ヒルベルト・ラミレスがアブラハムに完全勝利でWBO世界S・ミドル級の王座を初奪還【結果】意外に村田諒太がいけるんじゃないか?

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ボクシング攻撃イメージ
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2016年4月9日(日本時間10日)に 米ラスベガスにあるMGMグランド・ガーデン・アリーナで行われたWBO世界S・ミドル級タイトルマッチ。

同級1位の挑戦者ヒルベルト・ラミレスがチャンピオンのアルツール・アブラハムを3-0の判定勝利で敗り、初の王座を獲得した。

巧みなフットワークと手数でアブラハムを翻弄したラミレス。ジャッジが3者とも120-108をつける完封劇で「キング」の異名を持つアブラハムに何もさせず、王座奪還に成功した。

なお、この試合はフィリピンの英雄マニ―・パッキャオvsティモシー・ブラッドリー戦のアンダーカードとして行われている。

「パッキャオがブラッドリーに完全勝利!! ラバーマッチを制し有終の美を飾る」

パッキャオの盛り上げ役としては最悪の試合だったセミファイナル

攻防分離型の強打者アブラハムに、無敗のサウスポーヒルベルト・ラミレスが挑んだ一戦。
先日も申し上げたとおり、個人的に非常に注目していた試合である。そして、期待通りの結果に終わってとても満足した一戦でもある。

実はこの試合に対する世間的な評価はあまり高くはない。

・これといって何も起こらない無風な試合
・無策すぎるアブラハム
・倒しきれないヒルベルト・ラミレスが物足りない
・ラミレスは長期政権は難しいだろう

概ねこんなところだろうか。
はっきりと言ってしまえば、あまり面白い試合ではなかった。
「パッキャオのラストマッチの前にモヤっとさせやがって」
多くの人がこんな感想を持った試合である。

「村田諒太は日本を捨てちゃえよ? ペドロソをまったく問題にせず4RTKO勝ち」

そして、僕自身もその意見には全力で同意する
長年ボクシング界を背負ってきたスーパースターを送り出す試合の前座として、この試合は絶対的に物足りなかった。
しかも、決して玄人好みというわけでもない中途半端さ。

消化不良のままメインにバトンを渡しやがって。

「アンソニー・ジョシュアがチャールズ・マーティンに圧勝!!」

このマッチメークを見たときからこうなることはある程度予想できた

「退屈な試合だった」「アブラハムの手数が少なすぎる」と、ネガティブな反応が多かったこの試合だが、正直、僕は両者の名前を見たときからこういう結果になることはある程度予想していた。
別に僕に見る目があるとか、そういうことではない。ただ単に両者のスタイルを比較すればこうなることは容易に予想できたという意味である。

ご存知のようにアブラハムは攻防分離型の代表格のようなスタイルである。
基本的に防御はブロックのみ。貝のようにガードを固めて相手の攻撃が止むのを待ち、相手の手が止まったところで自分のターンを開始。時おり見せる野性的なカウンターが光るものの、基本的には忍耐とパンチ力、当て勘のみでチャンピオンの座に昇り詰めた選手である。

「エロール・スペンスがクリス・アルジェリをまったく問題にせず!! こりゃ本物だ」

対するラミレスは、基本に忠実なサウスポー。
長いリーチを活かした右のリードから左の強打。このワンツーを軸とした教科書的なボクシングが特徴の選手である。左右のパンチを上下に打ち分けるスムーズさや前後左右に動く足もあり、なおかつ手数も出る。しかもすべてのパンチ、すべての動きが滑らかで力みがない。
その反面、チャンスでの爆発力には欠ける部分もあり、勝利を最優先した安全第一のボクシングを消極的だと指摘されることも多い。
だが、ここ最近の試合では自ら進んで打ち合う積極性も出始めている。
1991年生まれと年齢も若く、今後数年のうちにスーパースターの座を射止める可能性を持った選手である。

待ちに徹する攻防分離型のアブラハムと、精度の高い連打と左右に動く足が持ち味のラミレス。この両者がぶつかればおのずとこういう展開になることは容易に想像がつく。

試合前の僕の予想としては、ラミレスが手数と足でアブラハムを終始コントロールして完封勝利するか、どこかでアブラハムのカウンターが炸裂するか。そのどちらかだと思っていた。
そして、どちらかといえばラミレスが完封する可能性が高いのではないかと予想していた次第である。

予定調和こそが平和の象徴ww 癒しのひとときを提供してくれた試合

ここ数試合でかなり積極的に前に出るようになったラミレスだが、初めての世界戦で相手が強打のアブラハムとなれば安全運転に徹する可能性は高い。

先述のとおり、ラミレスの特徴は力みのないスムーズさだ。
両肩の力を抜いてコンビネーションを打つために1発1発のパンチの消費エネルギーが小さくて済む。なおかつ足を動かしながらスムーズに打てるために、ひとたびリズムに乗ればガス欠を起こすことなく打ち続けられる。

要するに、攻防分離型のアブラハムにとってラミレスのようなタイプは天敵中の天敵である。いくら守りを固めも、相手の攻撃が止まないのでいつまでたっても自分のターンは来ない。意を決して前に出てもフットワークでいなされ目の前からいなくなる。
なおかつ、この日のラミレスは守りに重きを置いたスタイルで、アブラハムにチャンスは少ない。必然的にアブラハムの手数は少なくなり、カウンターを炸裂させる確率も低くなるというわけである。

「アブラハム、マーティン・マレーに判定勝利で防衛成功!!」

つまり、試合はラミレスがリーチを活かしたフックとボディをハリネズミのように打ち続け、12Rを通じてアブラハムをコントロールする。
こんな予想をしていたわけだが、結果的にはそれがほぼ的中した。

だからというわけではないのだが、その予定調和が僕に何とも言えない安心感を与えてくれたww
何のトラブルもなく思った通りの展開で始まり、無風のまま終わる。この穏やかで平和な時間が非常に心地よく、安心感に溢れた癒しを僕に与えてくれたのであるww

平凡の中にこそ感じる至福。
予定調和の幸せ。

ボクシングという非日常の空間で、どういうわけか平穏を感じてしまったちぐはぐさが意味不明におもしろい。このズレた充実感こそが、僕がこの試合に満足した最大の要因である。

ヒルベルト・ラミレスvs村田諒太を切に願う!! アブラハム兄さんの敵をとれ

予定調和の安心感に加え、僕がこの試合に注目していたのにはもう一つ理由がある。
ぜひともヒルベルト・ラミレスvs村田諒太の試合が観たいのである。

もちろん体格的な問題もあるし、どこをどうやったら村田がラミレスに挑戦できるんだという疑問も残る。
だが、僕はこういうコンビネーションの得意なタイプを攻防分離型の選手がぶっ壊す光景を目撃したいのである。

今回の試合では、どう考えてもアブラハムがラミレスに勝つ可能性は低かったと言わざるを得ない。
だが、この試合を観た村田諒太が何らかのヒントを得てS・ミドル級転向を決心し、攻防分離業界最後の砦としてラミレスに挑戦する。
もしくは初防衛戦であっさり王座を失ったラミレスがミドル級に階級を落とし、試運転の相手として村田諒太を指名する。
そんな奇跡のようなシナリオをひそかに期待しているのである。

アブラハムに打倒ラミレスは荷が重かったが、もしかしたら村田諒太ならいけるのではないだろうか。
攻防分離業界最後の砦として、アブラハム兄さんの敵を討ってくれるのではないだろうか。
強靭なフィジカルに荒々しさをプラスして、ラミレスの防御を打ち破ってくれるのではないだろうか。
こんな感じで、割とマジで村田諒太に打倒ラミレスを期待しているのである。

身体の強さを持った村田ならラミレスを追い詰められる?

今回のアブラハムvsラミレス戦でわかったことは、攻防分離型の選手がラミレスを攻略するには下がってはいけないこと。ガードの上、ガードの間からどれだけパンチを浴びても前に出続け、ラミレスとのリーチ差を相殺することである。

この日のアブラハムも前に出ようとしてはいたが、もう一歩が足りなかった。あと一歩のところでラミレスのカウンターや左右のボディを被弾して出足が止まってしまったのである。

ジリジリと前進して自分の手が届く位置まで近づこうとするのだが、そのたびに上下の打ち分けを被弾して足が止まる。そしてフットワークを使って距離をとられる。
再びリング中央で対峙し、近づくところからやりなおし。その繰り返しである。

手数もそうだが、要するにアブラハムにはラミレスを追い詰めるだけの身体の強さが足りなかった。長身でリーチも長いラミレスのパンチを受けながら前進する体力がなかったということである。

これは両者の根本的な体力差によるところが大きく、恐らく何度やっても似たような結果にしかならない。つまり、現時点でアブラハムがラミレスに勝つことはほぼ不可能である。

だが、村田諒太なら。
村田諒太なら何とかできるのではないか。

村田諒太の身体の強さがあれば、ラミレスのリーチをかいくぐって自分の距離まで詰めることが可能なのではないだろうか。
懐に入ったところで得意のボディから右ストレート。このパターンに持ち込めば、ラミレスをコーナーにはりつけにできるのではないだろうか。
そんな淡い期待を抱いているのである。

「村田壮絶KOで快勝!! ガストン・アレハンドロ・ベガを右ストレートで一蹴!!」

S・ミドル級という難関タイトルを日本の村田諒太が力技で獲得する。
僕はこんな光景をぜひとも観たい。

まあ、無理か。

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