのファイトに拍手だ

この試合のマルティネスはよくがんばったと思う。
ガードを高く上げていたといってもかなりのパンチを被弾していたし、7R、8R辺りは体力的にも相当キツかったと思う。それでも自分を奮い立たせて前進を続けた姿は見事というほかない。
空振りするたびに流れる身体を根性で立て直し、再び頭を下げて前に出る。大物食いを誓う強い決意がひしひしと感じられる戦いぶりだった。

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断言するが、マルティネスはボクシングの才能ではアレクサンダーにはまったく及ばない。正直、スケール的にもチャンピオンになる器ではないボクサーだ。
だが自分の唯一のスタイルをかたくなに貫き、大金星をたぐり寄せたファイトは十分賞賛に値すると思う。すばらしい試合だった。

インファイターが苦手なアレクサンダーは弱点を露呈した?

ウェルター級ではややパワー不足な上に、テクニシャンスタイルの割にフットワークがないアレクサンダー。たぶん膝の柔軟性が足りないのだろう。こういうガチガチのインファイトが本当に苦手だ。

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ショーン・ポーター戦や今回のマルティネスのように、頭をつけてガンガン打ちこんでくる相手にはどうしても後手に回ってしまうのだ。
しかも突貫ファイターを迎撃するパンチを持たないため、あっさりと距離を詰められてサウスポーの利点を消されてしまうのである。
腕を絡ませてもすぐに振りほどかれてしまう腕力のなさも、もみ合いでの弱さを助長する致命的な弱点といえるだろう。

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さらに、こういうインファイトに真正面から付き合ってしまうのがアレクサンダーのよくないところでもある。狡猾さが足りないというか、ファイトスタイルが真っ正直なのだ。きっと、ボクサーにしては穏やかな性格なのだと思う。

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今後の展望が見えないアレクサンダー。階級を下げるくらいしか道はない?

今回の試合、アレクサンダー敗北はかなりの予想外だった。
ショーン・ポーターやアミール・カーンに負けたのならいざ知らず、アレクサンダーがこのレベルの相手に負けるとは思わなかった。
確かにインファイターが苦手なのは明白なのだが、さすがにアーロン・マルティネスには負けないだろうと思っていた。最初はモンティエルvsセルビー戦の後のガス抜き的な気分で観ていたのだが、「おやおや?」と思っているうちに負けてしまった。

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まさかの連敗を喫したアレクサンダーだが、残念ながらこの試合で実力の底を見せてしまったのではないだろうか。
スピード勝負でアミール・カーンに負け、インファイターには力負けする。
総合力は非常に高いのだが、どちらかに目盛りを振りきった相手には対応できないことを露呈した試合だったと思う。恐らく今後の対戦相手はバッチリと対策をしてくるはずなので、より厳しい状況が彼を待っているだろう。

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個人的にアレクサンダーは好きなボクサーなのでがんばってほしいのだが、現実的に考えてトップ戦線に復帰するのは難しいと言わざるを得ない。戦績的にも実力的にも、今後はロバート・ゲレロやポール・マリナッジのようなウェルター級の門番的な役割に落ち着くのではないだろうか。非常に悲しい話なのだが。

もしくは本人にその気があるなら階級をS・ライトに戻して以前のパワフルなボクシングで再起するか。

どちらにしろ、今の状況からウェルター級のドル箱スターの座に上り詰める可能性は限りなく低いと思われる。

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